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はじめての腹水穿刺(ふくすいせんし)

 前回までのあらすじ……
 とにかく検査漬け。MRIまでやった。あとは胃カメラと大腸内視鏡と、あとなんだっけ?

*腹が苦しいー
 この頃はとにかく腹がきつくて息苦しかった。食事の量も減っている。ご飯をお茶碗に半分食べるとおなかいっぱい。尿も出なくなってる。疲れやすさは日増しに強くなり、お風呂に入るだけでもぜえぜえはあはあ。

 咳もとまらない。痰が絡む咳だ。薬箱に入っていたアスクロンという咳止め薬を飲んだら良く効いた。ただ、これは後でまた書くけれど、この薬を飲んでいるという話をすると医者がイヤな顔をするようなので、飲んでいいものなのかここでは何とも言えない。

 J大学病院では検査ばかりでお腹がきつくなる件については今のところ放置。腫瘍があるならいずれ手術をすることになるだろうし、それまで我慢できるならしたほうがよいのだろうけれど、それでも苦しいもんは苦しい。

 仕方がないので診察日ではなかったけれど相談に行った。まず医師からは先日の血液検査の結果を説明された。

・電解質のバランスが崩れている。
・炎症所見がある(白血球の増加とか?)。
・血栓が発生しやすい状態になっている。CTかエコーで足や胸などの血栓の検査をした方がいいかもしれない(結局これはやってない)。
・腫瘍マーカーが高い。

 腫瘍マーカーというのは腫瘍があると数値が高くなる。マーカーの種類も臓器ごとにたくさんあるはずだけど、ここではどういう種類のものかは説明されなかった。医師のほうも何かさぐりながら話しているフシがあり、どうも端切れが悪い。平たく言うと癌の可能性が高いということなんだけれど、まだそういうことはハッキリ言おうとしない。癌以外にも腫瘍マーカーが高くなる病気はあるらしいので、断言しきれないというのもあるんだろうけれど。

 それから腹水がたまる理由をくどくど聞かされた。

・病変の部分から漏れ出すのかもしれない。
・血液検査の結果を見ると電解質のバランスが崩れているので血管から染み出すのかもしれない。
・あるいはその他の理由かもしれない。

 要するにわかんないんじゃないか。なんにしても血栓が発生しやすい所見が出ているので、利尿剤はやめたほうがいいとのこと。

 じゃあどうすりゃいいんだよ。苦しいんだってば。


*腹水を抜いてみますか?

「苦しいようなら、腹水抜いてみる?」

 と、先生は軽く言うのだけれど、それってもしかしてお腹に針を刺して水を抜くという意味なんですよね?

 お腹って皮厚いんですよ?

 わたしなんか脂肪が沢山付いてるから、一瞬では刺さらないと思いますよ??

 すごくすごく、すごーーーーくイヤなんですけど???

 でも、薬はこれ以上飲むと危険だし、危険をおして飲んだところでめざましく腹水が減るわけではないし、直接抜いたら一時的にでもかなり楽になるはずだし、抜いた水も生検に出せば診断の助けになるはずだから……と言われて、そういうことなら抜いていいですよ。ええ、ご存分に抜いてくださいませ、うううう(涙)って感じで抜かれることになった。以下は臨場感を殺さないよう当時ブログに書いたものをそのまま転載する。口調が変わるけれど気にしてはダメ。

「あのー、先生、それは相当に痛いんですか?」
「局所麻酔をしますから、麻酔はちょっと痛いかもしれませんが、針を刺すときは痛くないですよ」
「局所麻酔ってどういうのですか?」
「……ええと、局所麻酔は局所麻酔で、どういうのと言われましても」
「むかし盲腸を切ったときに脊椎に打たれたみたいなのだったらイヤです」
「ああ、それは脊椎麻酔とかコウマク……(この辺ききとれず)というもので、局所麻酔という表現にはなりませんよ。局所麻酔というのは皮膚に……(なんか歯切れの悪い説明をする)」
「そうですか」

 要するに針を刺すポイント近くに麻酔薬を注射するってことでファイナルアンサー? 最初からそういう風に言えば一言で済むのだよ。

 今日は土曜なのでお昼で外来が終わるから、患者さんがはけてからやりましょうということになって決行は昼過ぎでした。よく胎児の映像を見るのに使うエコーという機械で内臓のない隙間になってる部分を探して刺す場所を探します。腹水を抜く処置はけっこう昔からあると思うんだけど(ブラック・ジャックにも出てくるしさー)、エコーとかなかった時代の先生たちはどうやってたのかな。触ったり叩いたりして、ここなら大丈夫ってとこ探して、えいやっとやっちゃうのかしら。昔のお医者さんってすごい。でも、きっと事故もあったわね。そう思うといい時代になったわ。

「じゃあ、これから麻酔打ちます。麻酔の時だけがんばってください」
「はーい」

 横目で注射器の大きさを確認。小さくはないけど思ったほどじゃない。針の太さも大したことなさそうだ。うむ。

 そんでもって、ぶすり。

 ああ、確かにちくっとするけど、わたし腹の脂肪が厚いから、麻酔の注射はどうってことないわ。

 それからお待ちかねの腹水を抜くための穿刺(せんし)です。

「麻酔効いてるから痛くないと思うけど、腹膜を通るときだけちょっと抵抗があるかもしれません」
「えっ?! ああ、はい」

 ここまで来てそういうこと言うからなー、医者ってあなどれない。最初から言ったら嫌がられるからだろうなあ。

 実際、皮膚やら脂肪やらを通ってるときは麻酔が効いてるのでなんということもなかった。ホントに何かしてるのっていうくらい何も感じない。でも、

「ちょっとチクッとしますからねー」

といわれた直後に、

「ぎゃ、いててて」

と、来ましたよ。それが腹膜を通る瞬間だそうで、なるほど確かに痛い。なんともイヤな感じの痛さ。でも本当に一瞬でした。これなら耐えられないほどのもんじゃない。

 まもなくチューブに腹水が流れ始めて、流れてるとこ見せてもらったけど、腹水とやらは、黄色っぽい透明な液体に、軽く粘着しそうな赤い液体を混ぜた感じのものでした。二時間くらいかけて2000ccくらい抜くと言ってた。2000ccって二リットルか? ペットボトル一本分だよ。そんなに入ってるんだとしたら、そりゃフウフウヒイヒイ言うよね。重たいし。

 針がどういう仕組みになってるかよくわかんないんだけど、穴をあけたところにうまくチューブが通るようになってて、チューブを通したら針のほうは抜いてしまうのだそうです。なので水を抜き始めたら、横をむいて寝たりしてよいといわれたのですが、動くとチューブが刺さってるところが軽くうずくので、なんか恐くてろくに体も動かせませんでした。でも、こんなの気の持ちようなんだと思う。盲腸の時はもっと太いドレインが入ってたけど動いてたしね。

 急に腹水を抜くと血圧が下がって気分が悪くなる人もいるそうですが、何度か血圧を測ってもらったところ、わたしの場合はそういうこともなかったです。抜き始めてしばらくしたら急にお腹がすっきりして、今まで圧迫されて空腹さえ感じにくい状態だったのが、急に腹減ったぜって感じになってきたりして、こんなに楽になるなら恐れる必要はなかったかな、とも思いました。現金なもんですな。

 二時間ちょっと退屈だったけど、半分居眠りしてたので別にどうってことなかったです。チューブを抜かれるときも別に痛みは感じなかった。え、もう抜けたの。いつ抜いたのって感じ。

 腹水を抜く前と後に胴回りのサイズを測った。ウエストではなく腹囲というやつ。へそのあたりで計る。99.8cm→96.4cm。どんな腹やねん。

 傷口はガーゼや絆創膏できつく固定しただけ。固定も二時間後にははがしてくださいといわれた。「はがしても良い」ではなく、はがさなくてはいけないらしいです。理由はいくつかあるんだろうけど、医療用の絆創膏は粘着力がつよいので、長時間貼っているとかぶれてしまう可能性があるとのこと。ガーゼと絆創膏をはがしたら、傷跡にはバンドエイドでも貼って保護しとけば自然にふさがるらしい。今夜はお風呂はやめたほうがいいけどシャワーなら大丈夫。食事も普通にとっていいそうです。あら簡単なもんなのね。

 でも、

「腹圧のせいで、どうしても腹水が漏れることがあるけど、たいていはすぐに止まります。長時間続くようなら病院に来てください」

 えええ、液漏れするのー? わき腹からたらりと液漏れ……うひひひひ。想像するとけっこうグロかも。

 そんなこんなで初腹水とったどー体験は終わりました。病院に行くときは腹がつっぱってつっぱってヒーヒー言ってたのに、帰りはなんかすっきりさんですよ。化膿止めの抗生物質(セフゾンカプセル100mg)を薬局でもらって遅めの昼食をとって家に帰りました。疲れた感じがする程度で具合はわるくないんだけど、けっこう喉がかわきます。「水は通常量とってください」といわれたんだけど、通常量ってどのくらい? がぶ飲みするとまた腹水がたまっちゃうのでよろしくないって。でも、喉が渇くよ。今日は暑いし。

 なお、原因になっている病気は治療してないので、腹水はいずれまた、たまるそうです。せめて検査が終わるまではもってほしいものだと。

この日のお会計
基本診療料 210円
検査料 2598円
処置・ギプス料 720円
文書・処方箋料 204円
合計 3730円也

腹から水を抜くと3000円ちょっとですな。

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  • 2007年08月14日(火)13時10分
  • 蟹退治

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