記事一覧

高山に棲むある種の虫が死ぬと石になる話

ファイル 333-1.jpg
▲スィ(天珠)

 昨日、御徒町の某店で買った。紅玉随をなんらかのアルカリ溶液で腐食させて絵をかいたものらしい。チベットではスィといって魔除けとして身につけるものだそうだ。

 この手の宝石に絵をかいたようなやつにあんまり興味がなかったんだけれど、先日これにまつわる不思議な伝説を聞いて、それ以来ほしくてほしくてしょうがなくなって、とうとう買ってしまった。

 スィは、石に見えるけれど、本当は虫で、高い山に棲んでいる。そっと近づいて帽子をかぶせて捕まえると、きゅっと足を縮めて死んでしまい、石ころになってしまうのだと。

 実際には、最初に描いたとおり人の手で作られたものだけれど、お坊さんが護符として作っていたものらしく、チベット人も作り方をよく知らず、中国に長いこと占領されているうちに製法を知っているお坊さんもいなくなってしまったらしい。現在そこらで売られているものは、台湾や東南アジアで化学薬品を使って作られた即席のスィで、本物とは風合いがだいぶ違う、ということだった。そういう安物ならばそこいらのアクセサリーショップで数百円から千円程度で売られている。

 とにかく、虫が宝石に化けるという伝説があまりにも気に入ってしまい、安物でも偽物でもいいので欲しいと思い、あちこち探しているうちに写真のものを手に入れた。五千円だった。

 そこらにあるのは偽物で数百円から千円と言ったばかりなのに、なんで五千円もするものを買ったのかというと、店の人の話が実にまことしやかでおもしろく、そもそもが伝説惚れなのだから騙されてもいいんじゃないかという気になったからだ。

 店主曰く、ある日、大量のスィがどっさり入った袋を買ってくれと持ち込んだ人がいたそうで、形も不揃いで、割れたのやらいろいろあり、割れたのをよく見ると表面だけでなく深いところまで腐食しているのがわかり、ひょっとするとこれは本物なのかもしれないと、半信半疑で買い取ったらしい。もし、昔のお坊さんが作った本物ならば、海外に熱心な収集家がいてものすごい金額で取引されている。残念ながら出所がはっきりしないので、本物かどうかは当たるも八卦、当たらぬも八卦といったところだと。

 なんせもし本物ならば、昔の人はこれを削って薬にしたという。石を腐食させるのに薬草を焼いて作った草木灰を使ったので、薬草が枯れ果てる真冬にスィを削って薬にしたというのだ。ところどころ欠けているのも、あるいは昔の人が薬にした痕なのかもしれないと。

 また、五年ほどまえに世界的なブームがあったという話もしてくれた。中国機の事故があり、生き残った人がスィを身につけていたというので話題になったのだそうだ。釜山に落ちた中国国際航空機の事故のことだろうか?

 こうなると伝説惚れの三乗である。ひょっとすると完璧に騙されているかもしれないけれど、この際だから気持ちよく騙されることにした。こういうのは信仰の一種なので自分が気に入ったらそれが最高なのである。
 
 せっかくだからペンダントにして首から下げようと思うんだけれど、どういうふうにしたら格好いいでしょうか。穴があいているので紐は通せるのですが、そんなに太いものは通りません。

ファイル 333-2.jpg
▲ダブルポイントの水晶
 ついでにこれも買いました。お値段はぐんと安くて三百円でしたよ。

*アルファポリスってところのコンテストに珍獣様の博物誌と山海経動物記を出してみたんだけれど

 大賞をとると本にしてくれるとか賞金が出るだとか言うので出してみたんだけれどね、投票が始まったとメールが来たので実験で自分でもバナーをクリックしてみたら、ログインしろと言われたわ。なんだこれ、わざわざアルファポリスの会員にならないと投票もできないんかい。あっさり興味を失うわたくしだったりして。誰がわざわざアカウントを作成してまで応募なんかするものかしら。

山海経動物記
珍獣様の博物誌
↑「趣味雑学大賞参加中!投票する」というバナーをクリックするとログインを要求されるっぽいので、アカウントをとるなり、スルーするなり好きにしてくださいませ。


*[追記]スィ(天珠)はこういうふうにしてみました
ファイル 333-3.jpg
▲青いのはラピスラズリ(激安だったのでソーダライトかもしれない)で赤いのは樹脂製かなにかの古っぽいビーズ。紐は刺繍糸をミサンガみたいに結びました

タグ: 伝説 おまもり

    はてなブックマーク - {entry_title}
  • 2008年06月02日(月)17時56分
  • 自然・園芸

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://www.chinjuh.mydns.jp/cgi-bin/count/diary-tb.cgi/333

トラックバック一覧