メディアファクトリー 鉄腕アトムコンプリ−トブック 買ってしまいました。正確にいうと、おともだちが誕生日になんかくれるというので買ってもらったのです。
『アトム今昔物語』は、過去に二度の再編成が行われており、現在もっとも手に入りやすい手塚治虫漫画全集(講談社)に収録されているものは二度目
のものだということです。オリジナルとは細部が違うだけでなく、天馬博士の青年時代のエピソードがゴッソリ削除されているなどの大きな違いもあります。
すでに単行本を持っているという人もこの本はぜひおさえておくべきです。小松左京、辻真先、藤子不二夫A、萩尾望都、杉井ギサブロー、富野由悠季、清水マリなど豪華ゲストのインタビューも収録されてます。本体価格 2800円。 角川書店
角川文庫
講談社・手塚治虫漫画全集
『火の鳥・羽衣編』がCOMという雑誌に収録されたのが 1971 年のこと。タイトルのとおり羽衣伝説をベースにした短編ですが、天女にあたる女性は未来で核戦争があって、火の鳥に過去へ連れてきてもらったという設定になっています。 この話、どういうわけか長いこと単行本化されなかったようです。正確な理由はわからないのですが、被爆者を扱っていることになんらかの問題があるようです。決して差別的なお話ではないのですが、COM掲載時のオリジナルストーリーでは「彼女が過去に来てから結婚して生まれた子供」が奇形の子ということになっていて、ひょっとするとこの部分を強く批判する人もいたのではないかと思います。 胎児が親と一緒に被爆した場合、なんらかの障害をもって生まれる可能性が高いのはよく知られています。けれど、漫画の設定のように、親だけが被爆経験があって、ずっと後に結婚して生まれた子供が奇形というパターンは現実にはないというのが定説だそうです。 でも、この程度の設定で大騒ぎするほどのことかなぁと思ったりもします。差別意識で描いてるわけじゃなく、むしろ戦争なんかイヤだという叫びにあふれた作品でしたし。1970年代というと、戦後 20 年以上たってますが、実体験のある人が今よりずっと若くて元気だった時代なので、いろいろ風当たりが強かったのかもしれません。『はだしのゲン』とか読ん でると「ピカが伝染する」と言われて差別されてた時期もあるみたいだし…理由はハッキリしないのですが、手塚治虫自身も軽々しく扱えないテーマだと言って、長いこと封印していたようです。 現在、書店に並んでいる『羽衣編』は雑誌掲載からだいぶたってから、内容をすっかり描き改めたものです。台詞だけでなく、コマもいくらか増えてたと思います。子供が障害を持って生まれてくるあたりなどはやんわりとオブラートにくるまれて、オリジナルを知っていると物足りなくも感じますが、全体の出来は描き改めたものの方が完成度が高い気もします。最後のページで人形が…いや、これはやめとこう。新しいやつもかなり好きです。 オリジナル版をどうしても読みたい場合、現状では古本屋さんをまわって掲載紙を探すしかありません(表紙はちばてつやでブタさんの絵でしたよ、たしか)。雑誌とはいえ、根性を入れて探すとけっこうみつかるものなんですが、誰もが手に入れられるってわけじゃありませんし、なんらかの形で復刻が望まれます。 復刊ドットコムにも『火の鳥』単行本未収録エピソードの復刊リクエストページがあって、すでに投票が 100 票を越えています。おそらく、スタッフのみなさんが復刊交渉を計画しておられることでしょう。角川あたりで出してくれるといいですねえ。 講談社・プラチナコミックス
◆収録作品
手塚治虫の名作『三つ目がとおる』が新しく単行本になりました。これまで何度か単行本化されていますが、今回注目すべき点は単行本未収録だったエピソードが収録されるということです。第 1 巻にも「文福登場」というエピソードが収録されています。 問題の「文福登場」ですが、単行本未収録というわりに、読んでみると知ってるような気がします。雑誌掲載時には読んでなかったはずなのに不思議です。
発売スケジュール「未収録エピソードを含む巻」のみ
『三つ目がとおる〜スマッシュでさよなら』(11月発売予定)
なお、講談社プラチナコミックスは、コンビニでの販売を目的にして作ったものです。雑誌をそのまま小さくしたような粗末な装丁で、その分値段は安いのですが、普通の本屋さんには出回らないことも多く、品切れになっても再販されない可能性もあります。欲しい方はコンビニの本棚をひんぱんに覗いてみることをおすすめします。 山河社
1993 年初版。手塚治虫が亡くなったのが 1989 年なので、4 年後の本ということになる。彼の死後、手塚治虫関連の本がどーっと出版されたが、なんだか今更という気がして当時は読む気になれなかった。あまりにも昔から親しんでいたものだから、亡くなったという理由で特別に注目する気にもならなかったのだ。その、今更本を、今更ながらに手にとった。これといって思うところがあったわけでもなく、図書館でみかけたので、つい借りてきてしまっただけなのだが。 内容はタイトルの通り、人々がまだ知らない手塚治虫の真実にせまろうという本で、本人か書いたエッセイや漫画などからの分析が多く、昔からのファンにとってはやはり今更なのかもしれない。それでもやはり手塚というのは良くも悪くもタダモノではないなあと、最後までニヤニヤしながら読み終えた。 後書きによれば『磯野家の謎』があれほど売れたのだから手塚治虫の謎はそれ以上に売れなければならない、という気迫をこめて作ったということだ。実際に売れ行きで勝てたかどうかはわからないが、手塚治虫の光と影を、誰にでも読みやすい形で網羅したという点では評価できると思う。これからファンになろうという人には良い入門書になりそうだ。 この本の著者は長谷川町子が国民栄誉賞をもらい、手塚治虫がもらえなかったことに不満があるようだが、その件に関しては知人と逆の話をしたことがある。
演歌と漫画のどのあたりに優劣があるのかといえば、知人の好み以外のなにものでもないのだが、その時わたくしたちは「手塚治虫の偉業は国民栄誉賞なんかじゃ評価しきれないほどすごいのだ!」ということで決着した。当時の国民栄誉賞は、なぜか死んだ人にあわてて贈られるケースが多く、間に合わせみたいな栄誉ではなく勲章が贈られたのを特別のはからいのように感じたものだ。 それはともかく、この今更本を boople で検索してみると、ご注文いただけませんときたもんだ。おーのー、このコンテンツは広告をはりまくっちゃうぞ大作戦の一環なのに、今更本はやはり今更であったか。読みたい人は図書館などで探してみてください。 |
秋田書店(文庫)
Black Jack17 不朽の名作『ブラック・ジャック』の文庫版。内容の説明はいらないと思うが、これまで単行本未収録だった作品が収録されている点は特記すべきだろう。文庫なのでお値段も手頃。ファンなら買うべし。 -収録作品-
解説(里中真智子)
|