カステラ系伝説
マスカルポーネ(投稿者:ひろこ)
 イタリアに来てマスカルポーネ・チーズを食べたスペインの総督が、そのおいしさに思わず
「マス・ケ・ブエノ (Mas que bueno!) 」
と叫びました。
 マス・ケ・ブエノ、とは、スペイン語で「めっちゃ、おいしい!」という意味だそうです。
 それからというもの、総督が食べたチーズは、マス・ケ・ブエノが訛ってマスカルポーネと呼ばれるようになりました。
【用語解説】
マスカルポーネ
 マスカルポーネは南イタリア・ロンバルディア地方で生産されるチーズのこと。

総督
 軍隊を率いる最高司令官のこと。または、植民地を統括する長官のこと。チーズを食べた総督の名前は伝えられていない。


【その他の説】

Mascherpin説
 アルプスのリコッタチーズ Mascherpin に由来

Mascherare説
 「ドレスアップする、ごまかす」という意味のイタリア語の動詞 mascherare に由来

 カステラ系伝説にきわめて似ており、最初は正統カステラ系として分類していたが、細かく見ていくと残念ながら正統とは言いがたく、疑カステラ系とした。
 改めて正統カステラ系伝説の基本構造をご紹介すると……

・ある人が、初めて見たもの(A)の名前をたずねる。
・たずねられた人は、何かかんちがいして、別のもの(B)の名前を答えてしまう。
・それからAはBと呼ばれるようになる。

 マスカルポーネ伝説では、スペインの総督は素直に「おいしい」といったのであって、誰かに名前を聞かれ、勘違いしてその単語を口にしたわけではない。
 もし、総督の言葉を聞いた人のほうが勘違いをして「なるほど、このチーズの名前はマスケブエノというのか」と言ったというのなら正統カステラ系に認定できるのだが、そのあたりはハッキリしない。
 そもそも、スペイン語とイタリア語は良く似ている。

西 : Mas que bueno!
伊 : Ma quello buono !

 これだけ似ているのだから、総督の言葉はイタリア人の耳にも「美味しい」という意味に聞こえたであろう。にもかかわらずチーズの名前とされたのは、もとの意味を知りつつあえて名付けたとしか思えない。そのニュアンスを日本語にするならば「デリシャスチーズ」といったところだろうか。
 そうなると明らかに基本構造とはちがっており、正統とは認めにくいというわけだ。

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