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利根郡の雑煮には豆腐が入ってるらしい

 AllAbout グッドアンサーズのお題にご当地雑煮っていうのが出てるので、群馬の雑煮はどうだったっけかと考えた。

 祖母が作る雑煮は、お椀に茹でた餅がいっぱいに入ってて、具の少ない汁がかかってた。具は長ねぎと椎茸は覚えてる。他は覚えてないくらい具が入ってなかったと思う。汁が少なくて餅ばっかりどっさり入ってた。

 それが群馬風(あるいは伊勢崎風)なのかっていうと、よそのうちで雑煮を食べたことがないのでよくわからない。とにかく祖母の雑煮はそんなんだったから、わたしは祖母の家で雑煮が出てもあまり嬉しくなかった。子供の頃によくありがちだけれど、わたしは長ねぎが嫌いだったのである(今は好きだが)。

 わが家の雑煮とかのお題なら、そういう雑煮もアリかなとは思うけれど、お題は「ご当地雑煮」である。さすがにお椀全面に餅が充填されたほとんど汁のない雑煮を群馬のご当地だと言い張るのはビミョーかもしれない。

 じゃあ、正しい群馬の雑煮はどうなのか、調べてみた。うちの本棚には農山漁村文化協会ってところの日本の食事シリーズが全巻そろっている。最初は必要に応じて図書館で読んでたけれど、ある時閉架にされてしまい「フザケンナ毎日請求するぞー」と鼻息を粗くしながらサクッとオークションを探したら全巻セットで3000円くらいで売られていたので買っちゃったのである。図書館に行くより早いけれど部屋は狭くなった。そのシリーズの『聞き書 群馬の食事』によると、群馬の雑煮は地方により違うようだ。

 以下は『聞き書 群馬の食事』からの引用である。

(奥利根地方では)元日の朝は雑煮が中心である。大きな米のもちを焼いておわんいっぱいに盛り、大根、にんじん、こんぶ、豆腐を入れた醤油仕立てにして、かつおぶしをのせる。

(吾妻地方では)短冊切りの凍みた大根、切りこぶを煮て味噌味のつゆをつくり、そこへ焼いた餅を入れる。

(高崎地方では)雑煮は大根、にんじん、しいたけ、青菜、焼き豆腐、里芋、なると、かまぼこなどの具で醤油味にし、四角の切り餅を焼いて入れる。 

(奥多野地方では)雑煮は、ねぎとさんどいもの醤油味の汁に、白もちときみもちの二種を入れる。

# さんどいも=ジャガイモ(年に三度収穫できるから)、きみもち=黍(きび)で作った餅。

(赤城南麓では)雑煮の中身は、大根、にんじん、あぶらげ、しいたけ、こんにゃく、ねぎを入れ、醤油で味をつける。もちはほうろくで焼いて、汁の中に入れる。器に盛って上からけずり節をかける。

(群馬県全般の芋類の使い方の解説)群馬県には「いも家例」と称し、正月にはもちを用いずにいも(主として里芋)を雑煮にして食べる習慣があり、一族に家例を守らせることによる同族意識を高め、団結力を強固にして生活している。

 雑煮に関する記述はこんな具合である。強いていえば祖母の雑煮は奥多野のものに似ているが、奥多野出身とは聞いたことがないので偶然の一致だろう。本によれば群馬は焼き餅文化圏のようだが、祖母の雑煮はゆでてあったと思う。

 問題は「ご当地雑煮」として何を作るべきか、である。

 特徴があるといえば、どの雑煮にも肉が入っておらず、奥利根や高崎で豆腐を入れると書いてある点だろうか。肉の代わりに豆腐をタンパク源として食べたのだという説明は同書の中にも散見される。そしてこれは、わたしの勝手な想像だけど、米の餅すら満足に用意できなかった時に、白い豆腐を餅に見立てて入れたのではないか。

 というわけで、作ってみたのがこれ。
ファイル 1763-1.jpg
 醤油仕立ての汁に、具は大根、ニンジン、インゲンなど。豆腐はそぎ切りにして入れた。「そぎ切り」にしたのは、利根郡あたりでは賽の目の豆腐は法事にしか使わないと書いているサイトがあったからである。わたしは利根郡で雑煮や味噌汁を食べたことがないので本当かどうかは知らないが『聞き書 群馬の食事』のグラビアページにある利根郡の雑煮を見ても、たしかに豆腐は賽の目ではないのでそうしてみた。

 餅は、角餅なら焼いても良かったんだけれど、鏡餅を開いて使ったので、なんとなく茹でてみた。なんせ市販の鏡餅は手でまるめたのとはちがい、樹脂製の容器に充填したようなものだから、焼くとどうなるのか想像できなかったのである。

 豆腐をそぎ切りにすると書いてあったのは以下のページだ。具だくさん(鍋の中は確かに具だくさんの汁)というわりに、完成品はそれほどでもないのは謎である。本に載っていた写真もおおむねこのサイトにあるような状態だった。

◎47URARA:自家製のたんぱく源、豆腐入り雑煮
http://urara.47club.jp/2010-12-ozouni/gunma/8019

みなかみ町月夜野地区に伝わる雑煮は、しょう油仕立ての汁に大根、ニンジン、サトイモ、ハクサイなど、主役の餅が隠れんばかりの具だくさん。地元の野菜などに混じって入れられるのが、自家製の豆腐だ。

雑煮には豆腐をそのまま、そぎ切りにして入れた。「この地域では、さいの目切りは仏事に使う切り方。さいの目切りは嫌われた切り方で、ふだんのみそ汁も、そぎ切り」と言う。

貴重なタンパク源として、さまざまな料理に使われてきた大豆だが、子どもたちの評判は悪い。学校給食で出される雑煮は、豆腐に代わり鶏肉が入る。豆腐と餅の織り成す食感は、継承されずに確実に消えつつある。

【材料】
大根、ニンジン、サトイモ、ハクサイ、ほうれん草、ネギ、ちくわ、ナルト、豆腐、コブ、かつお節、ユズ、餅


こっちにも投稿
◎グッドアンサーズ:ご当地お雑煮のレシピを教えてください。
http://answers.withabout.jp/topics/full/8626/

タグ:郷土料理 手料理

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