手塚治虫の漫画『ブラック・ジャック』に「鯨にのまれた男」というエピソードがあります。たしか捕鯨船から海に落ちた男が、直後に捕まえられた鯨の胃袋から出てくるという話です。胃液で皮膚が溶かされていましたが生きていたのでブラック・ジャックのところへ運ばれました。
お話の結末は漫画を読んでいただくとして、この話に元ネタがあるはずなんです。いや『旧約聖書』のヨナの話や、それをパクってる『ピノキオ』も手塚治虫は当然ネタにしてるんですが、それじゃなく、もっと近代の実話(と言われている話)で、そっくりな話があるはずなんです。わたしはブラック・ジャックとはまったく別にその話をどこかで読みましたから。
それで検索したら、どこぞの質問サイトで同じことを聞いている人がみつかりました。でも回答にがっかりでしたよ。回答者が口をそろえて「そのような状況で生きているのはあり得ないので、ブラック・ジャックという漫画が元ネタなのではないか」って。しかもその話ばっかりがヒットするんだからやんなっちゃう。
しょうがないので自力で探したらあっさりみつかりました。けっこう有名な話なんでしょうね。日本語のサイトでも話題にしている人がいるし、英語版のウィキペディアにも載ってました。
おおまかな話はこんなんです。
・19世紀末のこと(1891年2月との説あり)
・西大西洋のフォークランド諸島
・ジェームス・バートレイ James Bartley という男
・マッコウクジラをとろうとして鯨に飲まれてしまった
・その鯨はすぐにとどめをさされ、15時間後に解体される
・胃袋からでてきたジェームスは、胃液で皮膚が溶けていたが生きていた
・彼は3週間後に仕事に戻ったが、一生盲目のままだった
・11年後に亡くなり、アイルランドに埋葬された
・墓石には「現代のヨナ」と刻まれている
手塚はこの話を何かで読んでネタにしたんだと思います。決して手塚が元ネタではありません、たぶん。
それで、わたしはこの話を突然思い出して、実話かどうかが気になったんですけど、英語版のウィキペディアにあっさり「都市伝説」と書かれていました。
http://en.wikipedia.org/wiki/James_Bartley
なんでも、この話を検証した人がいるそうです。ジェームス・バートレイが乗っていたとされる船は実在していますが、その船は捕鯨船ではなかったし、乗務員リストにバートレイがふくまれていなかったということです。
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