卅九 粟菽乳(あわとうふ) しき葛あんに擦山葵をきおぼろ豆腐の烹調よきを湯をしぼりてもり其上へ雞卵(たまご)の煮ぬきの黄(きみ)ばかりをみつしりとふるなり
煮ぬき玉子というのは固ゆで卵のことです。黄身をふりかけて粟(あわ)に見立てるのですから、金(かね)のザルで裏ごして使うのでしょう。今風に言えば「おぼろ湯豆腐のミモザ」といったところでしょうか。想像しただけで美しさが伝わってきます。
うーん、ワタクシが作るとなんかイマイチ? 市販のおぼろ豆腐をそのまま茹でたのは絵的に失敗でしたね。どちらかといえば絹ごし豆腐を手ごろなサイズの賽の目にして茹でて使ったほうがよかったかな。
昔のひとはおぼろ豆腐も自分で作ったでしょうし、きっとこんな固まりではなく、一口分くらいのかわいらしいものを用意したんでしょうね。
今回の料理は卵黄を使って粟に見立てます。ところが豆腐百珍には粟を使って女郎花(おみなえし)に見立てる料理もありまして、それについて著者は「まことに好事家の趣向なるべし」と書いています。わざと別のものに見立てるところがオシャレなんですね。
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