ウ シ ショウ 雨師妾はその北にあり、その人となり黒く両手にそれぞれ一匹の蛇をもつ。左の耳には青い蛇、右の耳には赤い蛇。(海外東経) 絵・文とも『山海経』より
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中国では雨の神様のことを雨師という。神様といっても、雨師は形のない遠い存在ではなくて、雨をあやつる力のある仙人というようなイメージだ。
中国の長い歴史の中で、雨師と呼ばれる人は何人も現れた。ある時代には、神農氏という農耕の神様が雨をあやつっていたこともあるし、ある地方では、玉女ガ岡にすむ玉女が五色の衣をひろげると雨が降りはじめた。またある時には、洞庭湖に住む龍王の娘が、雨をあやつる羊を飼っていたことがあるという。 |
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『山海経』に見える雨師妾も、そういった雨の神のひとりなのだろう。 妾というのは、「妾(わらわ)は珍獣でありまする」などというような使い方をする文字で、時代劇でお姫様が使っているのでえらそうに見えるけれど、実は女の人がへりくだってものを言うときに使う文字である。すると、『山海経』の雨師は女神なのだろうか。素っ裸で毛深く、両手に蛇をつかみ、両耳からも蛇が顔を出している。神様にしては妙にケダモノっぽく、中国人の独創的な感性にはいつもながら驚かされる。
ところが、はるかギリシアにも、雨師妾とよく似た姿の女神(もしくは女神官)がいるのだ。
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クノッソスの宮殿跡から出土した焼き物の人形。女神か女神官の姿だと言われている。頭にのせているのは猫だということだ。 |
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