ハギハラウワグワ


 見学ですか?
 どうぞどうぞ。よく見てください。

 新種の豚なんですけどねえ、足がないんですよ、面白いでしょ。
 芋虫みたいに這って歩いたり、急ぐときはごろごろ転がって移動するんですよ。
 これがけっこうすばしっこくて、逃げられると大変です。

 なでてみますか?
 大丈夫、かみついたりはしませんから。

 こないだなんか、ペットにしたいって人もいましたけどねー。
 犬や猫のようにってわけにはいきませんが、人にもなつくし飼えないこともないですよ。

 そうですねえ、普通の豚くらいには大きくなりますよ。
 でもほら豚ですからねえ。飼いきれなくなったら食べちゃえばいいんですから、世話ぁないですよ。

 こいつの肉はうまいっすよ。豚肉なのに、いい具合に霜が入ってとろけるほどやわらかいんです。一度食べたらやめらんなくなりますよ。

ハギハラウワグワ
 あー、ダメダメ。お客さん、このブタにまたがっちゃダメ。
 おとなしいし、かわいいし、食べれば美味しい素敵なやつなんですけど、こいつ手癖がわるいんですよ。

 人の股の下をくぐるとき、人として大事なものを抜いてゆくんです。

 大事なものって何かって?
 さー、なんでしょうねえ。

 試してみますか?
 一生使いものにならなくなりますけどね〜。

:::指令:::
 
 それはかつて山沢の神であったが、いつしか墓を荒らすようになる。耳長く幼児の姿をして屍肉を食らう者なり。その者の古き姿を探せ。それは一本足。一本腕。大地の街でも三脚でもないところにいる。珍獣様の枕元でガラガラ五月蠅い箱の中。