# これを書いてる珍獣様という人は算数が苦手なので計算を間違えているかもしれません。間違いをみつけたら、お母さんのようにやさしく教えてください。
連日のように放射性物質についての報道があります。先日はコウナゴ1kgから4080ベクレルのヨウ素131が出たそうです。
テレビでは「ただちに人体への影響はない」なんてこと言ってるけど、どうもピンとこない人は沢山いるんじゃないでしょうか。
そこで今までに放射性物質が検出されている食材を、どのくらい食べ続けるとどうなっちゃうのか、計算してみました。
まず、ちょっとだけ勉強。ベクレルというのは放射能の量を表すそうです。1秒間に何個の原子核が崩壊して放射線を発するか、というのがベクレルの定義です。4080ベクレルならば、一秒間に4080個の原子核が崩壊してるってことです。
でも、放射能の数そのもので人体への影響を判断することはできません。たとえばの話ですが、カレーライスが二人分あります。片方は普通のカレーライスですが、もう片方は十倍辛いカレーライスです。カレーライスの数はどちらも一食分ずつですが、辛さを感じさせる力は十倍カレーライスのほうが強いわけです。
ベクレルでは人体への影響ははかれないので、シーベルトという単位に換算します。これは、被爆の大きさを表す単位です。
ベクレルをシーベルトに換算するには、実効線量係数というのをかけてやります。これは放射性物質それぞれ違いますし、口から摂取するのか、鼻から吸うのかでも違う数値が設定されています。
◎内部被ばくに関する線量換算係数(原子力安全協会)
http://www.remnet.jp/lecture/b05_01/4_1.html
実効線量係数を調べるにはここを見てください。ヨウ素の原子記号は I なので、I-131 の欄を見ます。「2.2 x 10^-8」がヨウ素131の実効線量係数(経口摂取の場合)です。
1kgあたりのベクレル x 実効線量係数 = 被爆の大きさ(シーベルト Sv)
これが計算式になります。
コオナゴの4080ベクレル(Bq)を例にとって計算してみましょう。
4080Bq/1Kg x 2.2 x 10^-8 = 0.00008976 Sv
コオナゴ1kgを口から摂取すると、0.00008976 Sv 被爆することになります。
人は一日にコオナゴを1kgも食べられないので、10分の1である100g食べるとします(これでも多い)。その場合は 0.000008976 Sv/1食 となります。
ついでだから水の計算もしてみましょう。先日、金町浄水場で水1リットル(1Kg)につき210ベクレルの放射性ヨウ素が出ました。これをシーベルトに換算すると、0.00000462 Sv です。一日に4リットル飲むとすれば 0.00001848 Svとなります。
人はコオナゴと水だけで生きるにあらず。野菜だって食べなければなりません。そこで、このニュースに注目してみましょう。
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=38639
多古町のホウレンソウが今回検査の最大値となる3500ベクレルを示した。
旭市では検査対象の14品目中、パセリ3100ベクレル、サンチュ2800ベクレル、春菊2300ベクレル、チンゲンサイ2200ベクレル、
セロリ2100ベクレルの計5品目が規制値を超えた。
あくまで一例ですが、野菜からは上記のような放射能が検出されています。
このうち、パセリとサンチュは大量には食べないと思うので除外して、ホウレンソウ、セロリ、チンゲンサイ、春菊について計算してみます。
わたくし、先ほどスーパーで野菜を買ってきて、重さを量りました。さらに、あちこちでレシピを見て、だいたい一食で何グラムくらい使うかも考えました。料理によっても違うでしょうが、目安として、以下のような感じになりました。
ホウレンソウ1把:200g 1食分50g
セロリ1本葉付きで:120g 1食分60g
チンゲンサイ2株:230g 1食分(1株)115g
春菊1把:132g 1食分60g
ニュース記事にあったそれぞれのベクレルは1kg中の数値ですから、1gに換算して、1食分で何シーベルト被爆するか計算してみます。
ホウレンソウ
3500bq/1000g=3.5bq/1g
1食分50gとして 175bq→0.00000385 Sv
セロリ
2100bq/1000g=2.1bq/1g
1食分60gとして 126bq→0.000002772 Sv
春菊
2300bq/1000=2.3bq/1g
1食分 60gとして 138bq→0.000003036 Sv
チンゲンツァイ
2200bq/1000g=2.2bq/1g
1食分115gとして 253bq→0.000005566 Sv
さらに、三食分の献立を考えます。
朝
ホウレンソウとちりめんじゃこのサラダ 0.00000385 Sv
昼
ホウレンソウのおひたし 0.00000385 Sv
セロリと豚肉の炒め物 0.000002772 Sv
夜
春菊の胡麻和え 0.000003036 Sv
チンゲンツァイと卵の炒め物 0.000005566 Sv
コウナゴの釘煮 0.000008976 Sv
一日に飲む水の量4リットルとして 0.00001848 Sv
ここまで、合計で 0.000037554 Sv になりました。
さて、人は一度にどのくらい被爆するとどうにかなるのでしょうか。それについてはこの記事を読んでください。
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=39022
ここによると、人は一度に100mSv(ミリシーベルト)被爆すると、癌で死ぬ確率が0.5%上がるそうです。100mSvよりも少ない被爆では、影響が小さすぎてハッキリわからないということです。
たった0.5%ですが、とにかく上がるので、100mSvを危険ラインとしましょう。
さきほどの計算で、千葉県産の野菜・茨城県産のコオナゴ・金町浄水場の水を一日摂取して 0.000037554 Sv となりました。ミリシーベルトに換算すると、0.037554 mSv です。計算しやすいように 約 0.04 mSvとします。これは一度に浴びると癌になって死ぬかもしれない被曝量 100 mSv の2500分の1にあたります。
仮に、ヨウ素が永遠に放射線を出し続けるとして、なおかつ体に蓄積され続けるとしても、約2500日間(約7年)は食べ続けて問題ないということです。
実際には、ヨウ素131の半減期はたったの8日ですし、食べたものは排泄されてしまうので、すべてが体に残るわけではありません。
つまり、7年どころか何十年食べ続けても、計算上は大丈夫、ということになりそうです。
ここで注意が必要なのは、今回の計算は、これまでに報道されたデータをもとにしているということです。あくまで「今のレベルならば」問題ないということがわかりました。
しかし、事態は刻一刻と変化しています。考えたくないことですが、もし建屋ではなく原子炉そのものが破損してダダ漏れになったとしたら、何十倍、何百倍もの放射能が野菜や魚に降り注ぐかもしれないので、その時はまた計算し直さなければなりません。
今はまだ大丈夫です。これからのことは、毎日のニュースに注目しましょう。
ちなみに、世の中には偉い人がいて、ベクレル→シーベルトの計算を一瞬でしてくれるページなんかもあります。手で計算したのとつきあわせると、ちゃんと合ってるので信用してよいと思います。
◎ベクレル(Bq)、シーベルト(Sv)計算・換算
http://testpage.jp/m/tool/bq_sv.php?guid=ON
単位略号
ベクレル=Bq
シーベルト=Sv
ミリシーベルト=mSv(1Sv=1000mSv)
マイクロシーベルト=μSv(1Sv=1000000μSv)
#マイクロとミリは間違えると偉い違いなので注意だよ
マイナス乗について
10^-8は、10の-8乗という意味です。
10の 1乗は10
10の -0乗は1
10の -1乗は0.1
10の -2乗は00.1
10の -3乗は000.1
10の -4乗は0000.1
10の -5乗は00000.1
10の -6乗は000000.1
10の -7乗は0000000.1
10の -8乗は00000000.1
# コメント欄で桁が違っているとご指摘をいただきましたので修正しました。4/7
今わからないこと
一度に、ではなくて、継続して一定量の被爆を受け続けた場合、最低どのくらいから人体に影響があるか。このしきい値がわからないと、1日に 0.04mSv が本当に安全かわかりにくい。
コオナゴのような小魚から出たなら、それを捕食する大きな魚への影響はどうなのかもわからない。ヨウ素は半減期が短いので蓄積して濃くなる可能性は低いんだろうけど、セシウム137は半減期が30年あるので、捕食者の体内で濃くなったりしないんだろうか。