ワサビとセイヨウワサビはまったくの別種なので、同じ項目にまとめるのはどうかと思うが、日本ではチューブ入りのワサビの中にはセイヨウワサビを使うことがあり、食材としては同じように使われている。セイヨウワサビを中心に取り上げるチャンスがあるまでは、両者を「ワサビ」として括り、日本のワサビは本ワサビとしておこう。
本ワサビは今から 1000 年ほど前、平安時代には日本人の食卓に上っていたという。ただし、この時代はまだ一部の偉い人たちのもので、庶民が利用していたかどうかはわからない。本格的にワサビが使われるようになったのは、江戸時代後期のことで、江戸前のにぎり寿司が評判になってからのことだという。
戦後になると、セイヨウワサビを粉にして、カラシを加えたものが開発された。刺身を買うとついてくるペースト状のワサビはこれである。この当時の粉ワサビには本ワサビは使われていなかったらしい。
昭和 47 年になると、粉ワサビを水で練ってチューブに詰めた練りワサビが登場する。このことで、ワサビがぐんと身近になるが、この頃もまだセイヨウワサビが主原料だった。
最近では本ワサビを加えて風味を出したり、粉を練っただけでなくすり下ろした感じを出す工夫などもされ、各社でさまざまなタイプの練りワサビが作られている。
なお、生の本ワサビはサメ皮でおろすと言うが、これは今から 40 年ほど前にはじまったことで、それほど大昔から行われていたわけではない。考案者は伊豆にあるワサビ専門店の店主で、宮大工が柱を磨くのに鮫川を使うことにヒントを得たと言われている(参考>S&Bスパイス&ハーブ総合研究所)。