固いダイズをやわらかく、かつ無害なものにするために、アジアではさまざまな工夫をしてきた。
枝豆(えだまめ)
これは加工とは違うが、まだ青い未熟なものを食用にすれば、消化もよく、毒性も低い。しかし、この場合でも生で食べることはなく、たいていは加熱処理をする。熟したダイズにくらべれば短時間の加熱で食べられるようになる。
茹でてそのまま酒のつまみに、茹でてつぶしたものに砂糖をくわえ、ずんだ、または、じんだと呼ばれるあんこにする。
豆乳(とうにゅう)
水に長時間ひたしてふやかしたダイズを水とともに挽きつぶして絞ると牛乳に似た白い液体がとれる。これを豆乳といって、そのまま飲むほか豆腐の原料になる。
生のダイズに毒性があるなら豆乳にも、と思うのだが、その件についてはっきりのべている資料がみつからない。むしろ牛乳よりコレステロールが低くて健康によいと書いてあるばかり。もっとも、程度の問題というのもあるので、生ダイズばかり毎日大量に食べ続けなければ問題のない程度の毒なのかもしれない。
雪花菜(おから)
豆乳をつくるときに出る絞りかす。これも捨てずに食用にする。また、家畜の餌にもする。
豆腐(とうふ)
豆乳を加熱して、苦汁(にがり)と呼ばれる凝固剤を加えると固まってくる。これを型に流して冷ましたのが絹ごし豆腐で、重しをして水を抜いたのが木綿豆腐である。
豆腐は豆を腐らせると書くが、豆腐自体は発酵食品ではない。中国北方系の遊牧民族がチーズなどの乳製品を「腐」と呼んでおり、豆から作った腐に似たものだから豆腐と呼ぶようになったらしい(参考[広告]>『アジア菜食紀行』)。
納豆(なっとう)
茹でたダイズを納豆菌または枯草菌で発酵させたもの。日本、韓国のほか、中国南部、ラオス、タイなどの東南アジア、さらにはネパールでも食べられている。それぞれの国や地方で作り方が違い、発酵させてから潰して味をつけたものや乾燥させたものなど変化に富む。どこかで発生したものが伝播したのではなく、各地で個別に発生したと考えられる。
西アフリカではイナゴマメなどの野生の豆を煮て枯草菌で発酵させたものを食用にしていたが、最近では畑で作ったダイズで同じものを作って食べているという。
また、インドネシアにはテンペといって、大豆をクモノスカビで発酵させて柔らかくし、レンガのように固めたものもある。オチョム、ダケなどともいう(参考[広告]>『マメな豆の話』)。
味噌(みそ)
調味料。水でふやかしたダイズを長時間茹で、やわらかくなったら潰して人肌に冷ます。冷ましたところへ塩と麹を加えてまぜ、重しをして数ヶ月発酵させて作る。発酵食品であることは納豆と同じであるし、中には味噌と見分けのつかないような納豆もあるが、使われている微生物が違っている。納豆菌で発酵させた納豆はナットウキナーゼというものの働きで血栓ができるのを防ぎ、体によいとされている。
醤油(しょうゆ)
茹でたダイズに炒った麦を加え、塩と麹、水を加えて発酵させたもの。調味料として使う。おそらくは味噌を作るときに出る水気に旨味があることから、調味料として使われたのが最初ではないかと思われる。
黄粉(きなこ)
炒ったダイズを挽いて粉にした物。餅や団子にまぶすなどして使う。ココアの代わりに牛乳に混ぜて飲んでも美味しい。
大豆モヤシ
豆モヤシともいう。ダイズを発芽させたもの。
大豆油(だいずあぶら)
ダイズからしぼりとった油。食用にされるほか、インクの材料などにもされる。
油粕(あぶらかす)
油をとったあとにのこるしぼりかす。飼料や肥料にする。豆粕(まめかす)とも。
また、イネなどを作ったあとの農地にマメ科の植物を作ることを緑肥という。植物は成長するのに土中の窒素を使ってしまうが、マメ科の植物の根には空気中の窒素をとりこ細菌がつくため、疲れた農地が回復するのだという。