ステンレスかチタンか。最強の腕時計素材はどっちなのか?
こんにちはGoroです。グランド セイコー 偽物腕時計に最も多く使われている金属材料といえば貴金属以外ではステンレス鋼、その中で316Lステンレスが最も多く使用されています。最近はアレルギーフリーで、軽いこともありチタンの需要が増加中です。しかし筆者はステンレスの方が現時点では総合的に優れていると思います。その理由を詳しく検証します。
ステンレスの主成分は鉄! 316Lが時計に使われる理由は非磁性体、加工性の良さ!
ステンレス鋼は今や私たちの日常生活には欠かせない金属材料です。しかし、ステンレスのことを「ステンレスという材料」と思っている人も多いと思います。実はステンレス鋼の成分は鉄(Fe)、それらにクロム(Cr)やニッケル(Ni)を混ぜた合金です。
錆びやすい鉄が主成分であるにもかかわらず錆びない理由は、材料の表面に薄い皮膜があり、それによって鉄が空気に触れないことにあります。正確にはクロムと酸素が結びつき酸化皮膜が生じるためです。
腕時計に最も多く採用されている316Lは日本の規格では「SUS316L」と呼ばれ、クロム、ニッケル、モリブデンから成る非磁性体(磁石にならない材料)ステンレスで、そのことが磁気を嫌う機械式時計に多く採用されている理由だと推測されます。
また加工性に優れていることも316Lが時計業界から支持された大きな理由です。316Lは含有炭素量を少なくすることで、軟らかくなり加工がしやすくなっています。時計の材料はエンジニア的な見方をすると強度よりも加工性が重要なのです。
錆びにくく、非磁性体であり、さらに加工性に優れていることで、316Lは時計材料として世界中に広まったと考えられます。
しかし、あまりにも広く使われたことで他社との差別化ができなかったことも事実です。そこで近年は各ブランドから、従来の316Lステンレスとは違うステンレスを採用するブランドが増えています。
純度をあげて輝きを増した、ルーセント・スティールA223
2019年にショパールの「アルパイン・イーグル」に採用されてから一躍有名になったのが見出しのステンレスです。オーストラリアの鉄鋼会社フェストアルピーネ社がショパールと共同開発したもので、素材の純度を高めることで硬度を高めたとされています。
このステンレス鋼の組成は非公表ですが、金属アレルギーを起こしにくいことと、硬度を高めていることからニッケル含有量を減らし、モリブデンを増やしていると推測できます。
ルーセント・スティールは英語で直訳すると、「Lucent:輝く」「steel:鉄」という意味です。筆者はアルパイン・イーグルの実機を見ましたが、まさに白銀色、「スイスアルプスの光り輝く雪をイメージしたのでは?」と個人的に思っています。
エバーブリリアントスティールは腕時計用に初めて採用した材料、904Lに似ている?
hero_fineplay2さんの#腕時計魂での投稿より
「エバーブリリアントスティール」はセイコーウォッチが腕時計用に初めて採用したステンレスです。これも詳しい組成は非公表ですが、さまざまな時計メディアの記事を要約するとこのステンレスは「実在する材料」だと判断できます。
裏付けを取るため、材料物性学科修士課程卒である筆者の同級生Mにメールで「ブリリアントスティール」を問い合わせたところ、次のような回答を貰いました。
可能性のある耐食材料ということで①SUS312L、②SUS445J1、③ SUS445J2、④SUS316、⑤SUS304の5つを候補に挙げてくれました。
実際セイコーの担当者は時計メディアで「ブリリアント・スティールは、海洋構造物や化学・食品系プラントなどで使用される環境用の素材でした」との記述があり、そこから考えると①のSUS312Lが最有力候補だと思います。
さらに彼が送ってくれた参考リンクには、耐食性ステンレスの対孔食指数という錆びにくさを示す数値がありました。これを見る限り①が最も高い41.36という数値を示しています。
友人Mはロレックスに採用されている904Lの可能性もあると推測したそうです。しかし、ロレックス他数社で実績のある904Lを伏せてセイコーが発表するのはあまりにも不自然と考え、候補から外したと聞きました。
つまりエバーブリリアントスティールの機械的性質は904Lと極めて似たものだと言えます。
セイコーがこの材料を採用した理由は、これまでのステンレスと風合いが全く違うことも理由に挙げています。やはり他社との差別化は重要です。
ステンレスが、まだ主役であり続ける理由
さて、近年時計業界で人気が上昇しているチタン合金、しかしGoroはこのチタン合金がここ数年でステンレスから主役の座を奪うか?と、言われれば2022年時点では難しいと考えます。
2022年4月にグランドセイコーがチタン8モデルを値上げしたことは、まだ記憶に新しいことでしょう。全チタンモデルでないこともあって、値上げの理由をグランドセイコーは「諸般の事情」としていますが、ウクライナ危機説が有力です。
チタン材料の最大の供給先は航空産業向けで、世界各地で紛争が起こると需要が増えて即座に価格が高騰します。加えて友人Mはチタンならではの機械的性質がもたらすコスト増要因にも触れています。
彼曰く、チタンは「添加する元素によって性質がガラリと変わる」金属だそうです。添加物によって強度が色々変わり、それに合わせて加工を色々変えるとそれがコスト高へつながります。
また純チタンを精錬するのにもコストが高く、2017年時点で1トンの生産量に100万円以上のコストがかかるため、その高コストを負担できる製品しか需要がありません。
機械的性質は優れているためコストを下げることさえできれば、ステンレスの市場に食い込む可能性があるという意見があります。
ただ、そのためにはコストを「現状の半分」にしなければステンレスに追いつけません。コルム コピー金属材料としてチタンは大変優れており、埋蔵量も豊富です。チタン合金の製造コストが将来下降し、ステンレス製腕時計並みの価格になる日を期待してください。