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養蚕重宝記07:下種かひ方の事〜蚕十分あたりの事

 解読に慣れてきたので一気にいきます。蚕の病気について記録されているので興味深い部分です。

四丁裏~五丁表

http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko04/bunko04_00660/bunko04_00660_p0010.jpg
↑ここの2行目から

『下種かひ方の事』
一 下々種は蚕かいにくし乍去下品といふとも
  一切ふ作といふことなしまゆのつくりあしく
  蚕飼のおん方御そんなり「此種の級は下直
  に仕入方いたし所々の下まゆにて種取此故に
  下まゆにつくるなり

# 乍去=さりながら 不忍(しのばず)みたいに逆さに読む。

『蚕はき立の事』
一 蚕はき立のせつ置場「手違にてほこりに
  なる事此「置場と申はたばこのけむりさき
  あるひは「しもふりさむき風にあたり死して
  ほこりとなるなり

# 置場は聞いたことのない用語ですが、状況から考えて蚕を飼う部屋のことかと思います。後半に「たばこのけむり"さ"き」とあるのは、「こき(濃き)」の間違いなのか方言なのか、ちょっとわからないポイントです。

『蚕はき立次第の事』
一 蚕はき立たくさんにあり「湲々あかく「すき蚕
  になる事此「すき蚕と申は四度のやすみ
  あり「やすみより三日四日めにとふろうのことし
  かならすまゆつくる事なし此蚕は四方を

# 「はき立」は通常は孵化直後の餌やりのことだが、ここで語られているのは四眠後の病気についてなので、養蚕すること全体を「はき立」という言葉でさしているかもしれない。
# 「湲々」は流れるという意味か。読みは「えんえん」かと思うけれど自信なし。
# 「とふろう」は意味不明。「透ける」か「溶ける」に関する言葉のような気がするが。

五丁裏〜六丁表

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  たて気こもりようきはらはずして并に
  火ばちなど入あたたかなるゆへに皆すき
  蚕となるすき蚕にならぬやうにはそらへ
  気をはらひちう夜の桑を入蚕母心を
  とめ「ようきをかんかひ取事せん一なり

# 「すき蚕」は、普通は繭を作る直前に蚕が透明になることを言うが、ここでは すき蚕になっても繭を作らない異常を言っており、それは暖かくしすぎるせいなので、通気をよくして桑を与える事に専念しろと続いている。直前で「湲々あかくすき蚕になる」「四度のやすみあり、やすみより三日四日目に」とあることからお、蚕が突然死んで溶けた様な状態になる病気のことを言っているような気がする。しかし、その病気ではお蚕が黒くなり、透けない。「すき蚕になる頃に、その病気が発生する」というのを途中はぶいて説明しているかもしれない。

水なりかるこのゆへに?
『蚕はき立二度休の事』
一 はき立より二度のやすみまで蚕かしら
  大きく「しりほそく水出す事あり此水
  を出す事は毛蚕のうちよりさむきにあたり
  尤此あたりはひるはようにして火なり夜
  九つまではあたたかにして火の気をたもつ
  夜九つよりは陰にして水なりかるこのゆへに
  八つすぎより夜あけ「朝五つまてはことことく

# 「水なりかるこのゆへに」とある部分は意味が通じないので別の読み方があるかもしれない。


六丁裏〜七丁表

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  さむし二つやすみまではおりおりしもふり
  こふる事ありよくよく心を付へし

# こふる 粉ふる? 雪のことか?

『同二度休より吉凶を知る事』
一 はき立より半分よきまゆをつくり「半分
  すき蚕となるは南の方ようき「つよく
  してあたたかなるゆへなり是を止る
  事は「ようきはげしき時戸を引
  北をとりはらひ蚕にあたらぬやうに
  自然と北風を入る時はすき蚕になら
  ぬなり

しちやうのへの?かひそだてはつる蚕
『蚕六七分の当りにて吉凶を知る事』
一 蚕六七分のあたりふしたかくなる事有
  けむりさき風さきまたは「しちやうのへの
  にてかひそだてはつる蚕「ふしたかく
  なる

# 「けむり"さき"」、「風"さき"」ちょと前にも出てくる。「さき」って何??
# 「しちやうのへの」の意味がわからない。
# 「かひそだて"はつる"蚕」もあやしい。


七丁裏〜八丁表

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『蚕ちぢれ次第の事』
一 蚕にちぢれあり「まゆつくり七八分に
  あたる事此あたりは四度のやすみ
  きぬをぬくせつ風にあたりたるゆえ
  なり

#きぬをぬく=衣を脱ぐ 脱皮のこと

『蚕死ぐもりの事』
一 蚕あたり「まゆつくりしにぐもりある
  事此しにぐもりはまゆ中にてくさり
  是は毛蚕の内夜あげがたさむきにあたり
  たるゆへなり

# 「夜あげがた」は原文のまま。夜明け方ならば「げ」の濁点は余分か?


『同四度の休の事』
一 四度のやすみまでは蚕上々にて三分
  壹になる違ひあり此三分一になる
  ちかひと申は四度のやすみきぬを
  ぬぐせつ北風またはあらき風にあたり
  蚕よろしきといへとも三分壹へる
  事あり

八丁裏〜九丁表

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『庭休より吉凶を知る事』
一 庭やすみ「のちに蚕ふとくして水
  いろにすく事此水色と申は蚕がひ
  のせつさむきにあたり「のちに水色に
  すくなりのこりしまゆは中作なり

# 蚕がひ=蚕飼い(こがい)、養蚕すること。寒さにあたり…とあるので、熟蚕になっても繭にならない症状のことを言っているのかもしれない。

『四度の休より上々蚕桑付の事』
一 四度のやすみまで上々蚕「くはつけの
  しそんじにて五分のあたりなり此
  くはづけのしそんじと申は蚕「そろひ
  たく「くはくれる事手をくれになり蚕
  母の心え違ひなり

# 蚕の成長をそろえるために、四度の休みに脱皮があらかた終わるまで桑くれを止めることがある。桑をやらない時期が長すぎると発育不良になり繭を作らなくなる。ここではそれを「桑くれが手遅れになったせいで、蚕母の過失である」と言っている。


『蚕七八分あたりの事』
一 蚕はじめすこしにてのちに上々のまゆ
  作り七八分にあたるなり此あたりと申は
  蚕母蚕をこのみそばをはなれさる
  ゆへにきこうのさむきあつきをわきまへる

九丁裏

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↑ここの右側まで

  ゆへに自然のあたりなり

『蚕十分あたりの事』
一 蚕十分のあたり「まゆつくりにいたり
  ちかひの事此ちかひと申は「まゆつくり
  のせつ打つ々きあめふりはなはだすす
  しき事あり上々の蚕といへとも五六分
  のあたりとなるなり

タグ:古文書解読

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  • 2012年12月17日(月)15時06分
  • 日記

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