Re: 珍獣日記ぼたにかる(画像付、ほんとに重いよ) ( No.26 ) |
- 日時: 2003/04/28 21:23
- 名前: ちんじゅう
- 4月28日(月)
マンネンロウは咲き終わり、タチジャコウソウが花の盛りを迎えた(やっぱり和名で書くと格調高いわね)。タチジャコウソウことタイムの花は小さくてうまく写真にとれない。カメラ買おうかな…でも、性能を求めると高いし、稼ぎにほとんど結びつかないから完全に無駄遣いになってしまう。
しばらく前に植えたオレガノ(>>5)は、あっという間に大きくなって今はこんな具合。オレガノの和名は紫蘇薄荷。漢字で書くと堅苦しい。でもシソハッカと片仮名で書くと軽薄で座りが悪い。
同じオレガノ属で、マージョラムというやつは、和名を花薄荷といって、こちらはだいぶやわらかい名前だ。けれど、片仮名でハナハッカと書くと、たちまち安っぽくなるから不思議。
スペインの詩人フアン・ラモン・ヒメネスの散文詩『プラテ−ロとわたし』を初めて読んだのはいつだったかもう忘れてしまったけれど、ノーベル文学賞作家の作品ばかり集めた何冊にもわたる分厚い本を図書館で借りて読んだのだ。訳者は長南実という人だった。
「プラテーロは小さくて、むくむく毛が生え、見たところあまりやわらかいので体全体が綿でできている、骨なんかないとさえ言えそうだ。黒玉いろの瞳のきらめきだけが、まるで黒水晶の甲虫みたいにこちこちしている」 そんなふうに始まる文章がやけに気に入って、バカみたいに全文を書き写した記憶がある。こちこちしている、なんて出てきそうで絶対に出てこない言葉だ。スペインのアンダルシア地方。その片田舎にあるモゲールという田舎町を舞台にした何気ない日常をつづっている。でもエッセイじゃないし、小説でもなくて、読めばあきらかに詩だとわかる文章だった。詩であることに気づかずに読むと、退屈なお話かもしれない。
その本に、ハーブの名前がいくつか出てくる。どんな場面に出てきたかは、とんと思い出せないのだけれど、花薄荷という言葉だけはよく覚えてる。訳者の長南実さんは花薄荷にマヨラナと片仮名をふっていた。花薄荷という漢字表記にマヨラナというやわらかい響きの仮名がとても似合って夢のような心持ちがした。
どんな植物なのか、その頃は知らなかった。図鑑やハーブの本を読むと、マヨラナというのがマージョラムと同語源らしいことがなんとなくわかった。そして同属のオレガノのことをワイルドマージョラムと呼ぶことも。どちらも見た目はよく似てる。スペインに生えているのはどちらだろう。両方とも生えているかもしれない。どちらでもいいことだけれど、ヒメネスが mayorana という言葉でどんな花のイメージを呼び出そうとしたのか気になった。
プラテーロというのは作者のヒメネスが実際に飼っていた灰色のロバの名前だそうだ。日本語なら白銀号とでも言うのだと思う。ラプラタ川(la Plata)のプラタと同語源の言葉だから。 英語のプラチナとも一緒だけれど、英語を持ち出すと急にイメージが陳腐になる。紳士気取りの店員がぴかぴかのショーケースで守っているゼロが五つぐらいついたブランドものの指輪なんて、この場合あまり想像したくない。
モゲールはウェルバという街から大きな河を越えたところにある。何もない小さな村だった。どこかにヒメネスの記念館があるはずだったけれど、なんの準備もせずにふらりとでかけたのでみつからなかった。だだっぴろい麦畑。まっすぐな畝を見れば巨大なトラクターで大規模に耕して作っているのがわかる。こんなのはヒメネスの時代にはなかったかもしれない。けれど、白い馬が荷車を引いていたし、村はずれの空き地で小一時間ぼーっとしていたのに、車一台通らなかった。バルセロナでオリンピックが開催される一年か二年くらい前のことだ。
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