子生まれ石というのは、沢が削る崖肌から、丸い石というか岩が生まれてくる場所です。静岡県の牧之原市ってところにあります。
かれこれ20年以上前になんかの本で読んだんですよねえ。その石は何十年かに一度、崖からコロンと生まれてくるんだそうです。形はまんまるいのもあれば、繭のような形をしたのもありますが、とにかく、誰かが丸く磨いたみたいに、コロンとしたものが崖から生まれてくるっていうんですよ。
近くに大興寺(だいこうじ)というお寺があり、初代住職が亡くなった時に村人が繭の形をした石をとってきて、無縫塔(お坊さんの墓標)にしたそうです。
それからというもの、この寺の住職が亡くなる前になると崖からコロンと石が生まれてくるんだそうです。初代住職から二十九代まで、すべてこの石を墓標にしてるらしいですよ?!
こんな話を聞いたら見たくなっちゃうんですが、これを知った当時は情報が少なくて場所もわからなかったし、仮にわかったところで駅から離れてたらどうやって行けばいいのかなあ、なんて思ってるうちに、行けずに過ごしちゃった。
最近になって思い出して調べたら、近くに温泉が出来たりして、JR金谷駅からバスが出てるんですね。そこまでわかればどうにかなるので秋の乗り放題パスで行くことにしました。
11:30ごろ、金谷駅到着。いい天気です。遠くにうっすらですが富士山も見えてました。昼時でお腹がペコペコですが、駅前にはなーんにもありません。JRの駅には売店すらないんですよ!でも、隣接した大井川鉄道の金谷駅には売店があったので、おにぎりを買って食べました。
さて、大興寺に行くバスですが、菊川市の自主運航バス「萩間線」といって、あんまり本数は多くはありません。平日だと1〜2時間に1本といったところです。休日はもっと本数が減るみたい。
しかしこのバスに乗らないと行くのは難しいです。駅からけっこうな距離がある上に、途中が山なんですよ。それほど高くはない山ですが、歩いて行くとなると簡単ではないです。
もし遊びに行きたくなったらバスの時間だけはチェックして、バスの時間にあわせて電車に乗ってきてください。
◎菊川市/自主運航バス「萩間線」
http://www.city.kikugawa.shizuoka.jp/chiikishien/chiiki_hagima.html
ここに時刻表と運賃表があります。
おにぎりを買ったり、駅のまわりと歩き回ったりしているうちに、12:10 の相良営業所行きのバスがやってきました。お客さんは平日の真っ昼間なのに、それなりに沢山いました。
バスは、山を越えて、茶畑の間を爆走します。途中に何ヶ所か、工場とか、お茶関係の試験場みたいなところを通るのですが、そういうところで降りる人が多かったです(かといって職員っぽくはなかった)。
駅から25分くらい、大興寺前に到着。運賃は570円でした。停留所の名前は「大興寺前」なんですけど、あたりを見回してもお寺は見えません。お寺はさらに5分くらい歩いたところにあるんですよ。バス通りに「龍門山大興寺」と刻まれた石碑があるので道には迷わないと思います。
▲大興寺
境内に大興寺の無縫塔について説明した看板がありました。
牧之原市指定(名勝)
大興味寺の無縫塔
大興寺初代・大徹和尚が亡くなった時、村人は近くの沢川から「まゆ型」の七五キロ余もある石を運んで来て墓標としました。
それ以来、寺の住職が亡くなる前には必ず川の崖から、この石が転げ落ちるということで、遠州七不思議のひとつに数えられています。
大徹和尚から二十九世、みんなこの石を墓標としている。
自然石の無縫塔は、全国的にみても珍しいもので一名「子生まれ石」ともいいます。
昭和四十一年九月二十日指定 牧之原市教育委員会
間違いなくこのお寺です。ただ、この説明じゃ石が生まれてくる場所がどこにあるのかわかりません。近くの沢と言ったって雲をつかむような話です。
あたりをきょろきょろ見回しましたが、残念ながらここにはこれ以上説明はなさそう。お坊さんのお墓(無縫塔)もどこにあるかわからない。人の気配もないのでどこで聞いていいかもわからない!
これにはちょっと参りました。実はお寺まで来たらどうにかなると思っていたのでそれ以上は調べなかったんですよね。あんまり下調べしすぎてもつまらないかなあ、とも思ったので。
でも、良く考えたら田舎の「近く」は車で30分とかだったりしますよね。しかも山道だったりして。まさか……歩いて行けなかったらどうしよう(笑)
とにかく、場所を確認しなきゃですよ。話はそれからです。そういえば、ひとつ前のバス停が子生まれ温泉だったはずです。そこまで行けば人もいるだろうし、観光案内くらいあるんじゃないのかな。
というわけで、バス通りに戻って歩きました。お寺からだと15分くらい。
子生まれ温泉は1996年に開湯された新しい温泉だそうです。広い無料駐車場があるモダンな建物でした。壁に名所案内図があったので見ると、子生まれ石は温泉の前の道を山のほうに車で1分行ったところにあるようです。良かった、その程度なら歩けそう。
そういうわけでまた歩き。山の中っぽいので少し心配しましたが、特に坂道が険しいということもありませんでした。。老人福祉施設の前を左に曲がって、てくてく歩いていくとこんな場所に出ます。
▲子生まれ石駐車場
なんと、無料駐車場まであるんですよ。駐車場は広くてけっこう沢山車を置けそうです。写真では切れちゃってますが、左側にチラッと見えている建物は、休憩所(あずま屋)と公衆トイレです。
休憩所の裏に沢があって、その沢沿いにちょっと歩くと祠(ほこら)がありました。
▲子生まれ石をまつった祠
ってことは、石が生まれてくるのもこのあたりの崖なの……?
そう思ってきょろきょろするんですが、ここには石が生まれている形跡はありませんでした。
あれえ、おっかしいな。石は崖肌から、じわじわと生まれつつあるはずなんです。何十年もかけて、ちょっぴりずつ生まれてくるので、今この瞬間も生まれる途中の石がどっかの崖肌にあるって聞いたのになあ。
ちょっとあきらめかけましたが、沢沿いにまだ遊歩道が続いているので歩いて行くと、おっと、ありましたよ。これぞまさしく子生まれ石が生まれてくる現場。うまれるー、うまれるー!!
▲まさに生まれる途中の子生まれ石(クリックでやや大きめの写真)
こんな写真でわかりますかねえ。崖から丸い石が複数顔を出してますよね。これがやがて、寺の住職の墓石になるんでしょうか。この調子だとコロンと落ちるのにまだ何十年もかかりそうです。今の住職は何歳かわかんないけど、そうとう長生きしなきゃね?
▲おおざっぱな位置関係:右側が北で、金谷駅がある方向。
・金谷駅から大興寺前まで、相良営業所行きのバスで25分、570円
・大興寺前から寺まで、徒歩で5分くらい
・大興寺前バス停から、子生まれ温泉バス停まで徒歩で10分くらい
・子生まれ温泉バス停から、子生まれ石のあるところまで徒歩で15分くらい
このあと、温泉があるところまで戻ったんですが、次のバスが50分くらい待たないと来ないので、温泉に入って暇つぶしました。550円也。温泉施設の中に食堂がありました。ここまで来ちゃえば食事もできそうです。
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