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和名 ジュンサイ(蓴菜)
別名 ぬなわ(蓴 または 奴奈波)
学名 Brasenia Schreberi
科名 スイレン科
沖縄口  
アイヌ語  
中国名 蓴菜
英名 water shield(水の盾)
エスペラント brasenio(学名に由来)
その他  
初夏
原産地 日本?
 
 
ジュンサイにまつわるいろいろ
 ジュンサイはスイレンを小さくしたような繊細な水棲植物で、葉がゆるいゼリーのようなヌメヌメしたものに包まれている。
 水深 30 センチ程度の池や沼地で栽培され、収穫は人が舟に乗って手作業で行う。まだ開いていない若い葉を食用にする。旬は夏で、新鮮なものは生でも食べられる。加熱処理して瓶詰めにしたものなどが一年中出回る。
 かつては日本中にジュンサイ池があったが、今は秋田県が主な産地である。

 中国でも蓴菜は食用にされる。日本でも吸い物にするが、中国浙江省では蓴菜湯という熱いスープが名物になっている。熱湯でさっとゆでた蓴菜を椀に入れ、鶏胸肉と中華ハムを細切りにしたものを煮て作ったスープをかけ、さらに鶏油をくわえたものである(参考>中央公論新社『あれも食べたこれも食べた』)。

ジュンサイにまつわる言葉・文学
蓴菜な人(じゅんさいなひと)
 ジュンサイにヌメリがあることから、つかみどころのない人のことを言う。上品な京言葉で「ほんま蓴菜なお人やわぁ」などと言われると褒められているのではないかという気になるが、ようするに「どちらつかずでいいかげん、つかみ所のない人ね」というのを遠回しに言われているだけなのである。

蓴羮鱸膾(じゅんこうろかい)
 中国の故事にまつわる言葉。直訳すると蓴菜のあつもの(熱いスープ)、鱸のなます(刺身)という意味。昔、張翰(ちょうかん)という役人が故郷松江の蓴菜と鱸(魚の名前)の味を思い出して役人を辞めてしまった。このことから、故郷を懐かしく思うこと、または役人を辞めたくなることを、「蓴羮鱸膾」または「蓴鱸之思」と言うようになった。単純に故郷の食べ物が恋しくなったのか、上役が気に入らないから辞めると言えないので洒落た理由でごまかしたのかは判断の難しいところ。ちなみに鱸は、日本で言うスズキのことではなく、松江で有名なカジカ科の鱸魚=ヤマノカミ Trachiderumus fasciatus のこと。

『旦那気質』(だんなかたぎ)
 浮世草子といって、江戸時代の大衆文学の一種(だと思う)。「こなさんがた蓴菜とはなぜに言ふえ。はておまへ追従ばかり言ふて、あちらでもこちらでもぬらりぬらりといふ心じやわいのう」という一節がある。
 自分の考えもなく人にはおべっかばかり言って、のらりくらりとしているから蓴菜みたいというのだよ、というような意味。どういう場面に出てくるのかは読んだことがないのでわからない。

『万葉集』(まんようしゅう)
 日本最古の歌集。偉い人から一般民衆まで、さまざまな立場の人の歌を収録している。遠い昔、日本人はみなポエマーだったのである。
 蓴菜が出てくるのは作者不明の一首のみ、「ぬなわ」という言葉で出てくる。

 わがこころ ゆたにたゆたに浮きぬなわ 辺にも沖にも寄りかつましじ(吾情 湯谷絶谷 浮 邊毛奥毛 依勝益士)
 わたしの心はたゆたうジュンサイのように揺れ動いていますよ、という意味。ジュンサイ特有のぬめりを詠ったものではないのが残念。

『古事記』『日本書紀』
  ジュンサイが出てくるらしいが未確認。

オトコジュンサイ(男蓴菜)
 ガガブタのこと。ミツガシワ科の水棲植物で葉がジュンサイに似ている。

ハナジュンサイ(花蓴菜)
 アサザのこと。リンドウ科の水棲植物で葉がジュンサイに似ている。

フサジュンサイ(房蓴菜)
 ハゴロモモとその近縁種のこと。北アメリカ原産の水棲植物で、昭和の初期に水槽にいれるために輸入されたものが野生化している。はっきり言ってジュンサイとはまったく似ていない。ジュンサイと同じくスイレン科に分類されていたことがあるので輸入業者がつけた通称かもしれない。今はハゴロモモ科とする本が多い。カボンバ。金魚藻。

  
 
珍獣様が食したジュンサイ