▲三眠後の脱皮
三度目の眠は、昨日のお昼前には始まっていたと思います。これまでは一夜明けると脱皮が済んでいたのですが、三眠は今朝までつづいており、朝おきて眺めている目の前で脱皮がはじまりました。
脱皮は、まず頭の殻が剥けるところから始まるようです。脱皮直前の頭は薄い茶色ですが、ぷりっと剥けると白くて一回り大きな頭が出てきます。それから体を蠕動させて、全身の皮を脱ぎます。眠に入る前に腹脚を桑の葉に固定してあるので、皮だけが葉の上に残ります。
お昼になっても脱皮が終わらないので買い物に出かけ、返ってきたのは四時前だったと思いますが、まだ一部の蚕が脱皮を続けていました。結局、ほとんどの蚕が皮を脱ぐまでに一日半くらいかかりました。
さっそく新しい桑の葉をやったのですが、ここ数日雨がふらなかったせいか、桑の葉があっという間に乾燥してしまいます。水をやってみましたが、果たして効果はあるでしょうか。
ふしぎな蚕 『捜神記』より
園客という者がいて、五色の香草の種をまき、その実を食べて暮らしていた。ある日、香草の葉に蛾がとまり、蚕を産み付けた。
園客は香草の葉で蚕を飼い始めたが、神女(天女?)がやってきて仕事を手伝ってくれた。やがて蚕は百二十個の繭になったが、それぞれの大きさが酒瓶ほどもあり、ひとつの繭から糸を繰ると、六日も七日も尽きなかった。
すべての繭から糸を繰り終えると、神女は園客とともに天に舞い上がり、それっきり行方が知れない。
馬の恋 『捜神記』より
出征した父を待っている娘は、父が残して行った愛馬に話しかけた。もし父を連れてかえってくれるならお嫁さんになってあげてもいいよ、と。馬は喜んで一目散にかけていき、父親を乗せて家に帰った。
それからというもの、馬はまぐさもろくに食わず、娘の姿を見て身をふるわを石弓で射殺して皮をはいで干した。
娘がふざけてその皮を踏み「馬の分際で人間をお嫁さんにもらおうなんて思うからいけないのよ」と言うと、馬の皮が娘を包んで飛び去った。
数日後に庭の大木に娘と馬の皮がひっかかっていた。どちらも蚕になって木の上で糸を吐いている。これを養って繭を作らせたところ、普通の繭よりも大きくて糸の巻きが厚い繭になった。
人々はこぞってこの品種を育てるようになり、蚕をやしなう大木のことを桑と呼んだ。桑は葬の意味である(発音が同じ文字だということ)。
# クワゴなどの野生種の蚕がすでにいて、それよりも多くの糸をはく家蚕が生まれた、という伝説。
繭のたたり 『捜神記』より
背中に瘤のある女が物乞いをしていた。その瘤は一斗入りの袋ほどもあり、中には繭のようなものが沢山あって歩くと音をたてた。
女はかつて養蚕をする家の嫁だったが、自分の分だけ何年も原産が続いたので、兄嫁の繭をこっそり燃やしてしまった。背中の瘤はそのたたりで、着物をかぶせておくと息苦しく、いつも重たい袋を背負っているようだという。