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赤トンボのいろいろ(2)
和名 ノシメトンボ
別名 ヤグルマトンボ(東北方面)
学名 Sympetrum infuscatum
科名 トンボ科
出現期 8〜10月にかけて
食性 成虫は飛びながら別の虫をとらえて食べる
幼虫は水の中で虫や小魚などをとらえて食べる 
採集地 東京都江戸川区


 
 赤とんぼシリーズの二番手はノシメトンボです。翅の先が茶色いのが特徴です。
 手元にある図鑑(学研・原色学習ワイド図鑑『昆虫1』)によると、ノシメトンボは成熟したオスでも「腹の背部中央が赤くなるにすぎない」と書いてあります。似たもので「コノシメトンボ(小熨斗目蜻蛉)」というものは全体が赤くなるそうです。

 なので、下の写真のものを見たとき、コノシメトンボだと思いこんで、別のページにもそう書いてしまったのですが…

ノシメトンボ
2003年10月1日撮影
 
大迫力顔面写真
2003年10月1日撮影

 胸の模様を見ると、三本の黒いすじのうち、真ん中が背中にとどいているように見えます。これは「ノシメトンボ(熨斗目蜻蛉)」の特徴だと書いてあるサイトがいくつかありました。ということは、この真っ赤なやつはコノシメじゃなく、ノシメってこと? ノシメはあんまり赤くないと思っていたのでちょっとビックリです。トンボを見分けるのはやっぱり難しいですぅ。

 トンボの色といえば、たいていのトンボは羽化した直後と成熟した時とでは色の濃さがかわります。昆虫ですから、成虫になると、もう脱皮したりはしないんですけど、日がたつにつれ体の色が次第に変わってきます。ノシメトンボ、コノシメトンボは、どちらも羽化したばかりのときは黄色っぽい色をしていますが次第に赤くなってきます。このように色は変化してしまうので、ちゃんと見分けるには胸の模様を見たほうがよさそうですね。

 
 ここから先は別のページに書いたのとだぶるのですが、ノシメを漢字で書くと熨斗目で、江戸時代に流行した着物の模様です。腰のあたりに太い横のラインを配置した大胆なデザインで、袖の先にも模様がかかっているのがノシメトンボの翅の先と似ています。

 熨斗目の小袖を着た状態の写真がみつからなかったのでイラストは適当です。江戸時代には女性より殿方が主に着るものだったみたいですけど、今は女性用のデザインもたくさんあるみたいです(google>熨斗目 きもの)。

 ノシメトンボ、コノシメトンボは 8月に羽化して10月ごろまで飛びまわるトンボです。トンボの中では遅く出てくるものなので、これが出てくると秋も深まった気がします。

 先日、読者の方から「山形ではノシメトンボのことをヤグルマトンボといいます」とメールをもらいました。改めて検索してみると、北海道でも同じような呼び方をするみたいです。また、ミヤマアカネといって、翅の先ではなく、途中に茶色い帯のあるものをヤグルマトンボという地方もあるようです。ヤグルマ(矢車)は、矢羽根をくみあわせて車輪のようにした模様のことですが、そういえば、弓矢につかう羽は、白一色ではなく途中に黒い模様のあるものが多いですよね。ノシメトンボやミヤマアカネが翅をぴんとのばしてとまっているのを見ると、矢車系の家紋に似てるのかもしれませんね(google>矢車 家紋)。

 

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