八十二 茶豆乳(ちやとうふ) とうふ十挺に上々の茶壱斤の分量(つもり)にて茶を煮いだし沸(にへたち)たる所へとうふの羅皮(ぬのめ)をさりて入れよく烹て茶色に染るを別に茶を烹て出ばなの所へ入れなをすべし さて茶をしぼり ○煮かへしの稀醤油(うすしやうゆ)花鰹脯山葵のはりをおく又山葵味曾よろし ▲山葵味曾の製はみそに白胡麻胡桃よくすり合せをき用るとき擦山葵入るゝ也 ○又胡椒みそもよし
豆腐百珍には豆腐をさす表記がいくつかあります。「とうふ」「豆腐」「豆乳」「菽乳」など。おそらく意味には違いがないと思います。特殊なものを要求する場合には「絹ごしのおぼろ」「焼き豆腐」など、きちんと指定がありますから。
というわけで、この場合の豆乳も、木綿豆腐だと解釈します。また布目を取り去れと書いてあるので絹ごしではないでしょう。
手順は、豆腐を濃く煮出したお茶で煮て色をつけ、香り漬けのために別途用意した美味しく入れたお茶に入れ直し、お茶を切ってから煮返し醤油か山葵味噌をつけて食べる、となります。湯豆腐の一種ですね。
さっそくやってみたのですけど、
……うーむ、色がつかない(笑)
豆腐をちょっとやそっとお茶で煮ても色がほとんど付きませんでした。豆腐ごときに長時間ガスを使うのはもったいないので、5分加熱したあと火をとめて、お茶の中に豆腐を放置してみたのですが、ほんのすこし緑色にしかなりません。お茶はかなり濃く出したつもりです。
オリジナルレシピでは、豆腐の布目を取り去れとありますが、ここでは省略して大きめの賽の目に切りました。切り口よりも布目のほうに色が濃くついてしまうのも拍子抜けです。
レシピに「とうふ十挺に上々の茶壱斤(600gくらい?)」とあるので完全に商売用でしょうし、もしかすると何時間か煮込まなくてはいけないのかもしれません。
写真で豆腐に添えたのは、味噌に青海苔を混ぜて作った青味噌に、胡桃(くるみ)と山葵(わさび)を擦り入れた青山葵味噌です。
用語解説:煮返し醤油
醤油に砂糖を混ぜて沸騰させたもの。本格的にやるなら煮返したあとに瓶に入れて数日間熟成させます。
豆腐百珍には生の煮返し醤油(きのにかへししやうゆ)も出てきますが、こちらは砂糖を水で溶かしてよく加熱し、水あめ状になったのに醤油を加え、醤油には火を通さないやり方です。
ご家庭でこんなまねをしていると大変なので、寝かせる部分を省略するか、麺つゆやすき焼きのたれを使うなど臨機応変に対応します。
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