以前、葛飾区金町の駅前で「へぎ蕎麦」というものを食べた話を書きました。
http://www.chinjuh.mydns.jp/cgi-bin/blog_wdp/diary.cgi?no=1235
「へぎ」というのは木でできた四角くて平たい器のことだそうです。へぎに乗せて出せば普通の蕎麦でも「へぎ蕎麦」なんでしょうが、新潟では蕎麦を打つのにつなぎとして布海苔を使うんだそうです。
布海苔というのは海藻のことで、もちろん食用にもなるんですが、煮ると糊になります。昔は着物の洗い張りや、障子を貼るのに使いました。
新潟は織物で栄えた土地です。経(たていと)が摩擦で切れるのを防ぐために布海苔を使うので、ごく身近に布海苔があったため、それを蕎麦打ちのつなぎとして利用したらしいんです。
その、布海苔入りの新潟風の蕎麦は、へぎに乗せて出すことが多かったので、へぎ蕎麦といえば、布海苔入りの蕎麦ということになってるそうです。
と、話には聞いてましたが、はたして「へぎ蕎麦」は、本場新潟県ではどのくらい普及しているのでしょうか。実際行ってみたらフツーの蕎麦しかなかったらどうしよう?!
などというのは完全に杞憂でした。新潟市内をぶらつくと、あっちこっちに「へぎ蕎麦」の看板を出した蕎麦屋さんがあります。観光用って感じでもなさそうだし、普通に蕎麦っていったら布海苔入りなんですね?
どの店が美味しいか知らないので、どこでも良かったんですが、今回は小嶋屋総本店の小針店に入ってみました。
総本店のナントカ店とかなんじゃそれって感じですよね。わたしも事情はよくわかりません(笑) とりあえず総本店の本店は十日町市にあるそうです。
◎小嶋屋総本店
http://www.kojimaya.co.jp/
十日町市といえば、小千谷市などと並んで越後縮(えちごちぢみ)という織物で有名なところです。お、なんだか聞いてた通りの展開になってまいりましたよ?
http://www.kojimaya.co.jp/kodawari/index.html
当時この地方では小麦の栽培は行われておらず、そばのつなぎにはもっぱら山ごぼうの葉や自然薯などを使っていました。
ただ、この地方は織物の産地であり、織物の緯糸(よこいと)をピンと張るためにフノリ(=布海苔)という海藻を使っていましたので、このフノリは容易に入手できる環境だったのです。
そこで重太郎は「このフノリを使ってそばはできないだろうか」と研究を重ね、現在のフノリそばを完成させたのでした。
ということで、どうやらこのお店は布海苔を繋ぎにした蕎麦の元祖らしいです。おー、偶然当たりを引いたかもー。
▲小嶋屋総本店の天ざるそば 1350円。
この店には「へぎ」に乗ったやつもちゃんとあるんですけど、蕎麦はどれも同じですよってことだったので今回は天ざるを頼んでみました。薬味として自分ですって使えるように、本わさびのきれっぱしと鮫皮下ろしがついてきます。
鮫皮ですったわさびは思いのほかいいものですね。こんなに鮮烈な香りは、目の粗い下ろし金では出ませんねー。鮫皮下ろし、買っちゃおうかなあ。
肝心の蕎麦はというと、これまたすばらしい。腰が強くてつるっとしてて、金町で食べたのも美味しかったけど、元祖もいいぞー、やっぱり本場は美味しいぞー!
新潟って面白いなあ。地元に根ざした美味しいものがいっぱいですね。
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