ロメインレタス |
レタスなんか珍しくもなんともないけれど、最近は店にならぶレタスの品種が増えたみたい。とくに左の写真みたいな丸くならないやつが目立って増えてる。 |
レタスの原産地は諸説あって、どこが一番古いのかよくわかんないらしい。少なくともエジプトでは紀元前から農作物として作ってたと思う。エジプトで作られていたのも玉にはならないタチヂシャだったようだ(今のにくらべれば、もっと雑草みたいな品種だったかもしれないけど)。
レタスの種類
ヨーロッパ型レタス
玉ヂシャ
丸くなるレタス。日本で普通にレタスといえばこれ。
サラダ菜もゆるく玉になるのでこの仲間。
リーフレタス
サニーレタス、グリーンレタスなど。玉にならない。
コスレタス(タチヂシャ)
半結球するタイプ。ロメインレタス、ロメーヌレタスともいう。古代エジプトで食べてたのはこの仲間とのこと(参考『ファラオの秘薬』八坂書房)。
ただレタス栽培の様子を描いたとされるエジプトの壁画を見ると、しっかりした茎から先のとがった葉が上にむかってまっすぐ伸びて、しゃがんでいる人と同じくらいの高さまで生い茂っており、コスレタスよりはステムレタスに近いんじゃないかという気がします。
アジア型レタス
ステムレタス
茎を利用するためのレタス。乾物のヤマクラゲはステムレタスの茎を乾燥させたもの。ヨーロッパ型のレタスは背がひくく、地面から直接葉が生えているような印象になりますが、アジア型のレタスは茎が伸びて背が高くなります。
掻きヂシャ
日本ではかなり昔から食べられていたもので、たぶんステムレタスと同じようなものなのですが、茎ではなく葉を掻き取って食べるそうです。
むかし、オシリスという偉い神の後継者をめぐって、エジプトの神々が2派に分かれて大論争をくりひろげていた。
「オシリスの息子であるホルスを後継者とすべきである」
「いや、叔父をさしおいてホルスに権威を与えるべきではない。オシリスの弟であるセトに後を継がせるべきだ」
といった具合で、いくら語り合っても結論が出なかった(こんな争いってむかし日本にもあったような)。
ついにはホルスとセトが自らカバに化けて三ヶ月ものあいだナイル川で乱闘を繰り広げたけれど、それでも決着がつかなかった。 |
カバ
こんなのがナイル川でずんちゃかずんちゃか戦ったらしい。 |
いつまでも続く戦いに、神々も次第に飽きてきたのか、そろそろ和解してはどうかと、ふたりをひとつ屋根の下に住まわせることにした。同じ釜の飯でも食わせれば仲良くなると思ったのだろうか?
しかし、セトはまだ野望を捨ててはいなかった。真夜中になるとホルスの寝床に忍び込んで、あろうことか男のつとめを果たそうとした。しかし、ホルスはセトのそれを手で受けて、母であるイシス女神のもとへ相談しにいった。
そこで問題。「男のつとめ」「それ」とはなんでしょう。答えのわからない良い子は学校の先生に質問してみること。
さて、そのことを聞いたイシス女神は、セトの好物であるレタスの葉っぱにセトのそれを包んでおいた。セトはしらずにレタスを食べ……結果的に自分で自分に男のつとめを果たしたことになってしまった。
翌日、ホルスとセトはふたたび神々の前に呼び出された。セトは勝ち誇って言った。
「俺様はホルスの奴をくみふせて掘ってやった。ホルスは敗者だ。ふさわしい扱いを要求する」
ところがホルスは少しも動ぜず言い返した。
「そんなことはない。わたしこそセトに男のつとめを果たしました。呼びかけてみればわかります」
というわけで、神々はふたりの腹にむかって呼びかけた。すると、問題の「それ」はホルスのではなくセトの腹から黄金の円盤になって這い出してきた(だから「それ」って何?)。
ホルスは黄金の円盤を自分のシンボルとして、めでたく父オシリスのあとを継いだということだ。めでたしめでたし(ほんとうにめでたいんだろうか、この話)。
古代エジプトでは、古来レタスを媚薬としていたらしい。べつにレタスを食べてもモテモテにはなれないと思うけど、どうやらレタスには軽い催眠作用があるらしく、たくさん食べると眠くなるらしい(それにしたって、かなりたくさん食べなきゃだめなんじゃなかろうか?)。やはり催眠作用のあるマンドラゴラ(ナス科の薬用植物・劇薬につき使用に注意)も媚薬として使われていたことを考えると、エジプトでは惚れ薬を自分で飲むのではなく、相手に呑ませて骨抜きにしようという魂胆だったようだ。
というわけで玉にならないレタス。古代エジプトでは惚れ薬だったなんてことに思いをはせつつサラダにして食べてみたんですが……ちと葉が固くて生ではあんまり美味しくなかったです。たまたま珍獣が買ったのがハズレだったのかもしれません。それとも、派手に葉っぱを剥いて、中のうんと柔らかいところだけを食べればよかったのかもしれません。
なんとなくケチがついて全部食べる気になれなかったので、近所でとってきたカタツムリに与えてみたら美味しそうに食されてました。
レタスの話だったのに、ほとんどホルスとセトのヤオイ話になってしまった。げにエジプト6000年の歴史おそるべし。ちなみにこのお話は『筑摩世界文学大系1
古代オリエント集』という本に載ってるので、煩悩したい人は図書館で探してみよう。
なお『筑摩世界文学大系1 古代オリエント集』は、現在絶版です。下のバナーから復刊リクエストのページに行けます。興味のある方はぜひお越し下さい。わたくしも図書館で読んだっきりで、持ってないのですよ。はげしく欲しいのです。上に紹介した話以外にも、ギルガメシュとエンキドゥのあやしい絡みとかも載ってるんですぅ(って、そっち系のネタばかり強調してどぉするのだ>わたくし)。
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