正統カステラ系伝説
チューリップ(投稿者:TAP(^^)/)
 1554年、ドイツの外交官ド・ビュスベックはトルコですばらしい花に出会い、その時の感動を友人にこう書き送っている。
「すばらしい花々に随所で出会っています。スイセン、ヒアシンス、そしてトルコ人がトゥリパム (Tulipam) と呼んでいる花があるのです。これを少々手に入れましたが、けっして安くはありませんでした」
 この言葉がチューリップという言葉の語源になったと言われている。
 ところがトルコではチューリップのことをラーレ (lare) と呼んでいて、トゥリパムという名前の花は存在しない。トゥリパムという言葉はトルコ語で「ターバン」の意味で、通訳が「トゥリパム(ターバン)に似た花」と言ったのを、ビュスベックが花の名前とかんちがいしたのだと言われている。
トゥリパムに似てる花だから…
【用語解説】
ドイツの外交官ド・ビュスベック
 オーストリアの駐トルコ大使ブスベキウスとする資料もある。おそらく同じ名前を何語で読むかのちがいであろう。

トゥリパム
 ツリパム、チュリパムと表記する場合もあるが、同じ単語である。トゥリパン、ドゥルバンドなどとも言われる。

ラーレ
 トルコ語でチューリップのことを意味する単語らしい。ラレーラとする資料もある。とにかく、トルコではチューリップのことをチューリップとは呼んでいなかったということだ。

 チューリップ伝説は、正統とするギリギリの路線ではないかと思う。
 正統カステラ系伝説では、Aの名を問われて、なにか勘違いしてBの名を答えてしまう。この時、AとBに関連が薄いほどおもしろみが倍増するような気がする。例をあげてみると、

カンガルーの語源は「わからない」
インドリの語源は「見てごらん」

どちらも、もとの物体の形や性質にはまったくちなんでおらず、 明後日の方向をむいていると言える。

 ところが、チューリップ伝説はというと、「トルコ人通訳が『ターバンに似た形の花』と答えたのをかんちがいして……」とある。たしかに、勘違いでみょーな名前をつけられた例には違いないが、花の形にちなんだ名前であることにも違いはない。カステラ系としての醍醐味は薄い。

 気になるのはトルコ人のターバンの形だが、それは本当にチューリップに似ているのか。いや、そもそもトルコ人はターバンをするのだろうか??
 行ったことがないので詳細はよくわからないが、現在トルコでは、ターバンをしている人はほとんどいないらしい。しかし、ターバンを着用していた時代もある。
 ターバンというのは、布きれを頭に巻いたものだから、布の形や巻き方によって、完成品のシルエットは変わってしまうと思う。昔のトルコ人がどんな形のターバンをしていたかというとよくわからない。
 もっとも、当サイトは史実として検証することを目的にしていないので、そのあたりは不問としたい。挿絵のターバンはデタラメであるとだけ書き記しておこう。

 なお、チューリップ伝説の類話として、トルコギキョウの由来もあげておこう。

 トルコキキョウは南アフリカ原産で、トルコとは関係のない花である。しかも、トルコキキョウはナス花だから、キキョウ科のキキョウとも関係はない。
 日本に輸入されるとき、適当な和名をつけようとした担当者が「トルコ人のターバンに似ているし、キキョウにも似ているし」というのでトルコキキョウとした。
トルコキキョウも縁もゆかりもない名前をつけられた例ではあるが、正当カステラ系とは言えない。なぜならここには「勘違い」が存在していない。縁もゆかりもないことを承知でわざとつけられた名前だからだ。

[参考]掲示板のログ>トルコ人とターバンについて

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