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養蚕重宝記05:上々の種吉凶を知る事/種目方 并あたへ桑多少の事

 養蚕重寳記の続きです。間違いの指摘等歓迎します。URLは説明がないかぎり早稲田大学の古典籍データベースへのリンクです。原典を画像で見られます。

 「・」にしてある部分はまったく読めなかった文字なので特に見てくださるとうれしいです。

# 毎度、記事の形式が違っててすみません。

二丁裏〜三丁表

http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko04/bunko04_00660/bunko04_00660_p0008.jpg
↑ここの4行目から

『上々の種吉凶を知る事』
一 上々の種はき度おほしめしある人は種を
  心えて見るべし即心えて見るといふ事は
  蚕は神のごとくなるゆへに第一我か心正直
  にして蚕のあたり上中下是ありといへども

  種の直段にか々はらづいつはりなく只正直に
  心にかけ上種をもとむる事是自然の
  じゆうあひなり

# 直段=値段


『種目方 并あたへ桑多少の事』
一 種壹枚と申は目方十八九匁より廿匁なりまづ
  下種のかひ方種壹枚はき「桑十駄也 但し壹駄と申は・・なわ六把也
  是をあたへまゆ八斗預取 但京ます也 蚕母壹人にて
  かひ[ゆ故手入ふ]是まゆ下品に出来蝶少し

# 壹枚はき→壹枚につき? 極上々種の説明には「壹枚に付」とある。
# 八斗預 「預」でなければ「積」かもしれないが、「余」のつもりで書いているかもしれない。

三丁裏

http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko04/bunko04_00660/bunko04_00660_p0009.jpg
↑ここの冒頭2行

  出種小粒にてしまりゆるく出来るを下種と
  いふなり

用語


 蚕の卵のこと。

種はき
 孵化したお蚕を最初の餌に刷毛でうつしてやることを「はき立て」というので、養蚕を始めること、養蚕そのものを意味しているようです。「種はき度(たしと?)おほしめしある人は」とかなら意味は通じます。
 でも「種壹枚はき桑十駄也」とかは「種壹枚"につき"」とかの書き間違いじゃないのかとも思えます。同じような文章で「種壹枚に付」と書かれている場所もあります。

かひ方
 「飼い方」のことなのは流れでわかりますが、表記が微妙で「かひ方(可比方)」にも「かい方(可以方)」にも見えます。また目次では「かえ方」にしか読めない書き方をしています。ひょっとすると方言で「カエカタ」と発音しているのかもしれないです。
 同じ本の中で起きることを「をき」と書いたり「おき」と書いたりもしているので、仮名遣いにゆれがあることは確かです。

読めなかった部分のメモ

まゆ八斗預取
「まゆ八斗預取」
 ここは「預」で「余」と書くべきところを誤用してるんじゃないのかなあと思うんですが、別の解釈が成り立つようならぜひご指摘ください。


但し壹駄と申は…
「但し壹駄と申は・・なわ六把也」
 直後に八斗は京枡だと書いてあるので、ここでも「駄」という単位を定義してると思うんですが読めませんでした。


ゆ故手入ふ?
「蚕母壹人にてかひ[ゆ故手入ふ]是まゆ下品に出来」
 [ゆ故手入ふ]の部分がまったく意味不明です。


蝶少し出
「蝶少し」
 蝶だと思うんですけど自信ないです。種(卵)の品質を言うのに繭になってから蝶(蛾)が出る数を言うのもなんとなく変ですし。ただ、育ち方にばらつきがあると予定外に早く羽化するお蚕がいるので、それを種の品質のせいだと考えてるのかもしれませんが。

タグ:古文書解読

またまたお麩勢ぞろい

http://www.chinjuh.mydns.jp/cgi-bin/blog_wdp/diary.cgi?no=1441
↑以前にもこんな記事を書きましたが、またお麩を集めてみました。

ファイル 1489-1.jpg
▲上の段右から庄内麩(板麩)・たまご麩/中の段は棒麩/下は松島麩です。一緒に写したものさしは50cmのものです。

 ここに集めたのは宮城県石巻市のスーパーで購入したもので、庄内麩は岐阜県のメーカーのものでした。ほかは宮城県内のメーカーのものです。

庄内麩(板麩)

ファイル 1489-2.jpg
▲これが庄内麩です。板麩ともいいます。製造元を見たら岐阜県之会社でしたが、もともとは山形県の庄内地方(酒田市あたり)の名産品です。

 庄内麩は生地を棒にまきつけて焼き、そのあとに潰して板状にしたものらしいです。板のまま売られてることもありますが、写真のように短冊に切ったものをよく見ます。

 使い方は、味噌汁やすまし汁に入れるなら、そのまま放り込むだけです。酢の物などの料理に使うなら、事前に水でもどしたのを軽く絞ってから使います。棒にまきつけて焼くので水で戻すと輪っかになります。

 戻さずにそのままクラッカーのように食べることもできます。油で揚げて塩をふれば酒の肴になると袋に書いてありました。押しつぶされているので、普通の焼き麩に比べるとパリッと歯ごたえもあり、お菓子のように食べてもよさそうです。

ファイル 1489-4.jpg
▲庄内麩ときゅうりの酢の物

棒麩・松島麩

ファイル 1489-3.jpg
▲これは棒麩を輪切りにしたものです。直径が少し大きめですが輪切りにしちゃうとただの焼き麩ですね。車麩のように穴もないし、年輪もありません。

 松島麩も棒麩より細いだけで同じものです。たぶん小町麩を切らずに販売してるだけだと思います。

 東北のスーパーには、なぜか棒麩のたぐいが大量に置いてあります。関東では棒のまま売られていることはまずありません。この大量のお麩を、東北ではどんな使い方をしてるんでしょうか?

 ちなみに、うちでは下の写真のような使い方をしています。
ファイル 1489-5.jpg
▲棒麩とニラの卵とじ

 棒麩を大きめに切って水で戻して軽くしぼります。鍋にだし汁(だしの素でよい)を浅く張り、醤油とみりんで味をつけたところにニラと棒麩を入れて煮立てて、最後に溶き卵をかけまわして、火を止めて蓋をして蒸らせば完成。お麩が出汁をたっぷり吸い込んでふくらむので意外と満足感があります。

たまご麩

 たまご麩は見た目は小町麩で、色が黄色です。原材料を見ると卵の記載はなく、クチナシ色素で色をつけてあるようです。味噌汁に入れてしまうと色が目立たないので、水で戻してしぼったのを酢の物やサラダにするのが良さそうです。



 だんだんお麩マニアみたいになってまいりました。お麩は地域によって好まれる形が違って面白いし、今後も注目していきたいと思います。

タグ:食材

古文が続くのも退屈でしょうから

ファイル 1488-1.jpg

 がぼ様(猫)のあくびをどうぞー。

タグ:がぼ

養蚕重宝記04:[ ]国中にいかなる家なりといへども

 『養蚕重寳記』の続きです。ツッコミを待ちながらやりたいところですが、誰からも相手にしてもらえそうもないのでどんどん行っちゃおうと思います。

二丁表〜二丁裏前半:まだ序文みたいなのが続いてる…

http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko04/bunko04_00660/bunko04_00660_p0007.jpg
↑ここの左側

・國中にいかなる家なりといへともその …1
元をあらため見るに吉日吉方をゑらみ
立る家なれは是蚕あたらぬといふ事
なし

一 ・にたとへ日に三度のめしたきそこのふと …2
  いへども水かけんのしさいなり「蚕かひ
  そこのふといへどもようき取ちがへのしそ

二丁裏

http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko04/bunko04_00660/bunko04_00660_p0008.jpg
↑ここの前半3行

  んじなりいかなる家にても・・・・ …3
  こうをかんかへ「かひ立るならばちごうと
  いふ事なし

読めなかった部分のメモ

?國中に
 なさけないことに冒頭からして読めません。左画像の一文字目はなんと読めばいいのでしょう? 酷似した文字が少し後にも出てきます。場所は「…1」の行です。


?々に?
 この一文字目と、先ほどの文字は同じでしょうか?
 二文字目は「〃」とか「々」かもしれません。
 三文字目は「に(仁)」だと思いますが、「え(江)」である可能性も否定しきれません><
 四文字目も読めません。そもそもこの文字は一文字でしょうか?
 場所は「…3」の行です。


?に
 これもわからない部分です。一文字目は宀(ウかんむり)の文字でしょうか?
 二文字目は「に(仁)」なのか「え(江)」なのか…
 場所は「…2」の行頭です。

その他のメモ

「ゑらみ立る家なれは」
 「ゑらみ"立てる"家なれば」なのか「ゑらみ"たる"いえなれば」で書き下し方を変えるべきなんだろうなと思うんですが、どっちかわかんないので「立」の字を残しました。「ゑらむ」は選ぶことですが「得る」から派生した言葉らしいです。

「かひ立るならば」
 上と同じです。「飼ひ"立てる"ならば」「飼ひ"たる"」なのかよくわからないです。文法的に「立てる」がありうるのか、ド素人なのでちょっと判断つきません。

しそ
 これは「しそんじなり」の「しそ(志楚)」です。一文字だと思い込んで必死で考えてしまいました。よく見ると志と楚だったので頭をかかえました。活字にはありえない面白い部分でもあります。

用語


 蚕の卵のことは、今でも種(たね)と呼ばれてます。蚕種で「こだね」とか。

あたる
 蚕はいきものなので病気になることもあるし、うまく育たず質の悪い繭になってしまうこともあります。うまく育って立派な繭が取れたら「あたり」です。

タグ:古文書解読

コメント一覧

武邑くしひ (12/13 00:26) 編集・削除

「立る」は「タツル」でいかがでせうか。

武邑くしひ (12/13 00:42) 編集・削除

「古の下に又」と書く「事」の異体字があるさうです。冒頭の文字はこれではないでせうか。

http://140.111.1.40/yitia/fra/fra00048.htm

武邑くしひ (12/13 01:03) 編集・削除

ウかんむりの字は「実」かな。自信ないけど。

http://140.111.1.40/yitia/fra/fra01046.htm

珍獣ららむ〜 (12/13 07:39) 編集・削除

>「立る」は「タツル」で

ありそうですね。第一候補にしときます!


>「古の下に又」と書く「事」の異体字

これもなるほどという感じです。
吏に似てるけど通じないしって考えてました。
ということは
1.「事國中にいかなる家なりといへども」
2.「いかなる家なりといへども事々に・こうを」
って感じですよね。
2はなんとなく通じる(事々により事毎にがあってそうだけど)けど、1もイケてますかね?!

そういえばもっと後に似た文字が出てきたような気がするので「事」をあてはめて検討してみます。


>ウかんむりの字は「実」かな

これは文字だけ見たらそう思うんですが
「実にたとへ日に三度の飯たきそこのうと…」
と続けて読むと、実にが余分に見えてくるんです。
あまり意味はなくつなぎに使ってるだけなのかもしれないけど。


なにはともあれ、
ありがとうございました。
特に「事」はまったく思いつかなかったので助かりました。

武邑くしひ (12/14 01:33) 編集・削除

二丁裏一行目末尾は「季」でいかが。「季こうをかんかへ」

http://www013.upp.so-net.ne.jp/santai/jpg/0152.jpg

珍獣ららむ〜 (12/14 12:52) 編集・削除

「季こう」それだ!!!

すばらしい。すばらしいですよ。
ありがとうございます!

武邑くしひ (12/14 21:36) 編集・削除

「季こう」なる熟語が本当にあるのかどうかは自信なし。

珍獣ららむ〜 (12/15 00:17) 編集・削除

今朝からまた全体を見直してるんですが、
「八斗あまり」とかの「あまり」を「預」と書いてるのをみつけました。
ほぼ同じパターンの文字列で「余」を使っている箇所があるので間違いないかと。
となると、「気候」のつもりで「季こう」と書くくらいのことはあっても不思議はないです(笑)

『重宝記資料集成』の第三十巻に短い解説がついてましたが「職業用語か、方言か、特殊な言葉遣いも目立つ」と書いてありました。
プロが読んでも意味不明な部分があるようです。
大半は養蚕用語みたいですが、言葉遣いがややおかしいのかもしれません。

珍獣ららむ〜 (12/20 15:50) 編集・削除

色々わかったことがあります。

>「あまり」を「預」と

これは「程」の読み間違いでした(笑)

>季こう

四季と七十二候をあわせて「季候」という言葉が普通に辞書に載ってました。

>・國中にいかなる家なりといへとも

この部分は事ではなく「夫(それ)」っぽいです。
「夫れ國中にいかなる家なりといへども」
同じような文字で

>いかなる家にても・・・・

ここは微妙です。
「いかなる家にても夫々(それぞれ)に」
と読んでしまっても矛盾はないです。
が、「夫」と微妙に書体が違って見えなくもないので
「事」の異体字である可能性も否定できません。
とりあえず「事々に」よりも「夫々に」のほうが普通の言葉っぽいので夫を採用しとこうと思います。

ほかの部分にも「夫」っぽいやつが出てきます。
だいたい「夫より」と書いてあって、
「それより」「それにより」などと読めそうです。

>・にたとへ日に三度の

これは「實に(実に)」であってそうですが、
「處」にも似ているので、外に可能性がないか考え中です。

「實」っぽい文字が何ヶ所かあるので、抜き出して並べたらなんかわかるかもしれません。

美しい薄氷の世界

ファイル 1486-1.jpg
 先日「季節は晩秋」とか書いたような気がしますが、冬もやってきちゃったようなんですよ。今朝は霜柱も立ったし、流れのない水路には薄氷もはっていました。

 水元公園では刈り取られた葦の根元に波紋のような模様のかわった氷が張りました。写真が沢山あるのでページを分けます。「続きを読む」をクリックしてください。
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タグ:地元(葛飾周辺)