結局一週間くらい豊田市内をうろちょろしていたので、路線バスでけっこういろんなところへ行きました。どこへ行っても入館無料の施設が多くて、それは羨ましいかぎりなんですが、東京みたいに一日乗車券などはないので足代だけで死にそうでした……どんより。そのくせさらに長距離歩かないと家(ともだちのですが)まで帰れなかったりして、トヨタ王国は車持ってない人民に厳しい街でした(笑)
それはともかく、豊田市内で見たもので心ひかれたのは縄文のヴィーナス的なものです。ヴィーナスというと、ミロのヴィーナスを想像してしまうので、ナイスバディーな美の女神のような気がしますよね。でも、それはヴィーナスの一面でしかなくで、豊饒(ほうじょう)の女神でもあるらしいです。
豊饒というのは、よく肥えた土に作物が豊かにみのることです。人が幸せになるのに豊かな食べ物は欠かせない条件ですから、世界中あらゆる国に豊饒の神(多くは女神)がいたりします。それらを「ローマ神話に例えたらヴィーナスにあたる女神」だと説明するわけです。
豊田市で最初に見たのは、たしか豊田市郷土資料館で見た小さな土器の人形です。写真は撮影していいかよくわかんなかったので iPhone でスケッチしてきました。iPhoneは画面が小さいので描くの大変です。だれかiPadをめぐんでください。お返しはできませんが三日間限定で神降臨といいふらします。
これがそのスケッチです。てのひらに乗るようなサイズで、人形というには薄っぺらい土器片のようなものです。ただよく見ると、しっかりおっぱいがあるので、縄文時代のヴィーナス的なものじゃないかと思うのです。地味な展示でしたが個人的にはかなり心ひかれるものがありました。船塚遺跡ってところから出たものだそうです。
その郷土資料館で、豊田市内の足助(あすけ)っていうところの資料館のパンフレットをもらいました。それによると足助にはもっとどえりゃーものがいるらしいんです。もう、どえりゃーとしか言いようがなくて、見たくて見たくていてもたってもいられないので見に行くことにしました。
ところが足助は遠かった。豊田市駅からバスで40分くらいなので、それだけ聞いたら金町から浅草くらいの距離じゃないのかと思うんですが、田舎のバスは均一料金じゃないですから片道800円とかしやがるんですよ。おまけにバスの本数が少ない。帰りは豊田市駅まで来るバスがない時間だったので猿投駅をまわって名鉄で帰ってこなきゃならないとか、ほんとよく行けたな、わたし。
これが足助資料館にある縄文のヴィーナス的なものです。またスケッチかって? だって撮影していいかわからないし、ガラス越しだとうまくうつらないんだもの。今朝平遺跡というところから出た女性をかたどった土偶だと書いてありました。
大きさはこれまた手に乗るくらいのサイズで、船塚のより厚みがあります。そして何よりどえりゃーのは神々しいまでに肥え太ったリアルな肉体ですよ。脇の下に余った肉、背中、腰、尻に別れて垂れた肉。今ならこんな人もけっこういるでしょうが、縄文時代ですからね。ここまで人を肥えさせるのは、そうとう豊かでないとできないことじゃないかと思うのです。しかし想像で作ったにしてはリアルなので、このような豊満な女性が実在したに違いないのです。
その人はどんな人だったでしょう。ただ太っていただけの普通の人だったのでしょうか。それとも巫女として神に仕えていたりするかしら。あるいは巫女にするために子供の頃から肥え太らせて育てられたのではないか、なんて妄想力を働かせてしまうのです。
ちなみにこれは資料館に貼ってあったポスターです。
[追記]
読み返したら、豊饒の女神の話を適当に書きちらかして「で、結局なんなの?」みたいな状態になってたので少し書き足します。
土地が豊かで作物がとれれば、人は沢山食べて太ります。太った人を見ると豊かさを連想するわけですね。今でも南洋の島の人とか、トルコやエジプトあたりでは「女性は太っているのが美しい、痩せているのは不幸せな証拠」などと言う人もいます。さすがに健康のために昔ほどではないそうですが。それで、世界中の豊饒の女神は、極端に肥満した女性として造形されることが多いんです。
日本だと、縄文時代にどんな信仰があったか、当時は文字もないのではっきりとはわからないんですが、あきらかに肥満した女性の土偶が各地で出土するので、おそらく宗教的な意味があっただろうと考えられているわけです。宇宙服みたいな遮光器土偶も見ようによってはボディペインティングをした太った女性ですから、ヴィーナスの一種かもしれないです。
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