お蚕の繭には、まわりにふわふわした部分があります。これは繭をささえる足場というか、ハンモックのようなものです。
この写真のように、お蚕は細い糸をはりめぐらせて、その中に宙づりになるように繭を作ります。この細い糸が繭のまわりでふわふわしている部分で、「けば」と呼ばれています。
さまざまな種類のお蚕の繭です。どんな繭にも けば があります。繭から糸を取るときに、けば は剥いてしまうのですが、けば も絹の繊維なので、捨てるのはもったいないです。よくほぐして綿のようにすれば糸をつむげるはず。
絹の場合、繊維が長くつながっているので、ただひっぱるだけでも毛糸みたいなものにはなるんですが、それだとよりがかかりません。今回はよりのかかった糸を作りたいと思います。
そこでドヤ顔で取り出すのがこれ。インドの糸車チャルカー!
インドの、と言ってもこれは日本製で7000円くらいで、この手の道具としては安かったです。インドでは綿花を紡ぐために使うそうです。絹はどうかなあってお店の人が言ってましたが、紡錘(つむ)を回転させる仕組みは結局一緒だろうし、使いようでどうにでもなるだろうと買ってしまいました。
けばをほぐしたものを、紡錘につながってる紐にからめて、右手でハンドルをぐるぐる回すと糸によりがかかります。綿が黄色いのは、黄色い繭のけばだからで、染めてあるわけではありません。
綿花だと左手の綿をひっぱると繊維がするする出てくると思うのですが、絹だとそう簡単にはいかなくて、すでに引っ張り出されてる繊維によりをかけておいて、両手で綿をさばいて繊維を引き出してやります。紡錘につながってる部分にあらかじめよりをかえてあるので、ひっぱり出された繊維にも勝手によりがかかります。ある程度の長さになったらもう一度よりをかけて、紡錘にまきとる、という作戦でやってみました。言葉で書いてもわかりにくいですが、自分でやりながら動画をとるとか器用なマネができません。
よりをかけて巻き取る、という作業をくりかえすと、紡錘に糸がたまっていきます。昔これをドロップ式のスピンドルでもやってみたことがあるんですが、あれは大変だったわ…… チャルカーのおかげでだいぶ楽になりました。
黄色い繭のけばと、白い繭のけばでつむいだ糸。太さが均一にならないのは味として許容することにしました。
これは梅酢で色をつけた真綿をつむいだものです。ちなみに下にティッシュがあるのは糸の色がわかりやすいように白いものを敷いただけで意味はありません。これは けば ではなくて、繭を煮てほぐした真綿だったと思います。数年前に用意したのを忘れて放置してました。年数がたつと繊維が弱るみたいですが、まあ紡げないこともなかったです。っていうか染めたあとろくに洗ってなかったようで、しょっぱいですこれ…
赤い糸はあらかじめ茹でてあるのでいいんですが、黄色い糸と白い糸はけばをそのまま使っているので、どっかのタイミングで精練という作業をする必要があります。絹の繊維はセリシンという物質に包まれているので、茹でたり洗ったりして落としてやるのが精練です。
精練も、どのくらいやれば完成なのか実はよくわからないんですが、いちおう茹でて洗うくらいのことはしてみたいと思います。
紡錘にまきとったままでは茹でられないので、かせにしてやらないといけません。かせにするにも道具が必要で、糸がちょっとしかない時は、こんな↓道具を使ってます。ちなみに自作。
黄色い糸を茹でたものです。わたしは沸かしたお湯に糸を入れて、保温調理器(シャトルシェフっていうやつ)につっこんで放っておくことにしてます。重曹を少量入れるとさらに良いと思いますが、今回は入れませんでした。保温調理器を使わない場合は、グラグラ沸騰しないように火をうんと弱めて煮れば良さそうですが、何分煮ればいいかはわたしにもわかりません。売り物にするわけじゃないので常にテキトーにやってます。
最後にぬるま湯で洗って、絞って乾かします。
お湯にいれた瞬間にラーメンみたいにちぢれたので大丈夫かしらと思ったけれど、洗って干したらもとに戻りました。
白い糸はクサギの葉で染めてみました。真ん中にぶらさがっているのがそれです。黄色い糸は下半分だけクサギの染液に漬けてみたけど、あまり色がつきませんでした(左のかせ)。赤い糸は梅酢で染めた綿から紡いだものですが、しょっぱいので洗いました(笑)
カテゴリー:
ピンバック: #手芸 :自作糸コレクション | 超・珍獣様のいろいろ