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今昔かたりぐさ・一日一話
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         今昔かたりぐさ・一日一話         
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きりなし話
 ある川のほとりにトチノキが立っていた。実が鈴なりになって、
ひとつの実がぽとんと落ちて流れてゆく。また落ちて流れて行く。
また落ちて流れて行く。また落ちて流れて行く。また落ちて…(以
下エンドレス)

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発行 珍獣ららむ〜

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1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月

 2004年10月、微妙に文章を修正してます(継続中)。わずかですが差し替えた話もありますので古いものが必要な方は>こちらをどうぞ

 2005年はメルマガの発行が途中で中断しちゃってごめんなさい。中断ついでに順番も時々変えてメルマガに乗せることにしました。タイムリーな話題とか、たまたまみつけた地元の伝説なんかも、どんどん紹介していこうと思います(たぶん)。

 2006年になりました。ポッドキャストやってます。iTunes 持ってる人は Music Store で「日本みじかい昔話」を検索してみてください。無料です。あと、このページも微妙に強化してます。去年末にハードディスクをすっとばしたので、隠し持っていても消えたらお仕舞いだと悟りました。メモするくらいならこのページにつっこんだらいいのですね。ええ、なるべくそうします。ますます重たいページになるけどごめん(誰も見てないからいいか)。

 

一月のお話

0101 十二支のはじまり
 年を守る大事な役目、ぜひともわたしにおまかせを。元旦の朝いちばんに動物たちは神様の家にかけつけた。気まぐれ猫は約束を忘れて「鼠くん、いつ行けばいいんだっけ?」かしこい鼠は「正月二日だよ」とウソを教えた。猫は遅刻、十二支には加われない。怒った猫は今でも鼠を追いかけている。

類話 鼠の出世
 お釈迦様が動物たちを集めて「一番先に太陽を見たものを生き物の王にする」とおっしゃった。他の動物たちはみんな東をむいて日の出を待ったが、鼠だけは西をむいていた。夜が明けると日の光が西にある高い山の上にあたって赤くかがやいたので、西をむいていた鼠が一番最初に「太陽だ!」と叫んだ。お釈迦様は鼠を王様として十二支の一番目にした。(栃木)

0102 浦島太郎
 これ子供、生き物をいじめてはいけないよ。太郎は子供に駄賃をやって亀を海にかえしてやった。亀を助けたお礼にと竜宮城にまねかれて、三日すごして家に帰れば陸では三百年がすぎていた。乙姫様にもらった玉手箱から煙がでてきて、太郎はたちまちお爺さんに。

0103 浪石(浦島太郎の涙石)
 竜宮から帰った浦島太郎。玉手箱の煙でおじいさんに。浜辺の岩によこたわり、泣きながら途方に暮れたが、その後はどうしたかわからない。この石は涙石と呼ばれ、海が荒れる前にぬれるので浪石と呼ばれるようになった。

0104 雪玉うさぎ
 天の神様せいぞろい。月の世界で雪合戦。うっかり落とした雪玉は、どんどん地上に落ちていく。あの美しい雪玉がとけてなくなるのは悲しいこと。神様たちは雪玉に、手足と長い耳をつけ、白いウサギにかえたとさ。

0105 隠れ里(一)
 見知らぬ穴のその奥に、見知らぬ里の見知らぬ畑。男は畑を手伝って大判小判をお礼にもらう。「お金はいつでもまたあげよう、けれどもここで見たことは、ほかの誰に話しちゃならぬ」禁じられれば言いたくなるのが人の常。男は酔って知人に話し、あくる朝に隠れ里。また入り口をさがしてみるが、約束やぶったその罰にとうとう入り口みつからぬ。

0106 隠れ里(二)
 遠くの山で女が招く。村の男がそれを見て、ふらりと山へ入って行った。山では女がただひとり、立派な屋敷で暮らしている。夫婦になった男と女。夢のような暮らしをするが、男は村が気になると、ひと月ぶりに下山する。村では三年たっていて、男はとうに死んだ人。村人たちに問いつめられて、男は山での暮らしを話す。その途端、男は倒れて動けない。

0107 かちかち山
 婆さんを殺して食べた悪狸。兎が仇討ち(あだうち)かって出る。兎は狸を柴刈りに、さそって背中に火をつける。「カチカチ言うのはカチカチ山、ボウボウ言うのはボウボウ山」狸は兎にだまされて、背中の火事に気づかない。とうとう狸は大やけど。それでも兎は許さない。狸を釣りにさそい出し、泥船に乗せて沈めてしまう。

0108 鶴女房
 男が助けた白い鶴。その夜女が戸をたたき、わたしをお嫁にしてください。嫁は夜な夜なトンパタリ、姿をかくして布をおる。嫁の布は高く売れ、男はたちまちお金持ち。ある夜こっそりのぞいてみたら、鶴が自ら羽を抜き、布におりこみトンパタリ。妻は鶴の姿になって、男のもとから飛びさった。

0109 枯野船
 天までとどく巨大な木。切って作った枯野船。帝にささげる泉の水をたっぷり乗せてえんやらや。やがて古びた枯野船。焼いて灰から塩をとる。焼けて残った木片で、琴を作れば摩訶不思議、七里先まで響き渡る。

0110 鳥呑爺
 美しく鳴く鳥をとり餅でつかまえた。暴れる鳥をひっつかみ、ねばつく餅を口でこそげてなめ取っているうちに、鳥もいっしょに呑んでしまう。やがてヘソから出てきたのは鳥の尻尾。爺さんが尻尾をひっぱると、腹の中で鳥が鳴く。それを見た殿様は大喜び。爺さんに褒美をくれた。

0111 屁こきじじい
 ふしぎな屁をひるお爺さん。殿様の前で屁をひった。大喜びのお殿様、褒美をたんとくださった。となりの爺さんまねをして、殿の御前で屁をひった。腹に力を入れすぎて、へっぴりぶりっと糞をひる。殿様かんかん大激怒。となりの爺さんつかまって、牢屋にいれられゴメンナサーイ。

0112 猿蟹合戦
 にぎりめしと交換に猿からもらった柿の種。畑にまいて世話をする。はやく芽を出せ柿の種。出さぬとハサミでちょんぎるぞ。蟹の呪文にぐんぐん育ち、たわわになった柿の実を、猿が横からうばいとる。お前はこれで十分と、猿は青柿投げつける。青い柿につぶされて、蟹はぺちゃんこさあ大変。臼・蜂・栗が蟹の子と力あわせて仇討ち。猿はあわててどこか遠くへ逃げてった。

0113 大工と鬼六
 大水にも落ちない橋をと依頼され、こまった大工に鬼が言う。お前の目玉をくれるなら、俺がその橋かけてやる。やれるものならやってみろ。大工の言葉に鬼は笑う。はたして橋は見事にかかり、鬼は目玉をくれという。「お前も目玉は大事だろう、オレの名を言い当てたら勘弁してやる」けれどわかるものでなし。大工はこまってとぼとぼと、歩いていると、鬼の子のかすかに聞こえる話し声「鬼六とうちゃん目の玉を持って帰ってきておくれ」大工は鬼の名を当てて、鬼はすごすご逃げ帰る。

0114 さとり
 山小屋で暖を取る男のもとに毛むくじゃらの怪物が現れる。「お前は今、やっかいなものが現れたと思っただろう」怪物は男の心をいいあてた。心をさとる妖しの怪。動揺したらおしまいと、そしらぬ顔で柴を折り、燃える焚き火に放り込む。意図せずはじけた柴のかけらはさとりの顔に大当たり。「人とはなんて恐ろしい。心にも思わぬことをするなんて」さとりは山奥へ逃げていく。

0115 御徳政(ごとくせい)
 北条泰時の名裁き。ごうつくばりの宿の主。客から荷物をあずかった。翌朝旅に出る客に「御徳政でございます」宿屋は荷物を返さない。話を聞いた泰時は「宿屋よ、お前は旅人の、荷物を返すことはない。だが旅人も宿から借りた布団や部屋を返さなくてよい」奉行の名裁きに宿の主、すっかり降参ゴメンナサイ。旅人に荷物を返してやった。

# 御徳政が出ると借金が帳消しになる。恩赦の一種のようなもの。

0116 猿の肝
 海の王様ご病気で、薬は生きた猿の肝。クラゲが猿を連れに行く。「わたしに何のご用かね」猿の言葉にまぬけなクラゲ、本当のことを話してしまう。猿は笑ってこう言った「残念だけどクラゲくん。肝は洗濯したばかり。物干し竿にかけてある。ちょいと戻って取ってこよう」猿はそのままもどらない。クラゲは手ぶらで海へ帰り、まぬけの罰に骨を抜かれてグニャグニャに。

0117 鳶不幸(とびふこう)
 鳶(とび)の息子は根性曲がり。言われたことの逆をやる。いまわの際に父親は「息子よ、わしが死んだならら海に投げて捨ててくれ」そう言い残して息絶えた。父の死を見た根性曲がり、これからは心を入れ替えようと父を海に投げ捨てた。けれども父が気にかかり、「海干いよぉ」と鳴いている。

0118 笑う髑髏(どくろ)
 笑うどくろを拾った男。見せ物にして大評判。殿のお召しでお城に上がり、どくろをつついて笑わせる。けれどどくろは笑わない。怒った殿さま家来に命じ、男を刀で無礼討ち。するとどくろは笑いだす「あなおかし。今殺された男こそ、自分を殺して金を奪った追いはぎじゃ」

0119 豆と炭と藁
 豆と藁と火のついた炭。そろって仲良く旅に出た。途中に川があったので、背の高い藁が橋になる。炭が渡りはじめると、藁が燃えて川にぼっちゃん。見ていた豆が大笑い。笑いすぎて腹がパチンと裂けてしまった。豆の腹に黒い傷が残っているのは裂けたところを針と糸で縫ったから。

0120 黄金の瓜
 屁をした罪で離縁され、城を追われた奥方さま。旅の途中で産んだ子が、父はいずことたずねれば「それはお城のお殿さま」息子は母の身の上を聞いてお城で瓜を売る。「金の実がなる不思議の瓜。一度も屁をしたことのない者がまかねば実がならぬ」これを聞いたお殿さま、おろかな自分に気がついて、奥方さまを呼びもどす。

0121 姥捨て山
 年寄りを山に捨てろというお触れ。孝行息子は逆らって母親を床下にかくまった。そのころ殿様は難題になやんでいた。ひとりでに鳴る太鼓はどう作る?床下の母親に知恵を授かり息子は殿様の危機を救う。年寄りの知恵の大切さを知り、殿様はお触れを取り消した。

0122 鼠の嫁入り
 強い男に嫁がせようと、ねずみの父さんお日様に娘をつれてご挨拶。けれどお日様おおわらい「自分をかくす雲が上」雲もわらっておことわり。わたしは風にとばされる。風もすまして「壁が上」すると壁さんほほえんで「この世でいちばん強いのは、あんたたちねずみの一族だ。わしの体を穴をあけてしまうからのう」

0123 ねずみ浄土
 穴に落としたおにぎりを、男はさがして穴に落ち、やってきました地底国。そこでは鼠が大宴会。にぎりめしで餅をつく。男は鼠に招かれて、宝をみやげに持ち帰る。悪い男がまねをして、鼠の宴会さがしあて、猫の鳴きまねゴロニャオーン。悪い男は地底で迷い、モグラになってしまったとさ。

0124 箱根山の天邪鬼
 箱根の山に尻を向け、富士山を拝むとは何事だ。箱根の鬼は腹をたて、富士山を低くしようと岩を運んで海に捨てる。一晩中、岩を背負って行ったり来たり。一番鶏が高く鳴き、鬼は山へ逃げてゆく。あわてて投げた大岩が熱海の初島になり、こぼれた石ころが伊豆七島になったという。富士は今でも日本一。箱根の鬼はくたびれもうけ。

0125 猫檀家
 寺の猫が年をへて、後足でたってニャゴニャゴおどる。和尚に見られて寺を出る。ある日化け猫ぷいと戻って「和尚さん和尚さん、隣村の庄屋の家じゃ」と鳴いた。庄屋の家では先代の葬式をすると嵐で中止。和尚が行くと嵐はやんで、葬式も終わり万々歳。寺は評判、檀家が増えた。

0126 力和尚
 むかし桐生の西方寺に力自慢の和尚がいた。急用で江戸へ向かう途中、熊谷で時刻をたずねたら「上州の西方寺さんの鐘が鳴らないのでわからない」と言われる。和尚は「西方寺の和尚なら用事で出かけているよ」と涼しい顔で返事をして先を急いだ。

0127 魚女房
 子供がいじめる小さな魚。男は助けて海にはなす。その夜見知らぬ女がひとり、わたしをお嫁にしてください。女が作るみそ汁は、心もとろけるうまい汁。男がそっと様子を見ると、女房は魚の本性出して、煮え立つお湯に身をおどらせる。その身でとった魚出汁。男が箸をつけずにいると「お前さん、あたしの正体を見てしまったんだね」女は海へ帰って行った。

0128 ねずみ経
 おぼえの悪いおばあさん、お経を教えてほしいというが、いくら教えてもおぼえない。こまった和尚はデタラメに「ネズミチュウチュウニガサンゾ」と教えると、「今度のお経はおぼえられるよ」とおばあさんは大喜び。おぼえたお経を読んでいると、天井裏の泥棒か、自分のことを言い当てられたと思いこんで逃げ出した。

関連 後家の手鏡
 伊佐という名のある怪盗がいた。ある日、たらいの水に足をつけると水がジューッと音をたててお湯になるのを見て、これは年貢の納め時だと悟った。最後に大地主の後家さんのところに盗みに入ろうと天井裏に潜んだが、美味しそうな料理が運ばれてくるのを見てうっとりとしていた。後家さんはゆうげの準備がととのうまで手鏡を見て髪をととのえていたが、急に女中を呼んで「今夜はお客があるのでもうひとり分のお膳を用意して」と言った。すっかり用意がととのうと、天井裏に向かって「伊佐どの、降りてきて一緒にお酒をいかがですか」というので、伊佐はびっくりして姿を現した。後家さんは「手鏡にうつった伊佐どのの姿を見て、一大決心をしてお客にこられたのだとわかりました」と言ったという。山形県。

0129 切れない柳
 お寺の棟木にするために大きな柳を切りたおす。柳があんまり太いので、途中まで切ると夜になる。夜があければこはいかに、切り口がすっかり閉じている。木挽きの嫁がおがくずを始末すると切り口がふさがることはなくなった。しかし切り倒された柳は重くて動かない。おりゅうという娘をつれてきて車の前に立たせると、ふしぎと柳は動き出す。

0130 ホトトギスの兄弟
 弟は、目の悪い兄のために、山芋を掘ってきた。自分は芋の尻尾を食べて、兄に美味しいところを食べさせた。病気のせいでこころの曲がった兄は、弟が自分にかくれてうまいものを食っていると思いこむ。兄は弟をぶちころし、腹をさばいて見てみると、弟の腹にあったのは芋の尻尾ばかり。兄はホトトギスになって「おととこいし」と鳴くようになった。

0131 猿と蟹
 猿と蟹の餅つき。うまそうな餅を独り占めしようと、猿は臼を崖から落とした。餅は途中の木にひっかかり、あとから降りていった蟹がみつけて大喜び。それを見た猿が崖の下から「俺にもよこせ」と叫ぶので、蟹は熱い餅を猿の顔に投げつけた。それからというもの猿の顔は赤くなった。
 

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二月のお話

0201 青砥の殿様
 青砥の殿様が川に一文銭を落とした。家来にお金をやって人を集めて一文銭のために川ざらい。たった一文のために大金を払うなんてと批判されると「川に落とした金は無駄になるが、人足に払った金はまわりまわって国をうるおす」と言った。

0202 王様の黒い手
 琉球の察度王はハブに咬まれて腕を失った。家臣が自分の腕を切り落として王に献上、接骨医に継がせてみると見事にくっついた。それから王の左手は色黒く毛深くなって他の部分とはまるで違うものになったという。

0203 鬼は内(一)
 いくら福を招いても、幸せはやってこない。こうなったらヤケッパチ。「鬼は内、福は外」と言いながら豆をまくと、鬼がひょっこり遊びに来たからさあ大変。貧乏でも気のいい夫婦は鬼をもてなし朝までどんちゃん騒ぎ。夜が明けて、鬼の帰ったそのあとに、ずっしり残った鬼の金棒。このことが評判になり、見物人がわんさわんさと押し寄せる。夫婦はお茶や団子を売って幸せに暮らしたとさ。

0204 鬼は内(二)
 「鬼は内」と叫んで豆をまいたら鬼が来た。もてなしのお礼にと、鬼がサイコロに化けて爺さん博打(ばくち)で大もうけ。その爺さんがとうとう死んで、閻魔様(えんまさま)に地獄へ落とされた。そこへいつかの鬼が現れて地獄の責め苦を免除してくれる。ちっとも苦しまない爺さんを、閻魔大王は地獄から追い出した。

関連 節分のはじまり
 鬼にさらわれた娘が鬼の子をつれて里に帰ってきた。両親は世間体を気にして鬼の子を殺し、竹の杭にさして家の角に立てた。鬼が娘を迎えに来ると、娘は炒り豆をまいて「この豆が芽をふいたら帰る」と言って鬼をおいはらった。

0205 稲と大豆
 昔、稲の穂には根っこのところからびっしりと実がついていた。ある日あまいしゃご(天邪鬼)が現れて稲をくれというが農夫はことわった。怒ったあまいしゃごは稲の穂をじぶんですぐって食べたので、今では先のほうにしか実がつかなくなった。また別の日にあまいしゃごは大豆をすぐりとろうとしたが、こちらはとげがあって痛いのでとれなかった。大豆は今でも根元から実る。熊本県のお話。

0206 蟹問答
 旅の坊さんが荒れ寺で泊まると大入道がやってきて問答をしかけてきた。「小足八足、大足二足、色紅にして両眼月日のごとし、これ何者」と言うので坊さんは「蟹」と答えて大入道を杖で打った。入道の正体は大蟹だった。

0207 鶴と亀
 亀と鶴の天竺行き。「亀くん、何があってもこの棒をはなしてはいけないよ」二匹は互いに棒をくわえて飛び立った。それを見ていた子供たちが大騒ぎ「亀が鶴にさらわれて行くぞ」と言うので、亀は我慢できなくなって「違うぞ!」と叫んだ。すると棒から口がはなれて亀は落ちて死んでしまった。

0208 運定め
 山の神様が話してた「男の子は杖一本、下女の娘は塩一升の運命」それを聞いた長者は自分の息子と下女の娘を夫婦にする約束をした。けれど成長した息子は下女の娘を嫌い、敷から追い出してしまう。たちまち家は没落して息子は杖一本でさまよう羽目に。

0209 三枚のお札
 どうしても栗拾いに行きたいという小僧さんに、和尚さんは三枚のお札を渡した。山で栗を拾っていると山姥(やまんば)が現れて小僧さんを捕まえた。隙を見て逃げ出す小僧さん。追いかけてくる山姥に、お札を一枚ずつ投げつけてなんとか寺までだどりつく。小僧を出せという山姥を、和尚さんが頓知を使って退治する。

0210 海幸山幸
 海の民のお兄さん、山の民の弟。互いの仕事を一日だけ交換しようと話し合った。ところが弟が兄の釣り針をなくしたからさあ大変。弟が困っていると、竜宮のお姫様が釣り針を見つけてくれる。「これを後ろ手にお兄さんに渡しなさい」その通りにすると、以来、兄の仕事はうまくいかなくなり、弟の一族は末永く栄えたという。

0211 獣が獲物になる理由
 神様が作った新しい国は、緑あふれる美しい土地だった。神様はそこに人間をすまわせたが、天の動物たちが下界に行きたいと騒ぎ出した。「よしわかった。お前たちもおりてゆくがいい。だが、下界では必ず人間の役にたつことをするのだぞ」こうして地上には動物たちがあふれ、人間は動物を捕って暮らすようになった。

0212 犬婿殿
 「にっくき大将の首をとった者には娘を嫁にやってもよい」どうしても勝てない戦争に悩み、殿様は思わず口走る。それを聞いた殿様の犬は、敵陣に忍び込んで見事に大将の首をとった。仕方なく娘を犬に与えると、犬は婚儀の後に姿をくらました。六日目に娘が心配して探しに行くと、尻に犬の尾がついた若者が「後一日待ってくれれば人間になれたのに」と言うのだった。

0213 黄金子猫
 孝行者のの弟が、母の墓前でみつけた子猫。糞のかわりに黄金をひりだす不思議な猫だった。意地悪な兄が子猫を借りるが、糞ばかりするので怒ってころしてしまった。弟は泣きながら猫の死体を埋めてやると、そこから黄金の木が生えてきて弟は大金持ちになった。

0214 梟の染め物屋
 その昔、鳥はみんな目立たない色をしていた。染め物屋のフクロウが赤や緑に染めてやったので、鳥たちは今のように美しい色になったという。ある日カラスがやってきて真っ白に染めてくれと頼んだが、フクロウは勘違いして黒く染めてしまった。それからカラスとフクロウは仲が悪くなり、肩身の狭いフクロウは暗くなってからこそこそ出歩くようになった。

0215 筑波山の由来
 ある日、天照大神が下界を見下ろすと、美しい平原があるのに気が付いた。そこで近くの山に舞いおりて、山のてっぺんで筑(琴の一種)を奏でていると、その音にひかれて海の波が押し寄せてきた。それでこの山を筑波山と呼ぶようになった。波がひいたあとにできた大きな湖は霞ヶ浦と呼ばれている。

0216 大男だらだら坊
 むかし、だらだら坊という巨人がいた。だらだら坊は筑波山に腰を下ろし、霞ヶ浦で足を洗い、太平洋にむかって立ち小便をした。そのため筑波山はまん中がへこんでいる。また、小便が流れたあとは今の桜川である。

0217 羊太夫
 むかし上野国に羊太夫という人がいた。群馬の領地から、奈良の都まで、足の速い家来をつれて、毎日馬で通っていた。ある日、家来のわきの下に翼が生えているのに気がついて抜いてみると、家来は急に走れなくなり、都に行けなくなってしまった。

0218 味噌買橋
 ある男の夢枕に仙人がたって「味噌買橋で良い話が聞ける」と言った。男が橋で待っていると、見知らぬ男がよってきて「俺も夢を見た。…村の…の家の木の根元を掘れば宝が出るそうだ」という。夢のとおりに掘ってみると、本当に宝がでてきて大もうけ。

0219 熊女房
 琉球の王様が海で遭難して無人島に流れ着いた。王様は島にすむ雌熊と結ばれて、息子をひとりもうけた。王様と息子は通りがかりの船に助けられて琉球に戻ったが、母熊は島に置き去りにされた。息子は大きくなって母をさがしに島へもどると、母熊は浜辺で骨になっていた。

0220 兎の目と耳と尻尾
 遊びに夢中な兎の子、うっかり穴に落っこちた。落ちたひょうしに土砂崩れ。大きな石が尻尾の上にドスーン。痛い痛いと泣いてるうちに、兎の目は赤くなってしまった。そこへ母親がやってきて耳をつかんでひっぱった。ところが尻尾に岩がのっている。母親が必死で耳をひっぱるので、兎の耳は長くなった。尻尾はちぎれて短くなった。

0221 でーらん坊
 上州にでーらん坊という大男がいた。浅間の山に鍋かけて、猪や鹿をぶちこんで食べていた。ある日、でーらん坊は荒船山を枕にして浅間山で足をあたためながら寝ていたが、噴火口にかけた鍋をけっとばしたからさあ大変。信州の温泉が塩辛いのは、鍋から流れた汁が地面に吸われたからである。

0222 宝化け
 旅の武士が空き家で夜を明かし。化け物が出てきたのでつかまえた。金・銀・銅と壷の精で、床下に埋められていると話して消えた。翌朝掘り返してみると空き家の下から宝のつまった壷が出てきた。

0223 たこ杉
 高尾山にはたこの足のように根を張った杉の木がある。山の上にお寺を建てようとしたとき、杉の根っこが林道をふさいでじゃまなので切り倒すことにした。翌朝、人足をつれて見に行くと、邪魔だった根がぐにゃりと曲がって道をあけていた。この杉の木は今も高尾山に残っている。

0224 グズの馬鹿
 グズの母親が死んだ。兄はグズに「坊さんを呼んでおいで。赤い衣を着てるからすぐわかる」と言った。グズが寺に行くと赤い衣の鶏が「コケタンコウ」と鳴いた。グズは「転けたんじゃない、死んだんじゃ」と怒って帰った。

0225 鬼の目玉
 道に迷った娘は山奥で大きな屋敷を見つけて宿を乞うた。主に禁じられた十三番目の部屋にあったのは鬼の目玉。屋敷の主は夜ごとに鬼に責められている。「お前の父親がうばった目玉をかえせ」娘が目玉を返すと、鬼は改心して去って行く。屋敷の主と娘は夫婦になる約束をするが、その直後に屋敷は消え、娘は山奥に取り残されていた。

0226 鬼の刀鍛冶
 「一夜で千丁の刀を打てる者に自慢の娘をやる」という刀鍛冶のもとに鬼が現れた。ものすごい勢いで刀を鍛える鬼を見て、父親は一計を案じて真夜中に鶏を鳴かせた。朝が来たと思いこんだ鬼は、逃げながら千丁目の刀を仕上げた。最後の刀には鬼神大王波平行安と銘打ってあった。

関連 小豆長光の名刀
 上杉謙信は領内一と評判の刀鍛冶である長光に「正宗や村正に負けない刀を」と命じて三年の猶予をあたえた。長光は三年かけて立派な刀を打ち、冬至の日に城へ持って上がろうとしたが、妻が「今日は冬至ですから」というので、殿様と一緒に食べようと小豆とカボチャを持っていくことにした。その頃、殿様は城の外を散策していたが、スパッと半分に切れた小豆が点々と落ちて城に続いてるのに気が付いた。城に帰ってみると長光が刀を持って参上していたので、殿様は大変喜んで、家来に小豆を持ってこさせ、長光の刀にふりかけた。すると刃にあたった小豆がすべて真っ二つに切れてしまった。長光は名字帯刀を許されて、小豆長光と呼ばれるようになった。山形県。

関連 正宗と村正
 正宗は正剣、村正は妖剣として評判の高い名刀である。剣を川の中にたてて切れ味を試したところ、村正は杉の丸太を流れてくるままにスパスパと切り裂き、正宗は丸太のほうからよけて流れてきたという。小豆長光の伝説のおまけとしてついていた話。

0227 猫女房
 長者どんに捨てられた子猫は貧乏な若者に拾われた。ある日子猫は突然口をきいて、お伊勢さんにおまいりしたいので暇をくれという。しばらくして男のもとに美しい娘が訪ねてきて「自分はあの時の猫でございます」と言った。

0228 打出の小槌
 楽して大金持ちになりたいと怠け者の夫は大黒様に祈願した。何でもでてくる打ち出の小槌、自慢げに持ち帰ってはみたものの、妻は笑って信じない。怒った夫は小槌をふりあげて「この鼻くそめ」と叫んでしまう。妻は鼻くそになって小川を流れて行ってしまった。

0229 きりなし話
 ある川のほとりにトチノキが立っていた。実が鈴なりになって、ひとつの実がぽとんと落ちて流れてゆく。また落ちて流れて行く。また落ちて流れて行く。また落ちて流れて行く。また落ちて…(以下エンドレス)
 

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三月のお話

0301 花咲爺
 裏の畑で犬が鳴く。正直爺さんが掘ってみると宝物が。隣の爺さんが犬を借りてマネをするとゴミばかり、怒って犬をぶち殺す。犬の墓から木がはえて、その木で作った臼からは、餅をつくたびに小判が出る。隣の爺さんが臼を借りるが小判は出ない。怒って臼を焼いてしまった。正直爺さんが灰を持ち帰り、枯れ木にまくと花盛り。殿様から褒美をもらう。

0302 絵姿女房
 妻があんまり美しいので、夫は見とれて仕事をしない。妻は自分の似姿を書いて夫に持たせるが、絵は風に飛ばされて殿様のところに。殿様は絵姿に一目惚れ。むりやり誘拐して自分の奥方に。下にもおかない待遇で迎えるが奥方はにこりとも笑わない。夫が行商人に化けて城にやってくると、奥方が初めてにっこり笑う。調子にのった殿様は、行商人と着物を交換する。そこで奥方は人を呼んで行商人を捕らえさせ、夫と城で暮らす。

0303 瓜子姫
 川上から流れてきた大きな売りから女の子が生まれた。年頃になった娘は庄屋の息子と婚礼が決まる。そこへ天邪鬼がやってきて、瓜子姫をだまして高い木の上から突き落とす。姫の皮をかぶった天邪鬼は何くわぬ顔で庄屋さんにお嫁入り。婚礼の前に顔を洗うと化けの皮がはがれて正体がばれる。

号外 赤城小沼の主
 群馬県赤堀村の道元という長者の娘が「赤城小沼の水を飲みたい」というので沼につれていくと、娘は長者夫婦の制止をふりきって沼に身をおどらせた。まもなく水面から娘が姿を現したが、下半身が龍に変化していた。娘は「わたしはもともと赤城山の竜神の娘として生まれるはずの者でした」と言って沼に沈んでいった。これが三月三日の節句の出来事だったというので、毎年その日になるとお盆に菱餅をのせて沼に浮かべる。お盆はひとりでに沼の真ん中まで流れて行きくるくる回って沈むという。また、道元の家には今でも娘の体から落ちた龍の鱗が二、三枚残っているという。

関連 井の頭の宇賀神像
 北沢の松原 (世田谷区) に子どものいない長者の夫婦があり。弁財天に願をかけたところ女の子が生れた。この娘には首筋に三枚のうろこがあった。娘が十六歳になった頃、親子で弁財天にお参りに行くと、娘は突然、自分が池の主の化身であると告白し、池の中に飛び込むと白蛇に姿を変えて消えて行った。夫婦は宇賀神像を作って娘の供養とした。

0304 猿婿入り
 「畑仕事を手伝ってくれたら娘を嫁にやってもいい」それを聞いた猿は広い畑をあっという間に耕した。長女も次女も猿の嫁などイヤだというし、困り果てた父親に、末の娘が嫁に行くと言い出した。猿に嫁いで一年がたち、娘は猿と里帰りすることになった。途中でみつけた美しい花を、土産にしようと猿が木にのぼる。娘がもっと上、もっと上の…とねだるので、とうとう枝が折れて猿はまっさかさまに谷底へ。

0305 舌切雀
 意地悪な婆さんに舌を切られた雀を追って、お爺さんは雀のお宿にやってきた。もらった小つづらの中身は宝物。意地悪な婆さんも雀のお宿にやってきて、大きなつづらをもらって帰る。箱をあけてびっくり。中から出てきたのは毒虫とお化けだった。

0306 おしらさま
 「畜生の分際で娘をたぶらかすとは何事ぞ」長者どのは娘とねんごろになった愛馬を殺して皮をはいだ。すると突然、馬の皮が娘を包んでどこへともなく飛びさった。翌年の三月、空から白い虫と黒い虫が降ってきた。桑の葉を与えて育てると繭になり、繭からは美しい糸がとれた。

類話 金色姫(こんじきひめ)
 姫は北天竺の王女だったが継母に憎まれて殺されそうになる。姫の命を救うため、父王は桑の大木を抜いて作った筒に姫をいれて海に流した。姫は日本に流れ着くが、重い病にかかって死に、その棺の中にカイコと呼ばれる芋虫が生まれた。茨城県のお話。

類話 衣笠姫(きぬがさひめ)
 衣笠姫は継母にいじめられて馬小屋に閉じ込められた。乳母が助けだしたものの馬に蹴られて生死の境をさまよった。しばらくして元気になった姫を、継母は家来に命じて竹やぶに捨てた。乳母が探して連れ戻したものの、ショックで死んだようになってしまった。三度元気をとりもどした姫を、継母はたらい舟に乗せて川に流した。このときも乳母に助けられた。そしてまた元気をとりもどした姫を、継母は庭に穴を掘って埋めてしまった。このときばかりは乳母の救いも間に合わなかった。姫が埋められたところには黒い虫がわき、桑の葉を与えて育てると糸を吐いて白い繭を作った。群馬県甘楽郡のお話。

類話 お蝶々、め蝶々
 身分違いの若者に恋をしたお姫様。ふたりの恋が噂になって王様の耳に入ってしまった。若者の父親はぶしつけな息子をわが手で殺し、その首を王様にささげてお詫びした。他人の息子を死なせた罪を恥じて、王様は姫君をウツボ船に乗せて海に流した。若者の首を抱いて漂流している姫君を海賊が見つけて斬り殺した。ふたりの首は見知らぬ島に捨てられて、美しい繭をつくる虫になった。

0307 朝日長者と夕日長者
 朝日長者の息子は継母にうとまれて家を出る。夕日長者の家で下男として働いていると、実母の霊が現れ不思議な扇をくれる。扇の力で立派な着物と馬を出し、夕日長者の娘を嫁にして幸せに暮らした。

0308 嘘をつくなら
 「お前のような嘘つきは生かしておいてはためにならん」怒った旦那は使用人に命じて小僧さんを川に捨てることにした。小僧は、見事な嘘と頓知で通りがかりの行商人をだまして自分の代わりに川に投げ込んだ。屋敷に帰り「一度は死んで竜宮へ言ったが石臼を買いにもどってきた」と嘘をつく。竜宮見たさに小僧さんについてきた旦那をたくみにだまして川に突き落とす。「旦那はおらにあとをまかせて竜宮へ行った」とうそをついて旦那の家をのっとってしまう。

0309 竜宮女房
 貧乏な花売りが竜宮に招かれる。竜神の娘を嫁にして帰ってくるが、美しい嫁に目を付けた殿さまは無理難題をつきつけて奪い取ろうとする。嫁は不思議な力で殿様をやりこめて、ついには城を奪って夫とともに幸せに暮らした。

0310 天竺へ行った若者
 腹を減らした老人に弁当をやると「天竺の寺へゆけ。途中で会う人の願いを聞いてやれ」という。若者が天竺に行くと弁当をやった老人が現れて、旅の途中で出会った人の願いを叶える方法を教えてくれる。人々の願いをかなえて村へ帰った若者は、長者の願いもかなえて娘と結婚する。

0311 食わず女房
 無駄飯を食う嫁なんかいらん。ものを食わん嫁ならとってもいい。そういう男のもとにものを食わない女が嫁いできた。ところがいつもより米の減りが早い。仕事へ行くふりをして様子を見ていると、嫁は髪の毛をほどいて頭の上の大きな口を出し、大きな釜いっぱいの飯をたいらげた。見られていることに気づいた嫁は化け物の本性を出し、男を背負いカゴに入れて山へ向かう。男は道ばたの木につかまって助かった。

0312 鬼が悪さをするわけ
 昔、鬼は悪さをしなかった。あるとき村の娘に恋をして、ぜひ嫁にほしいと頼みに行くと、父親が鬼を嫌って娘に会わせなかった。鬼は怒って娘を誘拐したが、村人がよってたかって鬼から娘をとりかえした。それからというもの、鬼は人間を恨んで悪さをするようになった。

0313 命のろうそく
 病気の兄を助けてくださいと祈る弟に、神さまは天から梯子をおろして「命の火をさがせ」と言った。天にはろうそくがたくさんあって、ひとつひとつに名前が書いてある。倒れて消えそうだった兄のろうそくを立てなおすと、うそのように病気が治り、兄弟ともども健康で長生きしたという。

0314 水乞い鳥
 馬喰の妻は横着もので、夫が「馬に水をやってくれ」と言っても返事だけして働かない。おかげで馬は干上がって死んでしまった。妻は死ぬと真っ赤な鳥になった。のどがかわいて水辺におりてきても、水にうつった自分の姿があんまり赤いので火事だと思って水を飲めない。いつも空に向かって鳴きながら、のどをうるおす雨が降るのを待っている。

0315 うぐいすの里
 道に迷った男は山奥で立派な屋敷を見つけた。一夜の宿を乞うと、主は喜んで屋敷に招き入れ、何をして遊んでいてもいいが、奥の座敷にある引き出しを開けてはいけないと言われた。男が引き出しをあけてみるとホーホケキョという声とともに屋敷は消えてしまった。

0316 魚の腹から金が出た話
 ある人が唐に留学した。優秀な成績をみとめられ王様から金塊をたまわるが、船の中で強盗にあうのが恐くて海に捨ててしまった。損はしたが命は無事だったと喜んで、大きな魚を買ってお祝いすることにした。魚の腹をさばいてみると、海で捨てた金塊が転がり出て、めでたしめでたし。

0317 怠け者くらべ
 怠け者の息子が旅に出た。だんだん腹がへってきたが、風呂敷づつみを開くのが面倒なので我慢して歩いていた。口をあけて歩いている人に出会い「腹が減っているならにぎりめしをやるから風呂敷をといてくれろ」と頼むと、その人は「腹はへっとらん。ゆるんだ笠の紐を結びなおすのが面倒で口で張っておるだけじゃ」と言った。

0318 浅草のり
 平将門の従兄弟で平公雅という人の夢に浅草の観音様が現れて「浅草沖でとれる青・赤・黒の海草を食べれば病気知らず」と言った。観音様の法(のり、教え)だから「浅草のり」だと評判になり、今でも東京の名物になっている。

0319 偽本尊
 いたずら者の狐が村人に追われて寺に逃げ込んだ。見るとご本尊様が二体ある。知恵のある村人が「ここの本尊様は線香をあげるとうなずくのだ」と言って線香に火をつけた。狐が化けたご本尊様がうなずいたので正体がばれ、狐は村人にこっぴどく叱られた。二度と悪さはしないと約束して山奥に逃げて行った。

0320 団子婿
 ある男は出先で団子を食べた。家に帰ったらおっかあに言って作ってもらおうと思って、「たんごだんご」と言いながら帰った。途中に小川があったので「よっこいしょ」と飛び越したら、いつのまにか「だんご」は「よっこいしょ」になってしまう。妻に「よっこいしょ」を作れと言うと、訳のわからないことを言うなと殴られ、団子のようなコブが出来た。

0321 ぼたもち蛙
 けちん坊のお姑さん。ぼたもちを棚に隠し「嫁が見たら蛙になれ」と言って用足しに出かけた。それを見たお嫁さん、ぼたもちを食べて、棚に蛙をいれておいた。そこへお姑さんがもどってきて、棚をあけると蛙がぴょんと飛び出した。

0322 飴は毒
 甘いもの好きの和尚さんは、小僧さんに水飴をやりたくない。「これは大人がなめると薬になるが、子供には強くて毒だからね」と言って外出した。小僧さんは大事な掛け軸をわざと破いて水飴をなめ「死んでおわびしようと毒をなめましたが死ねません」と言って泣いてみせた。

関連 餅は本尊様
 和尚の留守にボタモチを食べた小僧。和尚が叱ると「食べたのは本尊様」と言い訳をする。和尚が本尊様を棒でたたくと「くわんくわん(食わん食わん)」と音がしたが、小僧は責め方が足りないといって本尊様を釜茹でにした。本尊様は煮立って「くったくった(食った食った)」と白状した。

0323 太郎平婆の尻尾
 ある男が辻堂で雨宿りをしていると格子戸の隙間から獣の尻尾が出てきたので切り取った。町に帰ると太郎平の婆さんが痔が傷むといって寝込んでいた。もしやと思い尻尾を見せると、婆さんと思ったのは化け猫で、尻尾を奪って逃げていった。

0324 百足退治
 道にど真ん中に大蛇がいる。旅の武士はおびえる様子もなくまたいで通った。すると竜王が現れて「勇敢なそなたに竜宮を荒らす百足退治をたのみたい」というのだった。武士は巨大な百足と戦い、自分の唾をつけた矢でとどめを刺した。

0325 江戸蛙と京蛙
 江戸の蛙は京が見たくて旅立った。京の蛙も江戸を見たくて旅立った。途中で出会った二匹の蛙はお国自慢に花を咲かせ、後足で立って互いの行く先を眺めたが、目玉が背中についているのを忘れて自分の故郷を見てしまう。「江戸も京都も同じじゃないか」ガッカリした蛙は国へ帰ってしまった。

0326 桑名屋徳蔵
 徳蔵は大阪の名船頭。北前船を操らせたら天下一と言われていた。ある雨の夜、徳蔵が船を出すと海坊主が現れて「この世で一番恐ろしいのはなんだ」と言う。徳蔵が「鼻の下一寸四方が一番恐い」と答えると海坊主は消えてしまった。

0327 鰐鮫に飲まれた医者の話
 海の上で船が動かなくなった。船乗りたちがおびえながら「誰かが鰐鮫(わにざめ)に魅入られたのだ」という。そこで乗客がひとりずつ手ぬぐいを投げると、医者の手ぬぐいだけが海に沈んだ。魅入られたのは自分かと、医者は海へ飛び込んで鰐鮫に食われたが、腹の中で苦い薬をぶちまけたのでさあ大変。鰐鮫は医者を吐き出して逃げていった。

0328 猫と猟師
 年をへた猫は化けると言われている。ある日、猟師は長年かわいがっている猫の前で弾丸を数えて猟に出た。山で化け物に出会ったので、鉄砲で撃ったが死ななかった。用意した弾を使い切って、もやはこれまでかと言うとき、懐から守り弾を出して撃つと化け物は死んだ。化け物の正体は猟師の猫で、死体のそばに茶釜の蓋が落ちていた。蓋で弾をよけたのだろうが、守り弾を数にいれず油断したのだろう。

0329 鉄人間
 強い子を産みたいと思って、母親は鉛を食べた。そうして生まれて来た子供は全身が鉄で出来ていた。その子は長じて武将になるが、首だけは弱く流れ矢にあたって死んでしまった。このままでは戦に負けてしまう。死体を戸板につけて立てると、敵は武将が不死身であると思って逃げてしまった。

0330 抜け首病
 ある夜、住職は寝苦しくて目をさました。見ると胸の上に生首が乗っている。肝の太い住職は、首を手で払い落として寝てしまった。翌朝、寺の下男がお詫びにきたので、わけを聞くと「自分は抜け首病で、住職に叱られたのを恨んで首が抜けたのです」と話した。

0331 相撲は命の洗濯
 「お前たち三人は明日までの命じゃ」占い師にそう宣告され、途方に暮れる三人。どうせ死んでしまうならやりたいことを思いっきりやろうと、ひとりは美味しいものを食べているうちに死んだ。もうひとりは芝居を見ているうちに死んだ。最後のひとりは相撲を見に行って、夢中で応援しているうちに時を忘れて死なずに済んだ。以来、相撲は命の洗濯と言われるようになった。
 

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四月のお話

号外 カスベとカラカイ
 山形の殿様から庄内の殿様のところへ見たこともない魚が届いた。町の物知りが「それはカスベでございます」と申し上げると、庄内の殿様は喜んで褒美をとらせた。しかし、一部の家来がねたんで、物知りを失脚させようと考えた。魚は十日もするとカラカラに乾いて別の魚のようになってしまったので、もう一度物知りを呼んで名をたずねると「それはカラカイでございます」との返事。家来たちは「さてはいい間違いで褒美をとったな」と物知りを打ち首にすることにした。処刑の前に家族と面会を許された物知りは「これからはイカを干したのをスルメと言ってはならん、マグロの脂ののったところをトロと言ってはならん」と家族に繰り返し言うので、役人たちが不信に思い奉行に言上、奉行が殿様のお耳に入れると、殿様は江戸から学者を招いて意見を聞いた。学者は「これは生の時はカスベといい、乾燥させたものをカラカイと申します」というので町の物知りは許され、お城のまかない方に取り立てられた。

0401 ほらふき比べ
 ほらふき男がほらふき村にやってきて、ほらふき比べをしようと言った。子供が出てきたので親御さんはとたずねると「父は富士山につっかえ棒をしに、母は琵琶湖の穴に栓をしに行った」という。子供ですらこれでは歯がたたぬと、ほらふきは逃げ出した。

0402 雁取爺
 川でひろった木の根から生まれた犬は鹿をとるのが上手。悪い爺が犬を借りるが鹿はとれず怒って犬を殺してしまう。犬の墓から生えてきた木に銭が成るが、悪い爺が木を借りて植えると糞が成った。怒った爺は木を焼いてしまう。良い爺が木の灰をまくと雁が落ちてくる。悪い爺は灰が自分の目に入って屋根から落ちた。

0403 孝行息子と鏡
 あるところに親孝行な男がいた。殿様が褒美をやるというので「死んだ父に会いたい」と言う。殿様は「誰にも見せてはならんぞ」と言って男に鏡を与えた。男は鏡で自分の顔を見て父親と思い喜ぶが、妻は夫の様子をいぶかしく思ってこっそり鏡を見てしまう。自分の顔を見て夫が女を囲っていると思いこんで激怒していると、尼さんがやってきて鏡を見て「安心なさい、女は反省して尼になりましたよ」と。

0404 分別才兵衛
 才兵衛は分別(知恵)があると評判だったが、ひょんなことから庄屋を殴り殺してしまった。死体を賭博所の入り口に立てて、庄屋の声色で「若いもんが昼から博打か!」と叫ぶと若い衆が出てきて庄屋を殴り倒した。持ち前の知恵を駆使して罪を他人になすりつけ、ついには庄屋の家から礼金までせしめる。

0405 大蛇を鎮めたお経
 長者の娘が人身御供に選ばれた。貧しい娘は病気の母に薬をくれることを条件に身代わりをかって出る。死を覚悟した娘がお経をあげると大蛇は成仏して消え、娘は長者からお礼をもらい、母の病気も癒え、幸せに暮らした。

0406 竜宮の馬
 浜に打ち上げられた亀を助けると、竜宮からのお使いが金をひる馬をくれた。隣の爺さんに馬を貸すと、馬は無理をさせられて死んでしまう。馬の墓から生えた大木で作った臼は、搗くと米がわき出す不思議の臼だったが、隣の爺さんが搗くと糠がわいた。

0407 頭山
 大男の頭の上にカラスが糞をした。すると頭の上に桜の木がはえて、花見の客が訪れた。わずらわしくなって木を抜くと池になり釣り人が訪れた。わずらわしくなった大男は自分の頭の池に身を投げて死んだ。

0408 ミルクとサーカ
 ミルクとサーカは各々が一輪ずつ蓮のつぼみを用意して先に花が咲いた方が好きな土地を取ることにした。ミルクが目を閉じて、サーカは薄目をあけて待っていると、ミルクの花が先に咲いたので、サーカはこっそり花をすり替えて「お前たちは見えないところへ行け」と言う。ミルクは喜んで「ここから見えない土地すべてをくれるんですね」と言った。

0409 沢庵風呂
 馬鹿な婿どのは熱いみそ汁を慌てて飲んで火傷をする。お嫁さんが「沢庵をいれたら冷めますよ」と教える。婿どのは熱い風呂にあわてて入って火傷した「おーい、かかや。風呂が熱いで沢庵をいれてくれ」

0410 正直者と仏像
 貧乏な足軽が屑屋から買い取った仏像には小判が隠されていた。売り主は落ちぶれた浪人で、訳を話して小判を返し代わりに茶碗をもらった。茶碗の話が殿様の耳に入り、足軽は出世、浪人もとりたてられて幸せになった。

0411 お椀淵
 ある村の近くにお椀淵と呼ばれる沼がある。冠婚葬祭の前の日に紙にお客の数を書いて沼に浮かべると翌日には必要な数だけお椀が浮いているという。使ったら返すのが決まりだったが、ある男が返さなかったので、二度と椀が浮くことはなかった。

0412 かなめ石
 日本列島は大きなナマズの背中の上にあると言われている。ナマズが暴れると大地震が来るので、鹿島の神が巨大な石柱を地面にさしてナマズの動きを封じている。

0413 甚五郎と桜
 将軍様が江戸城内のもみじ山でお花見をすることになったが、女中があやまって桜の枝を折ってしまった。そこへ大工の左甚五郎が通りがかり、枝に細工してちょいとすげると折れた枝は元通りくっついた。

0414 甚五郎の龍
 上野寛永寺の東照宮には四体の龍のいる鐘楼があった。そのうち一体は左甚五郎の作で、毎夜動き出して不忍池で水をのむので朝になると濡れている。後の時代に龍が出歩くのを恐れた人が、真鍮の鋲で打ち付けたので動けなくなった。

0415 乞食の小判
 貧乏で飢え死にしかけた男の夢枕に大黒様が立って、小判がほしくば橋の下の乞食に借りろと言った。男は無一文の乞食から三百両借りたと証文を書き、自分の家のまわりを探すと小判が出てきた。元手にして儲け、乞食にも借金を返した。

0416 ヤマタノオロチ
 スサノオの神がある村にくると、娘が人身御供にされると泣いていた。神様は村人に酒を用意させ、娘の身代わりになって待っていた。ヤマタノオロチが現れて酒を飲み始めたので頭を切り落として退治した。オロチの体を切り裂くと、美しい剣が出てきた。

0417 地震をおこす大魚
 国造りの神様は眠っている魚の上に大地を造ってしまったので、魚が体をよじると地震になる。北海道アイヌは地震がくると囲炉裏に火箸を刺して「暴れると箸が刺さるぞ」と魚を脅す。

0418 蟹と蛙の競争
 蟹が蛙をのせて走った。それなりに速かった。今度は蛙が蟹をのせて「目をまわさないよう上を見てろ」と言った。蟹が上を見ている、と雲が流れてゆくのですごい速さだと思った。けれど、ふとまわりを見ると蛙は一歩も動いていない。だまされたと知って怒った蟹は蛙の尻をちょん切った。

0419 幽霊にみいられた小坊主
 男前の小坊主が女幽霊に魅入られた。幽霊はなんとか小坊主をものにしようと「宝ものをやるから寺から出ておいでよ」と言った。宝の使い方を聞くと幽霊は言いにくそうに「憎いヤツを叩けば殺せる」というので、小坊主は宝で幽霊を叩き殺した。

0420 ひとつ目小僧
 ある町医者が往診をたのまれて出かけると、ひとつ目の小僧がお茶を運んできたのでビックリ。家のあるじに話すと「こんな顔でしたか」と顔をひとなで、ひとつ目の入道に。医者はあわてて逃げだし、ひと月も寝込んでしまった。

0421 猿地蔵
 あぜで寝ていたじいさんを地蔵と思いこんだ猿は「猿の金玉ぬらすとも地蔵の金玉ぬらすまい」と歌いながら、じいさんを川向こうのお堂に祀り宝物を供えて帰った。隣のじいさんがマネをしたが猿の歌に笑ってしまったので川にうち捨てられた。

0422 くさなぎの剣
 ヤマトタケルは父の命令で関東に蝦夷を退けに来たが、相模の国造にだまされて草原に追いつめられ火攻めにされたタケルは剣で草をなぎはらい難を逃れたので、この剣をくさなぎの剣という。

0423 木更津の由来・おとたちばなひめ
 ヤマトタケルは三浦半島の東海岸で海を見て「またいで渡れそうな小さな海だ」と笑った。それが海の神の怒りをかい、嵐で船が進めなくなってしまった。タケルの妻オトタチバナヒメが海に身を投げると嵐が静まった。上総国に上陸したタケルが妻をしのんで立ち去ろうとしないので、この土地を「君去らず」と呼ぶようになった。今の木更津のことである。

0424 「あずま」のはじまり
 妻に先立たれたヤマトタケルのミコトは沈みがちになりため息をついては「あづまはや」とつぶやいた。そのためこの地を「あずまの国」と呼ぶようになった。

0425 ききみみ頭巾
 心の優しいお爺さんに神様がくれた不思議な頭巾。かぶると鳥や動物の言葉がわかるようになる。動物たちに教えられて長者どのの娘の病気をなおしてやり、お爺さんはご褒美をもらって幸せになった。

0426 大男の山造り
 駿河の大男と上野の大男が山を造る競争をした。上野男は、あとひともっこで駿河男に勝てるというところで朝になり、がっかりして落とした土はひともっこ山になった。駿河男の山は富士山でこの時使った土は今の甲府盆地にあったもの。上野男の山は榛名山で、彼が土を掘ったあとは榛名湖になった。

0427 天狗に貸した手
 ある寺に天狗が現れて和尚に手を貸してくれと言った。和尚がうんと返事をすると、天狗は礼を言って立ち去った。それから和尚の腕は短くなったが三十日たつと天狗がもどってきて腕を返してくれた。お礼にといって火伏せの守り札を置いて行った。

0428 とっつくひっつく
 山で「とっつくひっつく」の声がする。良いじいさんがどっちでもいいぞと返事をすると小判が落ちてきてひっついた。悪いじいさんがマネすると松ヤニがひっついた。家へ帰って溶かそうとし火を近づけたら燃え上がって大やけどをした。

0429 鬼と山伏
 村を荒らす鬼を追っ払うために、山伏は鬼を食事に招いた。鬼の皿には白い石と竹を輪切りにしたものをのせ、自分の皿には豆腐とタケノコをのせた。鬼は石をかじって固さにおどろき、山伏が同じものを平気で食べているのに恐れをなし山へ帰っていった。

0430 しわぶき婆の石
 川越市の広済寺にしわぶき(咳)婆の石というのがあった。咳がとまらない時に炒豆、あられ餅、お茶をそなえて頼むと咳が止まるといわれていた。江戸築地の稲葉対馬守の屋敷には爺の石があり、先に婆に参ってから爺にお参りすればより効くと言われていた。
 

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五月のお話

0501 金太郎
 足柄山の山姥は雷に打たれて身ごもった。生まれた子は金太郎と名づけられ、山の獣たちと相撲を取り、熊にまたがって馬の稽古をして育ったそこへ源頼光が通りがかり山姥から金太郎をもらいうけ都に連れ帰った。金太郎は長じて坂田金時になった。

0502 桃太郎
 お婆さんが川で拾った大きな桃から男の子が生まれ桃太郎と名づける。桃太郎は犬・猿・雉に黍団子を与えて家来にし、鬼ヶ島で悪い鬼を退治して宝を持ち帰る。

0503 桃太郎(岡山版)
 婆さんが川でひろった桃から生まれた男の子。ある日村の青年たちと山に木を切りに行くが、桃太郎は素手で大木を引き抜いて村に持ち帰った。それを見た爺さんはじっくり、婆さんはばっくり、それでおしまい。

0504 桃太郎(東北版)
 子のない夫婦がひろった桃が翌朝見ると赤ん坊に変わっていた。大きくなった桃太郎は鬼ヶ島に渡り、鬼に黍団子をあたえて眠らせ、そのすきにお姫さまをさらって逃げる。鬼は火の車で追ってくるが桃太郎は海に出て逃れる。お姫さまは殿さまの娘だったので褒美をもらって幸せに暮らした。

0505 菖蒲湯
 ある娘のところに男が通ってくる。男のあとをつけてみると正体は死にかけた蛇だった。蛇が「あの娘が菖蒲湯に入らなければいいが」というので、娘が菖蒲湯につかると腹から蛇の子がダラダラと落ちた。それから魔よけの菖蒲湯に入るようになった。

関連 蛇婿入り
 田んぼに水を引いてもらうかわりに、大蛇に娘を嫁に差し出すことになった。蛇の子をはらんだ娘を祈祷師に見せると「菖蒲湯につかれ」とのお告げがあった。そのとおりにすると蛇の子が下りてことなきをえた。

関連 鬼と若者
 若い狩人が鬼と出会い、あわててヨモギの茂みに逃げ込むと、鬼は「火が燃えている」といって近づかなかった。菖蒲の茂みに逃げ込むと「剣が生えている」といって近づかなかった。若者は菖蒲を手にもって家まで帰ったが、鬼は「剣が歩いている」と恐れて逃げていってしまった。

関連 河童とちまき
 ちまきの巻き方には男結びとひっかけ結びがある。ある村で端午の節句に男の子が河童にとられることになっていた。母親は息子に男結びとひっかけ結びのちまきをもたせて「河童が出てきたら男結びのほうをわたすんだよ」と、教えた。果たして河童が現れて、男の子と並んでちまきを食べることになった。男の子のちまきはひっかけ結びなので紐をひけばほどけてしまう。けれど河童のちまきは男結びなので、紐を引けば引くほどかたくしまるのだった。おかげで河童はちまきをほどくことができず、河童は男の子をあきらめて川へ帰ってしまった。それ以来、このあたりの村では端午の節句に麦わら人形を作り、男結びのちまきを抱かせて川に流すようになった。鹿児島県大隈地方のお話。

0506 長芋と鬼
 人間をとって食おうと人里に、おりてきたのは真っ赤な大鬼。ある家に押し入ると、家の者が夕飯の長芋をすり下ろしているのだった。それを見て鬼は驚いた。芋と角を見間違え、「この村では鬼の角をすり下ろしておる。こんな力自慢がいるんじゃかなわない」と山へ帰って行ったとさ。

0507 大岡裁き(一)子争い
 ふたりの女がひとりの子供を自分の子と主張する。大岡越前が「子供を引き合い、勝ったほうを母親とする」と言うので互いに子の手を引くが、子供が痛がって泣くので一方の女が手を放した。そこで大岡様は「子を思う者が母」と手を放した女を母とした。

0508 大岡裁き(二)縛られ地蔵
 ある男が昼寝の間に白木綿を盗まれた。大岡越前は現場にあった石地蔵をしばった。集まってきた人々に「それほど地蔵が心配ならば、みなで一反ずつ白木綿を男に寄付してやるがいい」と言い、集めた白木綿から盗品をみつけ、犯人も探し当てた。

0509 鬼の面とお福の面
 娘は鬼の面とお福の面を持って奉公に出るが、意地悪な奉公人がお福の面を隠してしまう。母親に何かあったのだと思った娘が鬼の面を抱えて真夜中に山道を行くと山賊がいて、娘の鬼の面を見て逃げてゆく。山賊の宝を持って家に帰った娘は母と幸せに暮らした。

0510 年定め
 動物たちをあつめて神様が年定め。馬も犬も人にも三十年と決めたら、馬は二十年でいいという。犬も十年でたくさんです。人間だけは三十年では短いというので、馬と犬の分を足して六十年にしてやった。それから人間は三十歳になると馬のように働き、四十歳になると犬のように働かなくてはならなくなった。

0511 后さがし
 ある日神様が帝の夢枕に立ち「この絵とそっくりで、この木靴がピッタリの娘を后にせよ」と言った。帝は「見れば幸せになる絵」と称して人を集めたが、ひとり仕事をやめない娘を見て絵にソックリなのに気づいた。靴をはかせてみるとピッタリだった。

0512 しわ深いおばあさん
 しわだらけの老婆がいて、嫁をいびってばかりいた。ある日お嫁さんがかけ糸を鍋で煮ているのを嫁憎さのあまりそうめんだと思いこんで、嫁がかまどを離れたすきに醤油をかけて食べてしまった。老婆には歯が一本しかなく、すすりこんだので味がわからなかったのである。ところがたった一本の歯に糸がからまって、どうしても切れないのでやっと糸だと気がついた。嫁がもどってきてかけ糸がないのを不思議に思うが「おまえがかまどを放り出してよそへ行くから盗人にでもやられたんだろうさ」と老婆は冷たく返事をする。翌日、老婆が雪隠へ行くと、昨日の糸が尻から出てきた。糸のはしはまだ歯にからまっている。仕方がないので尻から糸を引いて歯とともに抜いてしまおうとするが、歯は抜けず、老婆の首が体のしわの中にめり込んだ。尻の穴からは歯がのぞいていたという。熊本県熊本市のお話。

0513 蝶化身
 旅人が一夜の宿にしようとあばら屋の戸をあけると何千何万という蝶が飛び去って行った。あとには人骨と女の長い髪の毛が残っている。村人に話すと、その家には蝶の好きな女がいて、死ぬと体にウジがわき蝶になったのだと話してくれた。

0514 絵に描いた猫
 猫の絵がうまい男がいて、一日中働きもせず猫ばかり描いていた。そのうち親からも勘当され、着の身着のまま歩いていると、ネズミの大群に両親を食い殺された娘の住む家を見つけた。ネズミは男が描いた猫の絵に食われて全滅した。

0515 ドウモコウモ
 ドウモとコウモは腕のいい外科医だった。ある日ふたりは腕比べをしようと、互いの腕を切っては縫い合わせて元通りにつないだ。次は首をつなげなおそうと同時に互いの首を切り落とした。同時に首が飛んだので、これではドウモコウモならん。

0516 長い名前
 一ちょうぎり、二ちょうぎり、ちょうないちょうざぶろう、ゴロゴロ山のごろべえさく、あっち山、こっち山、とりのとっかさたてえぼし、カンカラカンのかんざぶろう、という名前の子供が井戸に落ちて、友達が知らせに来たが、名前を告げているうちに溺れて死んだ。

0517 骨粉の伝来
 鹿児島県の枕崎に松崎という者がいた。四、五百年前に遭難した異国の船を助けたところ、船には牛の骨がどっさり積まれていた。みぶりてぶりで使い道を聞くと、粉にして畑にまくのだと言う。松崎の田んぼで使ってみたところ稲がよく実るようになった。松崎家は骨粉肥料を売りさばいて栄えたという。

0518 からす鍬
 男が畑仕事を終えて帰ろうとすると、カラスが「くわ、くわ」と鳴いた。家に帰り着くとホトトギスが「とうてこー、とうてこー」と鳴くので鍬を忘れたことに気づき、もどろうとすると牛が「もーない、もーない」と鳴いた。

0519 弘法の井戸
 能登国の粟津村井の口は、泉から遠く飲み水に困っていた。ある老婆が水を運んでいると僧侶に水を求められ快く応じた。僧侶はお礼だといって杖で地面を叩いた。するとその場から泉がわき出し、村で水に困ることがなくなった。僧侶の正体は弘法大師。

0520 井戸のない村
 能登国の打越という村では川から遠く水に困っていた。ある日、旅の僧侶が水を求めたが、水を惜しんだ老婆が洗濯に使ったきたない水をすすめた。この村で井戸をほっても水が出ないのはこの時の罰があたったのだと言われている。

0521 エツ漁のはじまり
 弘法大師が川を渡ろう難儀していると、若い船頭が船で渡してくれた。大師はお礼にといって葦の葉をとって川に投げるとエツという魚になった。それからこの地方はエツ漁が盛んになった。

0522 石の芋
 貧乏で芋さえ買えぬ娘が妹の墓に供えるために石の芋を洗っていると、僧侶が通りがかって杖で芋を払い落とした。芋が落ちたところには泉が湧き、そのほとりに芋の葉が茂っていたので生芋を供えることができた。僧侶は弘法大師だったと言う。

0523 蛙女房
 男は子供たちにいじめられている蛙を助けた。その夜、女が訪ねてきて男の女房になる。ある日、妻が法事で出かけるというので後をつけると、大きな水たまりで沢山の蛙が鳴いている場所に行き着いた。男が石を投げると蛙は静かになる。その夜、帰ってきた妻が「誰かが投げた石が坊さんにあたって大騒ぎだった」というので、男は「お前は蛙だな」と言い当てると、正体をあらわして去って行った。

0524 蜂出世
 「竹やぶに竹が何本生えているか一日で数えられたら娘を嫁にやる」といわれ、貧しい男は難題に挑戦するが数え切れない。そこへ蜂が飛んできて「一万三千三百三十三本ぶーん」と言うのでその通りに答えると見事正解。男は娘を嫁にして幸せに暮らした。

0525 油取り
 ある男が「何もしないで御馳走だけ食べられますように」と神様に願掛けをしたら、りっぱなお屋敷に連れて行かれて御馳走でもてなされた。夜中にうめき声が聞こえるので見に行くと、屋敷の主が逆さに吊られ、炭であぶられて油を取られていた。主が「客人が太るまでの辛抱」と言うのを聞いて逃げだし、それからは真面目に働いたという。

0526 弥八郎狐
 寺の和尚のところに弥八郎という狐がやってきて「稲荷に昇格するので京都へ行く間、狐の巻物をあずかってほしい。決して人には見せないで」という。その夜、檀家の者がやってきて「狐の巻物を見せてほしい」と言うが和尚は約束だからと断る。弥八郎狐は京都から帰ってくると、不思議な茶釜をお礼にくれた。

0527 狢退治(むじなたいじ)
 庄屋の妻の腹にイボが三つ出来たのを狢が欲しがって暴れている。旅の山伏が狢たちの歌を盗み聞き、甲斐の三毛四毛犬と越後の文三猫を借りてきて狢を退治して村を救った。犬と猫は村の守り神として祭られた。

0528 子守歌内通
 旅の六部が泊まった家で子守り娘の歌を聞く。「リンカージンとカージンがゴンするをモンすればリョソウをセッすとゴンするぞ。クサのかんむりおっとってヤマにヤマをかさねよ」これを聞いた六部は、家の者が自分を殺す相談をしていると気づいて逃げだした。

0529 寝太郎
 横着者で寝てばかりいる若者は、ある日ハトと提灯を用意して、夜中に庄屋の家の木に登り「わしは八幡太郎である。この村の寝太郎を婿にせねばこの家は滅びるぞ」と言って、ハトの足に提灯を付けて飛ばした。庄屋は神様が来たと思いこんで寝太郎を婿にした。

類話 寝太郎(二)
 ある若者は仕事もしないで三年と三月もごろごろ寝て暮らしていた。ある年のこと、村が大飢饉に襲われたとき、寝太郎は突然おきあがって村人たちにわらじを作るように言った。寝太郎は何千足ものわらじをもって佐渡へ行き、金山で働く人が履き潰したわらじと交換した。村へ帰って村人総出でわらじを洗うと水の中に砂金が沈んでいた。山口県厚狭地方。

類話 寝太郎(三)熊本県熊本市
 毎日寝てばかりで仕事をしない寝太郎。洞窟で風の神に祈っていると風が吹いてきて地底国へ飛ばされた。地底国で鍬(くわ)を借りて地上に出ると傘貼りの家で、手伝っているうちにまた風が吹いてきて傘ごと雲の上へ。雷さんの手伝いをしているうちに足を滑らせてまっさかさま。気が付くと自分の家の布団の中。夢落ち。熊本県など。

0530 手長足長デカ鼻
 手長と足長とデカ鼻は一緒に旅をしていた。酒が飲みたくなると足長がひとっ走り買いに行き、腹が減ったら手長はとった魚を食べた。酒に酔ってデカ鼻が寝てしまった。手長がデカ鼻の鼻の中に手をつっこむと何かにふれたので引っぱり出したら町だった。それが今の柏崎である。

0531 おまんまのおかげ
 あるところに働き者の大男がいた。母親は思い上がらせてはいけないと「おまえが働けるのはおまんまのおかげだよ」とさとした。次の日大男は弁当を鍬にむすびつけて一日中昼寝をしていた。母親が叱ると「おまんまに仕事をさせていたんだ」と答えた。
 

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六月のお話
 
号外 八十一枚目の田
 「婿殿、うちには八十一枚の田んぼがあるから、きちんと数えて田うないしておくれよ」そう言われて婿殿は山の田んぼをうないはじめた。けれど何度数えても八十枚しかない。あきらめて帰ろうとした時、かたわらに置いた蓑(みの)を取り上げてみると下から小さな田んぼが出てきた。山国の田んぼのうわさは聞いていたものの、こんなところにまで田を作るものかと驚いた。山形の昔話。

0601 座敷わらし
 その旧家は座敷わらしに守られていたが、三代目が京都の伏見稲荷からお稲荷さんを招いてお祀りすると、急に家がかたむいて没落してしまった。それと前後するように見なれない女の子が村から出るのを見たという人がいる。座敷わらしの引っ越しである。

0602 河童の瓶
 河童に馬をひかれそうになったので、慌ててつかまえてお寺にひきずっていった。和尚さんは「今日は田植えだし殺生はひかえなされ」と河童をゆるしてやった。恩を感じた河童は、耳を近づけると気持ちのよい水音のする瓶を残して去っていった。

0603 水の種
 子供にいじめられている白ヘビをたすけてやると、老婆があらわれて娘を助けてくれたお礼だと言って不思議な水の入った瓶をくれた。水涸れで困っている村の近くで地面に水をそそぐと泉がわき出したので、それからは水に困らなくなった。

類話 水の種
 白鷹山のふもとに門伝という村があり、水不足に悩んでいた。ある日、村の与左衛門という男が、子供たちにいじめられている白蛇を助けてやると、夢枕に箱根の権現様が現れて「水の種というものをまけば水に不自由はしない」と言った。そこで箱根へお参りして水の種をひょうたんに入れて持ち帰ろうとするが、もう少しで村につくというところで眠くなり、ひょうたんを枕に昼寝をしてしまった。そのとき栓がぬけて水の種がこぼれたので、このたりには四十八もの沼ができた。与左衛門は開沼と名を改めて水番庄屋になった。山形県。

0604 爺さんと竹
 天までのびた竹をのぼって月世界まで行った爺さんは月の姫と楽しく過ごした。地上にもどり、婆さんを背負ってふたたび月を目指すが、月の姫との「無言」の約束をやぶった瞬間、婆さんが爺さんの背中から落ちて死んでしまう。

0605 地蔵のしろかき
 足腰のまがったおじいさんが馬を引いてしろかきをしていると子供がやってきて代わりに仕事をしてくれた。その仕事の早いこと、広い田んぼを一日で終わらせてしまった。ところが日没とともに子供はたおれ、慌ててかけよってみると石地蔵になっていた。

0606 鬼婿どの
 水路をふさぐ大岩をどけてくれた鬼に嫁いだ娘。里から訪ねてきた父親と一緒に鬼の五百里車で逃げ出した。鬼が千里車に乗って追いかけて来たので、娘は尻をまくって追い払った。

0607 でえろん婿
 庄屋の家に泊めてもらったでえろん(カタツムリ)は朝になると泣きながら「この家の娘が俺のぼた餅食った」と訴えた。娘の口には餡子がついている。無実の娘が怒って婿を踏んづぶすと、殻の中から立派な若者が出て幸せに暮らした。(同じパターンでタニシ息子というのが各地に多い)

0608 フルヤノモリ
 貧乏な老夫婦が「この世で一番恐ろしいのは、狼でも強盗でもなくフルヤノモリ」と話している。それを聞いた狼と強盗は逃げだそうとして鉢合わせ、お互いをフルヤノモリと勘違いする。フルヤノモリは雨漏りのこと。

0609 粗忽惣兵衛
 あるところに惣兵衛という粗忽者がいた。町に買い物にいくのに弁当を風呂敷につつんで持って行くが、途中で気が付くと風呂敷は奥さんの腰巻きで、弁当は枕だった。

0610 三人の行商人
 新茶売りが「新茶〜」と呼ばわりながら歩いていると、篩(ふるい)売りが「ふるい〜」と呼ばわりながら歩いている。その後を古金買取り商が「ふるかねぇ〜」と叫びながら歩いていたのでみんなで大笑いしたとさ。

0611 ヒバリ
 ヒバリは金貸しだった。ある日、太陽が降りてきて金を貸りていったがいつまでたっても返してくれず、空の高いところですましてる。そこでヒバリは朝になると「ゼンクレゼンクレ(銭くれ銭くれ)」と鳴きながら昇っていき、夕方になると「クレークレー」と鳴きながらおりてくる。

0612 山の背くらべ
 伯耆国(鳥取県)に大山(だいせん)という立派な山がある。ある日、海の向こうから高さ自慢の山がやってきて背比べをしたところ大山のほうが少し低かった。怒った大山は海の向こうから来た山をけっ飛ばした。大山の隣にある韓山のてっぺんが欠けているのはそのせいだ。

0613 湖山長者
 湖山長者の自慢は一千町歩もある田んぼに一日で田植えを終えること。ところがちょっとした手違いで日没までに田植えが終わらず、長者は入り日を扇子で三度扇ぎ、太陽を呼び戻して田植えを済ませた。その翌日、大地震があり、一千町歩の田んぼは湖の底に沈んだ。

0614 鯛の作り
 馬鹿な息子がいて、鯛はお作りにするのが一番と聞いた。そこで息子はジャガイモを作ったのを思い出し、鯛を畑に植えて三日待った。鯛が腐って目玉が飛び出したのを見て「鯛を作っておいたら芽が出たよ」と母親に報告しに行った。

0615 狼の眉毛
 貧乏な男が世をはかなんで山に行くと狼が出てきた。しかし狼は男を襲わず「お前は真人間だから俺の眉毛を持っていけ」と言った。狼の眉毛をかざすと人間の本性が見える。この評判を聞いた長者さんは、男を自分の跡継ぎに迎えた。

0616 弟切草
 とても仲のよい兄弟がいたが、ふたりして同じ女に惚れて仲違いをし、ついに兄弟で切り合って勝ったほうが女を取ることになった。決闘は兄の勝ちで終わったが、血を流す弟を見て我に返り自分のしたことを悔いた。弟の墓に生えてきた草には血が落ちたような斑があった。この草は弟切草と呼ばれ、妙薬である。

0617 燕と雀
 燕と雀は兄弟だった。母親が死んだとき、雀は野良着のまま飛んでいったが燕は喪服を着て化粧をしてから出かけたので死に目に会えなかった。神様は孝行者の雀には米を食べる許可を出し、燕には一生喪服のまま虫をとって暮らせと命じた。

0618 化けの皮
 蛇が蛙を呑もうとしている。男は蛙をあわれに思い、自分の娘を嫁にやるかわりに、蛙を放してほしいと頼む。三人の娘のうち、ふたりの姉さんは蛇の嫁などイヤだというが、末娘が承知してくれた。末の娘はヒョウタンに針を詰めたものを呑ませて蛇を退治する。山奥で老婆に出会い化けの皮をもらい、鬼の住みかを無事通過。長者の家で雇われて若旦那の嫁に。

0619 蟻通しの中将
 シナの王から七つの玉が送られてきた。玉に糸を通して返してほしいというのだが、穴が曲がっていて普通には糸が通らない。知恵者と名高い中将が蟻に糸をむすびつけて玉の穴に入れ、穴の出口に蜜を塗った。すると、蟻は蜜にひかれて穴を通り、糸を通すことができた。

0620 榎和尚
 寺に榎の巨木があるので、その寺の住職のことを、人々は榎和尚と呼んだ。みんなが本当の名前を呼ばないのに腹をたてて住職は榎を切ってしまった。すると人々は切り株和尚と呼んだ。仕方なく切り株を掘り返し穴を埋めたら、穴埋め和尚と呼ばれた。

0621 蛇息子
 子供のない老夫婦にやっと授かった息子は何年たっても歩けず頭と足ばかり長くニョロニョロとしていた。その上大食いだったので養いきれなくなり老夫婦は息子を山に捨てた。ある旱の年に山に捨てた息子が蛇の姿で現れて七日七晩雨をふらせてくれた。

0622 狼女房
 喉に骨を立てた狼は肝のすわった男に骨を抜いてもらう。狼は女に化けて男に嫁入りするが、正体がばれてしまう。田植えの季節。狼は一夜で田植えをすませ森に帰った。実った稲は頭をたれなかったので年貢を免れた。

0623 仁王と賀王
 仁王さんは唐の国の賀王と力比べをするために海を渡った。あいにく賀王は留守で奥方が家に入れてくれた。家の中には鉄の柱が二本あり賀王の火箸だということだった。こんなものを指先で扱うようなヤツとは戦えないと、仁王さんはいちもくさんに逃げ出した。

0624 若返りの水
 おじいさんが山で薪をひろっていると泉がわいているのをみつけて飲んでみた。するとおじいさんは見る見る若返って青年になった。おばあさんも水を飲みに行ったが帰ってこない。おじいさんがさがしに行くと泉のそばで赤ん坊が泣いていた。

0625 木挽きの願い
 力のない木挽きは「石をも切れる力がほしい」と七日間の断食をして神に祈った。ところが前よりも力がぬけて仕事にならない。変だと思い、ふと石に鋸をあてて挽いてみたところ簡単に切れた。過分な願をかけたことに気づいた木挽きは神様にあやまった。

0626 甲府盆地
 むかし甲府盆地は大きな湖だった。そこで稲積地蔵さまが山の一部を手で崩して水を抜こうとしたがうまくいかなかった。見かねた蹴裂明神が山を蹴り崩し、穴切明神が大木を抜いて穴を掘り、甲府の水を富士川に流した。おかげで盆地に人が住むようになった。

0627 豆腐屋のなぞかけ
 雲水に禅問答を申し込まれた和尚は、謎かけのとくいな豆腐屋に身代わりを頼む。雲水が指で丸をつくれば豆腐屋は両手で丸を作り、雲水が指を十本出せば豆腐屋は五本だし、雲水が三本出せば、豆腐屋はあかんべーをする。それを見て雲水は逃げ帰った。

0628 うわばみのとろかし草
 腹いっぱいのウワバミが草をたべて腹をへこましたのを見て、樵は草をもって町へやってきた。蕎麦の大食いに成功したら田畑をやるという長者の家で蕎麦を食いはじめるが、途中で腹がきつくなったので厠で草を食べた。樵がもどってこないので様子を見に行くと厠に着物だけが落ちていた。

0629 孝子が池
 病気の母に何かほしいものはないかと聞くと「琵琶湖の水が飲みたい」という。息子は竹筒を腰にさげて水を汲んでくるが、帰ってみると母親は死んでいた。竹筒からこぼれ落ちた水は池になり、孝子が池と呼ばれるようになった。

0630 蘇民将来と茅の輪くぐり
 スサノオの神は巨旦将来の村で宿をたのむが断られる。蘇民将来の村では親切にもてなされた。スサノオは「もうすぐ疫病が来るが、茅の縄で村をかこえば大丈夫」と教えた。また蘇民将来の子孫であると言えば、どのような災厄からも逃れられると教えた。
 

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七月のお話

号外 松虫姫(まつむしひめ)
 病弱の松虫姫。夢のお告げで下総の国(千葉)までやってきた。都から離れるにつれひとりふたりと家来は逃げて、しまいには乳母と数人のお供だけになっていた。それでも姫は東を目指しお告げの地で祈りをささげたところ、不思議と病はなおり、都へ帰ることができた。姫を慕って親切にしてくれた村人のために、姫の乳母がこの地に残り、都の文化を伝えた。北総公団線の終点にあたる駅には、「印旛日本医大(松虫姫)」と、姫の名前を第二の駅名として記載している。>昔話の舞台を訪ねて

号外 水害を救った獅子頭
 ある日、大洪水で沈みそうになった村を救うため、兄弟は向こう岸の堤を破壊しようと荒れ狂う川に船を出した。先頭に獅子頭を三つのせ、かがり火をたいている船を見て、堤を守る役人は龍がおそってきたと勘違いして逃げてしまった。兄弟は堤を破壊し、村は水没からまぬがれた。このことを記念した獅子舞が毎年七月に今でも行われている。

0701 便所の神様
 ある時、七福神が集まって家の中のどの部分を守護するか相談することになったが、弁天様は身支度に手間取って寄り合いに遅れてしまう。やっと駆けつけた時には相談は終わっており、弁天様は便所を守ることになった。女神の守る場所なので、便所を汚くしていると罰があたる。

0702 虚空蔵さまのウナギ
 洪水にさらわれた人たちが濁流の中で流されずに浮いていた。見ると沢山のウナギが縄のようによりあつまっているではないか。昔からウナギは虚空蔵さまの使いと言われている。これも仏さまのおかげといって村人たちはウナギを食べないことにした。

0703 金をひる馬
 弟は一両で飼った痩せ馬の糞に銀粒をまぜて兄に見せた。兄は馬を五十両で買うがすぐに騙されたと知る。次に弟はひとりでに炊ける釜を兄に売り、最後に病を治す瓢箪を兄の田畑と交換する。兄は瓢箪の効き目をためそうと妻を殴り殺してしまう。

0704 ふしぎな太鼓
 源五郎が拾った太鼓は表をたたけな鼻がのびる。長者の娘の鼻をこっそりのばすと、長者は娘が病気になったと大騒ぎ。源五郎は医者のふりをしてたずねてゆき、太鼓の裏をたたいて娘の鼻をなおしてやった。長者にごほうびをもらい、上機嫌で家に帰った。

0705 ちいさこべの栖軽(すがる)
 ちいさこべの栖軽は帝にお仕えしていた。帝が雷を招いて来いというので雷雲の下へ行き「雷神といえども帝の招きには逆らえまい」と言った。都に帰る途中で落雷があり、雷神が木にひっかかっていたので都に連れて帰った。

0706 座頭の木
 大水の出た日に溺れ死んだ座頭さんを弔ってやると、墓から木が生えてきて花の中で何十人もの座頭さんが笛や太鼓でお囃子をしている。集まってきた見物人からお金をとって、爺さんは幸せに暮らした。

0707 七夕
 朝から晩まで機織りをしている娘の気晴らしに、天の神様は牛飼いの彦星を連れてきたが。娘が仕事を怠けるようになったので、神様はふたりを天の川の両側に住まわせ年に一度しか会えないようにした。七月七日になると鵲がふたりのために橋を渡す。

0708 天人女房
 男は水浴びをしている天女の羽衣をかくした。天女は男の妻になり子供をつくるが羽衣をみつけて天に帰る。男は瓜の蔓をつたって天にのぼり妻と再会するが舅に胡瓜を切れといわれ、その通りにすると胡瓜の水が天の川になり、離ればなれになった。

0709 きゃふばい星
 織姫は天の女子星全員に脚布(きゃふ)を織ってあげるかわりに七夕の夜を晴れにしてくれと頼んだが、あと一枚というところで七夕の夜になった。そのため雨を降らせる星と、その友達が脚布を奪いあうことになり、友達が勝つと七夕が雨になる。

0710 雷井戸(三島神社)
 下谷には雷がよく落ちるので人々が困っていた。神社の神主が竹の棒で雷雲をつっつくと雷が神社の井戸の中に落ちた。井戸に蓋をして悪さをしないと約束するなら出してやるともちかけると、雷は承知して空へ帰っていった。>昔話の舞台を訪ねて

0711 おいてけ掘
 あるところに人の近付かない池があった。ある日、釣りの好きな男が釣り糸をたれると面白いように魚がかかる。びくいっぱいになったので帰ろうとすると「おいてけーおいてけー」という声がするので、男は魚を放り出して逃げ帰った。

0712 腰折れ雀
 腰の折れた雀を手当してやると、雀がひとつぶの種をもって来た。種に成った瓢箪には米が沢山つまっていた。意地悪じいさんがマネをすると、種から出てきたのは毒虫とお化けばかり…

0713 江戸城の河童
 麹町に十兵衛という飴屋がいた。毎日店じまいする頃に貧しい身なりの子供が来るので飴を一本わたしていた。ある日子供のあとをつけてみると、江戸城のお堀にどぼんと飛び込んで消えてしまったので、河童だったとわかった。

0714 狸僧
 ある寺の山門をなおすために寄付を集めている僧侶がいた。立派な坊さんだったが行く先々で正体は狸だと噂され、心ない者に犬をけしかけられかみ殺されてしまった。死体は三日後に狸になったが悪さをしたわけでなしと、人々は哀れんだ。

0715 木こりの斧
 木こりは使い慣れた斧を川に落としてしまった。すると女神が現れて「あなたの斧が悪い大蟹の右腕を落としてくれました。もう一度斧を投げて、左の腕も落としてください」と言った。そこで木こりはもう一度斧を投げ入れて蟹を退治した。女神はお礼に斧を新品にしてくれた。

0716 売ります買います
 米や味噌をあきなう商人は、不景気で儲けが思うようにならず、普通より小さい升(ます)で売り、大きい升で買うというごまかしを働いた。そのせいで客が寄りつかなくなるが、賢い嫁が気づいて逆のことをしはじめたら「この店は嫁の代になってずいぶん勉強するぞ」と評判になり、大もうけをした。

0717 尾張富士
 尼さんの夢枕にコノハナサクヤ姫がたって、自分が守る尾張富士が本宮山より低いのが悲しい、お参りに来る者に一個ずつ小石を持たせてほしいと言った。以来、尾張富士に登る時は、小石をたずさえて頂上に供えることになった。

0718 ヘソの下
 雷のお嫁さんになった人が五段の重箱を手みやげに里に帰ってきた。一番上には目玉が入ってる。二番目には耳が、三番目には鼻が、四番目にはヘソが入ってる。五番目を開けようとしたら、お嫁さんが顔を赤くして「ヘソの下は見ないでほしい」と言った。

0719 縁起かつぎ
 何かにつけて縁起をかつぐ旦那が畑に大豆をまこうとしていた。そこへ座頭さんが長い刀を持って通りがかったので使用人が「長いものをお持ちですね」と言うと「長いのはサヤばかり」という返事。旦那はサヤばかりの大豆をおそれて仕事をやめた。

0720 三吉さま
 子供のない老夫婦が明神さまに祈願して授かった子は神の子で、十八になると神様になって村を去った。数年後に帰ってきたときは白いヒゲの爺さんになっていて、大水で流された橋をなおしたり、子供と遊んだりして、また姿を消したという。

0721 手まめ足まめ
 豆作りの好きな男が大黒様に「百色の豆を供えますから嫁をさずけてください」と祈願して、必死で働き始める。けれどどうしても一色たりないので「申しわけねえ」と手を合わせると、大黒様は「お前の手豆で百色じゃ」と願いを叶えてくれた。

0722 蜘蛛男
 けちんぼの旦那が雇ったのは飯を食わない男だった。旦那が男と連れだって草刈りにゆくと男は正体を現し旦那をさらおうとしたが、旦那は難をのがれて村人とともに蜘蛛男を焼き殺す。自分のケチが化物を呼んだと悟り、旦那は良い人になった。

0723 龍神の面
 龍神はかぶると人間になる不思議な面をかぶって陸に遊びにゆく。山奥で面をはずして昼寝をしていると、地元の百姓が面をみつけて持ち去った。祭りの時にこの面をかぶって神楽を舞うと、龍神が怒って雨をふらせるようになった。龍神は面を返せと怒っているのだが、雨乞いにちょうどいいので誰も面を返そうとしない。

0724 手なし嫁
 継母に両腕を切られた娘は、放浪の途中で出会った男と夫婦になる。継母がそのことを知り、男が旅に出ている間に偽の手紙を書いて離縁させる。娘があてもなく歩いていると背負った赤子がずり落ちて谷に転げそうになる、あわやというところで腕が生えてきて、気がつくと子を抱いていた。道ばたの地蔵を見ると手がなかった。

0725 日光の女神と赤城山の神
 日光の女神と赤城山の神は中禅寺湖をめぐって戦っていた。赤城山の神は大百足の姿で戦ったが、女神の孫で弓の名手・猿丸に片目を矢で射抜かれて退却した。戦いの跡は戦場ヶ原と呼ばれ、赤城山と日光の神は今でも仲が悪い。

0726 亀の恩返し
 お寺を造るために金(きん)を買いに行った坊さんは、旅の途中で海亀を助けた。海賊に出会って金を奪われ、海に放り込まれると、助けた亀がやってきて陸まで運んでくれた。海賊は商人にばけて盗んだ金を寺に売りにくるが、海に突き落とした坊さんが生きているのを見て改心する。

0727 ぼたもち
 田舎者がお金をためて江戸見物にでかけるが、宿にとまると風呂場に糠と塩があるので団子にして食べた。宿の番頭は田舎では風呂場で食事をするものと思い翌朝は洗面所にぼた餅を置いておいた。田舎者は今度は失敗すまいとぼたもちで顔を洗った。

0728 厳島神社
 平清盛が厳島神社に参拝すると女神が現れて「神殿を一日で建て替えたら妻になろう」と約束した。清盛が手斧で木をけずると削り屑が大工になって仕事をはじめた。もう少しというところで日没になったので扇であおいで太陽を呼び戻した。

0729 音戸の瀬戸
 厳島神社を一日で建て替えた平清盛に、厳島の女神は妻になると約束するが、女神の本性は海に住む大蛇だった。妻になろうぞと迫る大蛇から船で逃げる清盛は、音戸の瀬戸にはばまれて万事休す。清盛が瀬戸をにらみつけると流れが変わって大蛇を押し流した。

0730 虎と狐
 シナの国の虎が日本に渡って狐とかけっこをした。狐はふたごの兄弟を終点に立たせておいたので、何度勝負をしても狐が勝った。虎はくやしがって自分に似た人形を作りヒゲを三本抜いて植え付け、日本に行くように命令した。これが猫の始まりである。

差し替え版 虎と狐
 むかし、日本には虎がいた。頭のいい狐が虎に会いに行くと、狐があんまり堂々としているので虎のほうが不安になった。二匹が連れだって山を歩くと狸も兎もテンもリスも、みな虎をおそれて逃げてしまった。それを見た虎は、狐がそれほど恐れられているのかと思い日本から逃げ出した。

0731 猫屋敷
 猫は行方不明になるとイナバ山の猫屋敷に行くと言われている。ある屋敷の下女が猫をさがしに行き、山奥で猫屋敷をみつけて泊めてもらった。土産包みには小判が十枚入っていた。それを聞いた意地悪な女主人がマネをするが猫に食い殺されて死んだ。
 

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八月のお話

0801 魍魎(もうりょう)
 あるお役人の夢の中に使用人が現れて「私は魍魎です。今夜から死体を取る当番なのでお暇をください」と言うので許可してしまった。翌日、近所で葬式があり化け物に死体を取られたと言う。慌てて使用人を捜したがみつからなかった。

0802 ひとつ目孫左衛門
 隻眼の孫左衛門は草刈りにでかけて行方知れずに。百年後に帰ってきて「仙人の弟子になった」と語り、また山へ戻った。村人が山へ入ると孫左衛門が出てきて仕事を手伝った。孫左衛門は山で暮らすうちに身の丈が一丈にもなり毛深く、雨や嵐を呼べるようになった。

0803 ひょうすぼ
 ひょうすぼ(河童)は子供とおよぎくらべをして負けそうになったので抱きついて溺れさせた。村人がひょうすぼをつかまえて、あの岩が腐って裂けるまで悪さをしないと約束させた。今でもひょうすぼは岩をさすりながら「早く裂けてくれんかのう」と言っている。

類話 ひょうすぼの遠征
 八左衛門という侍は、ひょうすぼが甲羅干ししているのを見て刀で切りつけた。怒ったひょうすぼが八左衛門の家に現れて真剣勝負を挑んできたが、家の者には姿が見えず、八左衛門がひとりで刀をふっているように見えた。

類話 ひょうすぼと金丸どん
 神官の金丸どんは大蛇を退治した。その大蛇におびやかされていたひょうすぼがお礼に現れて、これからは金丸どんの子孫には決して悪さをしないと言った。以来この地方では川で遊ぶときに「ひょうすぼ、ひょうすぼ、金丸どんの一党じゃ、わるさすんなよ」と唱える。

0804 ミョウガの宿
 欲張りな宿の主人はお客から預かった財布を返したくなかった。そこでお客にミョウガ料理をすすめて忘れさせようとするが、逆に宿代をとるのを忘れて損をした。

0805 継母と時鳥(ホトトギス)
 継母は継子に弁当をたのみ、上の畑から「早く来い」と呼んでおいて、継子がのぼってくる間にに山をおりて「何してるの」と急かした。継子は心臓がつぶれて死に、継母は罰があたり時鳥となって、日に八千八声鳴かないと口から蛆がわくようになった。

0806 西行峠
 西行法師は和歌の修行中に、甲斐と駿河の国境で農家の子供にあった。どこへ行くのかとたずねると、子供は「冬青む夏枯れ草を刈りにゆく」と答えた。甲斐では子供でさえこれだけの風流をたしなむことにおどろいて駿河へ引き返した。

0807 チャンコロリン石
 安中の宿では真夜中になると、いつの頃からかチャンコロリンと音をたてながら石が転がるようになった。バケモノ騒動で寂れた安中宿を救うため、獅絃という和尚が経を読みながら石を追いつめ、大泉寺の境内に封印した。この石は今でも寺に残っている。

0808 化けくらべ
 狐は地蔵にばけた。狸が通りがかりおにぎりをお供えすると狐は笑いながら正体を現した。狸は怒って「明日、大名行列に化けるから見てろ」と言って帰ってしまった。翌日、狐は大名行列を見て笑いながら出て行くと、行列は本物で狐は撃ち殺されてしまった。

0809 ほうろく売り
 侍に化けたほうろく売りは長者の家の化け物を偶然やっつけて娘婿になるが、今度は村を荒らす大蛇を退治してくれと頼まれる。長者の娘は夫を嫌って弁当に毒をまぜて渡すが、これが偶然大蛇の口に入ったのでほうろく売りはまたもやヒーローに。

0810 山女
 猟師が山で色白で背の高い裸の女に出会った。男は化け物と思って鉄砲で撃った。記念に女の髪の毛を切り取って行くと、途中で睡魔に襲われ、夢うつつにあらわれた大男が髪の毛を奪って去って行った。

0811 猿神退治
 毎年ひとりの娘を人身御供に取る猿が「信州信濃の早太郎には聞かせるな」と歌うのを聞いて、ある僧侶が探しに行くと早太郎は犬だった。僧侶は犬を連れてもどり女のかわりに生け贄の棺に入って犬とともに猿神をたおす。

0812 東壺屋と西壺屋
 茂衛門と八右衛門が榎の木の下休んでいると、蜂が何かいいたげに木のまわりを飛んでいる。後日、八右衛門が木の下を掘りかえすと小判のつまった壺が二つ出てきた。茂衛門が壺を見せてもらうと底に「都合七つ」と書いてあったので、榎の下を掘りかえすと壺が五つ出てきた。茂右衛門も八右衛門も長者になり、東壺屋と西壺屋と呼ばれるようになった。

0813 木仏と金仏
 長者さんの金仏と、若者の木仏が相撲をとった。長者さんは木仏が買ったら若者に屋敷をやるという。やがて木仏が金仏をぶんなげて、長者さんは金仏を「この役立たず」と叱ったが、年に三度のまんまじゃ力が出ねえと金仏が言うので、恥ずかしくなって逃げだした。

0814 子育て幽霊
 夜になると飴屋に女がやってきて飴を買って帰る。翌朝みるとお金が葉っぱに変わっていた。次の夜も女はやってきた。後をつけてみると、墓場に赤ん坊が捨てられている。女は幽霊で、水飴で捨て子を育てていたのだ。

0815 山姥のお産
 山から大男がやってきて「山姥が子供もって餅ほしい」と叫んでまわった。肝の太い婆さまが餅を担いで行くと「お産で手が足りないから二十一日手伝ってくれ」と言われる。お礼に反物をもらい村に帰ると、村人が婆さまの葬式をあげていた。

0816 竜宮の酒
 村はずれの淵に落ちた男は気が付くと竜宮にいた。乙姫様に酒をふるまわれ三時間ほどして帰ってみると村では自分の葬式をしていた。時は流れ、年老いた男は死ぬ前に竜宮の酒が飲みたいと言う。寺の和尚がお経を読んで乙姫様にお願いすると、酒でいっぱいのひょうたんが浮いてきた。

0817 大あわび
 嵐で漁を休んでいる若い漁師に恋をした乙女は、もう一度若者に会いたいと、怒らせると祟りがあるという大あわびに石を投げて嵐を呼んだ。けれど漁をやめて帰ってくる船の中に若者の姿はなかった。乙女は海にとびこみ大あわびに謝るが嵐はおさまらず、乙女も若者も帰ってはこなかった。

0818 古い枕
 ある人が古い家を借りて住むと病気になってしまった。薬を飲んでも治らないので、家中を調べると薄暗い物置からいつも風が吹き込んでいる。物置の中には枕があった。庭で火をおこして枕を焼くと病気はなおってしまった。

0819 手ぬぐい
 みすぼらしい老人がにぎりめしを恵んでほしいと言うが意地悪な下女はおっぱらう。優しい下女がそっとにぎりめしを渡すと老人はお礼にてぬぐいをくれた。下女が仕事の汗をぬぐうとそのたびに美しくなるので、意地悪な下女もマネをしてブスになった。

0820 河童の手
 子供が河童に引かれそうになったので庄屋の叶之助がとんでいって河童の腕をひきぬいた。よく見ると河童の腕は藁しべだった。夜になると河童が腕を取り戻しに来たので、もう悪さはしないと約束させて返してやった。

類話 河童の薬
 群馬県吾妻郡の六合村の湯本という医者が、馬にいたずらをした河童の腕を切り落とした。その夜河童が現れて、腕を返してくれたら河童の傷薬の作り方を教えると言った。医者は河童に二度と悪さをしないと約束させ腕を返した。この家に今でも伝わっている傷薬の作り方は河童に教えられたものだという。

関連 河童の首
 ある飛脚が河童の首を切り落とした。仲間の河童が首を返せといったが、河童は金属のものとソバ団子を嫌うので、飛脚の刀と弁当の団子を恐れて近づかなかった。

関連 河童と下女(鹿児島県指宿市)
 馬にいたずらしようとした河童をつかまえる。頭の皿から水を出し、馬小屋の柱にしばりつけておいた。そこへやってきた下女を河童がさんざんからかうので、下女は怒って桶いっぱいのニゴシ(飼料)を河童にぶちかけた。皿に水分をえた河童は縄を抜けて逃げて行った。

0821 弘法様の万年機(まんねんばた)
 機を織る娘にみすぼらしい僧侶が「その布の中のところを切ってくださらぬか」という。こころよく応じると、娘の機織り機はいくら織っても織り尽きず、織った布をいくら使っても尽きることがなかった。娘は年をとり機織りに飽きて織り機を壊してみた。中から白い鳥がでてきて、普通の織り機に戻ってしまった。

0822 沼神の文使い
 娘が沼のほとりを歩いていると河童が現れて手紙を託した。途中で僧侶に出会い手紙を見せると手紙は白紙だった。水をかけると文字が浮きあがり「この女を食べろ」と書いてあった。僧侶はカボチャの茎で手紙を書き直して娘に渡した。娘が下沼の河童に手紙を渡すと「この女に金をやれ」と書いてあったので河童はブツブツ文句を言いながら娘にお金をなげつけて消えていった。

0823 たこの婿入り
 ある娘が立派な魚をとどけてくれる若者と夫婦になる。夫は人に見られないよう早朝に漁にいき、いつも大漁で戻ってくるが、日に日にやせてくるので娘が心配して様子を見に行くと、岩陰で大だこが一本しかない足を海につっこんで魚をとっていた。正体を見られた大だこは海に帰って行った。

0824 たこの足
 お婆さんが海辺で貝をひろっていると、干潟に蛸が寝ていたので足を一本切って持って帰った。蛸の足があんまり美味しいので、次の日も、その次の日も一本ずつ切って帰り、最後の一本になったとき蛸にすいつかれて殺されてしまった。

0825 蛇の恩返し
 貧乏な爺さんが白い蛇の子を可愛がっていた。蛇が大きくなったので蛇は鱗を一枚置きみやげにして家から出て行った。蛇の鱗は黄金の粒を生み出すので、お爺さんは黄金をもとでに商売をおこし、長者になった。

0826 蛇の鱗
 長者の持っている蛇の鱗は黄金の粒を産むと大評判。心の悪い奉公人が鱗を持って逃げてしまった。長者の猫と犬が追いかけて取り戻すが、犬の失敗で鱗は川に落ちてしまう。それから犬は外で飼われ、猫は屋敷の中で飼われるようになった。

0827 八百比丘尼
 酒を買いに来る小僧さんの後をおって竜宮に行った酒屋は手箱をもらって家に帰ると陸では三年たっていた。酒屋の娘が手箱をあけてみると中に人魚がいてうまそうなので食べてしまう。娘は年をとらず八百歳生きたと言われている。

0828 小豆研ぎ(あずきとぎ)
 群馬県勢多郡新里村では村はずれの土橋を夜更けに渡ると小豆をとぐ音がする。見ると老婆が川で小豆を研ぎながら「あずきとごうかひととってくおか」と歌い、こちらを見てヒヒヒと笑う。

0829 ミソサザイ
 ミソサザイが仲間にしてくれというので鷹は「猪をやっつけられたら」と返事をした。そこで猪の耳に入り込んで突っつくと、猪は後ろ足で耳をかけないので苦しんで谷底に落ちていった。おどろいた鷹は仕方なくミソサザイを仲間にしてやった。

0830 狸の金玉
 ある俳諧師が立派な屋敷に呼ばれ、仲間とともに俳句をひねっているうちに、キセルの灰を座敷に落としてしまった。すると畳が動き出し、気が付くと野原に放り出されていた。この話を人にしたら「それは豆狸に化かされたんだよ」と言われた。

0831 西郷星
 西郷さんが死んだ時、西郷さんの故郷、薩摩の方角に真っ赤な星が現れた。また、その星に従うように、白っぽい星が現れたので、こちらは側近の桐野敏秋の星だと言われた。赤いのは火星で、白いのは土星である。
 

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九月のお話

号外 かっぱ橋
 今でいう浅草のかっぱ橋のあたりは水はけがわるく、たびかさなる洪水で住民がくるしんでいた。雨具の販売でもうけた合羽川太郎という人が私財をなげうって掘り割り工事をはじめたところ、あちこちから河童があつまってきて手伝ってくれた。堀にかけられた橋はかっぱ橋とよばれ、近くにあるお寺はかっぱ寺と呼ばれている。>昔話の舞台を訪ねて

0901 やろか水
 大雨の日に川へゆくと、向こう岸から「やろうか、やろうか」と声がする。「よこすならよこせ!」と返事をすると、急に水かさがまして、あたりの村を押し流してしまった。

0902 加茂明神
 加茂明神のお札は雷よけに御利益があると評判だが、その境内に雷が落ちたので神主は大あわて。加茂明神おん自ら現れて、雷神のかかとを切り落として追い払った。以来、加茂明神には雷が落ちることはなくなった。

0903 キリシタン・バテレン
 バテレン(神父のこと)が「中を見ないでほしい」と念をおして宿に荷物を預けた。バテレンが帰ってこないので宿のものが中を見ると人形が入っていた。まもなくバテレンが帰ってきてカバンをあけると、人形が「見た見た」と言うのでウソがばれた。

0904 熊と狐
 熊と狐が畑を作り、狐が土の下のものを熊が土の上のものを取ることにしたが、狐がまいたのはカブの種だったので熊は損をした。もう一度畑をつくり、今度は熊が土の上のものを取ることにしたが狐がまいたのはイチゴの種だったので熊は損をした。

0905 蜻蛉長者(だんぶりちょうじゃ)
 蜻蛉(だんぶり)が教えた泉は酒の泉だった。この酒を売って長者になった男には子供がなく神仏に祈願して美しい姫をさずかった。姫は都の天子様に望まれて后になったが残された長者は寝込んでしまった。長者が死ぬと酒の泉は涸れてしまった。

0906 犬の目印
 はじめて京見物にきた田舎者は、宿の前に犬がいるのを見て「これを目印に帰ってこよう」とそこらを見てまわるが、もどってみると犬がいない。犬をさがして歩き回っているうちに夜があけてしまった。

0907 狐のお札
 ある寺に子供がきて小僧にしてくれという。小僧はよく働くが狐だった。和尚に正体を見破られた狐は「寺に空を飛べるお札があるので盗みに来た」というので「ならお釈迦様の行列に化けてみよ」と和尚。狐の化け方があまり見事なので和尚が手をあわせておがむと、狐は空を飛んで逃げてしまった。

0908 ちゃくりかきふ
 馬鹿な息子に商売をおしえようと、茶と柿と栗と麩をもたせて売りに出した。息子は「ちゃくりかきふ」と呼ばわりながら歩くのでちっとも売れない。別々に売るんだよと教えると「茶は茶で別、柿は柿で別」とふれあるくのでやはり売れない。馬鹿につける薬はないと言えば「飲み薬でいいよ」

0909 小さな神様
 海の向こうから小さな神様がやってきた。ガガイモの殻を舟にして着ているものは蛾の皮だった。小さな神様は頭がよく、人々に畑の耕し方や病気の直し方を教えたが、ある日、穀物の穂をバネにして遠くへ飛んで行ってしまった。

0910 旅人の馬
 二人の男が旅をしていた。ある宿屋で一人が出された団子を食べて馬になってしまった。もう一人が逃げ出して、ひと株に七つの実がなる茄子を探して食べさせたので馬になった旅人は人間にもどることができた。

0911 月からふった餅
 世の中に人間がいなかった頃、ある島に男の子と女の子が現れた。ふたりは神様が月から落としてくれる餅を食べて暮らしていたが、ふたりが食べ残した餅を蓄えるようになると餅が落ちてこなくなった。それから人間は食べるために働きはじめた。

0912 外法人形
 ある人が川で人形をひろった。その夜、人形が口をきいて「明日は何がおこる、このように過ごせ、どの方角がよい」などと占った。最初は面白かったが次第にうるさくなり、古老に相談すると板に乗せて川に流すのがよいと言うのでその通りにした。

0913 蟹の甲羅
 おじいさんは裏の池にすむ蟹をかわいがっていた。おばあさんは蟹がきらいで、おじいさんが留守の間に蟹をとって食べてしまった。カラスが「コーラは垣根、身は婆」と鳴くので垣根の向こうを見ると蟹のこうらが捨ててあった。お爺さんが甲羅を拾うと中に酒が入っていた。

0914 白茄子
 和尚さんがゆで卵をたべていると、小僧さんがやってきて「それはなんというものですか」と言う。和尚さんはすまして「これは白茄子というものだ」と答えたが、そこへ寺の鶏が「ホッケボーズコッケコーロー」と鳴くので小僧さんはすかさず「白茄子の親が鳴いてますよ」

0915 養老の滝
 貧しい樵は父親のために酒を買うのを日課としていたが、ついに酒も買えないほど生活に困るようになった。ある日、山奥でみつけた滝の水を飲んでみると、流れているのは美味しいお酒だった。この話が帝の耳に入り、樵は出世して美濃守(みののかみ)に、年号も養老と改められた。

類話 酒の出た清水
 働き者の男がいて、おおきな背負子を背負って赤城山(群馬県)に入り、朝から晩まで薪を拾って歩いていた。ある日、清水をみつけて飲んでみると、水ではなく酒がわいていた。男は、木の枝をかぶせて清水をかくし、自分だけこっそり飲みに来るようになった。毎日酒を飲んでいるので、すっかりなまけものになり、妻があやしんであとをつけると夫が山奥で酔っ払っている。怒った妻が馬糞を投げ込むと、酒の泉は真水に変わってしまった。

関連 はなたれ地蔵
 働き者の爺さんが山でみつけた美味い水。みると地蔵の鼻からたれた鼻水が川になったものだった。爺さんは石地蔵を家にもちかえり、奥の間にすえて毎日その鼻水を飲んで少しずつ若返った。それを見ていた婆さんは、爺さんが若返って仕事に行くので「奥の間に若い娘でも囲っているか」と思い込んで入ってみると、石の地蔵が鼻水をたらしていた。飲んでみると大変美味だったので、婆さんはもっと鼻水を出そうと地蔵の鼻に焼け火箸をつっこんで穴を広げようとした。驚いた地蔵は跳びあがって屋根をつきぬけてどこかへ行ってしまった。爺さんが山へ行ってみると地蔵はもとの場所にあったが、もう鼻水をたらすことはなかった。山形県。

0916 絵のうまい小僧
 絵のうまい小僧が馬の絵をかいてタンスにしまっておいた。麦の実るころ、馬が畑を荒らすので追いかけてくると足跡がお寺に続いている。和尚さんが小僧の部屋をしらべると、馬の絵の足が泥でよごれていた。和尚さんが絵を柱に貼り付けてしまったので、馬は現れなくなった。

0917 菊娘
 菊の花を咲かせるのがうまい男のところに、ある日うつくしい女がやってきて嫁にしてくれという。申し分ない嫁だったが、いつも足が泥でよごれているので、むりやり風呂に入れて足に湯をかけてやると死んでしまった。次の日、庭先の菊の花をみると、どの花もだらんと頭を下げて萎れていた。

0918 吉四六さん(きっちょむさん)
 吉四六さんが馬に薪をつんで売りに行くと餅屋の主人が「馬ぐるみなんぼや」と聞かれたので五十銭と答え、馬ごと持っていかれてしまった。怒った吉四六さんは「この餅は家ぐるみなんぼ」とたずね餅屋がいつもの癖で二十銭と言ったのでまんまと家を手に入れる。

0919 骨なし太郎
 大人になるまで立って歩けなかった男が、ある日立ち上がり、村中の者に松明を持たせ、真夜中に城を取り囲んだ。殿様は敵の奇襲にあったと思い、城を捨てて逃げた。男はまんまと城をうばいとり、新しい殿様になった。

0920 くわしや切り民部
 殿様の娘の葬式に化け物のくわしやが現れた。家来の民部が刀で切りつけたので化け物は逃げていった。何年かして民部が草津で温泉に浸かっていると、顔に傷のある山伏が「若い娘の死体を盗もうとして侍に切られた。必ず仕返しをする」と言って去った。まもなく民部は病気になって死んでしまった。

0921 田舎者と梯子
 田舎者が京見物に行き宿の二階にとまった。ところが二階になど上がったことがないので下り方がわからない。そこへ猫がきて四つ足で降りてゆくのを見て田舎者もマネすると宿の人に笑われた。

0922 栗子姫
 栗から産まれた栗子姫は、長者の息子に嫁入りすることになったが、山姥にだまされて松の木に縛られてしまう。姫に化けた山姥は何食わぬ顔で長者のところに向かうが、とんびが「山姥つれてどこへゆくピンヨロー」と鳴くので正体がばれる。

0923 長命くらべ
 三匹の猿が一個の栗をめぐって長命くらべをした。一匹は「琵琶湖が茶碗の底くらい浅かった時に産まれた」と言い、もう一匹は「富士山が帽子の高さだった頃に産まれた」という。最後の一匹は泣きながら「その頃に亡くした小猿を思い出した」と言った。

0924 おはぎのお代わり
 村の人からおはぎをもらい、和尚さんは一番大きいのを小僧さんにかくれて便所で食べていた。和尚さんがいない間につまみ食いしてやろうと小僧さんもおはぎを持って便所に行ったら和尚さんと鉢合わせ。咄嗟に「おかわりです」と言ってごまかした。

0925 朝子と夕子
 山の東には朝子という頓知のきく娘がいた。ある日、西の村と頓知くらべをすることになり山のてっぺんへ行くと、西からは夕子という頓知娘がやってきた。ふたりは仲良くなり村人を仲良くさせようと「頓知は引き分けだから、山の両側から道をつくり早く仕上げた村が勝ち」と言った。朝子と夕子が連絡しあって同じ日に道を完成させた。

0926 百足(ムカデ)のお使い
 百足と蛙が宴会をすることになって、蛙は酒を、百足は肴(さかな)を買いに行くことにした。蛙がもどってみると百足はまだ出かけていないので、何をモタモタしているのかと聞いたら百足は百本もある足をばたつかせて「まだ草鞋がはけんのじゃ」と答えた。

0927 杓の底抜け子の子の左衛門
 長者さんは長年働いた下男に「杓の底抜け子の子の左衛門」の家を探し当てたら娘を嫁にやると言った。考えながら歩いていると座頭さんに出会い「杓(しゃく)の底が抜けたら柄と側、子の子は孫だから孫左衛門(江戸川孫左衛門)」と謎を解いてもらう。下男は娘と結婚して長者さんのあとをついだ。

0928 炭焼長者
 お姫様は観音様のお告げで炭焼のところに嫁入りした。貧しい炭焼のこと、たちまち生活に困るが、お姫様が小判を見せて「これでなんでも買える」と教えた。炭焼は小判を知らず「そんなもの裏山になんぼでもある」と大笑い。お姫様が見に行くと裏山は一面の小判で光り輝いていた。

0929 ホトトギスとモズ
 ホトトギスは靴屋で、モズは馬方だった。モズはホトトギスからつけで靴を買っていたがいつまでも代金を払わなかった。モズが虫やトカゲを木にさしておくのは、靴の代金のかわりにホトトギスに餌をとってやっているからだという。

0930 猫と南瓜
 猫が主を恨んで殺そうとしている。それに気づいた鶏は「旦那さんを猫がトテコー」と鳴いた。驚いた飼い主は猫を殺して畑に埋めた。そこから蔓がのびて、大きな南瓜が成った。根を掘ってみると猫の目玉から生えていた。
 

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十月のお話
 
号外 平種子柿(ひらたねがき)
 平種子柿という種なし柿の由来。柿を作っている男が、ある年自分の畑に柿が成らないのに気が付いた。たった一個だけついていた実はやけに大きく、やがて人の頭よりも大きくなって重さで地面につくほどだった。その柿の中から「待った」「いや待ったなし」という声がするので小刀で皮をこじってみると、中で年寄りの仙人と若い仙人が五目並べをしていた。男が見ていると若い仙人が負けそうだったので「その上に打てば勝てる」と教えたら、若い仙人が勝ってしまったので喧嘩になり、仙人たちが碁石を投げながら喧嘩のもとになった男を追いかけてきた。夢中で逃げているうちに仙人は姿を消したが、あとに碁石の玉のように白と黒の柿の種が残っていたので、まいてみると八年後に実がなった。その実には種が入っていなかった。仙人たちが全部投げてしまったからである。山形県。
 
1001 なら梨とり
 病気の母のために梨を取りに行った長男と次男は化け物に食われるが、道ばたに生えている笹竹の忠告をきいた三男だけは難をのがれ、化け物の腹から兄を救い出し、梨を取って家に帰る。梨を食べた母親は全快、親子で幸せに暮らす。

1002 こぶとりじじい
 頬にこぶのある男が、鬼の宴会に迷い込んで見事な舞を披露した。鬼の大将は舞の褒美にこぶを取ってやった。悪い男がマネをして鬼の前で舞うが下手くそだったので逆にこぶをつけられた。

1003 屁こき嫁
 嫁が大きな屁をひるので暇を出された。商人に会い「あの木の梨を全部落とせたら売り物をやる」と約束する。嫁が屁をひると梨が落ちた。商人からもらった荷物を持って嫁ぎ先に戻ると、宝の屁をひる嫁なら帰せないと言われ、幸せに暮らした。

1004 河童のはじまり
 悪い疱瘡神があばれまわっているので人間は病気で死に絶えそうになった。人々は草を束ねて人形をつくり、疱瘡神と戦わせた。疱瘡神は退治できたが、壊れた草人形が川にながれて河童になった。河童の手をひっぱると取れるのはもとが人形だから。

1005 大洪水
 大雨がふって、村が流されてしまった。兄と妹だけが生き残って結婚したが、生まれた子供は気味の悪い魚ばかりだった。空に四角くならんだ星が昇ってくるのを見て、星の形と同じように家をたてると立派な赤ん坊が生まれた。沖縄のお話。

関連 人のはじまり
 人間は火の神様が土をこねて作った。土人形を日に当ててかわかしていると、土の神が現れて土を勝手に使われては困るという。それで火の神様は五十年たったら人形を土に戻すという約束をして許してもらった。だから人間は五十年もすると死んでしまう。鹿児島県のお話。

1006 樽の水
樽の水
 関所の役人は性悪で通行人の荷物をあらためると言っては金品をちょろまかしていた。そこで酒屋は「樽の中身は小便水」とウソをついて通ろうとしたが、ウソに気づいた役人は小便水を美味しそうにあらためた。次の日、酒屋は本物の小便水を樽に詰めて関所を越えようとしたので、役人は酒と思いこんで小便を飲んでしまう。

1007 団三郎の息子
 あるお役人が狸を見て叩き殺そうとしたが逃げられた。その夜、町の外科医が二ツ岩のそばの屋敷に呼ばれ足に怪我をした若旦那の手当をした。数日後、医者が薬を持って訪ねてみると屋敷はなかった。

1008 三峯山の犬
 三峯山では火難盗難よけのお守りをもらうことを犬を借りると言う。ある人が「札だけでなく本当に犬を貸してくれ」と祈願して帰ると、途中で狼に出会い恐ろしくなって引き返した。お札だけでいいですとお詫びすると狼の姿は消えた。

1009 厚東判官
 厚東判官は家臣を呼んで宝比べをした。みなそれぞれに立派な宝を披露したが、家老は特別な宝を持っていなかったので十四人の子供たちを連れてお城にやってきた。それを見た判官は、子に勝る宝はないと言って家老に褒美を与えた。

1010 言い負け狸
 古寺に住む医者は、寺の外から「医者どんの頭をステテコテン」と言う声を聞いて村人に相談する。村の若い衆が古寺に泊まり込んで、声が聞こえるたびに「そんなことを言うものの頭をステテコテン」と大声で言い返した。朝になると、寺の前に大狸が腹を食い破って死んでいた。言い負かされたのがよほど悔しかったと人々はうわさした。

1011 金の卵
 老夫婦が拾った金の卵から男の子が生まれた。神からの授かりものだと大事に育てたが、自分らが死んだら男の子がどうなるのかと心配ばかりしていた。けれど男の子が持ってきた草鞋で土間を三べん踏んづけると若返って幸せに暮らした。

1012 月と星
 お月は先妻の子でお星は継母の子。ふたりは仲良しだが継母は父親の留守にお月を石の唐櫃にいれて山に埋めてしまった。お星は姉を救い出しふたりは月と星になった。父親は六部になって娘をさがしているうちに鉦叩き鳥になった。

1013 三人の兄弟
 父親は三兄弟にお金をわたし、何かを勉強して戻ってこいと言った。末っ子は山姥の家で三年下働きをして不思議な人形をもらって帰る。人形の指図で父親には「盗人になった」と報告し、家で飼っている馬をみんなの前で盗み出して父親にあっと言わせた。

1014 天狗の隠れ蓑
 彦一は竹の筒をなんでも見える遠眼鏡といつわって天狗の隠れ蓑と交換する。蓑で透明になって盗みをはたらき楽しく暮らしていたが、妻が古ぼけた蓑をゴミだと思って焼いてしまう。仕方なく灰を塗って盗みに出かけ、灰がとれて捕まえられる。

1015 旅学問
 愚かな息子が旅に出て難しい言葉を覚えてきた。帰ってみると父親が柿の木から落ちて頭から血を流しているので「父が柿の木に上洛し中ごろより下洛し、大石に魚頭を打ち付け、朱椀・朱膳に相成り候」と手紙を書いて医者に届けた。

1016 田之久
 役者の田之久は大蛇と出会う。大蛇は田之久の名前を聞いてタヌキと聞き間違えて「なら化けてみろ」と言う。田之久が役者の道具で化けたふりをしてみせると、大蛇すっかりうちとけて「わしは煙草のヤニが嫌いだ」と弱点をうちあけた。田之久は「おらは小判が恐い」と言う。村に帰った田之久はヤニを集めて大蛇をこらしめる。怒った大蛇は田之久の家に小判を沢山投げ込んだ。

1017 住吉大神の化身
 神功皇后が三韓征伐にゆくとき、船の前に牛の化け物が現れた。すると船乗りの間から見なれない老人が進み出て素手で牛と戦い海に投げ落とした。それからこの場所を「牛まろばし」と呼ぶようになり、今でも牛窓と呼ばれている。

1018 鼠の預言
 火事が来るぞと鼠たちが大騒ぎ。おじいさんは村の若者を集めて野火止の溝をひろげさせた。まもなく山火事が起こるが村は焼けなかった。ある日おじいさんは病気になった。倉の鼠が「湯の花を煎じて飲めば治る」というのを聞いてそのとおりにすると病気は治った。そこでこのあたりの村では倉に鼠大黒を祀るようになった。

1019 蟻の宮城
 助けた蟻の恩返し。蟻の女王に招かれて、蟻の城にやってきた魚売りは、なんでも出てくる不思議な小袖を手に入れる。魚売りの妻が小袖をみつけ、こんな立派なものはどこからか盗んだに違いないと、あわてて小袖を焼いてしまった。すると焚き火が家に燃え移ってすべて焼けてしまう。魚売りは「ない袖はふれない」と嘆いた。

1020 盗賊と雄花と雌花
 貧乏な夫婦が山でシイの実を拾っていると盗賊がやってきて妻をさらっていった。夫は盗賊の隠れ家に忍び込むが、来客を告げる不思議な花が咲いてバレそうになる。妻が「自分の腹に子が出来たから花が咲いた」とごまかして、盗賊が寝入った隙に夫と逃げ出した。隠れ家から持ち出した宝で夫婦は大金持ちになってしあわせに暮らした。

1021 金の鶏
 六部さんは一宿一飯の恩義にと、金の杯に呪文をとなえ金の鶏を呼び出して見せた。長者は杯がほしくなり、六部を殺して淵に沈めてしまっった。しかし呪文を聞きそびれたので鶏が出てこない。怒った長者が「畜生め出てうせろ」と杯を庭に投げ捨てると、金の鶏が現れて逃げてしまった。

1022 かかみみせ
 田舎者が大阪へ行くと、かかみみせ(鏡店)の看板を見て「かか見せ」と勘違いした。店の中には美しい女がいたので穴があくほど顔を見て帰った。村の若い男が大阪にいくとそんな店は見あたらず「ことしやみせんしなんどころ」の看板を見て「今年や見せん、まだ死なん」と読みガッカリして帰った。

1023 蜘蛛の玉
 「そのあばら屋を千両で買おう」貧乏な男のもとに転がり込んだ儲け話。どうせ売るなら少しでも高くと、男は欲を出して家中を掃除した。それを見た買い手は「こんな家に価値はない」と落胆して帰ってしまう。買い手がほしがっていたのはボロ屋に巣くう蜘蛛の玉だった。

1024 塩の石臼
 正直者の若者が、こびとにもらった不思議な石臼。回せばなんでも手に入る。欲深い兄が石臼を盗み、船に乗ってにげてしまう。まずは小手調べ。塩出ろ、塩出ろと唱えながらごーろごーろと臼をまわせばわんさわんさと塩が出る。けれども止め方がわからない。塩の重みで船は沈み、それでも石臼は止まらない。海の水が塩辛いのは不思議の石臼が回り続けているから。

1025 カラスとタカ
 むかしカラスとタカは真っ白だった。白いばかりではつまらないと、墨で互いに模様を描いた。器用なカラスは念入りにタカの体に模様を描いた。こんどはオラにも描いてくれよとカラスが墨を渡すと、タカは面倒くさくなってカラスに墨壺を投げつけた。おかげでカラスは真っ黒になり、今でもタカを見ると目の敵にしている。

1026 コウノトリの恩返し
 塩売りの親子は貧乏で家もない。ある日息子は網にかかったコウノトリを逃がしてやった。網は殿様の持ち物で、十両の大金を納めなければ手打ちにすると言い渡される。途方にくれる親子のもとに美しい娘が現れて、橋の下を掘ってごらんと言うのだった。はたして親子は小判の壺を掘り当てて分限者になる。大阪の鴻池家の由来である。

1027 地蔵の懸想
 常楽寺の石地蔵。深諦寺の日限地蔵に恋をして、よなよな出歩き江川橋を渡る。「地蔵のくせに夜遊びとは何事ぞ」常楽寺の住職は地蔵のまわりに柵をして、お経を読んで封じ込めた。それからというもの、橋をとおる夫婦は地蔵のやきもちで仲違いをすると言われている。

1028 北風長者
 北風という名の蛸釣りは、金比羅参りで長者どんと知り合った。「わしの家に
は壷が千もある、ゴマの柱に萱の屋根」蛸釣りの言葉に長者どん「五万の柱に壷が千個もある大屋敷に住むとは大したものじゃ」と思いこみ、娘を嫁にやることにした。嫁いでみればあばら屋で、これも運命とあきらめて、娘は夫と一念発起。持参金を元手に商売をはじめ、やがては本当の長者になったという。

1029 南風と北風
 南風が子供たちにいったとさ。「山には美味しいものがある。おいらの尻尾につかまればつれてってやろう」子供たちは南風のしっぽに乗って遠い山まで遠い山までやってきた。けれども気まぐれな南風。子供たちを忘れて自分だけ帰ってしまう。泣きながら歩いていると山奥に大きな館があって、風の母親が息子たちと住んでいた。話を聞いた母親は、しっかり者の北風を起こして子供たちを村に帰してやったとさ。

1030 目ひとつ五郎
 嵐にあった船乗りは見知らぬ島に流れ着く。ひとつ目の大男につかまって、ほうりこまれた馬の穴。船乗りは隙をみはからい、ひとつ目五郎の目をつぶす。あわてた五郎は手探りで、船乗りを探すがみつからない。船乗りは馬の皮をかぶって逃げ出した。

1031 狸の糸車
 罠にかかった古狸を木こりの妻が助けてやった。冬のあいだ山をおり、春にまた戻ってくると、山小屋に置いてきた糸車の前に、美しい絹糸が山と積まれていた。助けた狸の恩返しと思い、木こりは罠をかけるのをやめたという。
 

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十一月のお話

1101 雉も鳴かずば
 父親は病気の娘のためにたった一度の盗みを働いた。元気になった娘が小豆粥を食べたと言うのを聞いて、村人は盗人の父親を人柱として川に沈めた。猟師が雉の鳴き声に鉄砲を撃つと、娘が現れて「雉も鳴かずば打たれまいて」と言って立ち去った。

1102 一寸法師
 指に足りない一寸法師。子のない夫婦が自分の垢をこねて作った小さな人形に命が宿る。法師はお椀の船で都へのぼり、あるお屋敷で雇われた。お姫様をさらいにきた鬼に飲まれ、針の刀で腹をつついて吐き出される。打出の小槌で大きくなり姫君と結婚した。

1103 疫病神
 本所石原町に、はりま屋惣七という男がいて、ある日見知らぬ男から「犬が恐いので道連れになってほしい」と頼まれた。惣七が承知すると、男は自分が疫病神であることを打ち明け、毎月三日の日に小豆の粥を炊く家には入らないと教えた。

1104 ごんぞうむし
 病気の母親を養うため、息子は高利貸しのごんぞうに金を借りた。食うや食わずの生活で、借りたお金を返すあてなどありゃしない。ごんぞうの取り立てに悩んでいると、白髪の老人が現れて不思議な下駄をさずけてくれた。転ぶと小判の出る一本歯。小判を出すと背が縮む副作用つき。欲深いごんぞうは下駄で転びつづけ虫になる。

1105 もととり山
 その洞窟は椀を貸す。足りない数を紙に書き入り口に置くと、翌日には必要な数の椀が揃っている。あるとき椀を返さない男がいた。その男に子供が生まれるが五年たっても歩けない。ある日男の子が立ち上がり、米俵を二俵かついで椀借りの洞窟に消えて行った。洞窟の奥から「米二俵なら椀のもとがとれた」と不気味な声が。

1106 鉢かづき姫
 母親が死ぬ時、姫の頭に金銀の飾りをのせ、大きな鉢をかぶせて隠した。鉢をかぶった姫は継母に家を追われ入水するが死ねなかった。漁師に救われ長者どのの下働きに入り、末の息子に見初められる。しかし長者は結婚に猛反対、姫を切り捨てようとして鉢が割れ、中から財宝と美しい姫が!

1107 山姥
 娘が藤の木から糸をつむいでいると、山姥が現れて仕事を手伝ってくれた。山姥は明日も来ると言ったが、娘の両親は山姥を嫌い、焼いた石を食べさせて殺してしまう。それから娘の家は傾いて一家はちりぢりに。悪いことをしていない山姥を殺したせいだと人々は噂した。

1108 友助狸
 狸は人間になりたくて、毎日仏さまに祈って暮らしていた。ひとりぐらしのお婆さんをなぐさめようと、庭師に化けて出入りしていたが、自分の寿命が尽きるのを知った狸は、お婆さんに正体をあかして姿を消した。しばらく後、猟師が売りに来た毛皮があの狸のものだと知り、お婆さんは毛皮を買い取ってねんごろに弔ってやった。

1109 イワナの怪
 男たちが川に毒をながして魚をとっていると、僧侶が通りがかった。「坊さん、黍団子でもどうかねと」すすめると、僧侶は団子を食べてから、「毒はよくないので釣るのがよかろう」とさとして立ち去った。男たちがそれを聞かず毒を流すと巨大なイワナがあがった。さばいてみると腹から黍団子が出てきた。

1110 本殺しと半殺し
 江戸から来た侍が山の中で道に迷う。やっとみつけた家に泊めてもらうと夜中に老夫婦が話し声が。「明日は本殺しがいいか、お手討ちがいいか」「江戸の人だから半殺しがよかんべ」次の朝、侍が起きてみると老婆が「半殺しを召し上がれ」とボタモチをすすめた。

1111 猿の仲裁
 二匹の猫がにぎりめしを拾ったが、どちらが大きい方を取るかで喧嘩になった。そこへ猿がやってきて「そんなら同じ大きさにしてやろう」と大きい方をかじり、ちょっとかじりすぎたからと、もう一方もかじり、何度もやって全部食べてしまった。

1112 犬の足
 犬が片足をあげて小便をするのはどうしてか。むかしむかし、犬は三本足だった。歩きにくいのでもう一本増やしてほしいと神様に頼んだ。神様は歩かなくていい香炉から一本とって犬につけた。それから香炉は三本足になり、犬は神様からもらった足を汚さないように、片足をあげて小便をするようになったとさ。

1113 蛇女房
 妻の正体は蛇だった。男が産屋を覗いたので蛇は本性を隠せなくなった。生まれた息子がむずかる時はこれをしゃぶらせておくれと自分の右目を抜き、夫に手渡した。息子が右目を吸い尽くしたので、妻が住む沼へ行き相談すると、蛇は自分の左目を抜いてめしいになってしまう。成長した息子は母親を恋しがり、母の住む沼を訪ねてやってくる。再会の喜びに流した涙で蛇の母は人間の姿にもどることができた。

1114 さだ六とシロ
 さだ六は天下御免の巻物を持つ腕のいいマタギだった。猟師というものは子連れの生き物を撃ってはいけない。けれどさだ六は子連れの猪を撃ってしまった。そうしたある日、山で獲物を追ううちによその国に踏み込んで役人につかまってしまう。こんな時にかぎって天下御免の巻物を忘れてくるなんて。猟犬のシロが巻物をとりに行ったが、とうとう間に合わずにさだ六は処刑されてしまった。シロは主人の亡きがらをひきずって国境の峠まで来ると、いつまでも悲しげに遠吠えを続けた。

1115 水の神の寿命
 旅の帰りに日が暮れた。人気のないお堂で一夜を過ごすと水の神が現れて「この先の村でお産があったが産まれた子供は七歳までの水の命」という。思えば身重な妻はそろそろ臨月だ。あわてて村に帰ると自分の妻に娘が生まれていた。大事な娘を取られてはたまらないと水から遠ざけて育てるが、七つのお節句に叔母に化けた水神にさらわれそうになる。

1116 狐の恩返し
 助けた狐が釜に化けて恩返し。お爺さんは狐が化けた釜を寺に売った。隙をみて逃げ出した狐は、今度は娘に化けて「女郎屋に売ってください」と言う。美人で話し上手の狐の女郎さんは大人気。女郎屋も大もうけしたところで隙を見て逃げ出した。最後に狐は馬に化けて長者さんの屋敷に売られて行くが、働きすぎて死んでしまった。おじいさんは屋敷にお堂をたてて狐をまつってやった。

1117 狸の茶釜踊り
 「寺の庭から向こうの山まで橋をかけて踊りますから笑わないで見てください」と言って狸は茶釜を持って踊り始めるが、踊りがあまりにおかしいので和尚さんは笑ってしまう。とたんに橋は消え、寺の庭に蓋のない茶釜が落ちていた。

1118 分福茶釜
 茂林寺の和尚の弟子は守鶴という名前である。寺で盛大な茶会を開いた時、守鶴が調達してきた茶釜で湯を沸かすといくら茶をたててもお湯が尽きなかった。その夜、和尚が庫裏へゆくと、茶釜には狸の首がついており反対側には尻尾も生えていた。守鶴は狸で茶釜に化けていたのである。守鶴は茶釜にばけたまま自ら見せ物になり、儲けたお金で寺はますます栄えた。

1119 サンコ
 山で出会ったお婆さん。爺さんは狐が化けたのだと思い「尻尾が出ているぞ」とかまをかけた。婆さんは驚いて狐の正体を表した。「不思議な頭巾をかぶれば何でも見えるのさ」という爺さんの出まかせに、狐は宝の玉と頭巾を交換するが間もなく騙されたことに気づいて大激怒。育ての親に化けて玉を取り返す。爺さんは狐の神様に扮装して玉を奪い返す。狐は殿様に化けて宝を取り戻しに行くが、爺さんに犬をけしかけられて降参。それから人を化かすことがなくなった。

1120 鼠の相撲
 長者さんの家の鼠と、貧乏な老夫婦の家の鼠が相撲をとった。やせっぽちの貧乏鼠は何度やっても勝てなかった。老夫婦が餅をついて鼠にたべさせると、急に力がわいて勝てるようになった。長者鼠は「オレにも餅を食わせろ」と家から小判を引いてきた。おかげで老夫婦は豊かになり、幸せに暮らした。

1121 雁取屁
 爺さんは蕎麦餅を食って腹がふくれてきた。屁が出てしかたがないので尻に栓をしてこらえていた。とうとう我慢しきれなくなって、大きな屁をひると、栓がぽーんととんで空を飛ぶ雁にあたって落ちてきた。隣の爺さんがまねをするが、雁とまちがえて妻に栓を当ててしまう。

1122 片葉の蘆
 旅の僧侶が盗賊に襲われた。僧侶が背負っていた厨子からまばゆい光があふれ出し、気づいてみると盗賊たちは逃げたあとだった。ところが厨子の中から観音様の像が消えている。僧侶があわててあたりを探すと、バラバラになった観音様がころがっていた。いくら探しても片手だけみつからない。ふと見ると、あたりに生い茂る蘆(あし)の葉が、片方だけなくなっていた。それ以来、このあたりの蘆は片葉の蘆と呼ばれている。

1123 薬売り
 正直と親切がとりえの薬売り。何かの手違いで地獄へ落とされてしまった。けれど薬売りはへこたれない。釜ゆでにされれば売り物の薬を湯にまぜて難を逃れ、針の山に追い立てられれば足の裏に膏薬を貼って難をのがれた。苦しんでいる亡者たちにも薬をわけてやった。亡者が誰も苦しまないので閻魔様は大激怒。「おまえのような男は極楽へ追放じゃ」かくして薬売りは極楽行きに。

1124 狸の恩返し
 冬になると狸がやってくる。和尚さんは囲炉裏の火であたたまるようにと狸を招き入れた。ある日和尚さんは自分が死んだあとのことを考えた。「小判が三両もあれば、世話になった村の衆に分けてやれるんじゃがのう」それから間もなく狸は姿を消し、何年かするとひょっこり帰ってきた。ぼろぼろになり、やせ細った狸の手には砂金のつまった袋があった。狸は佐渡へわたり、金山で働く人夫の草鞋から金の屑を集めていたのだ。

1125 猫じゃ猫じゃ
 飼い猫が頭に豆絞りの手ぬぐいをしておかしな手振りで踊った。おかみさんはそれを見て大喜び。猫は「このことは誰にも話すな」と言うが、がまんしきれず夫に話してしまう。翌日おかみさんは猫にかみ殺されて死んでしまった。

1126 姑を毒殺すること
 このクソ婆ぁ、殺してやるっ! 度重なるいびりにお嫁さんがついにキレた。医者に相談して毒を手に入れ、毎日すこしずつ食事にまぜて食べさせた。今日死ぬか明日死ぬかと思いながら親切なふりをして暮らしていると、やがて姑も心がやわらかくなり「お前はほんとうにいい嫁だよ」なんてことを言い出すように。あわてた嫁が医者にかけこんで毒消しをもらおうとするが、医者は「最初から毒じゃなかった」と大笑い。

1127 兎と狼
 兎と亀のかけくらべで負けた兎のお話。亀に負けた兎は村中の笑いもの。誰も兎を相手にしてくれなかった。ところが兎の村に狼がやってきて「毎月三匹の子兎をよこせ」と言うものだからさあ大変。名誉挽回の大チャンス。負け兎は狼のところへで出かけていって「子供らは狼様の顔が恐いと言ってます。後ろを向いててくださいませんか」そうして隙を見て狼を崖からつきおとした。

1128 ネギを持て
 殿様に蕎麦をさしあげると「薬味を持て」とおっしゃる。薬味という言葉を知らない村人がお付きの方にたずねると「蕎麦の薬味はネギに決まっておる」と言われて禰宜どのを連れてきた。しかし殿様はすでに食事を済ませ「ネギはもうよい、埋めておけ」とおっしゃる。埋められた禰宜どのがぐったりしてきたので殿様に申し上げると、葱のことだと思いこんだ殿様は「小便でもかけておけ」ときびしいお言葉。村人がその通りにすると禰宜どのは死んでしまった。

1129 渋右衛門の犬
 猟師の渋右衛門は狼の子を育てて猟犬にしていた。あるとき犬が激しく吠えて渋右衛門の着物にかみついた。「育てられた恩も忘れるとは所詮は獣か」渋右衛門が狼犬を撃ち殺すと、岩陰から大蛇が現れて渋右衛門を襲った。すんでのところで大蛇を撃ち殺してのがれ、狼犬はこのことを知らせたかったのかと後悔した。渋右衛門が犬を埋めて柳の枝を刺すと、根付いて巨大な木になった。

1130 おぶさりてえ
 おぶさりてえは高い木の上に住んでいて、道行く人に「おぶさりてえ」と呼びかけた。ある日、通りがかった侍が「そんなにおぶさりてえならおぶされ」と言うと、化け物がおりてきて侍におぶさった。そのまま家に連れ帰り床の間におろして寝てしまった。翌朝見ると化け物は黄金のかたまりになっていた。
  

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十二月のお話

1201 唐辛子売り
 宿にあぶれた唐辛子売りと柿売り。町はずれのお堂で夜を明かすことにした。腹がへったので柿売りは売り物の柿を食べ始めた。唐辛子売りが時分にも柿を分けてくれと頼むが柿売りは承知しない。怒った唐辛子売りは唐辛子を全部食べてしまった。寒さが厳しくなり、柿売りは凍えて死んでしまったが、唐辛子売りは生き残った。唐辛子は体を温める食べ物である。

1202 緋鯉問答
 群馬県碓氷郡下野尻の龍潭寺には大きな池があり、身の丈三尺もある緋鯉が住んでいる。ある日、問答にあけくれる坊さんたちのところに緋色の衣をまとった僧があらわれて、坊さんたちの難問をかたっぱしから解いてしまった。坊さんたちがあやしんで僧侶の後をつけてみると寺の池に姿を消したので、長生きした緋鯉が化けたのだとわかった。

1203 山姥と馬子 
 正月用のブリを積んで馬子が峠にさしかかる。そこへ山姥が現れて、積荷と馬を食べてしまった。命からがら逃げ出して、隠れた家は山姥の住みか。山姥は帰ってくると大きな釜の中で寝てしまった。馬子はかまどに火を付けて山姥を蒸し殺す。山姥の黒焼きを疱瘡の薬として売りさばき、馬子はすっかり大金持ちになった。

1204 三つ星
 お母ちゃんが帰ってくるまで戸をあけてはいけないよ。七人の息子にそう言い残して母親は隣町へ用足しに。峠の道で母親は山姥につかまり食い殺された。母親に化けた山姥は何食わぬ顔で家にあがりこみ末の息子を食い殺した。山姥は次々に子供を食い殺し、とうとう兄弟が三人になってしまった。それを見ていたお天道様は金の綱をおろして子供をひっぱりあげた。空にのぼった子供たちは三つ星様になったという。

1205 芋娘
 娘が自然薯を掘っていると、穴の中から女の子が出てきた。その子はあっという間に大きくなって、ある日、金沢見物に行くと家を出たきり帰らない。一カ月くらいすると金沢から立派なかごが迎えにきて、芋娘が名家の若旦那と夫婦になったこと、娘にも縁談があるので一緒に来てほしいと告げられた。

1206 北斗七星と北極星
 長者どんの七人の息子はやんちゃざかりの乱暴者。寺子屋で一緒に学ぶ貧乏人の子供たちと喧嘩ばかりしていた。ある日、七人兄弟はと槍を持って貧乏人の子を追いかけ始め、先生が止めに入るが騒ぎはおさまらず、全員そろって星になってしまった。

1207 片目の牛
 片目のつぶれた牛をどうやって高く売るか。賢い若者は鶏の目に膏薬を貼って「食べちゃえば片目でも味は同じ。でも片目だから安くていいよ」と売りに行った。買い取った人が膏薬をはがすと目が治っていたので食べずに飼うことにした。次に若者は片目の牛に膏薬を貼って売りに行った「片目だから安くするよ!」鶏の話を聞いた町人たちが集まってきたのでセリになり、誰もほしがらない片目の牛に五両の値がついた。

1208 鬼餅
 村をおそう悪い鬼を退治するために娘は鬼の住みかをたずねた。娘は鬼に鉄くず入りの餅をすすめ、自分は普通の餅を食べた。鬼は娘が鉄を食べると思い込んで逃げてしまった。それからこの村では12月8日に餅を作って食べるようになった。

1209 狐化け
 「おらは見ただ。狐が葉っぱを頭さのっけて人間の親子に化けたのを!」男は狐の親子に石を投げて子供を殺してしまった。ところが狐は本性を現さない。母親が泣き叫んで怒るので、男は頭を丸めて罪を償うことにした。近くの寺で髪を剃ってもらうと、あまりの痛さに我にかえるとあたりは野っ原で男の髪は狐の歯で食いちぎられていた。

1210 あとかくしの雪
 旅の坊さんが食べ物を乞いに来た。貧乏なお婆さんは他人の畑で大根を盗み坊さんに食べさせた。朝になれば足跡で誰が犯人かばれるだろう。坊さんは法力で雪をふらせて足跡をかくした。坊さんの正体は弘法大師。

1211 よぶすま
 雪のふる夜に歩いていると赤子を抱いた女と出会う。「雪の中に財布を落としてしまいました。しばらくこの子を抱いていてください」抱いてやると赤ん坊なのに石のように重い。気が付くと女の姿はなく、男は雪に埋もれて死んだ。

1212 雪女郎
 新潟の雪女は左右の足の長さが違うので、歩く時にスーットンという足音がする。夜遅くまで起きている子供がいると、おなかの中に手をさしこんで肝を抜くと言われている。

1213 不思議な竹筒
 ほら吹き男が竹筒を覗いて「何でも見通す」と自慢していると、殿さまが男に捜し物を依頼する。嘘がばれたら手打ちになると怯えていたら、男の評判を聞いた狐が「すべて白状するから許してください」と言った。

1214 思い違いをした宮大工
 ある宮大工がまちがえて柱にする木を一本だけ短く切ってしまった。宮大工の妻が知恵をめぐらせて「それなら柱の下に大きな沓石(くついし)をはかせればいいというので、その通りにするとお宮は立派にできあがり、村人たちは口々に大工を褒めた。けれども失敗がばれるのを恐れて、宮大工は秘密を知っている妻を殺してしまった。それから宮大工の家は運が悪くなり、殺した妻のたたりではないかと思い、化粧道具の櫛とかもじに御幣(ごへい)をそえて拝んだ。妻の怒りがとけたのか、宮大工の家にはまた運が回ってきた。群馬県邑楽郡のお話。

1215 足跡判断
 むかし群馬の中之条という町はたいそう不便なところにあった。人々はもっと便利なところへ町ごと引っ越そうと話しあったが、どこへ行けばいいかわからなかった。頭のいい男が現れて「雪がふったら旅人の足跡を調べて、足跡が集まるところが便利な場所」と言った。こうしてできたのが今の中之条である。

1216 慈悲心鳥
 霧積温泉のお湯が止まった。天狗が現れて「十一歳の女の子を人身御供にさしだせばお湯が出る」というので、旅人の娘を差し出したところお湯が沸き出した。母親は悲しそうに「十一 十一」とつぶやきながら鳥になった。これが慈悲心鳥(ジュウイチ)のはじまりである。

1217 貧乏神
 いつまでたっても儲からない。不運な男に貧乏神が言ったとさ。「お前の嫁はかまどのまわりにゴミを捨てるので居心地がいい。金持ちになりたいなら嫁に暇を出すことだ。それから大晦日と元旦に大名行列が通るから、殴り込んで殿様をぶったたけ。いいな。わかったか」行列は金運の化身。殿様を叩くと小判がザクザク。大金を手に入れた男はお嫁さんに暇を出して幸せに暮らしたとさ。

1218 上総の和尚星
 ある寺の和尚が村人に憎まれて殺されてしまった。和尚は「自分が死んだら雨の前に南の空に現れる」と言い残して死んだ。その言葉の通り、雨のふる前には南の空に見なれない星が出たので上総の和尚星と呼んで恐れた。

1219 つらら女
 凍えるような冬の夜。見知らぬ女がやってきて嫁にしてほしいという。そのまま夫婦として暮らしていたが、ある日いやがる妻に風呂をすすめると、それっきり姿を消してしまった。男は後妻を迎えるが、再び冬が来るともとの妻が戻ってきて大激怒。妻はつらら女の本性を出し、男を取り殺した。

1220 天の岩戸
 太陽の女神は嵐の神と喧嘩をして洞窟にこもってしまった。おかげで世界はまっくら闇。天の神様は相談して、洞窟の前でどんちゃん騒ぎ。女神が外の様子を見ようとして戸をあけたら世界に光が戻ってきた。

1221 継子といちご
 鬼のような継母。野いちごを見つけるまで帰ってきちゃいけないよと、継子にかごを持たせて真冬の森に追い出した。娘は山で出会った老人にイチゴをもらい家に帰る。あてがはずれた継母は、次は紫のイチゴを見つけておいでというが、今度も娘は老人に助けられる。性悪な継母はイチゴの毒にあたって死んでしまった。

1222 はなたれ小僧
 貧乏な門松売り。売れ残った角松を「乙姫様に」と海に流すと竜宮の使いが現れて、不思議なはなたれ小僧様を置いて行った。小僧の力で長者になった男は汚らしい小僧さんをうとんじて無理やり鼻水をふいてしまう。すると屋敷も倉も消え、小僧さんも姿を消してしまった。

1223 米倉と小盲
 貧乏な門松売り。売れ残った角松を「乙姫様に」と海に流すと竜宮の使いが現れて打出の小槌をくれた。門松売りは小槌で米と蔵を出して裕福になるが、隣の欲深爺が小槌を借りて「こめくら出ろ」と言うと、小盲がでてきて欲深爺をとり殺した。

1224 大歳の客
 旅の坊さんが一夜の宿をもとめてやってきた。坊さんを親切にもてなした老夫婦は不思議な力で若返る。噂を聞いた東の長者が坊さんに若さをねだると猿にされてしまった。

1225 王子稲荷
 王子のお稲荷さんは、関東の稲荷神社の総元締めである。毎年、大晦日の夜になると、関東中から狐たちが集まってきて、大榎の下で身なりをととのえて、王子稲荷まで狐の行列をした。地元の人は狐火の数で翌年の豊作を占った。

1226 年越しの亀
 貧乏なお爺さんは餅つき棒を売りに行くが売れなかった。乙姫様にとどくようにと海に流すと、海から亀が出てきて人の言葉を話し始めた。亀を見せ物にして大金持ちになるお爺さん。隣の欲深爺が亀を借りて真似をするが、亀がしゃべらないので怒って殺してしまう。亀の墓からタケノコが生えてきて、天の金蔵を突き破った。落ちてきた金銀財宝でお爺さんは一生しあわせに暮らした。

1227 松の嫌いな女神
 姉崎の女神様はマツが嫌い? 留守がちな夫の神様を待ちくたびれて「待つはいやじゃ」と言って泣く女神様。氏子衆は一致団結、姉崎村の松を全部ひっこぬいてしまった。それからは正月にも松ではなく杉や榊を飾るようになった。

類話 松の嫌いな聖天様
 妻沼の聖天様は松嫌い。川向こうの呑龍様と喧嘩して松葉で目を突かれたから。おらが村の聖天様がお嫌いなものを生やしておいちゃならねえ。妻沼の衆はそこいら一帯の松の木をひっこぬいて、正月にも松を飾らなくなったとさ。

1228 孝行者と金の壺
 体の弱った母親に滋養をとらせようと思うが貧乏ゆえに何も買ってやれない。ちょうど妻が乳飲み子をかかえているので「子はまたさずかるが親は二度とない。お乳はおっかさんにやろう」と決心して、子を畑に埋けに行った。畑で黄金の入った壺をみつけ、子も母親も養うことができた。

1229 笠地蔵
 貧乏で心優しいおじいさん。町に笠を売りに行くが売れなかった。帰る途中でみつけた六地蔵。売れ残った笠をかぶせてやると、地蔵たちが米と小判を持って恩返しにやってきた。

1230 福神になった貧乏神
 大晦日の夜に貧乏神が泣きながら現れた。この家には明日から福の神がやってくる。住み慣れた家から出て行くのは悲しいのだという。人のいい夫婦は貧乏神を気の毒に思い、いつまでもいてくださいと引きとめた。夫婦に励まされた貧乏神は福の神と相撲を取って勝ち、打出の小槌で宝を出して家を立派にした。

1231 大歳の火
 たやしてはならない囲炉裏の火を消してしまったお嫁さん。あわてて火を借りに出かけると、たき火をかこむ男達に出会う。「仲間が急に死んでしまった。明日は元旦だから葬式も出せねえ。しばらくのあいだ死体をあずかってくれたら火種をわけてやろう」お嫁さんは火種をもらい死体をかついで家に帰った。夜が明けて見ると、死体と思ったのは金の塊だった。お嫁さんは幸せをもたらす福嫁としていつまでも大事にされて暮らした。

 
 【今昔かたりぐさ】は携帯電話用のメルマガとして発行する予定でしたが、諸般の事情で PC 用メルマガに路線を変更して現在に至っています。初期の頃に書いたものは 100 文字にこだ わって読みにくくなっておりますが、順次修正する予定です(って直してもろくにかわらなかったりして)。2005年はまた一月にもどってメルマガを配信します。

 2004年の課題は366日分のお話をそろえることで、2005年の課題は内容を見直してもうちょっとましな文章にすることだったのですが数ヶ月分やって挫折。2006年はちょっと別のことをしたいです(やってるこっちもだんだん飽きてきた^^;)。

◆参考図書◆
(リンク先で通販できます)

 このコーナーで紹介している昔話は、自分の本棚にあった本と図書館で読んだ本を参考にしています。タイトルを覚えているものだけ下にあげてみますが、このほかにもいろんな本からメモをとったような気がします。本をそのまま書き写すのではなく、あくまで再構成して書いてるつもりなんですけど、著作権を侵害するほど同じになってたら叱ってください。削除します。

三省堂ブックス『日本昔話百選』稲田浩二/稲田和子・編著
 珍獣様が持っているのは 1971年に出た古い版です。2003年に改訂版が出てたみたいです。

未来社『日本の民話』シリーズ
 何巻まであるかわからないのですが、何十巻もある民話の本です。一部の巻は注文すればまだ手に入るかもしれませんが、ほとんどは買えなくなってると思うので、探すなら図書館をあたったほうがいいと思います。

日本放送出版協会『日本の昔話』シリーズ
 NHKのテキストを出してる出版社ですね。これまた何十巻もある昔話の本で、全部まるっともう買えません。図書館でさがしてください。

ぽぷら社『日本むかしばなし』シリーズ
 「日本むかしばなし・○○のはなし」というようなタイトルで何冊も出ている子供用の本です。図書館にあった本なのですが、今は購入できないようですね。なんとなく創作民話臭い話が多いので、今となってはこの本から話をとったのはどうかなって気はするんですけど。

宝文館出版『遠野の昔話』佐々木喜善・著
 タイトルのとおり遠野の昔話を集めた本で、かなりそそられる話が収録されてます。でも現在は入手不能のようです。 

遠藤書店『米沢の民話・雪女房』武田正・編
 米沢の昔話を集めた本で、地元の小さな出版社で作られたものみたいです。現在は入手不能みたいです。

ちくまライブラリー『昔話の年輪80選』
 買えません。図書館で(以下ry

東北出版企画『鼻たれ地蔵 やまがたの民話』
 地元の出版社が作った100ページあまりの小さな本です。現在はもう手に入らないようです。

日本標準『群馬のむかし話』群馬昔ばなし研究会編
 1977年(昭和五十二年)初版。この本自体はもう買えませんが同じ出版社から『読みがたり群馬のむかし話』という本が出てるようです。編者も同じなのでリニューアルして出しなおしただけではないかと思います(未確認)。

 
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