月にまつわる中国の伝説


 
桂男
 あるところに呉剛という男がいました。ごく普通の人間でしたが、仙人のところで仙術を学んでいました。
 ある日、呉剛は思わぬあやまちを犯し、それがもとで仙人の怒りをかってしまいます。
「お前には仙術を教えるわけにはいかんっ。月へ追放じゃ。月には大きな桂の木が生えているから、罪のつぐないとして、その木を切り倒すがよい」
 こうして、呉剛は月に追放され、桂の木に斧を当て続けていますが、いつまでたっても木は倒れません。斧をあてるそばから切り口が癒えて、元通りになってしまうからです。
[参考]リビアの民話
 いくら切っても倒れない木の話は世界中にあるようです。
 たとえばリビアの民話によると、人間の住む世界のさらに下には、巨大な木が生えていて、大地を支えているんだそうです。この木が生えると、人間の土地に大穴があいて、地下から怪物がやってきます。 
 地底ではティジャールというアリ似た邪悪な生物が、人間界へ行こうとして木をかじっているんだけど、あとちょっとというところまでかじると、その日は仕事を終えて寝てしまいます。
 ところが、ティジャールが寝ている間に、木は自然と治って元通りになるので、いつまでたっても倒れません。おかげで人間の世界はティジャールに襲われずに済んでいるのだそうです。


嫦娥(恒娥または常娥とも書く)
 ゲイという弓の名手がいました。ある日、いっぺんに10個の太陽が昇ってきて、世界を焼け焦がした時、ゲイは得意の弓で太陽を余分な太陽を射落として世界を救いました。
 この時の褒美として、ゲイは西王母という女神から不老不死の妙薬をもらったのですが、ゲイの妻である嫦娥が薬を盗んで逃げてしまいました。
 嫦娥は薬を飲み、仙人になると、蝦蟇に姿を変えて月に昇りました。月の表面に見える蝦蟇のような斑点は嫦娥の姿なのです。
 

玉兎
 日本では、月の兎は餅をついていますが、中国の月の兎は薬草をついています。この兎は玉兎と呼ばれていて、西王母という女神が不老不死の妙薬を作るのを手伝っているのです。 
 ところで、西王母はこの世界のどこかにある崑崙山に住んでいて、月の住人ではなさそうなのですが、どうして助手の玉兎が月にいるのでしょう? その当たりの経緯は、不勉強につき珍獣はよく知りません。玉兎伝説はかなり古い時代からあるらしいので、西王母の助手だという話はあとからついてきたのかも?
 ほかに、玉兎は嫦娥の家来で、たまに地上に降りてきてはイタズラをするという話もあるそうです。嫦娥は先に紹介したとおり月の住人なので、こっちの方が話としては筋が通っているかもしれません。

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