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和名 オオヒラタシデムシ(大扁死出虫)
別名 埋葬虫と書いてシデムシと読むことも
中国名  
科名 シデムシ科
学名 Eusilpha japonica
出現期  
食性  生き物の死体を食べる 
採集地 東京都葛飾区・水元公園


 
王蟲の幼体?!
2003年8月10日撮影

 この虫を初めて見ると、ほとんどの人がビックリするらしい。
「ダンゴムシに似てる。でも大きすぎる。ありえない!」
「ナウシカに出てくる王蟲の小さいのを見ました。あれって実在の虫なんですか?」
「海辺じゃないのにフナムシを見たんですけど、一体なんでしょう?」

 しまいには「足は沢山あった」なんてことまで言い出す人がいるけれど、上の写真の虫には足が 6 本しかない。つかまえて裏側からも写そうと思ったんだけど、とにかく動き回るのであきらめた。

 この虫に「足が沢山ある」というのはあきらかに勘違いだけれど、鋭いものの見方ともいえる。昆虫は足が 6 本と決まっている。それに、頭、胸、腹の境目がはっきりしているというのも昆虫のお約束だ。

 ところが上の写真を見ればわかるとおり、この虫はパッと見ると、どこに胸や腹の境目があるのかよくわからない。同じような体つきをしているダンゴムシにしても、フナムシにしても、みんな昆虫じゃない。つまり、この虫は昆虫に見えないのだ。

 昆虫じゃなければなんなのだ?
 フナムシにしては海と関係のない場所にいるし、ダンゴムシにしては大きすぎる…と話がぐるぐるまわって化け物に昇格。

 しかしてその実体は、オオヒラタシデムシという、れっきとした昆虫である。分類でいうと甲虫目といって、カブトムシやクワガタと同じグループに含まれている。

「えっ、これのどこが甲虫なの? カブトムシみたいに固い前翅がないじゃない!」

 そう思った人もかなり鋭い。甲虫の仲間は背中が固い前翅におおわれているのが特徴だから、上の写真のものが甲虫目であるはずがない…ただし、これが「成虫だったら」の話。

 写真の虫はオオヒラタシデムシの「幼虫」なのだ。カブトムシやクワガタだって、幼虫の時は芋虫で、固い翅なんか持ってないはず。オオヒラタシデムシの場合、幼虫が幼虫っぽくないので「なんじゃこりゃぁ!」となるわけ。

オオヒラタシデムシの成虫
2003年8月25日撮影

 上の写真がオオヒラタシデムシの成虫である。ほかの甲虫類と同じように、シデムシの幼虫も蛹になり、出てきたときには幼虫時代とはがらりと姿が変わっている。オオヒラタシデムシの成虫には、甲虫特有の固く立派な前翅がある。

上の写真ではあまり目立たないが、生きて動いているのを見ると成虫もかなり変わっている。固い翅の下からとがった尻がはみ出していて、歩き回ると尻がしなやかにくねる。その様子は、まったく別の虫が甲虫の殻をかぶっているようで、アンバランスでおかしな虫だ(そういう場面を写したかったんだけど、とにかくチョロチョロ歩き回るので逃げられてしまった)。

 シデムシという名前は死出虫または埋葬虫と書く。小動物の死体や糞を食べる森の掃除屋である。汚いものを食べる虫だが、これがいないと森に腐乱死体があふれることになるので、みかけたらご苦労様と言ってあげてほしい。下の写真は踏みつぶされて死んだ仲間を食べているところ。

仲間の死体も食べて片づけます
2003年8月25日撮影


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