手塚治虫の名作『ブラック・ジャック』を知っていますか?あ、いや、知らなくても知らないって言わないでください。説明面倒くさいから(笑)!
知らない人のためにかるーく説明すると、ブラック・ジャックは天才外科医なんだけど残念ながら無免許で、でも世界のあっちこっちで訳ありの患者の治療をひきうけて、一生かかっても払い切らないような治療費を要求してまわってます。
彼の技術がどのくらい天才的かっていうと、馬の脳を人間に移植したり、摘出した奇形嚢腫を人間の形に整形して育てたり、鏡を見ながら自分の腹を手術するという離れ業をやってのけたりするわけです。
あれ、面倒っていいながらけっこう説明しちゃった。まあいいか。
で「自分の腹を手術する」っていうやつ。これね、いくらなんでも漫画でしょって思うわけ。だって鏡を見ながら手術するんですよ?左右逆なんだから。いくら天才だってそんなの無理でしょって思うわけですが、
なんと、ほんとうにそんな手術をやってのけた人が存在するらしいのです。ぜんっぜん関係ないことを検索してて、偶然みつけました。
その人はレアニード・イヴァーノヴィチ・ラゴーザフ(Леонид Иванович Рогозов)という旧ソ連の医師でした。1960〜1961年に南極探検隊に医師として参加しましたが、滞在中に虫垂炎からくる腹膜炎で、手術しないとまずいんじゃないのってな状況になりました。# 名前の発音は「レオニド・イワノヴィチ・ロゴゾフ」とかのほうが日本語として通りがいいかもしれないです。
ところが基地内には医師が彼しかいません。悪天候で他の基地などに助けを求めることもできませんでした。そこで自ら手術する決意をします。腹部に局所麻酔をして、気象学者などの手助けを借りながら、ややリクライニングするベッドの上で鏡を見ながら自分の腹を切ったそうです!
手術は約二時間かかりましたが成功し、彼は二週間で職務に復帰したそうです。その後、帰国してからも医師として活躍し、2000年に66歳で亡くなったということです。
◎Leoniv Rogozov, el medico que se operó a sí mismo.|Tejiendo el mundo(スペイン語)
http://tejiendoelmundo.wordpress.com/2010/01/08/leoniv-rogozov-el-medico-que-se-opero-a-si-mismo/
最初にみつけたページはこれです。手術中の写真があります。白黒写真なのでグロくはないと思います。
◎Leonid_Rogozov|Wikipedia(英語)
http://en.wikipedia.org/wiki/Leonid_Rogozov
追記
自分としては、すごい発見のつもりだったんですが、すごさが伝わらないかもしれないので追記しておきます。
ラゴーザフが自分で自分の開腹手術をしたのは1961年ですから、もちろん手塚治虫がブラック・ジャックを書く前の話です。たぶんですけど、手塚はこの話を知ってたんじゃないでしょうか。
ブラック・ジャックが自分の腹を手術するというのが、たしかピノコを養子に出そうとするエピソードが最初だったと思います。
ピノコをおっぱらった後に、ブラック・ジャックは腹膜炎で寝込んでしまうのですが、化学療法で回復が見込めないので自分で手術しようとするんです。シチュエーションからしてソ連の南極基地での出来事と同じです。
つまり、ラゴーザフの自分回復手術がブラック・ジャックのエピソードの元ネタなんじゃないでしょうか。
今のところまだ「おそらく」の域を出ませんが、ラゴーザフのことを報じる日本の新聞記事かなにかが出てきたらアタリだと思います。
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