ここ数年、同じ靴をずっと履いてる。値段と履きやすさの点で気に入っているには違いないけれど、本当言えばこんな運動靴みたいなのじゃなく、もうちょっとかわいいのを履きたい。しかし、ひとたび出かけると異常な距離を歩いたりするので、かわいい靴では靴も足も持たない。仕方なく運動靴みたいなものを履いている。
今履いているのは、その同じ靴の三代目だ。最初のを履きつぶし、二代目も靴の中がボロボロになったので、新年あらたまったところでいつもの店で同じ靴を買った。二年に一度くらいしか行かないのに、なぜかその店には必ず同じ靴がある。ショッピングモールの靴屋なので売れ残りではないはずだ。隠れたヒット商品だろうか?
とはいえ、今年のは少しデザインが変わったようだ。色も材質も同じなのに、足の甲を覆うパッチの形が違っている。前のほうが好みだが、このくらいの変更なら気にはならない。
上の写真はわかりづらいかもしれないが、上段下段ともに右が新しく買った三代目の靴で、左奥が履きつぶした二代目である。ここまで同じだと、なぜわざわざデザインを変えたのか不思議なくらいだ。
それで思い出した。二代目までは靴にウィンブルドンという商品名のタグがついていて、たしかメーカーがアサヒシューズだったような気がする。
そうそう、このタグだ。 WIMBLEDON と書いてある。靴自体にメーカー名は書かれていないが、ネットで検索すると確かにアサヒシューズから出ているようだ。
ところが、買ったばかりの三代目にはこのタグがなく、中敷きに Healthy Menu という謎のロゴが印刷されていた。ヘルシーメニュー…この靴の商品名なのだろうか??
箱も確認したが、アサヒシューズの名前はどこにもなく、ヘルシーメニューとだけ書いてあった。
商品名とほんの少しのデザイン変更のほかは何から何までまったく同じだし、あえて真似るほどのブランドでもないだろう。いわゆるパチモン(偽物、類似品)ではないと思う。
思うに下請けで靴を作っていた会社が、何かの理由で契約が切れたので、名前とデザインを変えて同じものを売り出したといったところだろうか。小さなドラマを見たような気がした。
メーカーはどこでもいいので同じのをずっと売り出してほしいものだ。もともと妥協して運動靴を履いているので、この靴がなくなってしまうと次の妥協点を探さなければならず、そんなことは想像しただけで面倒くさいからだ。
右が二代目ウィンブルドン、左が三代目ヘルシーメニュー。
履きつぶした靴というのは不思議なものだ。自分のは見馴れているからどうってことはないけれど、他人の靴はなぜか生々しい。歩き方の癖でゆがみや靴底の減りも違うし、何より長時間踏んづけて歩いているわけだから、その人からにじみ出るさまざまなものを受け止めてしまっているのが靴なのだ。
話がよそへそれるが、先日見ていた韓国時代劇に、失脚させたい相手の靴を盗んできて呪詛(じゅそ)をかけるという話があった。呪い(のろい)というのは、難い相手の代わりになるものに憎悪をぶつけることで、直接手を下さずに相手を害するのが基本のメカニズムである。
本当にそんなことが出来るかっていうと、テレキネシスみたいなものを想定するなら出来ないと言い切ってもまず間違いない。しかし、たとえば誰かが自分を恨んで呪詛を行ったかもしれない、というウワサが流れれば、誰だってあまりいい気持ちにならないのが普通である。「そんなことはない、呪詛なんかありえない!」と力説する人は大勢いるはずだが、力説せずにいられないというあたり、すでに気分を害しているわけだから、もはや術中にはまったも同然なのだ。
考えてもみてもしい、不機嫌な状態で何かしようとすると、いつもはうまく行く事ですらおぼつかなくなるものだ。そのまま坂道を転げ落ちるように一日中うまくいかず、上の空で歩いているうちにすっころんでケガをするなんてこともなくはない。
呪詛をかけるという作業と、かけられた者がすっころんでケガをすることは、科学的に言うとなんの因果関係もないのだが、呪い、呪われた、という情報が伝達されて、結果的に術者の思い通りになってしまうことはなくはない。現代のように科学という後ろ盾がなく、神仏や悪霊が強く信じられていた時代ならば、案外簡単に人は呪い殺されたりしたかもしれない。
また、呪詛には呪う側の気持ちを救う意味もあるのだと思う。憎くて仕方がないがどうにもならない相手を、死ね、死ね、と念じることで、どうにか平常心を保ち、実際には手を下さずにいられる、なんてこともあるだろう。負の感情は持たないに越したことはないが、人間誰しも生きていれば、憎悪のひとつやふたつ、持っていて当然なのだ。
その場合、少しでも効きそうな小道具が必要だ。まるで効きそうもないのでは心の支えにはならないからだ。日本ならば藁人形がスタンダードな呪詛グッズで、そこに相手の氏名や年齢などの情報を書き加えて、身代わりになるようにイメージしたのちに、憎悪を五寸釘に注入して打ち付けるわけだ。こーん、こーん…と。
その「憎い相手の代わり」として、韓国時代劇ではその人の靴を利用しており、なるほどなあと思った次第。その人の体重を受け止め、その人の足の裏からにじみ出るものを受け止め、その人の足の形に変形した靴ならば、身代わりとしてイメージしやすく、さぞ呪いをかけやすかっただろうと思う。
ああ、しまった、この話どうやってまとめて終わればいいんだろう。新しい靴を買ったという、ただそれだけなのに余計なこと書き過ぎた。まあ、そんなことを考えてしまうくらい、人が履きつぶした靴は生々しいよね、という話。
履きつぶした靴の写真なんて目障りなものアップしてすみません。
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Healthy Menuで検索してたどり着いたサプライズ記念w
履いてた同じ靴を買おうとしたのに、こちらは見つかりません
安っすいのにとてもいい靴でした
スリッポンなのに超距離あるいてもぜんぜん平気という
こういうものはまとめて買っとくべきだと言う
ちょっと切ない教訓をもらいました
こんにちは!
はやり、この靴を選んで買ってる人がいるわけですね。
確かに歩きやすくていい靴です。わたしは最近また同じのを1足買いました。
参考になるかわかりませんが、
イオンレイクタウン(埼玉県越谷市)の、イオンの靴屋で2度買ってます。
あと、イオン葛西店(東京都江戸川区)の靴屋でも1度買ってるので、
関東だとイオンで継続して仕入れてる可能性が高いです。