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和名 アオノリュウゼツラン(青の竜舌蘭)
英名 Agave
Century Plant(百年植物)
American Aloe(アメリカのアロエ)
中国名 龍舌蘭
世紀樹 萬年蘭(花が百年に一度咲くから)
番麻(麻のような繊維がとれることから)
科名 リュウゼツラン科
学名 Agave americana
数十年に一度咲く
原産地 南米
撮影  東京都中央区浜離宮恩賜庭園


 
 2003 年 7月。浜離宮恩賜庭園でリュウゼツランが花を咲かせた。リュウゼツランは南米原産の植物でとても大きくなる。観葉植物として小さな鉢に仕立てたのが売られてることもあるが、珍獣様は育てたことがない(そもそも観葉植物ってあんま好きじゃないんだよ)。そういう意味では身近な植物でもなんでもないが、身近でおこった非常にめずらしい出来事ことなので記録したいと思う。今回は夏休み特集でちょっぴり媚びた感じでいってみるぞ。
 
アオノリュウゼツラン
アオノリュウゼツラン
(青の竜舌蘭)
「えへん、これがリュウゼツランである。
 写真の右奥に人間がちらりと写っているのがわかるかな。葉の部分だけで人の背丈と同じくらい大きくなる。スケールのでっかい植物だよ。

 リュウゼツランは一種類じゃなくて、上の写真のものはアオノリュウゼツランという名前なんだって。ほかに、テキーラリュウゼツランとかフクリンリュウゼツラン(覆輪竜舌蘭)というのもあるよ」

珍獣様

 リュウゼツランは葉が長く、分厚くて、先が尖っている。また縁にはトゲがある。アロエを巨大にしたような感じの植物だ。アロエはアフリカの植物だが、リュウゼツランは南米の植物だ。メキシコでメスカル(テキーラ)というお酒を造るのに使われている。

 もし竜というものが実在したら、竜の舌はこんな感じじゃないかというので日本では「竜舌蘭(龍舌蘭)」と呼ばれている。中国でも龍舌蘭とという呼び方はするようだが、万年蘭とか世紀樹という呼び方をするらしい。花が数十年に一度しか咲かないからだ。
 

がぼ様 「花が咲いたら
 どうなっちゃうのかな?」
 
 植物は、大きく分けると樹木と草にわけられる。樹木というのは何十年も枯れず、毎年花や実をつける。

 けれど、草はそれほど長く生きることはできない。一度花を咲かせると枯れてしまう。多年草といって、花が終わって枯れたあとも、根っこが残って毎年生えてくるものもあるが、ようするに花のあとに枯れてしまうのが草なのだ。

 じゃあ、リュウゼツランは草なのか、木なのか?
 答えは「草」である。とても寿命が長く、何十年も枯れずに葉を茂らせているけれど、ある日突然、株の真ん中からニョキニョキと枝を伸ばし、次々に花を咲かせて枯れてしまうのだそうだ。

アオノリュウゼツランは天高くそびえる

 何十年かに一度、こんなふうに枝を伸ばして花をつける。この枝は五月の初旬からのびはじめ、一日に 10 センチの割合でのびつづけた。今えは 8 メートルもあるそうだ。見に来た人たちは額に手をあててまぶしそうにしながら見上げていた。まわりに立っているのは竹の棒で、棒の間に糸を張って花が折れないように守っている。
 珍獣様が見に行った時は、すでに花が半分くらい咲き終わっていた。下の枝から咲き始めて、一ヶ月くらいかけてすべての花が咲き終わる。花には蜜があるのかハチやハエがたくさん飛びまわっていた。
 
竜舌蘭の花(咲き終わり)
 これは咲き終わった花。下の方の枝は二週間ほど前から花をつけはじめたそうだ。
 
 メキシコではこの花にオオコウモリがやってきて受粉を助けるということだ。天高くそびえるリュウゼツランの花に舞うオオコウモリ。想像するとものすごい風景だ。

竜舌蘭の花(花盛り)

 まんなかあたりの枝はこのとおり花盛り。鮮やかな黄色の花が青空によく映える。どことなくハマユウの花に似ているような気がする。昔はハマユウと同じくヒガンバナ科に分類されていたそうだ。今は分類がかわってリュウゼツラン科になった。
竜舌蘭の花(つぼみ)
 上の方はまだつぼみだった。

竜舌蘭のつぼみ

 あと二週間くらいは咲きつづけるんじゃないかな。

 
がぼ様 「何十年に一度しか咲かないのは
 どうしてなのかな」
「それがよくわかんないのよね。
 メキシコって国は、
 暖かくて乾いたところだから、
 植物がゆっくり育つのかもしれない。
 大人になるまで時間がかかるんじゃないかな」
珍獣様

 浜離宮恩賜庭園のリュウゼツランは、第二次大戦の後に植えられたもので花が咲くまでに 55 年かかったそうだ。何年で花が咲くかは決まっていない。30 年くらいで咲いてしまうものもあれば、80 年たってやっと咲くこともある。

 今咲いている花は八月上旬まで咲きつづける予定だということだから、今からでも急いで見に行けば見られるかもしれない。東京近辺に住んでいる人はぜひ見に行ってほしい。次はいつどこで咲くかわからない珍しい花なのだ。


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