やあみんな、ひさしぶりだぜ。ゴールデンウィークはどうだったかな。ららが榛名湖へ行くっていうから「おみやげは伊香保名物湯の花饅頭だぜ」と頼んだのに、「うっかり手がすべって東松山の尻あぶり饅頭を買っちゃったわ。文句があったら坂上田村麻呂に言ってちょうだい」だってさ。
サカノウエノタムラマロって誰だよってららに聞いたら、ヤマトチョーテーの命令でネイティブジャパニーズのエミシをやっつけにきたセーイタイショーグンだって言ってた。らら、オレサマはメリケンだけど江戸っ子なんだ。日本語でプリーズだぜ。
なんでも、東松山ってところには悪い竜が住んでいたんだそうだ。タムラマロってやつが来ると聞いた村人は、タムラマロに頼んで竜をやっつけてもらった。その日が六月一日で、その日に小麦のもみがらを燃やして小麦のゆで饅頭を作り、その火で尻をあぶると一年間しあわせにくらせるんだそうだ。
竜と小麦と尻あぶりになんの関係があるんだよって聞いたら「そんなことわたしも知らないわ」って言われちゃったぜ。
そしてこれが「尻あぶり饅頭」だ。オレサマが食べたかったのは湯の花饅頭なのに、ちょっぴりブルーな気分だぜ。不味かったらうらむぞ、タムラマロ。
そんな心配は無用だったぜ。ウマイ、ウマすぎるぜ、尻あぶり饅頭!!!
なのに今度はららが浮かない顔をしてた。「わたし、これダメだわ。湯の花饅頭にすればよかった」だって。おいおい、文句はタムラマロに言えよ!
オレサマとららは、あんこの好みが少し違う。ららもオレサマも湯の花饅頭が大好きだ。でもららは尻あぶり饅頭がダメ。オレサマは十万石饅頭が嫌い。ららは十万石はウマイと言っている。あんこにもいろんな味がある。オレサマはあんこにうるさい猫なのだ。