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土合駅

 わたしは群馬育ちです。群馬の小学校では新潟方面で臨海学校をやることが多いです。わたしが通ってた学校では寺泊(てらどまり)の合宿施設みたいなところを使っていました。

 伊勢崎から新潟への移動は電車でした。当時はまだ国鉄で、新幹線はなかった時代です。L特急は走っていましたが「学生は鈍行よ!」とか言われてみんなで各駅停車の上越線に乗りました。

 群馬と新潟の間には分厚い山があります。群馬側より新潟側のほうが高いらしく、当時の技術だと鉄道をまっすぐに引けなかったらしいです。

 そこで、その山を越えるトンネルは二つのループで出来ていて、大きく旋回しながら山を登ることになりました。これが上毛カルタにもうたわれた「ループで名高い清水トンネル」です。

 清水トンネルは単線だったので列車の本数を増やすためにもう一本トンネルを掘る必要がありました。こうしてできたのが新清水トンネルで、こちらは技術が進んでループなしで通すことができました。 # このあたりの説明は小学生の頃に学校の先生に聞いたまんまなので正確かどうかは知りません。

 ところで、清水トンネル・新清水トンネルのちょうど中間地点には駅があります。土合駅(どあいえき)と言います。なんにもない山の中ですが、谷川岳の登山口になっているらしいです。

 先生が言うには、行き(下り線)の土合駅は深いトンネルの中にあって、帰り(上り線)の土合駅は地上にあるというのです。

 長いトンネルすら珍しいのに、トンネルの中に駅があるなんて完全にメルヘンの世界です。おまけに同じ駅なのに行きと帰りで違う場所に着くなんて。

 降りてみたくて仕方がなかったのですが、残念ながら土合駅見学は予定に入っておらず、指をくわえつつ行きも帰りも通過しました。

 最近になって土合駅は日本一高低差のある駅とかテレビで紹介されるようになりましたが、群馬ではわりと知られた駅だったと思います。そのわりに降りたことのある人はいないのですけどね。


 今回、鈍行列車で金沢に行くことになったので、絶対に土合駅に降りてみようと決めました。このチャンスを逃したら一生行けないかもしれません。

 なんせ土合駅には鈍行列車しか止まらないのです。しかも、土合駅まで来る列車は日に五往復、季節列車を含めても七往復しかありませんから。非常に難易度が高い駅です。土合駅下り線の時刻表>http://www.jreast-timetable.jp/1101/timetable/tt1035/1035010.html

 土合駅に8:34着、次の電車が9:56発。これを逃したら次は13:50です。途中ひとつでも電車を逃すと悲しいことになりそうです。ある意味決死の覚悟で東京を後にしました。


 下り線の土合駅は新清水トンネルの中にあります。動画もとってみたのですが薄暗くてまるでダメでした。いちおう駅なのに照明はトンネルの中と大差ありません。


土合駅
▲土合駅の階段です。わたしのカメラだとこれが精いっぱいですね(新しいカメラ買わなきゃ)。地上に出るにはこの階段を登るしかありません。エスカレーターなんて軟弱なものはここには存在しないのです。ここを通る者は谷川岳を恐れない猛者のみ。この階段をたやすく上りきる者だけが谷川岳に踏み込むことを許されるのです(たぶん)。


土合駅
▲看板。この階段は 426 + 24 段、上と下とでは標高差が 70.7 メートルあると書いてあります。

 階段の途中もレポートしたいところですが、前日まで風邪で寝てた状態でこの階段。まわりは薄暗く、階段はどこまでまっすぐ。完全に距離感を失って頭はクラクラ。50段上っては休み、下を見てため息をつき、50段上っては休み、上を見て頭を抱える。そんな状態です。結局上まで20分くらいかかりました(思い出したくない)。


土合駅
▲階段を上りきると、こんな渡り廊下があります。疲れててピントも合わない… この下には国道が走ってます。ここはあとで外から見えるので覚えておいてください。


土合駅
▲駅の待合室はこんな感じです。意外と広くて椅子がたくさんありました。寂れた感じがするのは、日常使われる駅じゃないのと、無人駅だからでしょうか。そう、無人駅なんです。自動改札すらありません。無賃乗車されないんでしょうか。駅自体は立派な作りで、もしかしたら大昔は常時職員がいたのかなあと思います。
 

土合駅
▲ご用の方は水上駅までご一方くださいという張り紙。


土合駅
▲自動販売機は中止になっていました。


土合駅
▲谷川岳の危険区域を案内する看板です。登山客が多いんでしょうね。


土合駅
▲駅の屋根から長く伸びた氷柱です。


土合駅
▲ここは上り線のホームです。この通り地上にあります。もっと引いたところから写真をとればいいのに、最近ぜんぜんそういう頭が回らないんです。


土合駅
▲土合駅のまわりは晴れていましたが、ここより高い山の上は吹雪ですね。


土合駅
▲これが外から見た土合駅です。なかなか立派な作りでしょう?


土合駅
▲駅を背にすると、ほら、さっきの渡り廊下が見えます。ここを歩いてきたのですね。


土合駅
▲駅のまわりに民家はなさそうです。この土合ハウスというのは宿泊所のようですが、この日は閉まっていました。営業が夏だけなのかもしれません。


土合駅
▲駅のすぐ近くにドライブインがありまして、事前にネット検索で調べたかぎりでは八時半から営業と書いてありました。山奥のドライブインなのに朝から開いてるなんてすごいなあと関心したのです。


土合駅
▲が、現地まで来ると見事に閉まっていました。ドアの取っ手に挟まってる新聞が一日分なので、少なくとも前日は営業していたみたいですね。っていうか、新聞届くの、ここまで?! すごいな、日本の新聞配達夫は。

 それはともかく、ここで朝食を食べようと思っていたので、開いていないのは困りました。登山客を見込んでいるなら冬はシーズンオフなので、気まぐれにしか営業しないのかもしれません。

 仕方なく、ドライブインの自動販売機で熱いお茶を買って駅にひきかえしました(駅の自販機は止まっている!)。


土合駅
▲何かの足跡です。たぶんキツネだと思います。この足跡は駅の前から駅舎を迂回して、上り線のホームの方まで続いていました。


 期待していたドライブインが閉まっていたので、駅で茶をすすりながら次の電車を待つことにしました。しばらくは地上の駅舎で待っていたのですが、途中に階段があるので、大事をとって少し早めに地下ホームにおりました。

 下り線のホームには、なぜかプレハブ小屋のようなものがあって、中が待合室になっています。トンネルの中なのに、なぜ個室があるのかちょっとわかりません。地下まで降りてくるとこの部屋にしか椅子がないのです。

 ところが、この部屋には湿気がこもっていて、いたるところカビだらけです。かび臭いというよりも、息をすると鼻が痛くなるようなカビの量です。

 写真をとったような気がしていたのですが、探してみたらありませんでした。階段のある…じゃなくて、怪談のある駅だそうですから、あるいは何かの霊力によってシャッターがおりなかったのかもしれませんが。


 そんなこんなで、生まれて初めての土合駅体験でした。近くに天神平スキー場へのロープウェイ乗り場があるらしいので、チャンスがあったら夏に(スキーは苦手なので!)また行きたいです。

タグ:2011年1月金沢旅行 群馬

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  • 2011年01月20日(木)10時23分
  • 日記

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