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ふしぎなふしぎな小城羊羹

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▲日本橋三越の菓遊庵(かゆうあん)で買ってきました。佐賀県小城市銘菓、村岡総本舖の小城羊羹(おぎようかん)です。

◎村岡総本舖
http://www.muraoka-sohonpo.co.jp/index.html
 サイトの説明によれば、練り羊羹の一種で、切り羊羹というものだそうです。大きな型に流し込んで、固まったら切り分けて、竹の皮に包んで出荷するそうです。普通の羊羹は型に流し込んで固めるだけで、切り別ける作業はないそうです。

 この作業の間に一昼夜の熟成期間があり、そのせいで表面の水分がとんで砂糖のコーティングが出来るらしいんですよ。

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▲わかります?

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▲わかんないかなー?

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▲切ってみました。まわりだけ白っぽくなってますよね。ここが小城羊羹のすごいところです。羊羹なのに表面がカリッとして、中はやわらかいんです。こんなに糖分が浮き出しているのに、なぜか甘すぎる感じがしないのも不思議。

 先月か先々月に、讀売新聞に小城羊羹の紹介が掲載されていました。羊羹なのにシャリっとしてるっていうんですよね。その記事の説明ではどうなってるのかよくわからず、とうとう手に入れてしまったというわけ。話だけ読んでた時は琥珀菓子の一種かと思いましたが、それともまた違うようです。

 村岡総本舖のサイトで読む限りでは、特別にコーティングを施しているのではなくて、切って熟成させると水分が飛んで表面の砂糖が固まるだけなんだそうです。

 そんな作り方でこうなるなら、なぜ一般の羊羹も同じにならないのか、ただただ不思議、ふしぎの国の小城羊羹なのです。

 小城羊羹は東京では日本橋三越の菓遊庵で購入できます。毎月中ごろに入荷するそうです。すぐ売り切れちゃうみたいなので、確実に欲しい人は日本橋三越に問い合わせてから行くといいですよ。


◎日本橋三越・菓遊庵
http://www.mitsukoshi.co.jp/store/kayuan/
 日本全国の銘菓がそろっている夢のようなコーナーです。普通のお土産屋さんと違い、バラ売りされてるお菓子が多く、一個二個と少量ずついろいろ買って試せるのがすごい。売り子さんたちも勉強していて、読み方すらわからない難しいお菓子のメモを見せても「ああ、○○ですね。いついつ入荷ですよ!」と即答だったりするのも素晴らしいです。ここにくると百貨店が楽しい場所だっていうことを再認識できます(再度認識しなきゃならないほど冷え込んでるのもどうかと思うんですが、笑)。

タグ:おやつ

豆腐百珍:青海とうふ(せいがいとうふ)

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四十一 青海とうふ 絹ごしのすくひ豆腐を葛湯にて烹調よくし ○別に生(き)の煮かへし醤油をこしらへをき出しさまに碗中へさし醤油にして青海苔を焙(ほいろ)にかけいかにもよく細末(さいまつ)しふるひにかけたるをぱっとをく也

 これも湯豆腐の一種ですね。葛湯で煮た豆腐に、生の煮返し醤油をさして、青海苔を粉にしたのをぱっとふる、という感じでしょうか。

 葛湯は片栗粉で代用していいと思います。お湯に水で溶いた片栗粉を流してとろみをつけ、その中で豆腐を煮ます。

 ここで使う豆腐は絹ごし豆腐です。オリジナルのレシピにある「すくい豆腐」は「汲み上げ豆腐」のことですが、普通の絹ごしで問題ないと思います。

 生の煮返し醤油は、水と砂糖を混ぜて煮詰めたものと醤油を混ぜて、醤油には火を通さずに数日寝かせたものです。作るのは大変なのでめんつゆか何かで代用するといいでしょう。

 青海苔の粉は市販されているものを使えばいいです。

 湯豆腐の薬味として青海苔を使うのは、現代ではあまりない発想ですが、やってみると香りがよくて想像より似合います。気に入って三回くらい作りました。

 ただ、このレシピだと豆腐を煮る時に使ったとろみのついたお湯が大量に余ってしまいます。

 そこで考えたのですが、卵スープのようなとろみのついたスープをあらかじめ作っておき、そこへ絹ごし豆腐を入れます。碗にスープごとよそい、最後に青海苔をたっぷり置く。これならスープも呑めますから一石二鳥ではないかと。出汁は中華スープのもとでもいいし、海苔と中華があわないと感じるならかつお節でもいいですね。

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 写真はやや失敗しました。青海苔を汁に混ぜたほうが海のように見えるかと思ったのですが、見た目が最悪になってしまいました。でも味的には成功です。海苔とのコンビネーションを考えて出汁は韓国の牛肉ダシダを使いました。

タグ:豆腐百珍

豆腐百珍:茶豆腐(ちゃどうふ)

八十二 茶豆乳(ちやとうふ) とうふ十挺に上々の茶壱斤の分量(つもり)にて茶を煮いだし沸(にへたち)たる所へとうふの羅皮(ぬのめ)をさりて入れよく烹て茶色に染るを別に茶を烹て出ばなの所へ入れなをすべし さて茶をしぼり ○煮かへしの稀醤油(うすしやうゆ)花鰹脯山葵のはりをおく又山葵味曾よろし ▲山葵味曾の製はみそに白胡麻胡桃よくすり合せをき用るとき擦山葵入るゝ也 ○又胡椒みそもよし

 豆腐百珍には豆腐をさす表記がいくつかあります。「とうふ」「豆腐」「豆乳」「菽乳」など。おそらく意味には違いがないと思います。特殊なものを要求する場合には「絹ごしのおぼろ」「焼き豆腐」など、きちんと指定がありますから。

 というわけで、この場合の豆乳も、木綿豆腐だと解釈します。また布目を取り去れと書いてあるので絹ごしではないでしょう。

 手順は、豆腐を濃く煮出したお茶で煮て色をつけ、香り漬けのために別途用意した美味しく入れたお茶に入れ直し、お茶を切ってから煮返し醤油か山葵味噌をつけて食べる、となります。湯豆腐の一種ですね。

 さっそくやってみたのですけど、
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……うーむ、色がつかない(笑)

 豆腐をちょっとやそっとお茶で煮ても色がほとんど付きませんでした。豆腐ごときに長時間ガスを使うのはもったいないので、5分加熱したあと火をとめて、お茶の中に豆腐を放置してみたのですが、ほんのすこし緑色にしかなりません。お茶はかなり濃く出したつもりです。

 オリジナルレシピでは、豆腐の布目を取り去れとありますが、ここでは省略して大きめの賽の目に切りました。切り口よりも布目のほうに色が濃くついてしまうのも拍子抜けです。

 レシピに「とうふ十挺に上々の茶壱斤(600gくらい?)」とあるので完全に商売用でしょうし、もしかすると何時間か煮込まなくてはいけないのかもしれません。

 写真で豆腐に添えたのは、味噌に青海苔を混ぜて作った青味噌に、胡桃(くるみ)と山葵(わさび)を擦り入れた青山葵味噌です。



用語解説:煮返し醤油
 醤油に砂糖を混ぜて沸騰させたもの。本格的にやるなら煮返したあとに瓶に入れて数日間熟成させます。

 豆腐百珍には生の煮返し醤油(きのにかへししやうゆ)も出てきますが、こちらは砂糖を水で溶かしてよく加熱し、水あめ状になったのに醤油を加え、醤油には火を通さないやり方です。

 ご家庭でこんなまねをしていると大変なので、寝かせる部分を省略するか、麺つゆやすき焼きのたれを使うなど臨機応変に対応します。

タグ:豆腐百珍

立ち枯れた木、エゴノキの満開、ドイツアヤメ、キショウブ

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▲一本だけ立ち枯れた木。時代劇みたいなので実は気に入っています。水元公園の旧緑の相談所付近。

 実はこのすぐ近くの歩道に幹がふた抱えくらいある大木の「切り株」があったんですけど、最近ひっこ抜かれて美しく整備されてしまいました。あんなに大きいと切り株だって貴重な気がしてたんだけどね。

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▲エゴノキ、ただいま満開。これも水元公園。

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▲水元公園の菖蒲田。国産のハナショウブは6月です。ドイツアヤメやヨーロッパから持ち込まれたキショウブはもう咲いてるんですけどね。

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▲これがドイツ系(たぶん)のアヤメです。堀切菖蒲園にて。堀切も見ごろは6月です。接写すると沢山咲いてるように見えますが、こういうのはごくごく一部ですから。

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▲これがキショウブ。もとはヨーロッパのものだそうです。日本のアヤメ、ハナショウブ、カキツバタのたぐいは、白、青、紫はあるものの、黄色はありませんでした。ところがヨーロッパにはキショウブがあるので、ドイツ系のアヤメなどには日本にない色の花があります。日本でも新しい色に挑戦しようと持ち込まれたのがキショウブだそうです。ところがキショウブは日本のアヤメ類より先に咲いてしまうので、交配にはそれなりの苦労があったと……ええとどこで読んだんだったかな。

 キショウブ自体はあまり品種改良が進んでいないので、花がほっそりして清楚な印象があり、個人的にはかなり好みです。が、繁殖力が強く、川原などで野生化してしまうようです。

 日本花菖蒲教会・編『世界のアイリス』によると、日本でキショウブを使った品種改良が成功したのは1962年だそうです。それから20年後の1080年前後、わたしは伊勢崎の広瀬川沿いにキショウブが沢山咲いているのを見ました。

 野生化してるのはキショウブばかりで、日本に昔からありそうなカキツバタなんかは自生してるのを見たことがありません。軽くヤバいんじゃないかと思うのですがいかがなものでございましょう。

 ヒメネスの「プラテーロとわたし」というスペイン語の散文詩の中に、黄花アイリス(Lirio amadillo)という言葉が何度か出てきます。80年くらいの広瀬川のほとりで、土手に咲くキショウブを見ながら、スペインの川辺に咲いているという黄花アイリスは、きっとこんなだろうなと思っていました。その時はまさか本当にヨーロッパからの帰化植物だとは思っていなかったのですけどね。

 わたしはプラテーロの痛みにゾッと身震いし、そのとげを抜いてやった。そして、黄花アイリスの咲く小川に、かいわいそうな驢馬をつれてゆき、流れ水の清潔な長い舌で、小さな傷口をなめてもらった。 「12. とげ」

 わたしたちは山から、二人で荷物を運んできた。プラテーロは花薄荷(マヨナラ)を、わたしは黄花アイリスを。四月の午後が暮れようとしていた。 「22. 帰り道」

 ねえ、プラテーロ、日が暮れたら、こどもたちとおまえとわたしとで、小鳥のなきがらを庭へおろそうよ。ちょうど今は満月だ。かわいそうな歌うたいは、ブランカの真白い手のひらで、青白い月の光に照らされ、黄色っぽいアイリスのしおれた花びらのように見えるだろう。そしてわたしたちは、大きな薔薇の根もとに、それをうめてあげようよ。 「83. カナリヤが死んだ」

 小川の水かさがひどくふえたので、夏の岸辺を金いろに縁どる黄花アイリスは、はなればなれになってどっぷり水につかり、流れゆく水に、その花びらの美しさを一枚づつ捧げている…… 「89. アントーニア」

 今日の午後、わたしはこどもたちと、<松かさ>の果樹園の、笠形にやさしく枝をさしのべた一本松の根もとにある、プラテーロの墓をおとずれた。墓のまわりのしめた土を、四月が、黄花アイリスの黄いろい大輪の花で飾っていた。 「135. 愁い」

 わたしがゆっくりと物思いにしずみながら、おまえのなきがらにやさしく歌をうたう松の木に近づくとき、黄花アイリスの花の前で立ちつくすわたしの姿を、ねえ、プラテーロ、永遠の薔薇の園で、しあわせのおまえが見ていてくれるということを、わたしは知っているよ。土にかえったおまえの胸から、黄花アイリスは芽生えたのだものね。 「136. モゲールの空にいるプラテーロへ」

 長南実・訳の「プラテーロとわたし」より引用。同じ人が何回か訳し直しているらしく、本によって微妙に違うんですが、これはノーベル文学賞作家の作品ばかり集めた全集のような本から書き写しました。全文書き写しの修行をしたのは昔のことなので今はもう出版社とかはわかりません(主婦の友社の「ノーベル賞文学全集」だったような気はします)。


◎Lirio amarillo español で画像検索
http://www.google.co.jp/search?um=1&hl=ja&lr=lang_ja&biw=1080&bih=513&tbs=lr%3Alang_1ja&tbm=isch&sa=1&q=Lirio+amarillo+espa%C3%B1ol&aq=f&aqi=&aql=&oq=
 Lirio にはユリも含まれるので、黄色いユリの花やノカンゾウの花までヒットしてしまいますけど、日本のキショウブとほぼ同じものがスペインにあるってことはだいたいわかります。

 前川文夫『日本の植物と自然』によれば

 ハナショウブに近いものは欧州ではキショウブである。花がべた一面に濃黄で美しいが、全体に気品がない。それかあらぬか、向こうでも園芸的には見向きもされない。園芸のほうで幅をきかせているのは、二組みある。一つは求婚イリス群でその改良種がダッチアイリスとして近ごろ切り花によくみかけるもの。外側の花弁の下半分が直線的であるから三枚集まって漏斗状に見える。今ひとつは外側の花弁の足の内側にちょっと歯ブラシを思わせる恰好に毛が密生しているポゴニリスの仲間であって、ドイツアヤメの名で通っている。これには濃艶のものがない。

だそうで、キショウブを品がないと切り捨てている。

タグ:植物

何ハバチかなー

 芋虫好きなのでハバチにも目が行くのですが、チョウやガと違って資料も少なく、正体あてが難しいものです。

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 樹木にうといので食べている植物の種類すらわからないので悩ましいです。

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