[ 目次へ ]
 
和名 カンゾウ(萱草)
別名 ワスレグサ(忘れ草) ボウユウ(忘憂)
ヤブカンゾウ(藪萱草)=オニカンゾウ(鬼萱草)…八重咲
ノカンゾウ(野萱草)…一重咲
沖縄口 カンソー、クァンソー(萱草の音読み)
フワンサ(宮古の方言)
アイヌ語 cikapkina チカップキナ(鳥の草の意)
kakkokmun カッコクムン(カッコウ草)
kakkoknonno カッコクノンノ(カッコウ花)
(北海道にあるのはエゾカンゾウと言ってHemerocallis fulva の近縁種らしい)
学名 Hemerocallis fulva(一日だけの美しさ・黄色い)
科名 ユリ科
中国名 萱草 金針菜(花)
英名 daylily(一日だけのユリ)
エスペラント hemelokalo(学名に由来)
taglilio(一日ユリの意。英名に由来)
その他  
7〜8月
原産地 アジア東部(中国)
 
 
 
甘草ではなく、萱草
 この草に甘草という漢字をあてる人がいるがまちがいである。甘草はマメ科の植物で根を甘味料に使うことで知られている。ここでとりあげるのはユリ科のホンカンゾウ(本萱草)、ノカンゾウ(野萱草)、ヤブカンゾウ(藪萱草)のことである。ニッコウキスゲの仲間だと言えばわかりやすいだろうか。 

 原産地の中国では、ホンカンゾウの根を潰瘍の薬に、花を興奮剤に使った。花や若い芽を食用にする。日本には薬草として持ち込まれたものが野生化しており、ノカンゾウ、ヤブカンゾウと呼ばれている。花はユリに似たオレンジ色で、ノカンゾウは一重咲き、ヤブカンゾウは八重咲きである(参考>植物園へようこそ「ヤブカンゾウ」「ノカンゾウ」)。

萱草にまつわる言葉・文学作品
忘憂(ぼうゆう)
 萱草の中国名のひとつ。花を食べると憂いを忘れることから。萱草の花には気分を高揚させる効果があるという。お酒のことも「忘憂」とよぶことがある。飲めば憂さを忘れるからだ。

忘れ草
 忘憂と意味は同じ。日本では「わすれぐさ」と呼ばれた。

万葉集
 日本最古の歌集で当時のあらゆる階層の人たちの歌を収録している。萱草は忘れ草という名前で何度か出てくる。「我が宿の、軒にしだ草、生ひたれど、恋忘れ草、見れどいまだ生ひず」(柿本人麻呂)など。

Hemerocallis flava(ヘリオカリス・フラーヴァ)
 萱草の学名。flava はラテン語で黄色いという意味。花の色を著している。Hemerocallis はギリシア語で hemera(一日)+callos(美)、一日だけの美しさという意味。花が朝咲いて、夜にはしおれてしまうことからついた名前である。アメリカで品種改良され園芸用の品種もたくさんある。英語では Daylily という。

チカップキナカッコクノンノ
 チカップキナは鳥の草、カッコクノンノはカッコウの花という意味のアイヌ語。カッコウの鳴く頃に咲くはなだからとも言われる。
 東北より北にはヤブカンゾウはあるがノカンゾウはほとんどなく、アイヌが利用していたのは主にエゾカンゾウ(Hemerocallis dumortieri var.)という近縁種だそうだ (参考[広告]>草風館アイヌ植物誌icon』)。

 
 
珍獣様が食されたさまざまなカンゾウたち