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養蚕重宝記06:中種かひ方の事〜極上々種かひ方の事

三丁裏〜四丁表

http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko04/bunko04_00660/bunko04_00660_p0009.jpg
↑ここの3行目から

『中種かひ方の事』
一 中種のかひ方は種壹枚はきくは十五駄をあたへ
  蚕母弐人にて「かうまゆ壹石三斗[預]取蝶の
  せいぶんますゆへに種よろし是を中種といふ也

『上種かひ方の事』
一 上種と申は種壹枚はきくは廿駄をあたへ蚕
  母三人にて「かうまゆ壹石六斗[預][有]蝶のはたらき
  種しまりよきを上種と申

『極上々種かひ方の事』
一 極上々種と申は元種をあらためまゆ弐石余
  [有]此かい方壹枚に付桑三拾駄をあたへ蚕母
  五人掛りまゆのつやよろしく手ざはりやはら
  かにして弐石の内よりまゆ壹ツつ々弐斗をゑり出し
  是より出る蝶のはたらきゆへに種粒大きく「しまり
  かたく是を極上々種といふ故に直段高直を

四丁裏

http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko04/bunko04_00660/bunko04_00660_p0010.jpg
↑ここの1行目まで

  いとはず極さい上の種をはく事かん要なり

用語

蚕母
 中国で養蚕を最初に始めたと言われる伝説上の女性が「蚕母」と呼ばれるが、ここでは蚕の世話をする女性のこと。

直段=値段
高直=高値

読めないところ、解釈に悩むところ

今回はまったく読めない部分がほとんどないのですが、前回の続きで「〜斗預」の部分に注目したいと思います。三ヶ所あります。

A: まゆ壹石三斗[預]取
B: まゆ壹石六斗[預][有]
C: まゆ弐石余[有]

[ ]でくくった部分は解読に自信がない部分です。

まゆ壹石三斗[預]取拡大
▲A: まゆ壹石三斗[預]取

まゆ壹石六斗[預][有]拡大
▲B: まゆ壹石六斗[預][有]
 ここでは最後の文字が「多」をくずしたものにも見えるのですが下の例を見ると[有]っぽいなと思います。

まゆ弐石余[有](此かひ)
▲C: まゆ弐石余[有](此かひ)
 ここを見ると、多ではなく有のくずし字っぽいわけです。ついでに言うと、預ではなく余が使われており、ほかの部分も余と書くべきところを当て字で預にしてあるのかなと思うわけです。

 ただし、A、Bは同じようなパターンで出てきますが、Cだけやや違うので、Cを見てA、Bを直していいか悩むところではあります。


養蚕重寶記、養蚕重寳記

タグ:古文書解読

コメント一覧

珍獣ららむ〜 (12/20 13:03) 編集・削除

あー、これはわかりました。
「預」に読めるところは「程」ですね。
http://clioz39.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/ZClient/W34/z_list.php?title=%E7%A8%8B&resourcetype=0

読書百遍というのは百遍読まないと文字すら判別できないという意味だったのですね(ちがうかも)。

養蚕重宝記05:上々の種吉凶を知る事/種目方 并あたへ桑多少の事

 養蚕重寳記の続きです。間違いの指摘等歓迎します。URLは説明がないかぎり早稲田大学の古典籍データベースへのリンクです。原典を画像で見られます。

 「・」にしてある部分はまったく読めなかった文字なので特に見てくださるとうれしいです。

# 毎度、記事の形式が違っててすみません。

二丁裏〜三丁表

http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko04/bunko04_00660/bunko04_00660_p0008.jpg
↑ここの4行目から

『上々の種吉凶を知る事』
一 上々の種はき度おほしめしある人は種を
  心えて見るべし即心えて見るといふ事は
  蚕は神のごとくなるゆへに第一我か心正直
  にして蚕のあたり上中下是ありといへども

  種の直段にか々はらづいつはりなく只正直に
  心にかけ上種をもとむる事是自然の
  じゆうあひなり

# 直段=値段


『種目方 并あたへ桑多少の事』
一 種壹枚と申は目方十八九匁より廿匁なりまづ
  下種のかひ方種壹枚はき「桑十駄也 但し壹駄と申は・・なわ六把也
  是をあたへまゆ八斗預取 但京ます也 蚕母壹人にて
  かひ[ゆ故手入ふ]是まゆ下品に出来蝶少し

# 壹枚はき→壹枚につき? 極上々種の説明には「壹枚に付」とある。
# 八斗預 「預」でなければ「積」かもしれないが、「余」のつもりで書いているかもしれない。

三丁裏

http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko04/bunko04_00660/bunko04_00660_p0009.jpg
↑ここの冒頭2行

  出種小粒にてしまりゆるく出来るを下種と
  いふなり

用語


 蚕の卵のこと。

種はき
 孵化したお蚕を最初の餌に刷毛でうつしてやることを「はき立て」というので、養蚕を始めること、養蚕そのものを意味しているようです。「種はき度(たしと?)おほしめしある人は」とかなら意味は通じます。
 でも「種壹枚はき桑十駄也」とかは「種壹枚"につき"」とかの書き間違いじゃないのかとも思えます。同じような文章で「種壹枚に付」と書かれている場所もあります。

かひ方
 「飼い方」のことなのは流れでわかりますが、表記が微妙で「かひ方(可比方)」にも「かい方(可以方)」にも見えます。また目次では「かえ方」にしか読めない書き方をしています。ひょっとすると方言で「カエカタ」と発音しているのかもしれないです。
 同じ本の中で起きることを「をき」と書いたり「おき」と書いたりもしているので、仮名遣いにゆれがあることは確かです。

読めなかった部分のメモ

まゆ八斗預取
「まゆ八斗預取」
 ここは「預」で「余」と書くべきところを誤用してるんじゃないのかなあと思うんですが、別の解釈が成り立つようならぜひご指摘ください。


但し壹駄と申は…
「但し壹駄と申は・・なわ六把也」
 直後に八斗は京枡だと書いてあるので、ここでも「駄」という単位を定義してると思うんですが読めませんでした。


ゆ故手入ふ?
「蚕母壹人にてかひ[ゆ故手入ふ]是まゆ下品に出来」
 [ゆ故手入ふ]の部分がまったく意味不明です。


蝶少し出
「蝶少し」
 蝶だと思うんですけど自信ないです。種(卵)の品質を言うのに繭になってから蝶(蛾)が出る数を言うのもなんとなく変ですし。ただ、育ち方にばらつきがあると予定外に早く羽化するお蚕がいるので、それを種の品質のせいだと考えてるのかもしれませんが。

タグ:古文書解読

古文が続くのも退屈でしょうから

ファイル 1488-1.jpg

 がぼ様(猫)のあくびをどうぞー。

タグ:がぼ

美しい薄氷の世界

ファイル 1486-1.jpg
 先日「季節は晩秋」とか書いたような気がしますが、冬もやってきちゃったようなんですよ。今朝は霜柱も立ったし、流れのない水路には薄氷もはっていました。

 水元公園では刈り取られた葦の根元に波紋のような模様のかわった氷が張りました。写真が沢山あるのでページを分けます。「続きを読む」をクリックしてください。
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タグ:地元(葛飾周辺)

養蚕重宝記03:世にいずれの名人養蚕記をいたしありといへども

一丁表

http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko04/bunko04_00660/bunko04_00660_p0006.jpg
↑ここの左部分

養蠶重寶記(蠶は神かんむりに虫)
一 世にいずれの名人養蚕記をいたしあり
  といへども男女童子ともに至り文字の
  よろしきかたき事にてはわかりかねる
  ゆへに文字のはたらきにかかわらず

一丁裏

http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko04/bunko04_00660/bunko04_00660_p0007.jpg
↑ここの右部分

  心にかなへるのみ第一に書しるし
  ・

    信州小縣郡上田在まいた
          南向堂重清

説明と読めなかった部分のメモ

 目次の前に序文めいたものがついているのに、さらに南向堂先生の前書きがついてるという念の入りよう(笑)内容としては、老若男女だれにでも分かるように書きました、ということでしょうか。

 「まいた」は地名のようです。長野県小県郡に明治まであった舞田村のことかと思います。

 一丁とか二丁とかいうのはページのことですが、序文から目次まで通番になっていて、本文の冒頭でリセットされてまた一丁から始まってます。

 今の本とはページの振り方が違い、紙一枚分が一丁です。一丁の表を読んで、ページをめくると一丁の裏になります。

最後の文字は何??
 最後の方に全く読めない部分がありました。赤線を引いたところはなんと読めばいいんでしょう??


追記

 この本では蚕の文字が三種類使われています。「蚕」「蠶」と、もうひとつは「神」の下に「虫」を書く文字で、パソコンでは表示できないと思います(たぶん)。

 今でも農家では蚕を呼び捨てにはせず「お蚕」「お蚕さん」「お蚕様」などと丁寧に呼びますが、江戸時代はもっと大事にされていて、神と同じものだくらい言われてたようです。「神/虫」という文字も、そうした気持ちから作られたものかと思います。国字だと思うけど、未確認です。

タグ:古文書解読

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珍獣ららむ〜 (12/16 06:04) 編集・削除

まちがい発見

× 文字のはたらきに
○ 文字のつたなきに

でした。単語の頭文字を読み間違えると続く文字もまちがえてしまう法則ですね。気をつけよう。

珍獣ららむ〜 (12/22 08:36) 編集・削除

>  心にかなへるのみ第一に書しるし
>  ・

「書しるし」のところの原文を見ると、「し」をやけに大きく書いているのですが、どうやらこれは「可候(べくそうろう)」という決まり文句のくずし方らしいです。

ということは、最後の行の謎の文字は「事」かもしれないですね。「可候事(べくそうろうこと)」で決まり文句っぽい。


こういう、決まり文句を知らないと絶対に読めないまとめくずしの荒技一覧表があったら便利そう。
いやきっとあるんだろうな世の中には。
今度図書館行ったら探してみよう。