アミューズミュージアムというのは、名前はみょーな感じですが、青森県内で収集された古い野良着と浮世絵を展示している博物館(美術館?)です。浅草寺の二天門の近くにあります。野良着を収集したのは民族学者の田中忠三郎という人で、この人は黒沢明監督の『夢』という映画で、出演者が着ていた野良着を用意した人なんだそうです。
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ここのすごいところは、布関係の展示のほとんどに、触れてもいいことです。撮影もOKだそうです。最初に書いたとおり、田中忠三郎さんという人が青森県で収集した古いもので、実際に使われていたものばかりです。
▲まるでジーンズみたいですが、野良着のズボンです。
▲古い布をついで作った女性用の仕事着。
▲これは布団だそうです。
▲ほつれたところから詰め物を見ることができます。綿ではなく、使い古した麻布を入れてあります。
▲ざっくりとしたキルティング。こういう普段使いの縫い物を見ると、自分も家に帰って何か作りたいって思う。
▲ドンジャと呼ばれる刺し子の夜着。中が綿ではないので「投げると立つ」と言われてたそうです。
▲足袋。この足袋は、下北半島である老女が亡くなった際に遺品から大量に出てきたものだそうです。
着古した着物で作られた足袋は、子供用だったり、大人用だったり様々です。少し奇麗な布で作られているものにはかかとに小鉤がついていますが、日常的にはくものは前開きで紐がついていました。
日常用の足袋は、底布の縫いしろが外に出てるのもあったと思います。安い足袋をはくとわかりますが、縫いしろが中にあるとごろごろして足が痛くなります。作業用なら思い切って縫いしろを外に出したほうがずっとはきやすいはず。
普通はこういうものを見て農村の貧しい生活を想像するのかもしれないけれど、わたしはこの足袋を縫った人の誇りのようなものを感じました。その家に嫁いで、家の中の自分の役割を何十年も守りつづけてきたか女性の、静かで確かな自信を感じます。
▲これはおむつなんだそうです。左端のは子供用だと書いてありましたが、右の三点は大人用だとか書いてありました。つまり昔の介護用品です。こういう下のものは他人の目にふれさせたくないものなので、きれいに残っているのはとても珍しいそうです。
▲これは女性用の腰巻き。
▲こっちは子供服。
▲ズボンを見るとお尻の部分に布がない。
昔は洗い物を頻繁にはしなかったはずなので、子供がそそうをしても汚れないように、最初からお尻があいてるんです。
中国の子供の服が最近まで(今も?)こんなですよね。立って歩くようになったらお尻のあいたズボンをはかせて、どこででも自分で用を足せるようにしてる。
▲女性用の袖無しのはおりもの(左)。こんなのかわいい。冬にむけてこういうの作りたいな。
▲たっつけと呼ばれているもんぺのようなもの。足をいれる筒の間に、別布でマチをつけてあります。
実はこれと似た形状のものを自作して愛用してます。股上を深くとって、スカートの上からはけるようにして、草むしりやバッタ取り(カエルの餌とり)なんかをします。普段ズボンをはかないので作業用にけっこう便利。
このほかに、見事なこぎん刺しの野良着なども展示されてました。アミューズという館の名前のナンパっぷりからは想像できないほど生活に近い展示だったのには驚きました。
以前から、こういった古い縫い物を間近で見たいと思っていて、可能なら手にとって肌触りを確認したり、縫い目を見たいと思っていました。ここはまさに理想です。
これらを収集した田中忠三郎先生がどんな方なのか知りたくなり、帰りがけに地元の図書館で、著書の『物には心がある』をリクエストしました。
受け付けのお姉さんに、それはなんという出版社から出ているのですかと聞かれて、
「ええと、よくわかんないけど、浅草にあるアミューズミュージアム?ってところの…」
「アミューズ?」
「う…(聞き返されると自信をなくすくらい名前が似合ってない)…た、たぶんアミューズ…です。浅草で、その名前の博物館でネット検索すれば出てくる……のかなあ??」
みたいなマヌケな会話をしてしまいました。
なお、公式サイトは↓ここです。
http://www.amusemuseum.com/
ボロ(使い古した布をよせあつめた縫い物)の展示だけでなく、浮世絵の展示もちょっとありました。浮世絵の魅力を紹介する動画がエンドレスで上映されてて、これも面白かったですよ。空調がきいてて居心地がよかったので、けっこう長いこと動画を見ながらマターリしてしまいました。
あ、そうそう、屋上が開放されているので、浅草を見下ろしたい人にもおすすめ。ビルの間からスカイツリーがでーんと見えましたよ。
なお、一番最初に貼った紗綾形(さやがた)文様は、この肌着の前身ごろ上部に使われてるものです。
あらためて見てもらうとわかりますが、布が網状になっています。暑い日に蒸れないようにする工夫なんですね。
今も真夏に和服で過ごそうとするとどうやって風通しをよくするか問題になりますが、昔もやっぱり苦労してたんですね。