カボチャと呼ばれている植物は一種類ではない。日本で栽培されているのは、セイヨウカボチャ、ペポカボチャ、ニホンカボチャ、セイヨウカボチャとニホンカボチャをかけあわせたものの四種に分かれるようだ。
ニホンカボチャ、セイヨウカボチャ、ペポカボチャはどれも中米原産の植物だが、日本には天保年間(1532〜55年)にカンボジア経由で渡来したのが最初である。そのためカンボジアが訛ってカボチャになったと言われている。また「ぼうぶら」という別名はポルトガル語の
Abobra が訛ったものらしい。ポルトガル人が持ち込んだものだからである。
カボチャはトウナス(唐茄子)とも呼ばれるが、中国経由で日本に渡来したペポカボチャの形がナスに似ていたことからつけられた名前である。ナンキン(南京)も中国の地名なので、やはり中国経由でやってきた品種にあたえられた名前なのであろう。
『和漢三才図会』では、ボウブラとナンキンを分けて説明し「ボウブラはまんまるで真桑のようにかどがある(表面のでこぼこ、たて畝のことを言っている)。ナンキンは洋梨型で畝は浅く、若いものは緑で熟すと赤くなる。そのため唐茄子と呼ばれる」としている。
日本では南瓜と書いてカボチャと読む。中国でもカボチャのことは南瓜(ナングァ)と呼ぶが、北瓜(ベイグァ)、倭瓜(ウォーグァ)、老倭瓜(ラオウォーグァ)などの別名もあるらしい。それらがすべて同じものをさすのか、あるいは種類によって呼び分けるのかは残念ながらよくわからない。
カボチャの料理法といえば、醤油と砂糖で甘辛く煮たり、テンプラにするのが一般的だが、欧米だとパイの具にするなどお菓子に利用することもある。ゆでて軽くつぶしてマヨネーズであえてサラダにするのも美味しい。
日本では、もっぱら実を食用にするが、中国では種を炒って殻をむいたものをお茶請けにしたりする。東南アジアではカボチャの蔓の新芽や花を、炒め物やスープにすることも多い。
ニホンカボチャ Cucurbita moschata
皮が黒に近い緑色で、丸くてゴツゴツしており、身がしっかりしていて煮くずれないのが特徴だった。だったと過去形で書くのは、残念ながらニホンカボチャは昭和30年代に消費が減少して、現在ではほとんど作られていないからだ。皮が赤くひょうたん型になる鹿ヶ谷などの品種もある。
セイヨウカボチャ Cucurbita maxima
現在、八百屋さんで普通に見られるのは、ほとんどがセイヨウカボチャだそうだ。皮が濃い緑で丸く、ニホンカボチャほどゴツゴツしていない。いわゆる栗カボチャはセイヨウカボチャの一品種。
セイヨウカボチャの火事の特徴は、甘くてホクホクした食感とよく言われる。ただし、セイヨウカボチャは水っぽくて嫌いだ、なんてことを言う人もいるのが謎だ。ひょっとしたら品種によって味がかなり違うのかもしれないし、思い込みを含む発言なのかもしれない。あるいはペポカボチャのことを言っているのかもしれない。
英名でカボチャのことを Pumpkin ということが知られているが、これはそのまま料理して食べるものでじゃなく、缶詰などに加工するカボチャのことだという。パンプキンパイはペーストになった缶詰のカボチャを使う。普通に料理し食べるカボチャは
Squach という(参考>TOTO出版『野菜物語』)。
ペポカボチャ Cucurbita pepo
ニホンカボチャやセイヨウカボチャとはかなり印象が違っている。形は、丸いのやら長細いのやらさまざまで、色も白っぽいの、黄色っぽいの、緑色のものなどがある。ズッキーニ、ソウメンカボチャ(菌糸ウリ、キンシカボチャ、ソウメンウリ)、ヤサイカボチャなどと呼ばれるものがこの仲間である。色や形を楽しむ観賞用の品種も多い。
欧米ではハロウィーンの季節になると、カボチャをくりぬいてお化けの顔をした提灯を作ったりする。最近は日本でもこの時期になると、オモチャカボチャという名前でこぶし大の小さなカボチャが出回ったりする。切ってみたところ、かたく絡まった糸のような身が詰まっていたので、おそらくはペポカボチャだと思う。