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和名 ヨトウガ 夜盗蛾
ヤガ科の別のやつかもしれません。違ってたらごめんね。
別名 ヨトウムシ(夜盗虫)…幼虫を指す
中国名  
科名 ヤガ科
学名 Mamestra brassicae
出現期 初夏から秋にかけて年数回発生
ものの本には蛹で越冬とあるが、真冬でも幼虫を見るという話を良く聞く
食草 キャベツ・コマツナなどの野菜や、花壇の草花などなんでも食べる 
採集地 東京都江戸川区


 
可愛らC? それとも憎たらC?
2004年3月9日撮影
(クリックで引いた写真)

 3 月初旬。春とはいえまだ凍えるような日がつづく頃。そろそろプランターを整理して春の準備でも始めようかと思ったら、落ち葉の下からコロンと一匹、丸々太った茶色の芋虫が出てきました。体をCの形に丸めているので大きさはよくわからないけれど、だいたい 35〜40mm というところかな。

 いわゆる野盗虫(よとうむし)というやつで、園芸が趣味の人ならコイツに恨みを持っている人は少なくない。名前のとおり夜になると活動をはじめ草花の葉を食い荒らす盗賊のようなヤツなのです。

 蝶や蛾の幼虫には偏食家が多く、
「ボクってばグルメだからナス科の植物しか食べられないんだよね〜」
「わたくしはお肌にいいキク科しか食しませんわ」
なんてことを言って(いるかどうかわからないが)決まったものしか食べない種類もけっこういるのです。

 けれど夜盗虫と呼ばれる連中は「食えりゃ何でもいいんだよ」というタイプで、小松菜であろうがエンゼルトランペット(朝鮮朝顔)であろうが、なんでもかんでもムシャムシャ食べて丸坊主にしてくれる。

 ということは、すでに何かを食われているのではないかと、あっちの鉢、こっちの鉢と確かめてみるのですが、それらしい食い跡はありませんでした。35mm という体長は夜盗虫としては決して小さくないのです。このサイズの芋虫が食事をしたら、近くに生えている植物にあきらかにそれとわかる食い跡が残るはずなのですが。

土の中でお昼寝
2004年3月9日撮影
夜盗虫のたぐいは朝になると土にもぐって寝てしまう

 ひょっとするとタダの昼寝ではなく冬眠中なのかな?
 古い図鑑などを見るとヨトウムシは蛹(さなぎ)で越冬すると書いてあります。けれど都会の平均気温は確実に上がっているから虫の生態も少しずつ変化してるんです。去年の秋に生まれた芋虫が蛹にならずに冬を越してしまったとしても不思議はありません。冬の間は気温も低く、餌もあまりないでしょうから、ほとんど動かず寝くたばって過ごすのでしょう。

 そう考えないとおかしな点もあります。卵からここまで育つには数週間〜 2 カ月くらいかかるはずだから、今年生まれた芋虫だとしたら 1 月より前に産卵されたってことになるのです。さすがにそんな寒い時期に夜盗虫の母が活動しているとは思えないのですよねえ。

 それはともかく、つっついても反応しないほどぐっすり眠っている夜盗虫をごみ箱に放り込むのも野暮なので、そのまま落ち葉の下に戻しました。プランターは他にもあるし、今はまだ食われて困るようなものも植わっていないから。 

 
夜盗虫は一種類じゃない

 夜盗虫というのは総称で、ヤガ科の芋虫のうち夜行性のものを全部ひっくるめた呼び名です。ヨトウガ、シロシタヨトウ、ハスモンヨトウなどが有名だけれど、他にも似たような生態の虫がたくさんいるみたい。

 上の写真のものは、たぶん「ヨトウガ」の幼虫だと思うんだけど、芋虫は脱皮するたびに雰囲気が変わるのではっきりコレとは言いにくく、ひょっとすると別の何かかもしれません。とにかく、夜盗虫は一種類ではないってことです。

 珍獣様の家のまわりにも何種類かいるようで、たとえば下の写真のものは古いデジカメで取ったのでピントがボケボケで申しわけないのですが、シロシタヨトウの幼虫じゃないかと思います。

シロシタヨトウ?
2003年6月ごろ撮影
シロシタヨトウ(若齢)

 下の写真もシロシタヨトウです。若いうちは緑色をしてますが、終齢幼虫になると下の写真のようにオレンジがかった色になります。芋虫や毛虫の中には、成長度合いによって色が変わるものがあります。図鑑には成虫か終齢幼虫の写真しか載っていないことが多いですから、芋虫マスターを目指すには、やはり日々の観察をくりかえして虫を見る目を育てなければならないようです。

シロシタヨトウ
2004年6月18日撮影
シロシタヨトウ(終齢)
脇腹の白い線がチャームポイントです
覚えておいてね。
 
 
 それから下の写真はこの色と首の部分の黒い斑文からしてキバラモクメキリガ(ヤガ科)の幼虫じゃないかと思います。○○ヨトウという名前ではないですが、朝になると土に潜って寝るヤガ科の芋虫なので夜盗虫のカテゴリーに入れられることがあるようです。
 シロシタヨトウにも似てますが、首のところの黒い斑文でみわけられそうです。シロシタヨトウには黒い斑はありません。
キバラモクメキリガキバラモクメキリガ
2003年6月ごろ撮影
キバラモクメキリガ
首のところが黒いのが特徴
顔はオレンジがかった茶色です
 
 夜盗虫はとにかくすごい食欲で草花を食いあらします。なのに昼間は土にもぐっているので姿が見えず、「毎日食い跡が大きくなるので虫だと思うんですが見あたりません」と困り顔の園芸初心者もいるようです。

 初心者という意味では珍獣様も園芸的にはかなりヘボくて初心者なわけですが、芋虫レベルは中級程度なのでお悩みは一発で解決「夜懐中電灯を持って見にお行きなさい。ヤツは必ず犯行現場にいるはずですわ」と。

 虫を見つけるとヒステリックに薬をまき始める人も多いですが、芋虫は大きくなると薬ではなかなか死なないこともあるようだし、できるだけ手でとったほうがいいです。夜盗虫には毒はありません。噛まれることもありません。農薬のほうがよっぽどキケンがアブナイのです。

 夜盗虫を見つけるには、もうひとつ、かなり効き目のある方法があります。それらしい食い跡のある植物の近くにキャベツの葉を一枚おいといてください。翌朝早く見に行くと、夜盗虫のみなさんがキャベツの下で丸くなって寝ていらっしゃいます。

 あとは葉っぱごと捨てるなり、ペットにするなりご自由に。芋虫は飼い始めるとけっこうかわいいものですよ。芋虫フェチのわたくしとしては、今年こそ飼育してオトナになるところを見てやろうと思ってます。


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