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和名 サトイモ(里芋)
別名 子芋(こいも)
芋の子(いものこ)
芋頭(いもがしら)…など
 また変種・品種がおおく、それぞれ別の名前でよばれている。

タロイモ
ハスイモ(C.gigantea) 芋茎を食べるサトイモ

学名 Colocasia esculentavar.antiquorum など)
Colocasia antiquorumvar.esculenta など)
 このような二通りの学名をみかける。どちらがどう正しいのかよくわからない。Colocasia esculentaとしているサイトが多いみたいだが。

Colocasia gigantea(沖縄の田芋、高知のハスイモ) 

科名 サトイモ科
沖縄口 チンヌク←サトイモ(子芋)のこと
ターンム、ターウム、ターマン、ウム/クワリ、クワリー、クワーリ(奄美大島)、タームジ(与論島)←田芋という沖縄の在来種
アイヌ語  
中国名 芋、芋頭、芋仔…など
象耳芋(C.gigantea
英名 taro(本来はタロイモのこと)
エスペラント kolokasio(学名に由来)
その他  
滅多に咲かない
原産地 東南アジア
 
 
サトイモにまつわるいろいろ
 サトイモ科サトイモ属(Colocasia)の植物で、芋と芋茎を食べるものの総称。Colocasia esculenta(サトイモ、タロイモなど)とColocasia gigantea(沖縄の田芋、高知のハスイモ)などをひっくるめてサトイモと呼んでいる。

 サトイモのたぐいは熱帯原産で、本来は寒さに弱い。日本では縄文時代から食用にされていたことが知られているが、特に寒さに強い品種だけが生き残ったようだ。ニューギニアやポリネシアにはタロイモなど暖かいところで育つ系統がある。日本でも、沖縄でターウム(田芋)などと呼ばれている芋が、タロイモの系統だと聞く。

 主に食用にされるのは地下茎(芋)だが、茎(葉柄)を食べる場合もある。乾燥した茎を芋茎(ずいき、いもがら)という。日本のサトイモは品種改良が進みえぐみは少ないが、熱帯のタロイモなどは生で口にすると悶絶するほどの刺激があるという。

 サトイモには品種が多く、芋の形や大きさもさまざまである。普通にサトイモと呼ばれているものは親芋のまわりに出来る子芋を食べるが(土垂:ドダレなど)、親芋も子芋も食用にするもの(セレベス、エビイモなど)、親芋のみを食べるもの(京芋など)、子芋と親芋が分かれず塊になるもの(ヤツガシラ)、イモは食べず、茎を食用にする品種(ハスイモなど)がある。品種改良が繰り返された結果、日本のサトイモには花が咲かない。ごくまれに先祖返りをおこして花をつけることがあるが、ミズバショウやザゼンソウに似た形の花である。

 サトイモの葉は水をはじく性質があり、朝露や雨のしずくが葉の上をころころ転がる様子はとても美しい。サトイモの葉にたまった朝露を集めて墨をすり、七夕の短冊を書くと字がうまくなると言われている。

サトイモにまつわる言葉・文学作品等
(すべて「いも」と読む)
 あまり明確に使い分けられてはいないようだが、芋といえば芋の総称、またはサトイモのことで、薯といえばジャガイモ(=馬鈴薯)のこと。藷はサツマイモ(=甘藷)のことである。日本ではサトイモがもっとも古くからある芋である。

芋名月(いもめいげつ)
 中秋の名月(陰暦の八月十五日)の別称。サトイモを供えて月を愛でるから。必ず芋を食べなければならないというので、この日だけは他人の畑から芋を盗んでもよいことになっている地方は多い。また、盗む際のローカルルールもさまざまあり、畑の中に足を踏み入れずに取れるものだけは取っていいとか、三歩だけ踏み込んでいいなどと言う。

芋田楽(いもでんがく)
 サトイモを串に刺して味噌をつけて焼いた料理。
 また、親子のあいだで情を交わすことも芋田楽と言った時代があるらしいが、なぜかはよくわからない。

芋刺し(いもざし)
 田楽の芋のように人や物を槍などで串刺しにすること。串刺し、田楽刺し。

芋煮会(いもにかい)
 山形県地方で河原など戸外でもよおす宴会。たき火をして、サトイモ、コンニャク、肉などを鍋で煮て食べることから芋煮という。

芋の煮えたも御存じない
 世間の事情にうといことをバカにして言った言葉。芋の煮え加減もわからないほど者を知らない、世間知らずということ。江戸いろはかるたの「ゐ」の札がこれだった。

芋幹 または 芋茎(いもがら)
 サトイモの茎を干したもので、食用にする。「ずいき」とも言う。

肥後芋茎(ひごずいき)
 サトイモの茎を干したものを加工して作った夜のお道具。殿方に装着するタイプと殿方に似せて形作って女性が使うタイプがある。

芋茎は食えるが家柄は食えぬ
 よい家の出であっても本人に能力がなければダメだということ。飾りばかりの家柄など腹のたしにはならず、食べられる芋茎のほうがなんぼかましだという意味。家柄より芋茎、ともいう。

芋茎で足をつく
 芋茎のようなやわらかいものでも、油断をしていると足を傷つけるという意味。油断大敵。

芋を洗う
 狭いところで大勢がひしめきあっている様子。芋の子を洗う、とも言う。真夏の海岸のことを芋洗海岸などと言ったりする。海水浴の名所として知られる大洗海岸と芋洗いをかけた言葉遊び。

芋頭(いもがしら)
 サトイモの親芋のこと。また、茶道具の茶入れや水指などで芋頭に色や形が似ているもののこと。

芋頭が敵に見える
 疑心暗鬼。疑う心を持っていると、芋頭ですら敵に見えてくるという意味。
 意味は少し違うが「幽霊の正体見たり枯れ尾花」と似たような心理ではないかと思う。ビクビクしているとススキがゆれたのも幽霊に見えるという意味だ。

芋頭でも頭は頭
 たとえ芋頭ほどのものでも、頭には変わりないので大事にしろということ。

衣被(きぬかずき)
 サトイモを皮ごと茹でるか蒸すかして、皮をむきながら塩をつけて食べること。もとは平安時代の女性が外出するのに頭から衣をかぶったことを衣被と言い、衣(皮)をかぶっているもののことを指すようになったらしい。包茎のことを言う場合もある。

『チンヌクジューシー』
 沖縄の童謡。サトイモの炊き込みご飯(もしくは雑炊)という意味で、お爺ちゃんの米寿のお祝いを歌ったもの。
 また、吉本ばななの短編にも『ちんぬくじゅうしい』というのがある。新潮社『本日の、吉本ばなな。icon』に収録されている。

Colocasia antiquorum
Colocasia esculenta
 どちらもサトイモの学名としてあちこちの資料に見られる。
 それまでは全て同じ種と考えられていたものが何かの理由で別種として扱われるようになったような場合(またはその逆)にこういうことが起こるらしい。どちらかが古く、どちらかが新しい学名なのだろう。日本で知られているサトイモと、熱帯のタロイモは、同種の品種違いのように書いてある資料が多いが、ひょっとすると最近(といっても数十年単位だが)になって事情が変わっているのかもしれない。

 属名の colocasia はギリシア語で「飾りにも食用にもする」という意味の単語がもとになっているとか。本来はハス(蓮)をこの名で呼んでいたが、今ではサトイモの類を意味するようになった。そういえば両者は葉の性質が似ている。仲間とされていた時代があるのだろう。antiquorum は古くから使われているという意味。esculenta は食用の、という意味だ。

taro
 タロイモを意味するポリネシアの言葉で本来はタロイモのみを言い、他の品種には別の呼び名がある(たとえばハワイのカロイモ)。英語ではサトイモの類全般をこの言葉で指す。学名を調べると日本で食用にしているサトイモと同種の品種違いのようである。

人間とタロイモは兄弟(ハワイの伝説)
 空の神ワケアと大地の女神パパが交わって星と夜空の女神ホオホクカラニを産んだ。父親のワケアは美しい娘をいとおしく思い、妻の目を盗んで娘と寝てしまった。それが妻にばれてワケアは妻のもとに戻り、妻との間にハーロアナカという男の子が生まれるが死産だった。その子を埋めたところから生えてきたのがカロイモ(タロイモ)で、カロイモの茎のことをハーロアと呼ぶようになった。

 その後、ワケアは再び自分の娘と交わって息子をもうけ、死産だった息子の名前をとってハーロアと名づけた。ハワイの人間はすべてハーロアの子孫なので人間とタロイモは兄弟ということになる。

 
 
珍獣様が食したサトイモたち