▲バラにつくこのハバチ、正体はなんなのかを調べています。
注意:腹脚の数が違うので蝶や蛾ではなくハチなんです。ヨトウムシ(蛾)ではないし、同じハバチでもチュウレンジバチとは全然まったく別のものです。
その1:突然ですが、バラにつくハバチの正体を解明してやろうと思っています
http://www.chinjuh.mydns.jp/cgi-bin/blog_wdp/diary.cgi?no=1370
その2:問題のハバチが羽化したんですけどね……
http://www.chinjuh.mydns.jp/cgi-bin/blog_wdp/diary.cgi?no=1373
これらの記事の続きです。
前の記事に書いたとおり、クシヒゲハバチだろうと見当をつけて飼いはじめました。なぜそう思うかっていうと、話せば長いことです。
まだインターネットが今ほど普及していなかった頃に、バラにつく害虫を紹介しているサイトで、この芋虫とそっくりな写真が掲載されており、とある博物館の人にクシヒゲハバチでしょうと言われたと書いてありました。とても似たものにクワガタハバチもあるとも書かれていました*1。
現在ネット上にある「クシヒゲハバチ」「クワガタハバチ」の幼虫&成虫写真のほとんどが、もしかするとそのサイトの情報が発信源なんじゃないのと思ったりします。わたしもこれまでは、ぼんやりと「そのどっちかだろう」くらいに思っていたのです。
でもほんとにそうなんでしょうか。もとのサイトの人を批判するつもりはまったくありません。だって博物館に問い合わせたりしてとても熱心ですし、むしろ称賛にあたいします。
しかし、このての小さな昆虫は写真では見分けがつきにくいのです。博物館の人だってきわめて似ていると言ってるだけなんじゃないのかなあと。
そんなこんなで、毎年気にはなっていたのですが、今年こそ解明してやろうと思ったわけです。飼えばきっと結論が出ると思っていました。
しかし……?!
▲羽化したハバチたち。ちょっとかわいそうですが研究のために放さずに飼い殺しにしました。
触角に注目してください。すらりと一本で、枝分かれはしていませんよね。これまでに 8頭ばかり羽化しましたが、そのすべてがこの状態でした。
クシヒゲハバチはその名の通り「オスの」触角が枝分かれして櫛(くし)状になっています。クワガタハバチも「オスの」触角が二本にわかれて甲冑の鍬形のようになっているのが特徴です。
ところが羽化したハバチはこのとおりの状態で、触角の枝分かれは見当たりませんでした。
仮説その1:羽化したもののすべてがメスなのではないか?
仮説その2:クシヒゲでもクワガタでもない第三の種では?
一体これはなんなのか?!
▲腹側の拡大写真です。脚の一部が白いのが特徴です。
▲これは背側から写したものです。腹も背も全体が黒です。翅はやや黒い透明で、付け根にむかって濃くなっています。
この特徴をふまえて『兵庫県におけるハバチ類の多種多様性』という資料をあたりました。これは内藤親彦さんというちゃんとした専門の方が作ったもので、ネットでPDFの形で公開されているものをダウンロードしました。
この本にはクワガタハバチのオスと、クシヒゲハバチのオスの写真が掲載されています。クワガタハバチは(少なくともオスには)腹の胸に近い部分に白い帯がありますし、翅脈もだいぶ違うような気がします。
(写真を並べて掲載したいところですが著作権もありますのでやめておきます。興味のある方は『兵庫県におけるハバチ類の多種多様性』で検索して図18を見てください。)
一方、クシヒゲハバチはというと、翅の色といい、全体のフォルムといい、非常に似ています。しかし残念なことにわたしが育てたものは触角が櫛になっている個体がまったくいないので、どうも確信に至れません(クシヒゲハバチは同書の図53です)。
これまでのまとめ
・ハバチであることは確か。
・チュウレンジバチではないし、その近縁種でもない。
・クワガタハバチではない(ほとんど確定)
・クシヒゲハバチ「かもしれない」
・クシヒゲハバチだとしたら、なぜわたしが育てると触角に枝分かれのない個体ばかりになっちゃうのか?
ひとつの可能性として、オスの触角も普段は一本になっていて、何かの条件で枝分かれが開くのではないか、とも思うのですが、それにしたって全部が全部ピタッと閉じたまま死にますかね…
(つづく、のだろうか?)
*1:今あらためて確認しに行ったら、オオシロクビクロハバチ←タイポだったオオシロオビクロハバチという第三の虫についても書いてありましたが、それがクロハバチの仲間ならば幼虫の形が全然違うと思うので個人的には除外です