七 草(さう)の八杯とうふ 太温飩(ふとうとん)にきり醤油に酒しほの烹調(かげん)にてかくし葛つかひおろし蘿蔔(たいこん)おく ○真の八杯とうふは妙品[八十一]に出(いで)たり
草のというのは本格に対する簡略版でしょうか。豆腐百珍で「草の」がついたら「真の」もあります。真の八杯豆腐は次のようなものです。
八十一 眞の八杯とうふ きぬごしのすくひ豆腐を用ひ水六杯酒壱杯よく烹沸(にかへし)後(あと)に醤油壱杯入またよくにかへしとうふを入る烹調(にかけん)[九十七]湯やつこの如し擦大根をく
これを読むと、八杯豆腐という名前の理由がわかります。水六杯と酒一杯を煮きって、アルコールを飛ばしてから、醤油一杯を加えるので、合計八杯です。草の八杯豆腐も、名前が八杯なので、味付けはこのとおりにしたいと思います。
ところで、これだけ見ると、真の八杯豆腐には調味料の割合が書いてあるくらいで、草と大差ないように見えます。作り方が同じだったら、真も草もないわけですからちょっとおかしいですね。そこで「湯やっこ」の煮加減にせよと書いてあるのでそっちも見てみます。
九十七 湯やつこ 八九分の大骰に切か又は拍子木豆腐とて五七分の方長(かくなが)さ壱寸二三分の大きさに切をき ○葛湯を至極ゆだまのたつほど沸たゝし豆腐を壱入れ蓋をせず見てゐて少しうごきいでゝまさにうきあがらんとするところをすくひあげもる也 既にうきあがればはや烹調(かげん)よろしからず其あんばい端的にあり尤器をあたゝためおくべし…以下略
湯やっこは葛湯の中で豆腐を煮るのですが「浮き上がりそうになったらすくい上げる」という絶妙のタイミングを要求するようです。
真の八杯豆腐は、水八杯、酒一杯、醤油一杯の割合で作った汁に、上記のように絶妙の煮加減でひきあげた豆腐を入れろと言っているようです。
真に対して草は簡略版と解釈するならば、もっと手順を簡単にしないといけません。そこで
1. 水6 + 酒1 を沸騰させてアルコールを飛ばす
2. 醤油1 を加える
3. 葛粉(または片栗粉)でとろみをつける
4. 太いうどん状に切った豆腐を入れ、一煮立ちさせる
5. 大根おろしをトッピングする
こんな風にしてみました。別の解釈も成り立つとは思いますが、なるべく日常に取りこめるよう簡単にしたいと思います。
さて、この割合で味付けすると想像よりもしょっぱくなります。写真では汁をなみなみと入れてしまいましたが、もっと少なくして、大根おろしと豆腐をからめて、つるんと食べる感じにしたほうがいいと思います。
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