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宮城旅行5:鹽竈神社(塩釜神社)

(宮城旅行4のつづき)

 地震と津波の爪痕ばかり見ていたのでは観光客の名折れというものでしょう。せっかく塩釜にいるのですから、鹽竈神社(しおがまじんじゃ)に行くことにしました。地元では大事にされている神社だそうで、同行したおともだちによると、こっち方面に来て鹽竈神社に行かないのはダメだと東北出身の同僚からきつく言われているということでした。

 ここらで表記の話をしておきます。地名の「しおがまし」は塩竈市とも塩釜市とも書いてよいそうです。「しおがまじんじゃ」も正式には鹽竈神社だそうですが、塩竈神社とか塩釜神社とか表記されます。ここでは地名を塩釜市、神社を鹽竈神社と表記します。

 東北には良く来るのですが、恥ずかしながら鹽竈神社は初めてです。本塩釜の駅から車で数分。すこし山を登ったところにあって、とても立派な神社でした。広い無料駐車場があり、年末年始には参拝者が大勢来るのでしょう。

 この日はすでに18時を回っていましたが、駐車場には10台やそこら止まっており、ナンバーを見ると関東や関西から来た車もありました。

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▲神社の入り口にある甑炉型鋳銭釜(こしきろがたちゅうせんがま)。江戸時代のもので銅銭(銅貨)を作るために銅を溶かした釜だそうです。上中下の三段に別れていて、上に銅と鉄と炭を入れ、中段からふいごで空気を送って加熱し、溶けた銅と鉄が下段に落ちてくる仕組みだということです。三段そろって保存されているところはここだけだそうです。

 これよく見たら二段目と三段目がずれてるんですね。地震以前の写真をネット検索で探してみると、以前はピッタリ合わさっていたようです。貴重な鋳銭釜が倒れなくてよかった。

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▲志波彦神社(しわひこじんじゃ)。鹽竈神社と隣り合って立っています。志波というのは端っこのことだと言われていて、朝廷が東北方面を平定に来て、このあたりを国の端っこと定めて土着の神様を志波彦尊としてお祭りしたのではないか、ということです。宮城県には志波彦神社と志波姫神社があり、岩手県には志波稲荷があるそうです。

 すでに日も落ちて薄暗くなってきました。志波彦神社はすでに閉門されて拝殿には近づけませんでしたが、それでも大勢が熱心に参拝しています。そう、みなさんとても熱心でした。この感じはほかの神社にはない雰囲気です。手を叩いて頭を下げるだけでなく、誰もが神様と会話するように丁寧にお祈りしているのです。

 ともだちが格子戸の内側にあるさい銭箱に小銭を入れようとして三回も失敗し、取れないところに落とすので、四回目はわたしが代わりに入れました。格子から少し手を入れて下に落とすだけでいいのに、なぜか別の人も失敗してあらぬところに小銭を飛ばしていました。

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▲鹽竈神社(しおがまじんじゃ)。ここでも参拝者が不思議なくらい敬虔な祈りを捧げています。実はこの写真は貼るべきかどうか本気で悩んで貼りました。拝殿にむけてシャッターを切ったら、どうしても参拝者の背中が写ってしまうのですが、ここでお祈りしている人たちは、本当に長いこと無言で立ち尽くしており、何も聞かなくても、何かあったとわかるからです。

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▲献魚台。鹽竈神社には魚をお供えするための台がありました。

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▲すっかり夜になってしまいました。境内には様々な種類の桜が植えられています。ソメイヨシノはほとんど散っていましたが、ヤマザクラなどがまだ見ごろでした。

 立ち去る前に空を見上げたら、うっすらと夕日の名残がある空に、北斗七星がやけにくっきりと立ちあがっているのが見えました。

(宮城旅行6へつづく)

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宮城旅行4:本塩釜駅の南側

(宮城旅行3のつづき)
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▲地震や津波で出たゴミの中で暮らしている猫。彼らは津波の時どこに逃げていたのでしょうか。流されなかったんかと話しかけたらそんなヘマはしないぜとにらみ返されました。

 猫のところだけクローズアップすると、ゴミが散乱する荒廃した町を想像してしまうのですが、引いてみるとこんな感じです。
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▲地震で壊れたものやなんかを店の前に出してあるだけ。

 本塩釜駅の南側にも回ってみました。南のほうが海に近いのですが、あれ、こっちのほうが被害が少なそう。
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▲駅の東側ロータリー。

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▲養老の滝もやってます。

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▲駅南側の本屋さん。ここにも水が来たけど必死で店をやるよって書いてありました。

 南側のほうが北側より少しだけ海抜が高いのかなと思います。水路を上ってくる波に対して駅とイオン(スーパー)が盾になった可能性もありますね。


より大きな地図で 本塩釜駅周辺 を表示


(宮城旅行5につづく)

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宮城旅行3:本塩釜駅の北側

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▲本塩釜駅です。こうしてぱっと見るとどのあたりに被害があるかわからないでしょうが、駅をかこっている白い塀は工事中の塀です。JR仙石線は、仙台から東塩釜までは開通していますが、東塩釜から石巻まではこの日はまだ地震の影響で止まっていました。

 駅にもまわりの建物にも電気がきていましたが、どういう仕組みか信号機だけは止まっていました。信号機が止まってるところには警察がいて交通整理をしています。

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▲壊れてしまったコイン駐車場。

 駅前のコイン駐車場は津波に呑まれて壊れてしまったようです。それでも駅にくる人たちはここに車を置いています。フラップが降りなくなってしまったところだけビニールの紐がかかっていました。

 フラップが上がったままなのは津波の当日ここに車が止まってたからじゃないかと思うんですが、撤去されたのか、流れていってしまったのか…

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▲白い壁に残ったこの線は、ここまで水が来たということなんでしょうか。

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▲津波の威力なのかへこんでしまったお店のシャッター。

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▲しかし、魚民はやってる。近づいて見ましたが、何事もなかったかのようにピカピカのお店で営業していました。# 4月22日から営業を再開していたようです。根性で店を開けたんですね。すごい。

 魚民以外にも地元のお寿司屋さんや、薬屋さんなんかが根性で店を開けています。八百屋さんも開いていました。閉店している店にはいつから再開しますと張り紙があり、力強い復興の息吹を感じます。

(宮城旅行4につづく)

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宮城旅行2:仙台で虹を見て、多賀城市で道路に転がってる船を見た

(宮城旅行1のつづき)

 仙台宮城のICを降りたのが15時半くらいです。もっと早くついたら八木山動物園や八木山ベニーランドにも行けるかと思ってたんですが、はんぱな時間なのでやめにしました。

 あてがなくなったので、どうしようかと考えて、そういえば先日注文したチベットのお香を販売している会社が仙台なので、どんなところでやっているのか様子を見に行くことにしました。実店舗はないような気がするけど、もしあったら送料なしで買うチャンスなので。

 住所をたよりにでかけてみると、倉庫があるだけで、やはり実店舗はありませんでした。お店の人が片づけものをしていましたが、地震のことを根掘り葉掘り聞くのもなんだと思い、実店舗があると思って来たんですよというようなことだけ告げて立ち去りました。倉庫にもお香の匂いがしていました。

 店員さんのブログによればこのあたりでもガスが止まったりして大変だったと聞きました。見た感じでは家が倒壊するような被害はなさそうです。

 高速を降りた時は雨が降っていたのですが走っているうちに晴れて、空に虹がかかりました。
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▲修正はかけていません。こんなに濃い色の虹は東京ではあまり見られません。仙台の空は澄んでいるのだなと思いました。

 まだ日没には間があるので、仙台港周辺を見て塩釜のほうへ走ってみることにしました。

 三陸自動車道の北側と南側で被害がだいぶ違うようでした。北側では、壁が崩れたり道路が陥没したりといった被害は残っているのですが、家そのものが倒壊してしまうような被害は少なそうです。それが南側(海側)へ行くと、倉庫の一階部分が骨組みだけになったような建物が増えてきます。

 特に通行止めにはなっていなかったので倉庫街を車の中から写しました。休日なので作業車もいませんでしたし、復興の妨げになるような撮影はしていないつもりです。


 こういうのは本当に海辺だけで、海から少し離れるだけで被害がまるで違います。

 もしかすると地元の人から見ると「なんでそんなとこ写してんの。本当に被害を伝えたいならこっちを写しなさいよ」みたいな意見はあるかもしれませんが、土地勘もありませんし、ただの観光客という立場では、通りすがりに見たものを写すくらいのことしかできませんでした。

 仙台港を後にして、塩釜方面に向かいます。

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▲多賀城市のひまわりというパチンコ屋の前。あまりぱっとしない写真だけれど、あえて貼ってみるのは、ナショナルジオグラフィックの以下の動画に写っている場所のすぐ近くだってことに気づいたからです。
http://www.youtube.com/watch?v=hBQltRW3d00#t=7m49s

 この動画を見ると、この世の終わりが来たんじゃないかとさえ思えるほどです。流れてきた車や壊れたたてものを撤去するだけで何年かかるだろうと思うのですが、意外にもきれいに片づけられていますし、実はこのまわりにも営業している店があったりします。

 これだけの地震と津波からたった一カ月半。大自然の力もすごいけれど、人間の復興力もすごいんだなと、ただただ感心するばかりです。被害は確かに甚大でしたが、被災地がいつまでも被災地であると思い込むのも間違っています。町は確実に動き始めているのですね。

 パチンコ屋ひまわりのあるところから、さらに塩釜方面へ進むと、道端に栄光丸という船が転がっています。
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 写真には写っていませんが、右手がすぐ水路になっていて、どうやら津波の際に土手を越えてしまったようです。何かものすごい光景なのですが、交通規制などはまったくなくて、みなさん普通によけて通っています。


より大きな地図で 仙台港から多賀城市へ を表示
左下から
水色のポイントが虹を見た場所
黄色いポイントが仙台港周辺の倉庫街
青いポイントがナショジオの動画に写ってるコジマ電気
赤いポイントがわたしの写真にあるパチンコ屋ひまわり
ヨットのポイントが栄光丸がある場所


(宮城旅行3につづく)

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宮城旅行1:高速道路は混んでいた

 4月29日みどりの日、30日(土)の一泊二日で宮城県に行ってきました。この時期に宮城県なんて無謀じゃないかという人もいるでしょうが、調べてみたら高速道路のサービスエリアなんかはどこも平常通り営業してるようですし、ファーストフードやネットカフェも、被害の大きかったところを除いてもうやってるみたいなんですよね。

 それでも何があるかわからないので、簡易トイレはいちおう持ちましたし、どこにも泊まれずに車中泊する可能性も考えて毛布を積んだり、食料と飲み物を用意したりして、それなりに準備はしましたよ(結局使いませんでしたけどね)。

 というわけで出発です。三郷西ICから外環に乗ったのが朝の7時くらいです。震災と原発事故で東北が閑古鳥と聞いたので、あまり気にせず連休初日に旅立ってしまったのですが、予想に反して強烈な渋滞に巻き込まれてしまいました。

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▲すごい渋滞。東京から黒磯くらいまで断続的にこんな感じ。何十キロもつづく渋滞なんて最近あまりお目にかからなかったのですが、今回のはすごかったです。高速道路の休日1000円均一が復興の財源作りのために終わるからでしょうか?

 道行く車はごく普通の乗用車です。トラックや自衛隊のジープや高速バスなんかも通りますけど、ほとんどは普通の車です。これだけの車が東北に行くのに、本当に東北は閑古鳥なのでしょうか。どうも腑に落ちない。

 ところが黒磯を過ぎた頃、突然渋滞が終わって那須高原SAに到着する頃はまわりに走っている車がほとんどいないような状態になりました。やはりみんな東北を避けているのでしょうか。

 でも那須高原SAには休んでる人がたくさんいました。ここで休んでいる人たちはもっと北まで行くのですよね。そろいのジャンパーを着たボランティアのみなさんも目立ちましたが、やっぱりほとんどが普通の人たちです。

 那須高原到着は11時半くらいです。朝ご飯を食べていないので、昼食もかねて何か食べようと思ったのですが、レストランが工事中で軽食のフードコートも大混乱になってました。人でごったがえし、食べようと思ったものが全部売り切れです。

 次のSAまで食事はおあづけかなあと思い、インフォメーションのおねえさんに聞いてみたら「次は65km先の安達太良SAまでありません。しかも安達太良は40kmの渋滞の中間地点です」と汗汗しながら言ってました。えー、また渋滞なの??

 仕方ないので出店でホットドッグを軽く食べて餓えを癒すことにしました。

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▲那須高原SAのホットドッグ屋で買ったチリミート。550円だったかな。これけっこう美味しかったですよ。

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▲トイレの前で巣作りをしているツバメ。自動ドアが開いた隙にぴゅーっと入ってきてはせっせと働いていました。

 というわけでドライブ再開。阿武隈PAに近づいたあたりから道路のあっちこっちが新しいアスファルトで埋めてあるのに気づきました。地震のせいで陥没したのでしょうか。そういえば那須高原のSAでも、裏の崖沿いでフェンスを修理していました。崖くずれで壊れたのかもしれませんね。とりあえず、今はもう通行に支障のあるところはありません。地震の当日はすごかったんでしょうね。走ってた人はどんな気分だったでしょう。

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▲安積PAの手前くらいで撮影した土嚢。あちこちに土嚢が置いてあるし、崖がビニールシートで覆われた場所もありました。

 那須高原のお姉さんの言うとおり、途中からまたすごい渋滞に巻き込まれました。やっぱりよくわからない。東北が閑古鳥って本当に本当なのかな。

 やっとの思いで安達太良SAに到着したのは14時すぎくらい。今度こそお昼ご飯を食べますよ。

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▲安達太良SAの伊達鶏わっぱそばセット。1200円(うろおぼえ)。これまた美味しゅうございました。

 安達太良を出てからは福島西ICくらいまで断続的な渋滞。そのあとは仙台までわりとスムーズに進みました。高速を降りてしまうと何があるかわからないので菅生PAで給油しました。ハイオクがリッター165円、高いけど仕方ありません。関東だって安いわけじゃないんです。来る前に三郷市のセルフGSで入れてきましたが、リッター156円でした。

 ここまでのお天気は、東京を出てから栃木県内あたりまでは晴れ。福島県に入ってからは高い山を越えるたびに雨、降りてくると曇りといった感じです。仙台に近づいたらざーっと雨が降りました。気温は、那須高原あたりから少し肌寒い感じもしましたがコートがいるほどではありませんでした。北へ行けば行くほど咲き残った桜が増えてきて、菅生あたりではまだコブシが咲いていました。

 仙台宮城ICで高速を降りたのが15時半くらい。三郷西ICから8時間半もかかってしまいました。普段はこんなに時間かからないんですよ。NEXCOのページで調べても4時間くらいで着く感じだから、ゆっくり走ってもお昼過ぎには仙台に到着するはずだんたんですけど、ゴールデンウィークをなめてはいけなかった。

 外環三郷西から川口JCTまで350円。川口JCTから仙台宮城まで1700円。ともにETC休日特別割引。割引なしだったら合計で7700円です。

 政府は本当に割引をやめちゃう気でしょうか。そんなことしたら観光客が減ってとんでもないことになる悪寒がするのですけど、大丈夫なんですかね。

(宮城旅行2へつづく)

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