*典型的じゃない
前回はどんな検査をするかざっと書いたけれど、今回は日記風に起こったことを時系列に書こうと思う。
まず、診察室に呼ばれて、こういう検査をしましょうと言われ、同じフロアにある中央検査部で血を採ってもらった。また婦人科にもどってきて内診を受け、すぐ隣の処置室に移動して外から腹部エコーを受ける。
先生の説明があるから、それまでロビーで待っててくださいと言われ、またしばらく待つ。ふたたび診察室に呼ばれ、D病院から持ってきたCTについて、先生の意見を聞いた。
先生によると、たしかに卵巣のあたりに腫瘍があるが、典型的な卵巣の腫瘍はこういうふうには写らないのだということだった。どういうのが典型的なのかも説明を受けたはずだけれど、すっかり忘れた。
とにかく卵巣の病気である可能性が強いので、CTはこの画像を参考にするとして、MRIの検査もしようと言われた。MRIはCTに似ているけれど、CTとは別の物質に反応して絵を結ぶもので、婦人科系の病気はMRIのほうが詳しくわかる場合もあるということだった。
また、念のために外科も受診して大腸内視鏡と胃カメラをやったほうがいいと言われた。睡眠薬だか鎮静剤だかを使うので、胃カメラは寝ている間に終わるけれど、大腸内視鏡は液体の下剤を多めに飲むので、ちょっと大変かもしれないと説明を受けた。「多め」がどのくらいかは言ってなかったと思う。常識的に考えて800~1000mlくらいかな、と勝手に想像した。
*待合室で倒れた
その日わたしは朝食をほとんど食べておらず、利尿剤も服用していたので自分で予想しているよりずっと血圧が低かったらしい。睡眠は充分とっていたのに眠くて眠くて、診察室で説明をうけている間にもあくびがとまらなかった。
婦人科から外科に依頼をするので少しロビーで待っててくださいとか言われ、あくびをしながらスタスタ戻ろうとしたら、急に目の前が暗くなって歩けなくなる。ふら~っとしゃがみ込んでしまった。
すぐに看護婦さんがすっとんできて処置室のベッドを貸してくれたんだけれど、
「先生の説明(癌だとは断言されなかったけど)を聞いていて気持ち悪くなっちゃったの?」
「家にいるときでもこうなるの?」
「どんなふうに気持ち悪くなっちゃったの?」
などと、頭が働いていないところへ矢継ぎ早に質問されて軽く混乱。家ではなんともないこと、利尿剤を飲んでることなどを説明して、水分と糖分が足りないだけだから、なんでもいいから味のついてるジュースを買ってきてほしいとお願いする。
看護婦さんが言うには唇の色があからさまに悪くなっていたそうで、血圧も測ってもらったら高い方が96くらいで低めだった。本当に利尿剤による貧血だか低血糖だかだったんだと思う。横になって買ってきてもらったジュースをちびちびやってるうちに回復。当時のメモによるとこの時点で11時30分ごろ。もうすぐお昼。動けるようになったら新館に職員食堂があるので昼食をとるようにいわれる。言われなくてももう死にそうなので食べるよ。
*たらい回し
看護婦さんが外科に予約を入れてくれたので、外科のロビーに移動。またもや問診票を書かされる。内容は性経験とかの特殊項目がないだけで婦人科と変わらない。こんなのカルテにコピーでも添付して次の科に送っとけと思う。
受付で問診票を渡し「食事をしてきたいのですが」と言ったら、もう次に呼ばれるので待っていてくださいと止められた。この時点で11時45分。待合室代わりの廊下にはほとんど人がいないので、すぐに終わるならと待つことにする。
ところが待てど暮らせど呼ばれない。嫌がらせかとキレそうになった頃にお呼びがかかる。この時点で12時30分を回ってる。次だと言われてから一時間以上待たされてる。
診察室に入ると、外科の先生は待たされてイライラしているこっちよりもずっと不機嫌な顔をして、
「さっき婦人科のH先生にも言ったんだけど、外科は手術が必要な時に来るものだから、こういうのは内科消化器科でやってもらって」
と、偉そうに。
一時間半も待たされたあげくにコレかよ!!
わたしはブチ切れた。
「はぁ? 一時間半も待たせておいて、外科では見られない、内科へ行け? あのね、ふざけないでください!!」
こちとら朝から食事もしとらんわ、すでにいろんな検査で半日潰れてるわ、低血圧でぶったおれてるわ、眠いわ、腹水で腹がふくれて重いわ、息苦しいわでふらふらなんだよ。だって病人なんだもん。健康だったらこんなとこ来ないんだよ。もうぜんぜん余裕ねーよ。正直いつ倒れてもおかしくない。そうとう恐い顔して怒ってたはずだ。
すると、外科の先生はムッとした顔をして
「他科からの依頼は順番にこなしているので」
と不愉快そうに言った。たぶん悪いのは自分じゃなくて、筋違いの依頼を回してくる婦人科が悪い、だから自分は関係ないと言いたいんだとは思うんだけれど、その態度がさらにムカついた。
「診られないなら待ってる間に言えばいい。ふざけないでくださいよ!」
と、怒って診察室を出た。
あのさあ、いろいろ事情もあるとは思うんだけどね、患者側からみたら外科だろうか婦人科だろうがその病院の一部でしかないのね。あっちの科が悪いとか責任をなすりつけるとかえって印象悪いのよ。普通の会社だったら別の部署がおこした不祥事でも、会社全体でごめんなさいって言うもんだよ。「すいませんね、婦人科にもよく言っておきますから、内科へ回ってくださいね」とか言われたんなら、腹はたつけど多少は我慢したさね。
というか、こんなことしてると患者さん死にません?
*内科へ~そしてまた食事を止められる
婦人科に戻って外科で追い返されたと苦情を申し立てたら、今度は看護婦さんがあわてて内科に走って行って、外科で一時間半くらい待たされた上にこっちに回されちゃったので、と話をつけてくれた。もうすぐ13時である。「あの~食事を……」と言ったら、「次に呼ばれますから」とまたもや止められてしまった。そして問診票……ブチッ。内容は外科のと同じじゃんかーーーーー!!!! おかしい、こいつら大学出のエリートじゃないのか。やってること原始人並みじゃんかっっ。
それでも婦人科の看護婦さんが話をつけてくれたおかげで、内科にはまだ患者さんがたくさんいたけど、すぐに呼んでもらえた。
消化器内科の先生は外科の先生よりずっと印象のよい人だった。しかし、こちらはもう精神的にも体力的にも余裕がなくなっているので、「婦人科ではなんて言われたの」なんて聞かれても「さあ……そんなのカルテを見てくださいよう」としか言えない。
内科の先生によると、内臓の病気ならばもっと痩せるし元気がない人が多い。見た感じ胃や腸ではないと思うが、念のために検査をするなら胃カメラと大腸内視鏡はしたほうがいいとのこと。ただ、腹水でお腹がぱんぱんになっている状態で、自分ならば大腸内視鏡を受けさせるのは多少考えるとも。
胃カメラは、この病院では睡眠薬を注射して半眠りにさせて行うのでさほど苦痛はないけれど、大腸内視鏡は腸を空にするために下剤の入った水を大量に飲まなければならないので、腹水のたまっている人にこういう検査をさせるのはどうかと思うが、やればやったで価値はあるはずと。
入院して受ける方法もあると説明されたが、入院代を取られてはたまらないので外来でと頼んだ。水はどのくらい飲むのかと聞いたら先生は「少し多めに」と言うだけで答えなかった(わざとだと思う)。その本当の意味を理解できなかったので、あくまで常識的な量と思い同意した。
内視鏡を入れるのに採血して感染症の検査をしたいと言われたが、検査部に問い合わせてもらったら婦人科の検査でとった血で足りそうなので再び血を抜かれるのだけはまぬがれた。
検査の予約を入れたら内科に戻ってきてほしいとのこと。ああ、いつになったらご飯を食べられる?
*はめられた
内視鏡関係の検査は当日にはできないので予約をとって後日ということに。MRIの予約もいれなきゃならないので、新館の検査部に移動して予約をとる。
内視鏡部で聞いた話だと、健康な人なら胃カメラと大腸内視鏡を同じ日にすることも可能だけれど、内臓を空にするために絶食をした上に下剤をかけたりするから、いっぺんにやるのはそれなりに体力を使います、とのことだった。ということは、MRI・胃カメラ・大腸内視鏡を、それぞれ別の日に受けに来なきゃいけないのか。はあ、そりゃお金に余裕のある人なら入院したほうが楽かもしれない。
また、検査前の準備を聞いたところ、胃カメラは前日の夜から絶食するだけでいいが、大腸内視鏡は前日から低残渣食という、検査食を食べ、夜は絶食。そして当日は半日かけてニフレックという液体の下剤を2リットル飲まなければならない、ということだった。ちなみに味はポカリスエットに似てまずい、とのこと。
味はともかく、2リットル!!!
普段なら飲めなくもないと思う。わたしはわりと水分を多くとる方なので、健康な時なら一日に2リットル近く飲んでると思う。半日でも飲めなくもない。でも、今はお腹に水がたまってて、息も止まりそうだわ食事だってろくに食べられない状態で、どうやって2リットルも飲めと?
はめられた。
完全にはめられた。
医者のやつら、先に2リットルなんて言ったら絶対に拒否されると思ったんだろう。仮にごねられるとしても、診察室で騒がれるより検査部に追いやってしまったほうが楽だと考えたに違いない。検査部にはなんら責任がないので「どうしますか?」って聞けばいいだけだし、判断を仰げる責任者が目の前にいないとむげにことわりにくくなるのが人情だ。ふーん、お医者さんってこんなところには知恵が働くんだね。
まあ、断ってもよかったんだけれど、まさか押さえつけて漏斗で飲ませるような真似もしないだろうから、ダメなら途中でやめればいいんだ。でも、途中でやめても検査代は取られるんでしょうね(怒)
検査用の低残渣食はレシピを見せてもらったら自分でも作れそうだった。でも面倒くさいしネタなので売店で専用の食事セットを買った。江崎グリコ製のエニマクリン。1500円也。
*で、食事はいつできますかーっっ(涙)
内科に戻る前にトイレに行くと、出血しているのでギョッとする。生理は終わったばかりなのでまだ来ないはず。でもすぐに、子宮内膜の検査の影響だと気づいて納得する。あれだけガリガリやられたら出血くらいするわなあ。
内科にもどって次の受診日の予約をする。検査の結果を聞くための受診だから、予約をいれてこないと決められなかったというわけだ。はあ、なんだかなもう。IT時代だというのに、いつになったらこの手の煩雑な作業をスムーズに行えるようになるんだよ。
さらに婦人科にもどって、内科へ行ってきたことを報告すると、婦人科の先生からも話があるのでもうちょっと待っててくださいと言われる。ここではすぐに呼ばれて「入院して検査をうけたほうが楽」という話をもう一度されたが、たしかに通ってくる手間がないぶん楽かもしれないんだけれど、お風呂もトイレも家とは違ってしまってストレスになるから決して気楽じゃない。入院代だってタダじゃないので断った。
次の診察日を内科と同じ日に設定して、会計に診察券を出した時点でもう14時を回ってる。死ぬってば。
検査用に下剤が出てますからと言われ、渡されたのはラキソベロンという液状の下剤。これは知ってる。コップ半分くらいの水に、大人だと10滴くらいたらして飲むと効くやつ。ところが一緒にわたされた検査用の説明を読んで吹いた。
「1本全部を水でうすめて飲んでください」だって!!
えぇぇぇ、これ10滴で効くのに、ぜ、全部ぅ?!
大丈夫なのかしら……ははは。
▲ラキソベロンはこんな小瓶に入った液体。20年くらい前の記憶では茶色のガラス瓶だったような気がする。味はほとんどなく、遠くはるか彼方に甘みを感じる。飲むこと自体に苦痛はない。
*やっと食事にありつけたー(T-T)/
アリオ亀有で沖縄料理の定食を食べて帰宅した。
群馬に住んでいたころ、甲状腺の病気で大学病院に通っていたんだけれど、待合室でおばあちゃんたちが「○○さん元気そうじゃない」「そらそうさね、具合悪かったらこんなとこ来ないよ」って話してるの聞いて爆笑したけれど、たしかに具合の悪い人は病院には行ってはいけないと思った。死ぬ。救急車をタクシー代わりに使う人の気持ちが少しわかったよ。