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蟹退治>入院生活二日目

 病気やら入院やらの話をしていますが、一昨年の話です。

病院の一日

 病院の朝は早い。早朝六時には検温の時間になる。もともと朝は早めなので早起きはあまり苦にならない。前日に早くから寝かされているので、たいていの人は早起きには慣れるみたい。慣れられなくても、無理に叩き起こされたりはしないから体温計を脇の下にはさんでまた寝ちゃったらいいのかも。朝は検温と一緒に血圧も計る。

 朝起きて行く場所といえば便所。排便排尿というのは、わたしはかなりのストレス解消タイムだと思っている。たまってるものを出し切った時に、ああすっきりしたと思うのは、実に大事な瞬間だと思う。ところが、病院ではこのささやかな喜びすらストレスに変わってしまう。入院初日に 500cc の計量カップを渡されて、入院中は尿をためるように指示されているからだ。

 ただでさえ自分のまたに手がまわらないほど腹がおおきくなっているのに、さらいカップで尿をとれだなんて……どんより。だいたい、朝は便のほうも出るというのに、尿をとらなきゃ、こぼさないようにがんばらなきゃって思ったら出るものも出なくなるというか、どっちを先にすればいいのか軽いパニックに陥っておちついて用も足せない。それでも朝はまだいい。点滴がつながっていないので身軽だから。昼間は点滴用のスタンドをゴロゴロ押して行かなきゃならない。もう、うんざり。

 とった尿をどうするかっていうと、昔は大きな壷みたいなものにためてたらしいんだけれど、今は尿をためて量などの記録をとるためのウロゼントという機械に入れることになってる。最初は「便利になったものねえ」なんて感心したけれど、後にこの機械にもかなり悩まされるはめに……まあ、それは後々。

 用を足したら体重を量る。廊下においてある電子体重計で毎日はかる。

 それから洗面所で歯磨きと洗顔。わたしの場合はベッドの上で磨いて、くわえ歯ブラシで洗面所に行ってた。お行儀が悪い? パンパンにふくれたお腹に水漏れ防止の紙おむつあてたような状態で気取ってもしょうがないでしょう(って言いながら手術後もこんなんだったけどさ)。

 洗面所にはシャワールームが併設されているので、必要な人は朝予約を入れる。ホワイトボードが下がってて、この時間に入りますって書いておく。別のフロアに湯船のある浴室もあるみたいだったけど、わたしは入ったことがない。

 朝食は八時。朝食までの時間が退屈でしかたない。テレビ見たりして過ごす。食事はベッドの上でできるようにテーブルがついてる。ベッドで食べるのに抵抗がある人は、廊下から椅子を持ってきて、側台についてる収納式のミニテーブルで食べてるみたい。

 食事のあとは部屋の掃除。といっても患者がするんじゃなく、看護士さんたちがまわってくる。看護学校の生徒さんが研修に来てるときは、生徒さんがやってる。この時だけは寝たきりの人以外はカーテンをあけて、窓もあけはなって空気の入れ替え。その間みんな廊下に出て世間話をしてるみたい。

 そのあと、点滴がある人は点滴開始。わたしも朝から点滴。点滴中もキャスター付きのスタンドを押して自由にトイレに行ったり買い物や洗濯に行ける。

 十時過ぎくらいに回診がある。先生たちが回ってくる。わたしが入院してたところは大学の付属病院なので、昔の人は『白い巨塔』の大名行列みたいなやつを想像するみたいだけれど、今時の病院にはそういうのはないです。処置用具をのっけたワゴンがついてくるので大掛かりだけれど、必要な人しかついてこない。

 十二時に昼食。あまり食欲はないけれど、退屈でどうしょもないので食事の時間は待ち遠しい。不味い飯でも生活の句読点。

 三時頃また検温。

 夕食は六時。不味い(怒)腹水で胃が圧迫されているので食欲はないけれど、決して味覚が変わっているわけではないので食べ物が不味いのはかなり凹む。主食はおかゆにしてもらっていたけれど、ほとんど残しておかずの多少ましなところだけ食べた。もっとも、点滴で栄養はおぎなっているのでそのせいで体力が落ちるってこともなさげ。

 わたしは食事のあとくらいに蒸しタオルをもらって体をふいてた。お腹に管が入っていてもシャワーを浴びられないことはなさそうだけれど、お腹が重くて動きが鈍くなっているところで慣れないシャワー室を使いたいと思わなかったので。看護婦さんがお風呂に入れない人用にタオルにつけて使うスプレー状のボディーソープを貸してくれた。意外と汚れが落ちる。

 八時頃また検温。

 夜九時に消灯。

入院生活二日目:また 700cc ほど水を抜いてもらう

 昨日 1000cc も抜いてもらったのに、もうお腹がぱんぱんだった。腹水というのは抜くとかえって溜まりやすくなるのだそうだ。水と一緒にいろいろなものが出てしまうからだ。できれば手術までなるべく抜かずにおきたいらしいんだけれど、たまってくるとほんとうに息苦しくなるのでこの日も抜いてもらった。1000cc くらいという予定だったけれど、たまっているわりに出は悪く、息苦しいのを我慢しながらがんばってみたけど 700cc くらいしか出なかった。それでも抜いてもらうと急に楽になる。

水が漏れる

 これまでにも二度ほど外来で腹水を抜いてもらったけれど、そのたびにチューブは抜いていたし、傷もすぐに塞がっていたので水が漏れるということはなかった。

 でも、さすがに管を刺しっぱなしにしてあると漏れてしまう。いちおう、ガーゼをあてたり、油紙で覆ったり、下腹に紙おむつのようなものをあててもらったりして防御しているけれど、下着やらパジャマやらを汚してしまう。

 そんなこんなもあって、着替えは多めに持っていたほうがいいみたい。ちなみに、わたしが入院してたところでは、テレビカードで使える有料の洗濯機と乾燥機があった。これが残念ながらご家庭用で、洗濯には困らないんだけれど、乾燥に時間がかかって嫌だった。

咳止めが追加された

 あいかわらず咳がひどく、少しでも楽な体勢で寝ているしかない。ああ、退屈だ。でも、疲れがひどくて散歩に出るような余裕もない。歩けないわけではないので便所には自分で行くし、食事のあとに食器を下げるのも自分でする。

 咳が止まらないんだよーと主張しまくっていたら薬が追加された。ムコダインというタンを切る薬。正直まるで効かない。

コメント一覧

pp (03/12 00:46) 編集・削除

こんばんは。
昔の記事のようなので読まれるか不安ですが、質問が…
自分は腹水が溜まってって穿刺を検討している患者ですが、
珍獣さんはその後ご快復されたということなのでしょうか?
新しい記事がありますが闘病記のその後がないので気になって…
ご返答いただけると幸いです。

珍獣ららむ〜 (03/12 20:30) 編集・削除

ppさんこんにちは
癌を切ってから4〜5年たってますが、
今のところ再発もありませんよ。

つい最近、またお腹が膨れて「これは再発?」と思ったんですが、
検査しに行ったら水もたまってなくて、
単なる肥満&便秘でした。

記事が途中で終わっているのは、
わりと地元の病院に入院したせいで、
どうも続きを書きにくい気分になってきたからです。
気にせず書いてもよかったんですけどね(笑)

pp (03/15 12:55) 編集・削除

ご回答ありがとうございます。
ご快復とのことでおめでとうございます。

水が溜まって苦しいので抜きたいものの
主治医からは腹水を抜くと急激に体力低下するからあまり
抜かないほうが…と言われてしまったのでネットで事例を読んでいるところでして…
珍獣さんのご体験も参考にさせていただきます。
詳しいご説明ありがとうございました。

珍獣ららむ〜 (03/15 17:24) 編集・削除

わたしの場合は腹水がたまりすぎて肺にもあがってきてました。
痰がごろごろ言って咳もとまらず、
息も絶え絶えで、圧迫感から食事もあまりとれなかったので、抜いてもらいました。
抜いた事で体力の低下はほとんど感じませんでした。
一時的には楽になるので、逆に気分がいいですよ。

でも、腹水には体に必要なさまざまな成分が含まれているので、抜けばその成分が足りなくなります。
自分では気付かなくても体に影響があるでしょうから、
医師は「できれば抜かずに手術したい」とも言ってました。
しかし苦しくて食事もとれないんじゃ、かえって体力が落ちますし、
そこらへんは思案のしどころです。

ちなみに
腹水を抜いてもらうと一時的には楽になりますが、
原因がなくならない限り、わりとすぐ元どおりパンパンのポンポコリンになってしまいます。
溜まってる量などにもよるとは思いますけど、
一度ですっきりとはいかないかもしれません。

というわけで、お大事になさってください。

pp (03/17 21:39) 編集・削除

更なるご説明ありがとうございます。
自分は腫瘍の拡大は見られないものの水だけはどんどん増えています。
まだ肺には上がってきていないのですが、体を横にするのも苦しいので
一度抜いてどれくらいで元に戻ってしまうのかも見ておこうと思いました。
体力はまだ落ちていないようなので今が試すチャンスかな…と。
近日中に相談をしてきます。それでは失礼しました。

蟹退治>入院生活一日目その2

入院生活まだ一日目:そんでもって腹水穿刺

 もう、とにかく腹に水がたまりっぱなしである。いちおう癌闘病記なんだけれど、死ぬかもしれないとかいう悲壮感まるでなし。ほんとにない。そんなことを気にする余裕ないくらい、おなかに水がたまってしまう。

 どのくらいたまっているかというと、トイレに行き、用を足して、紙でふこうとすると股に手がとどかないくらいおなかがふくれてる! 足下に落としたものを拾う時、おなかがじゃまでかがめない。足を肩幅に開いてよいしょっとしゃがむ感じ。妊娠はしたことないけど、臨月の妊婦さんは、たぶんこんな感じ。

 妊婦さんと違うのは、ものを食べられないってこと。おなかは減るんだけれど、少し食べるともういっぱい。胃袋が圧迫されているせい。何度も書いているけれど、胸にも水があがってきているらしく(レントゲンで見るとあきらかに片側の肺が小さくなっている)、四六時中咳はとまらないし、タンがげぼげぼ出る。

 立っていると疲れてどうしようもなく、横になっても仰向けはきつい。体の左側を下にして右を向いて寝ると少し楽(たぶん胸の片側に水がたまってるせい)なんだけれど、ずっとその寝方をすると腹の重みで腹筋が連れて痛い。右側の、肋骨の下あたりが突っ張ったような感じになってる。どんな腹してるんだよと自分で突っ込みをいれたくなる。

 体の自由がきかなくなって寝返りを打てない人に使う枕を看護婦さんに貸してもらい、おなかの下にはさみこんで、さらに両手両足で抱え込むような感じで寝てた。抱き枕みたいねーとか言われたけれど、そうしないと寝られないくらいおなかが重いのよっ(笑)

 というわけで、なにはともあれ腹水は抜きましょうってことになるんだけれど、そこでまた一悶着。女の先生(たぶんベテラン)と若い男の先生(学生さんではなさそうだけど経験浅そう)がやってきた。病室までエコーの機械を持ってきてくれたんだけれど、そっからなかなか作業がすすまない。

女先生「同じところに刺すと前の傷がまだ新しいので……云々」
男先生「大丈夫ですよ、近くの別のところに刺しますから(やけに明るい口調)。この辺でいいですよね」
女先生「うん、そうね。針は長いのを使って」
男先生「はい。○○くれる?(と看護婦さんに針のサイズを指定)」

 こんな具合にご機嫌にくっちゃべりながら、まずは局所麻酔の針をぶすっと。なんかずーっとしゃべってる。男先生は、どうも練習中っぽい。人の腹で練習すんなよと言いたいところだけど、何事にも経験の浅い時期というのはあるので支障がなければ我慢。が、しかし、手際が悪い。そんなにだらだらやってると恐怖心がますのでやめてほしい。麻酔が終わったら今度はドレーンを入れる針を刺す。この時もあーだこーだしゃべってる。たまに「あれ?」とか言ってる。何をどうするとどうなるかわかってることなので我慢できるけれど、未経験だったら先生のチェンジを要求したいところだ。思いっきり疑いの眼で見ていたら

「痛いですか? 麻酔効いてるはずなので、痛みはないと思いますが」

とか言われた。くやしいけど、まるで痛くない。痛いのは、針が腹膜を通る瞬間だけで、分厚い皮下脂肪をいかように探られても、麻酔が効いてるあいだはこれっぽっちも痛まないのだ。でも、こんな時こそ痛いとわめいてやりたい気持ち(笑)

 こうして無事に(?)おなかにチューブが入ったけれど、次に問題なのは入ってるのが左の下腹だってこと。水の溜まり具合とか、おなかのなかの隙間の具合とかで、どうしても左側に刺すしかないんだけれど、刺したほうを下にして寝ないと水が出ないわけよ。でも、左を下にして寝ると胸に水がたまってる関係で息が止まっちゃうんだねー。

 看護婦さんがベッドを起こしたりいろいろ工夫してくれて、なんとかかんとか、この日は 1000cc の水を抜いた。これだけパンパンに水がたまっているのに、プチューッと勢い好く出るわけじゃなく、だらだらゆっくりと、二時間くらいかけて。途中でなぜか出が悪くなったりするのも不思議。水といってもさらさらの真水じゃないし、内蔵が動いたりして水の通り道を塞いじゃうことがあるのかな。ちなみに、この程度抜いたんじゃお腹は大してへこまない。それでもだいぶ楽になる。

 入院して一番いいのは腹水穿刺のチューブを抜かなくていいってこと。点滴のチューブを腕に貼付けておくみたいに、おなかのチューブもテープで貼っておく。これで苦しい時はいつでも抜いてもらえる。水漏れするかもしれないので紙おむつをおなかにまいて防御。よけいに腹が出て見える。入院してる場所は産婦人科病棟。どこをどう見ても妊婦です。ありがとうございました(くやしい)。

 体の中からそんなに水を抜くと、脱水症状にもなるし、ミネラルも一緒に出てしまうのでいろいろよろしくはないから、同時に点滴も。もちろん点滴のチューブも刺しっぱなし。あっちもこっちも管入ってる。ある意味サイバー。

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▲腕はこんな感じになってる。管は血管に入ったままで、薬液の袋につなげる部分に栓をして、ガーゼでぐるぐるまきにして、ネットで腕にとめとくの。血液が逆流して固まってしまわないように、凝固をおさえる薬が入れてある。

 番号のついてる白いバンドは個体識別用。動物園でシカやカンガルーの耳についてるのと同じ(笑)患者が意識不明でも誰だか確認できるように、入院するとすぐにつけられる。はさみで切らないとはずれない予定(でも、しばしば外れる)。番号は部屋番号。隠れて見えないところに名前も書いてある。黒いゴムにピンクの札がぶらさがってるやつは貴重品入れの鍵。

 腹も写せないかと思ったけれど、ポンポコリンで股にも手がとどきにくいような状態では無理だった。手鏡を持ってなかったことだけが強烈に残念だよ。自分の腹を見たい人は大きめの手鏡は持ち物に加えておいて(笑)

 ちなみに、腕も腹も、金属の針は刺す時だけで、刺さったら抜いてしまうの。体の中にささっているのはしなやかに曲がる素材のチューブのみ。だから刺したまま動き回っても大丈夫。煩わしいことはたくさんあるけれど、昔とちがっていろんなものが進化してる。子供の頃、盲腸で入院した時なんか、毎日点滴してたけど、そのたびに針を刺し直してたよ。

体重

 恥ずかしいけど後々おもしろいので体重を記載。入院中は毎朝決まった時間に体重を量った。手術前は常に 64〜65Kg あった。

就寝

 病院の夜は早い。午後九時には消灯になる。正直ねむれるわけがない。カーテンをして音はイヤホンで聴けばテレビくらいは見ていられるけれど、わたしは右をむいていないと苦しいのに、テレビがあるのは左側! 季節は真夏、エアコンは入っているけど病室はやけに暑い。みんなよくこの状態でカーテン閉め切って平気だなって思う。でも、冷え性の人がいると気の毒なのでエアコンの設定を変えられないチキンなわたし。四六時中咳が出るので、同室の人はそうとううるさい思いをしてるはずだし(汗)

 普段使っているマイスリーという睡眠導入剤を飲んだけれど、この日はあまり効かなかった。この薬は飲むとすぐに効いてくるかわりに二時間後くらいに効き目が切れ始める。寝付きに失敗すると、もう効かないんだよねえ(この話を看護婦さんにしたら、そんなはずはないって否定されたけど、説明書読めといいたいです。効き目が強いのと効きが長いのは比例しません)。もちろん手持ちの薬は病院には申告済み。睡眠薬や精神安定剤などの持薬のある人は言えばたいていのものは飲めるのでご安心。

蟹退治>入院手続きとか

 長らくほったらかしでしたが、またぼちぼち始めます。ちなみにこれは一昨年の話なので、入院中ですか、大変ですねーとかコメントもらったら、お礼とともに笑います、わははは。

入院

 8月21日に入院する予定だったのが、腹水と痰がからむ咳が苦しくて18日に入院してしまったのは前回説明したとおり。もともと入院する予定だったので軽く準備はしてあったから、入院中に猫を世話してくれることになっていたおともだちに手伝ってもらい、入院手続きを完了。

保証人

 入院で意外と悩むのは、もしかしたら保証人の手配かもしれない。わたしが入院したJ病院では、自分の署名・捺印の他に、家族の署名・捺印と、家族以外の保証人の署名・捺印を求められた。家族の名前は適当に書いてしまうとして、その他となると、ちょっと考えてしまう。友だちづきあいが少なくて気安く頼める相手がいないって人、けっこういるんじゃない?

 で、わたしはどうしたかというと、「そんな人いないんですけど、どうしたらいいですか」と受付で真顔で言ったら、書かなくて良かった!

 今は健康保険に入っていない人もたくさんいて、病院にも厳しい事情があると思うから、どこでもこんな風にすんなり免除してもらえるかどうかわからないんだけれど、自分は天涯孤独で友だちもいないんですっていう人は、保証人になってくれる人がいませんって受付で相談してみたらいいと思う。案外、大丈夫かもしれないから。まあ、保証人といったって、トラブルさえ起こさなければ連絡も行かないはずだから、おつとめしてる人ならば会社の上司とかに頼んじゃって大丈夫なはず。

 病気でつらい時に、こういう雑事にわずらわされるとイライラして捨て鉢な気分になるものだけど、これに関してはたいていどうにかなると思うので、あまり思い悩まずに、受付で相談するのがいいと思う。

入院費どうしよう

 次に入院費の心配。病気は急にやってくるからまとまったお金がないようって人は多いはず。っていうかわたしもない。でもご安心。日本には高額医療費の返還制度というのがあったりする。

 これは知らない人がけっこういると思うんだけど、国保とか、社会保険とか、なんらかの健康保険に入っている人ならば、高額医療費の返還制度といって、治療費が何十万円かかっても、ある一定の金額を超えると、超えた分は返してもらえる決まりになってる。

 ある一定の、というのは、前年度に収入がどのくらいあったかで違うんだけれど、普通に働いている人だったら7~8万円くらいで、収入がなかった人は24000円くらい(金額はおおよその目安なので必要ならば市区町村役場や会社の事務の人にでも聞いてください)。その金額を超えた分は、支払いから数ヶ月後に返してもらえる。タダになるわけじゃないけれど、上限があると知っていれば安心して治療を受けられるでしょう?

 数ヶ月後じゃ間に合わない、というような場合は、高額医療費の貸付制度を使うと少し早めに受け取ることもできる。貸付といっても、借金をするんじゃなく、数ヶ月後に振り込まれる予定のものを早めに受け取るだけの制度で、簡単な手続きでやってもらえるから、必要な人は、これまた関係各所に問い合わせてみるといいです。いずれの場合でも、退院してからで充分用が足りるので、入院時にあたふたする必要はないはず。

 健康保険に入っていないよという場合は少しやっかいなんだけれど、もし前年度から失業してて収入がなかったとかなら、保険料もとても安いはずなので、これを機に保険料払ってみるというのも手かも。役所で聞いたら保険料の見積もりくらい簡単にしてくれる。払えるかどうかは聞いてから考えても遅くない。大丈夫、その場で即決しろとは言われないから。

 ちなみに、最近の病院はクレジットカードを使えるところが多いから、高額医療費の返還+分割払いで、なんとかなる、たぶん(笑)

持ち物

 最後に持ち物。これも急な入院だと悩むところだけれど、着替えとか、洗面道具なんかのリストは病院でくれる冊子に書いてあるので参考にしてそろえればいいし、最悪忘れて行っても、ほとんどのものは病院の売店で買えるから現金さえ持っていれば大丈夫。忘れずに用意したほうがいいのは、着替えくらい。着るものは体に合わないとわずらわしいからねえ。

【病院の冊子に書いてあった必要なもの】

  • 診察カード(外来で診察を受ける時に使ったやつね)
  • 健康保険証など(生活保護とか受けてる人はその書類も)
  • 入院申込書(誓約書)
  • 印鑑
  • 下着類
  • ねまき
  • タオル
  • スリッパ
  • 箸、スプーン
  • 湯のみ
  • ティッシュペーパー
  • 洗面用具(石鹸・シャンプーなど)

★下着類とねまき、タオルは多めにあっても損はないです。
★可能ならば寝間着にはポケットがついていたほうがいいです。点滴のスタンドをおしながら歩くので、持ち物はポケットに入れないと手が自由になりません。首から下げられる小さなショルダーバッグでもかまいません。
★スリッパは、買うならなるべく安いものを。病院で履いたものを家で使うと不衛生なので、退院時に捨てて帰るか、持ち帰ってすぐ捨てるくらいの勢いが必要です。
★そのほか、手術を控えてる人は、寝起きが大変になった時のために、曲がるストローを用意しておくといいかもしれません。コップで無理に飲もうとすると顔にぶっかけます。
★もし、心に余裕があるとか、手芸の得意なお友だちがいて何か作ってくれそうな場合、枕元につるせる小物入れがあると便利かもしれません。

コメント一覧

Sari (02/15 17:57) 編集・削除

義妹が20日に乳癌の手術なので読んであげました。
短期入院なので状況は違うけど、初めてのことなので
何でも知りたいと思って・・・
助かりますm(_._)m

珍獣ららむ〜 (02/16 10:42) 編集・削除

 医学も日進月歩で昔にくらべたらいろんなことが楽になってるみたいですよ。心配するよりあたってくだけろです。お姉様にお大事にとお伝えくださいませー。

 絵描き歌の件、ありがとうございましたー。

蟹退治>やっと入院の日取りが決まったよ

 前回までのあらすじ。胃カメラのおどり食いに挑戦したり、大腸内視鏡で尻から責められたりしてやっと検査が終わり、ついに……?

注意:これは去年の話ですっっ
 蟹退治タグのついている記事は去年の話ですから、そこらで出会った時に重病人扱いされても困ります~。あと、ご心配はありがたいような気もするんですが、同じ病気だからといって同じように苦しいと思われても困るんですぅ。

お楽しみの宣告です

 先日の大腸内視鏡でひととおり検査が済んで、あとは病名と治療方針を決めてもらわなきゃならない。結果を聞きに行く日はあらかじめ決めてあるので朝から病院にでかけたわけよ。もうこの頃は疲れがひどく、待合室で普通に座って待ってられない。仕方ないので、看護婦さんに頼んで処置室のベッドを貸してもらって順番待ちをしてた。

 やっと順番が回ってきたら、今日はいつもの医師じゃなく別の人で、「腹水たまっているならまた抜きますか」とか核心から遠い話をぐだぐだと。わたしゃちゃんと予約して結果を聞きに来ているはずなので、それはないだろうと思い、

「あのー、お話をさえぎって悪いんだけど、結局のところわたしは何なのですか。今日はそういうのがわかるというから来たんですけど?」

と、丁寧に「ふざけんな」ビームを送ってやったら、いつもの医師からそういう話を聞いていなかったので……ってしどろもどろになっちゃって、「卵巣癌の可能性が高くて、治療方針はこれから考える」みたいなことをホイホイしゃべってました。

 胃も腸も異常はなくて、子宮内膜にも癌細胞はなかったから、CTやMRIに写ってるとおり卵巣の腫瘍でしょうと。腹水をとって調べた結果では、五段階で三くらいの確率で「癌っぽい」という結果が出たそうです。

 今後としては手術で切って細胞の検査をしてから癌だと確定したら抗癌剤を投与、もしくはその逆で、抗がん剤で叩いてから手術するかのどっちかなんだけど、それはこれから決めるらしい。

 いやべつに、腹水たまってて卵巣悪いって言われたときから癌かもってのは思ってたから別に驚きゃしないんですけど、今日はいろいろ先のことが決まるからっていうので出かけたのに、なんだよそれ、これからかよ(怒)

 というわけで、初めての癌宣告は、これといって悲壮感なしに終わったのでした。っていうか、癌だからすぐ死ぬわけじゃなくて切れば治るケースも多々あることは知ってる。仮に治らないとしても、即死しちゃわないことのほうが問題なのよ。将来がどうのこうのより、今この腹が苦しいんだってば。あと咳がね、とまらないのよ。痰がしつこくからみついて、ときどき発作のようにげほげほと。これがつらい。もしかして肺にも転移してるのかなぁと思ったけれど、そこまで行くとそうとう悪くなってるはずだから、もーーーーっと動けなくなるかも、なんてことを考える。

 お腹が苦しいならまた腹水を一リットル抜きましょうってことになったんだけど、ええええ、抜くってこの人が?←かなり失礼。いやその、針の刺し方だって人それぞれクセが違うしさー、医者変わるとそのたびにドキドキするじゃないの。やだなーと思っていたら、案の定というか、なんというか、お腹にごそごそ刺し始めた後に「針もう一本ある?」だと。お、おまえ、失敗したのか!!! 見ると医者の手には途中で折れ曲がった長い針が。痛いってわめいてやりたかったけど、局所麻酔が効いてるからぜんっぜん痛くなかったのよ。くやしいーっっ。その医師は、看護婦さんに針をもらって、もう一度刺し直してました。

 癌宣告の後のせいか、不機嫌光線乱射中のせいか、看護婦さんがやけに親切でした。わたしの右腕の内出血のあとを見て「どうしたのー」って言うから、

「大腸内視鏡検査の時に点滴針がうまく刺さらなかったんです。献血車に乗ってる看護婦さんとか外来で血を取ってる看護婦さんとかは見れば刺しにくいのをわかってくれるのに、検査系のお医者さんはまるで気にしないで刺してから漏れたっていうの。100%そんな人ばっか。MRIの造影剤も漏れたし」

「ああ、MRIのやつは針が太いのよ」

「えー、太い針だったのか。そんなのを無頓着にブスッとやったわけね。なんか、ものすごい自信で一発で刺すから、ひょっとしてこの医者は天才なのかもしれないと思ったら、漏れたっていうし」

隣で何かの処置を受けてた中国人の夫婦が一瞬ウケてました。

 そんなこんなで腹水を抜き始め、今日は「ヴィーンD注」とかいうリンゲル液を点滴しながらやったのでけっこう時間がかかって疲れました。腹水は抜かなきゃいけないんだけれど、抜いたら体の中の水分やらミネラル分やらも出てしまうので、補給しなきゃならないらしいです(補給した分もどんどん腹にたまるんだろうなー)。

 治療方針は決めておくので明日また来てくださいだと。おいおい。

 帰りがけに「咳がとまらないんだけれど、これは呼吸器内科とかに行ったほうがいいですか」と聞いたら、医者が変な顔をして

「内科へいっても腹水のせいだと言われるだけですよ?」

とか言ってた。たぶん他の医師から説明をうけてると思ったんだろうね。腹水がたまりすぎて胸のほうに上がってくると湿った咳が出るんだそうな。しかも腹水を抜くと胸にも水がたまりやすくなるとかで、咳がひどくなるのはごくあたりまえのことなんだとか。メジコン散という薬の処方箋を書いてもらい、薬局に寄って帰宅した。

 前にも思ったけれど、腹水を抜いてもらうとおならが出る。それだけ腸が圧迫されていて、ものが通りにくくなってるということだと思う。腸自体に悪いところはないので圧迫がとれると動き始めるわけね。

 当時のメモを見ると、初めて腹水を抜いてもらったのが8月5日で、検査の結果を聞きに行ったこの日は11日。一週間もたってないのにお腹はもとのようにパンパン。腹水を抜くと、水と一緒にアルブミンだのなんだのという成分が出てきてしまい、そのせいで余計に水がたまりやすい体質になる、という話は何かで聞きかじっている。想定通りの展開なんだろうなー。

 そういえば、この日は内科でも胃カメラや大腸内視鏡の結果を聞く予定になっていたんだけれど、当時のメモやブログなどを読み返しても内科へ行ったという記述がない。よく覚えてないけど、婦人科から受診の必要があるか問い合わせてもらい、特に異常がなかったので行かなくていいことにしたんだったかも。

そして翌日も病院だよ

 腹水を抜くと、今度は胸水がたまりやすくなったりするそうで、そんな影響もあってか咳がぜーんぜん止まらないのね。それで昨日、メジコン散100mgとかいう粉薬をもらったんだけど、コレが効かないのなんのって、仕方ないので市販薬(アスクロン)を飲んだら咳は楽になったけど朝から頭がボーっとしてます。

 そんでもって卵巣腫瘍ですよ。卵巣の腫瘍は切ってみないと良性か悪性かの確定が難しいそうでございます。なので、癌の疑いが高い場合は、癌という方向で予定を立てるそうでございます。

 明日また来いって昨日言われたので、今日でかけてみたのですが、こっちが何も言う前に処置室のベッドをあけてくれて「ここで寝て待っていていいですよ~」ってな状態でした。ついでに治療方針の説明も寝たまま受けちゃった。

 とにかく切らなきゃならないのは確実なんだけど、手術に耐えられる体かどうか検査しなきゃならないので、これから採血と心電図と肺機能の検査と尿検査と、胸部と腹部のレントゲンをとってきてください、その結果、手術できそうなら23日入院の25日手術で、手術が先だと体がダメそうならもっと早くに入院して抗癌剤をぶちかましましょうって感じ。

 そんでもって「卵巣も子宮もとります」だそうで、あらそうなの。わずらわしい生理とおさらばできるのと引き換えに更年期障害みたいな症状とコンニチワなのね。

 と、いうわけで、話を聞いたあとは、またもや検査部めぐりですよ。まず採血。やっぱ採血のプロは違う。

「腕見せてください。はい、左にします」

 そんでもって刺すのも一瞬。なんの痛みもない。次に、血の止まりやすさを調べるというので小さなかみそりみたいなもので耳たぶに傷もつけるんだけれど、

「やりますよ。1、2、3」

 まるで躊躇なし。ストップウォッチでタイムを計ってチャチャッと絆創膏をはって終わり。

 なんという手際のよさ。なんという名人芸! でもこれ、八月だからかもね。四月とかに大学病院に通うと研修医さんたちがうろついているからイロイロとタイヘンな目に……ひひひひ。

 その他の検査も滞りなく高速で終わり、ちょうどお昼時で会計だけ異常に時間がかかりました。薬は「こないだのぜんぜん効かないから、痰を切るやつにして」って言っておいたので今日はムコソルバン錠15mgっていうのが出ました。効くのかなあ。検査の結果と入院の日取りは水曜日に出かけていって聞くことになってます。

 はあ、入院の準備しないと。手術した後が長いはずなので、結局来月一杯くらい入院しちゃう予定ですよ。

この頃の状態

 熱を測ると常に微熱がある。高熱になったりはせず、37度をちょっと超えるくらいの熱がずっとある。
 食欲はあるけど、少し食べるだけでおなかいっぱいになる。腹が圧迫されてるせい。
 腸の動きが悪くなってるわりに、便は毎朝出る。食べる量が少ないので、便も少なめ。 尿の量はとても少ない。水分はほとんど腹にたまっている模様。
 痰がからむ。咳がひどい。病院でくれた薬はさっぱり効かない。一日に三度飲むことになっているので咳がとまっているのに時間で飲むと、何かが刺激されてやぶ蛇発作がおこり、何時間もおさまらない。こんなんでどうしろっていうのか聞きたい。

ヤクキター、そしてやっと入院の日取り決定

 8月16日水曜日です。病院行ってきました。予定通り手術を先にするそうです。ちょっと早めに21日(月)から入院することにしました。

 いやー、もう、とにかく咳が苦しくて、昨日なんか一日の大半を「せ、せき、く、くるしい……ぜえぜえ」って感じで過ごしました。病院でもらったメジコンとムコソルバンはぜんぜん効かなかった。むしろ飲むことで何かが刺激されてしまい、かえって咳がひどくなるんじゃないかという、やぶへび現象まで起こる始末。

 今日は、何がなんでも咳が苦しいんですと主張したら、リン酸コデインという麻薬系の薬が出ました。怪しげな白い粉です。めちゃくちゃ苦いんです。でもこれまでの薬に比べれば格段効いてるような気がします。薬飲んで横になっていれば、そうそうひどい咳は出ません。でも、こんなの飲んで本当に大丈夫なんですかね。医者は習慣性はないよと言うんだけど。軽くハイな気分になっているのは気のせい?

にーぎゃーいーーーー

 咳止め用のヤクがあんまり苦いので「おくすりのめたね」とかいうお子ちゃま用のゼリー状オブラートを買ってきたのですが、なんとコデインの苦さのほうがイチゴ味より強かった! 普通に大人用のオブラートで飲んだほうが苦味を感じなかったです。コデイン恐るべし。澱粉オブラート最強。

 わたしは苦い物が全面的にダメというわけじゃなく、ニガウリみたいなものは大丈夫だし、生薬の五味子の種なんかかみつぶしても「んー苦いっ、もう一粒!」って感じで決してイヤではないんですが、リン酸コデインの粉末はダメでしたねえ。とにかく細かい粉末で、たとえて言うと龍角散みたいな舌触りで、それがほんの少量なのにやたら苦いというか、マズイというか。細かい粉だというのも良くないのかも知れません。薬局でサンプルにもらった田七人参の粉末も苦手だからねえ。

やっぱり効かない

 ……効いてるかと思ったけど、発作来た。ゲホゲホゲホ、ヒーーー。とめどなく痰が出てきて咳とまんない。うぎゃああ、薬飲んでから一時間くらいしかたってないのに。追加のみしたらまずいわよね。まいった、く、くるぢい。

ほんとにこの薬でいいの?

 なんとなく、必要な薬はこれじゃないかもって気がしてきた。

 素人なので、まちがった理解をしてるかもしれないんだけれど、リン酸コデインについて調べると咳中枢に作用する「麻薬性中枢性鎮咳薬」の部類であるということで、そういう薬は痰が絡んで苦しいような時は飲んではいけないようなことがいろんなところに書いてある。

 そんでもって、そういう時は末梢性の気管支拡張剤みたいなやつがいいようなこともチラホラ。実際のところ市販薬で効き目があるものの効能を見ると、気管支を拡張する作用があると書いてあるんだよねえ。

 咳も苦しいけど、咳自体は痰がからむので出るわけで、どちらかというと困ってるのは痰のほうなんだよね。それは医師にもちゃんと説明してるはずなんだけど、どうも「これだ!」という薬が来ないんだねー。なんでだろ。「市販薬を飲むと効いた」とは話してみたけれど、その市販薬がどういう傾向の薬なのか、医者はこれっぽっちも聞こうとしなかったよ。それは聞いてもムダだからなのか、プライドかなにかが邪魔をするからなのか、かなり気になるところ。市販薬がダメな理由があるなら教えてくれないと納得いかない。あきらかに病院でくれる薬じゃ効いてないし、かえってつらくなってるんだもん。

負けた……ついに入院

 9月18日金曜日です。負けました。予定では21日に入院するはずだったけど、今日入院することに決めました。

 腹水のたまる速度がとてつもなく速くなってる。11日に抜いて約一週間しかたっていないのに、もうパンパンで息苦しくてまるでダメ。痰と咳もひどくて苦しいー。

 仕方なくまた病院へ行き、ベッドがあいてるみたいだったので早めに入院を決定。今度は腕にもお腹に管をさしっぱなしにして、腕から点滴をばんばん打ちながら、必要に応じて腹の水をじゃーじゃー抜くというグロい生活に入るわけだね。もっと前からそういうふうにしたら楽だよと言われていたんだけれど、楽なわけないじゃん、病院のご飯マズイし、トイレも風呂も慣れたのじゃなかきゃ落ち着かないしさ。

 そういうわけで、次回からやーーっと入院日記に突入するわけだよ。ああ、長かったー。

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Sari (11/09 18:00) 編集・削除

そう言えば胃がんで入院してた義母、布団かけて寝ていると
星の王子様に出てくる「うわばみを飲み込んだ蛇」状態だったな~・・・

ayaken Eメール (11/10 20:34) 編集・削除

凄まじい体験ですねぇ!
ドキドキしながら次回、「入院日記」を待ってます。

珍獣ららむ~ (11/13 19:49) 編集・削除

 ayakenさん midomi ではお世話になってます。すぐに続きを書こうと思ってたんですが、何かと雑用が多くてまた先に伸びてしまうかもしれません。マッタリペースでやってます。忘れた頃に更新されるかもしれません(^^;

蟹退治>今度は尻からですかっ

大腸内視鏡検査の朝

 はいはい。お楽しみの大腸内視鏡検査の日がやってきました。前日からのわびしい検査食に加え、ラキソベロン一気飲みをしたおかげで朝の便はほとんど水。水に溶けた便が多少入っている程度。そのような便が起床後一時間くらいの間に二度ほど出ましたが、それでおさまりました。朝出かける段階で、腸の中はほとんど空じゃんじゃないかと思います。

 先日、腹水を抜いた時に針を刺したあたりがかゆくなっていました。なんだろうってがんばって見ようとしましたが腹が巨大になっていて自分の下脇腹が自分の視界にはどーやっても入りませんっ。仕方ないので手鏡などを使い苦労して見たところ、傷はきれいにふさがっているのに、絆創膏を貼ったところが見事にかぶれてました。あちゃー、言われた通りにすぐはがしたつもりだったけど、体調が悪いせいか皮膚が負けたか。ちなみに、かぶれの痕はその後数日ずっとかゆかったです。採血や注射のあとに貼る絆創膏でもかぶれますから、何時間も放置せずにすぐはがした方がいいです。

そして今度はニフレック地獄

 検査の前は食事もとれないので、特に準備することもなく病院へ。すでに腸の中はからっぽなのに、それでも飲まなきゃならないニフレック。液体の下剤で「ポカリスエットに似た香りがしてまずい」と受付のお姉さんから説明されています。

 今日検査することになっている人たち七、八人がテレビとトイレのある部屋に集められ、ひとりひとりに二リットルずつのニフレックが配られました。麦茶でも作るようなボトルに入れられていて冷たく冷やしてあります。無色透明でパッと見は水にしか見えません。

 これを紙コップに注いで、最初の二杯までは十五分(計三十分)かけて飲み、次からは一杯十分のペースで飲むとだいたい二時間でのみきる計算になるそうです。ボトルの半分のところに赤いテープが張ってあって、そこまで飲むと一リットル。一リットル飲んでも便が出ない場合は申し出てくださいということでした。

 検査についての説明を軽く聞いて、飲み始めたのは午前十時。匂いをかいでみたら本当にポカリスエットみたいな良い匂いです。これなら大した苦痛はないのではと、油断してグイッとやったら……

 具謬ぎゅヴぇぐべぇがひゅうぅぅぅぅぅ

 な、なんじゃこの味は!!!

 しょっぱい、ような気がするけど完全な塩気を感じる直前で寸止めされたような味で神経を思い切り逆なでする不快感。苦い、ような気がするけど苦味をはっきり感じる直前でじらされているような苛立たしさ。そんなものがどことなく甘いような甘くないようなアイソトニック飲料っぽい顔をして「さあ飲め、死ぬまで飲め」と襲ってくる恐怖感。

 はっきり言ってこの世のものとは思えない不味さ。いまだかつてこんなに不味いものを飲んだことがあるだろうか。これなら苦丁茶かせんぶり茶の一気飲みを強要されたほうが何十倍もましだと思う。

 思わず咳き込んでしばらく止まりませんでした。これはキツイ。トラウマになる。色も映像もない不快感だけの悪夢を見そう。これを二リットルなんて絶対にいやだー!!!

 部屋にあるテレビはNHK総合なんて辛気臭いもの流しっぱなし。最初は高校野球で途中から長崎原爆忌の式典の中継でした。小泉純一郎の平和への決意なんか聞きながらじゃ不味いものが余計にまずくなる。一口のむごとに頭をかかえ、二口目には眉間やらこめかみやらを押さえて苦痛に耐える感じ。そのうち思考もおかしくなってきて、原爆で死んだ人たちは、「水、水」と言いながら亡くなったのだから、不味くてもニフレックを飲んでいる自分はひょっとしたら幸せなのか、いや、そうではない、やけどを負って瀕死の状態であっても、こんなもの飲まされたら末代まで祟ってやるという気持ちになるはずだ、などという不謹慎な想像までするようになってきました。

 しかもこれって、いわゆる下剤っていうのとイメージが違う感じ。ラキソベロンなんかは飲んでから一時間もするとお腹がゴロゴロいいはじめて「そろそろ下ってくるかな」って思うんだけれど、ニフレックは腹にたまっていくばかりで下る様子なし。飲み始めて一時間以上たってからやっと出るようになってきたけど、爽快に出るというより上からたまってきたから押し出されてきましたみたいな出方で不愉快きわまりなし。そのうち、胃にたまってる分がゲップをするたびに逆流しそうになってきました。

 先日の胃カメラで、胃には異常がないことはわかったので、たぶん腹圧のせいで胃腸の動きが鈍ってるんだと思うんです。便意もないのにトイレに行ってみたり、そこらを歩き回ってみたりいろいろするんだけれど、飲んだ分がうまく出てこなくて腹はへこまない。とてもこれ以上は飲めない、無理って感じになってしまいました。

 不味いので飴玉をなめて味を変えるといいですよと言われていたから、シークワーサー味のキャンディーなどを持参したのですが、そんなものなんの気休めにもなりません。もうだめ、無理、不可能。仮にあと一杯飲んだとして、そのあたりで物理的に腹に入らなくなると思う。

 まわりを見回すと、みんな黙々と飲んでます。おじいちゃんもいる。おばあちゃんもいる。そりゃ、他の人たちは腹水たまってたりしないと思うけれど、それ以前にこの不味いものをよくぞ……みんな偉い。全員に拍手をおくりたい。あなたたちは勇者だ。英雄だ!!

 でもね、誰も他人と口きいてないの。同じ部屋に七人とかいるのに、隣の人としゃべってる人とかひとりもいないのよ。たぶん口きいちゃったら「不味いですね」って話になるので何もいえないんだと思う。言葉にしたらもう終わり。自分をごまかして口に運んでいるから飲めるんだと思う。となりに座ってた女の人なんか、最初は女性週刊誌を見てたんだけど、もう読んでいるというよりイライラとめくっているだけで、その不快感が頂点に達していることが手に取るようにわかってしまう。

 わたしはというと、幸いその頃には便に固形物が混じらなくなり、黄色い透明な水しか出なくなっていたのですが、下剤はまだノルマの半分しか飲めていません。看護婦さんにもう無理だと伝えましたが「ゆっくりでいいですからもうちょっと頑張ってください」なんて非道いことをおっしゃる。ありえません。殺す気でしょうか。

 しかし、便は透明になっていますし、看護婦さんに確認してもらったところ、医者に話を通してくれたようです。もういいので午前中に検査してしまいましょうということになりました。消化器内科からまわっているカルテに腹水がたまっていると書いてあるので、検査の医師もそのへんを加味して手加減してくれたのだと思います。やったラッキー。みんなごめん、わたしはズルして先にすすませてもらうよ(T-T)/

 大腸内視鏡なんて初めてなので、検査そのものも不安だらけだったのですが、ここまで来るとニフレックの不快感から逃れられるというだけでもうどうなってもいいという気分になってきます。術衣に着替えてこっちへ来てくださいといわれた時は心の中で小躍りです。

 術衣はじんべえの上だけみたいなのを丈を長くしたもので、下は後ろに穴のあいた不織布のキュロットみたいなものをはくように指示されました。なるほど、これなら医者に見られるのはほとんど肛門だけですな。よく出来てる。

 検査の前に点滴針を刺されました。今回は会計にまわす明細書をメモってきたので何を使ったのかわかります。点滴されたのはソリタT3号という電解質の入った液体のようです。例によって針を刺すときにひと悶着ありました。右手出してというから素直に出したら、「刺さったけど液漏れしたから」とかいって「左にする」だって。

「左でいいなら最初から言ってよー。左のほうが刺しやすいんですよ」

と抗議したら医者が「ごめん」とかいって、他の医者にバトンタッチして逃げやがりました。これが内科や外科の外来やってる看護婦さんなら、見るだけでこの腕は刺しにくいって分かってくれるのに、検査系の医者ってほんっとダメ。MRIの造影剤を入れるときも、右腕に無頓着に針刺して漏れたっつって抜くし。おまいら何人に針さしたら刺しやすい腕とそうでないのを見分けられるようになるわけ? わたくし、献血マニアだったので針の刺し方には少々うるさいのよ。

 バトンタッチされたお医者さんは、どうも一昨日の胃カメラの人のようでした。今日も同じような鎮静剤をうちますからねーと点滴チューブの途中に注射器さして何か打ってた。メモによると、ロヒプノールという睡眠薬と、オピスタンという麻酔薬のようです。胃カメラの時の薬もほぼこんな感じでしょうね。明細にはアネキセートというロヒプノール(ベンゾジアゼピン系)の薬の効き目を解除する薬も書いてあったので、どっかのタイミングでそれも打たれたかも。

 ロヒプノールは前に錠剤で飲んだときは大した効き目を感じなかったけれど、さすがに静脈注射されると速攻ききます。「ああモウロウとしてきたわー」と思ったあとの記憶はほとんどないです。気づいたらしりからカメラが入った状態です。明細に「キシロカインゼリー」ってのがあるので、おそらく肛門にぬりたくって潤滑剤にしたもよう(検索するとSM用品として売られてたりして爆笑です)。

 内視鏡検査というのは、技師の腕次第で痛みがほとんどないそうですが、確かにぜんぜん痛みはなかったです。一度だけ急にお腹が張ったような痛みがあったので「いててて」と言ったら、検査するのに空気を送り込みながらやってるせいだということでした。

 そんなこんなで検査は滞りなく終わり、その場で「何か変なものは写ってましたか」と聞いたら「いや、大腸は大丈夫ですよ」との返事。大腸は大丈夫だけど直腸は……とかだったらイヤだけど、病変を削り取るような作業はしなかったみたいだから、本当に異常はなかったんだと思います。

 検査の後もしばらくベッドの上でうごけませんでした。ソリタT3号の点滴がまだ終わらないからです。途中で胃カメラの時の休憩所にストレッチャーごと移動されて、点滴が終わるまで居眠り。検査の時に空気を入れてるのでオナラが出そうなんだけど、出すと実も一緒に出てしまいそうだと看護婦さんに言ったら、中身は検査のときに吸い取っちゃったから何も残ってないと思いますよーといわれて安心してブリブリ。大きなオナラを遠慮なくするのって気持ちがいいわ。カーテンの向こうにこれから検査する男の人とかいるみたいだけど知ったこっちゃありません。

 そんなこんなで一時間くらい休んで帰っていいよって許可が出ました。起きたら突然便意がおそってきてトイレに行ったら黄色い液体がジャーでした。今頃かよ。一リットルは飲んでるはずだから、全部出るまでこの調子でトイレとおともだち状態だと思います。

 幸か不幸か紙おむつは必要なさそうです。でも、かるく肛門が痛いんです。アナルプレイをした後ってこんな感じになるんでしょうか。思わぬところで疑似体験をしたような気分。

教訓
 大腸内視鏡検査は恐くない
 でもニフレックは死ぬほどこわい

大腸内視鏡検査のまとめ

 病院によって(あるいは検査開始の時刻によって)やりかたは少し違うかもしれないけれど、わたしが受けた検査(お昼過ぎに開始予定)はこんな流れでした。

1. 検査前日は腸の中を空にするために、低残渣食という食事をする。お粥やお豆腐の味噌汁など、腸にたまりにくい食事で、自分でも作れるけど、面倒くさい人はグリコのエニマクリンという検査食を買って食べる。三食+おやつが入って1480円。

2. 検査前日は、夜七時までに夕食を済ませ、九時にラキソベロンなどの下剤を飲む。夜の間は水分はとってもよいが、牛乳・アルコール・乳製品飲料は不可。あと、野菜ジュースのようなものもやめたほうがよさげ(繊維が入ってるから)。

3. 検査当日は何も食べない。水は可。普段飲んでる薬がある人は朝七時くらいまでに飲んでおく。ちなみに、検査前に飲んではいけない薬もあるので必ず事前に聞いておくこと。

4. 病院へ行き(自宅でやる場合もあるらしい)、ニフレックなどの液状の下剤を二時間かけて二リットル飲む。その間、下剤の味をごまかすためにあめ玉をなめてもいい。色のついていないものを用意してくださいと注意されたけれど、赤や青のどぎついものでなければ大丈夫らしい。わたしは黄色いシークワーサーキャンディーと、UHAUHA味覚糖の純露を用意して受付で聞いたところ、どちらもOKだった。

5. 下剤は腸をからにするために飲むので、全部飲むまえに空になってしまったら、もう大丈夫かどうか看護婦さんに確認してもらい、医者にOKをとってもらうと早めに解放されることがある。必ず「お医者さんに聞いてください」と頼むこと。看護婦さんレベルでは決断できないから。便が透明な水(黄色くてOK)で固形物が混ざっていなければ大丈夫、らしい。

6. 尻のあいた検査着に着替えて、点滴などうたれながらアナルプレイ。睡眠薬を使う病院なら、ほとんど苦痛はなく気づいた時にはもう終わってる。

お会計

基本診療料 210円
検査料 6840円
合計 7050円也

 内視鏡検査は尻からでも口からでも金額は変わらないらしい。

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Sari (10/27 06:08) 編集・削除

私のときは、トイレに駆け込むたびに流さずボタンを押して
看護師を呼んで見てもらい、OKだったら飲むのをやめて検査でした。
去年は順調に行って、検査も本当にやってんの?って位無痛で上手だったので
今年も、と思ったらヘタな(?)若い医師で苦しかった~!
おまけに妙に長かったし(;;)
どちらもポリープ2個取って一泊入院で3万円台でした。
指名もできるそうだから、来年は違う医師にしよう・・・

珍獣ららむ~ (10/27 06:46) 編集・削除

 わたしがやったとこも出たら看護婦さんを呼んで見てもらう感じだったけど、常にじゃなかったですねえ。飲み終わってからはトイレに行くたびに呼んでください、とかだったかな。

Sari (11/10 22:52) 編集・削除

さっきTVで「仮想内視鏡」というのを紹介していました。
見ました? あれだったら楽だったのにな~。

珍獣ららむ~ (11/12 12:56) 編集・削除

 見た見た。見ましたよ。ぱっと見楽っぽかったですねー。でも、あそこまで精密な断層画像を撮るためにはやっぱり絶食と下剤が必要ってことはないんでしょうか?

 それでも鎮静剤を打たれたり尻からカメラを入れられたりしない分確実に検査時間は短縮されるでしょうし、体への負担は減ると思いますけど。

珍獣ららむ~ (11/12 15:44) 編集・削除

仮想内視鏡の手順をみつけました
http://www.yamashita-hp.jp/g/f32ct.htm
・腸の中をカラッポにするために下剤の前処置が必要
・腸の動きを抑える筋肉注射
・お尻より空気をいれ、

 内視鏡で腸壁を傷つける心配がないこと、麻酔薬の副作用の心配がないことを十分承知の上で書くんですが、楽なの医者だけじゃん(~-~;?

Sari (11/12 23:09) 編集・削除

見てみたんですが、
「10mm以上の病変を見つける能力は97%以上で、6mm~10mm未満でも70%の病変を見つけることができました」
と、あるけど医者が目視の場合は、どの程度の発見能力があるのかしら・・・

前々回は、短い時間でポリープを切り取るときだけつらかっただけでしたが、
前回は長くて、苦しくて体が伸びてしまい何度も看護士に足首を押さえられました。
あんまり短いと「ちゃんと見たの?」と思うし、あまりに長いと「何やってんだよー」と思うし、どちらにしても不安が残りました。

医者の腕の差がなくて所要時間が安定しているなら、こっちの方がいいかな~、なんて(^^;

珍獣ららむ~ (11/13 19:47) 編集・削除

 単純な健康診断で、十中八九異常のないことが想定できるなら仮想内視鏡のほうがいいかもしれないけれど、何か異常がありそうなら最初から内視鏡入れちゃったほうがいいような気も。

 テレビでは検査結果がその日のうちに出ていたけれど、大勢を一度にこなすようになったら結果は後日郵送で、とかになりそう。そんなんで異常がでた日にゃあ、まーた一日がかりで低残渣食を食べて、下剤飲むところからやらされるんじゃないかと。仮想診断じゃポリープ取ったりはできないですしー。

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