前の記事に書いたヒゲタ醤油から車で10分くらいのところにヤマサ醤油もあります。ヤマサも土・日・祝日は工場がお休みなので、醤油の歴史と製法を説明する短編映画を見るだけです。売店とイートインコーナーが充実してて、それだけ利用することもできるそうなんですが、映画を見るとお土産に醤油が出るのでぜひ持って帰ってくださいと、予約の電話で言われました。
ええと、白状します。この記事を書き始めるまで、わたしはずーっと「ママの手は魔法の手 なんでもできちゃう不思議な手」というCMソングをずーっと口ずさんでいました。しかしこのCMは「ヤマサみそ」であって、ヤマサ醤油とはなんの関係もないらしいです…えええ!!
醤油と味噌という関わりの深いものなので、てっきりヤマサ醤油の味噌部門だと思い込んでいました。CMのヤマサみそは栃木県栃木市嘉右衛門町にあった全然別の会社(益子味噌)の商品です。今はもう廃業して工場跡地が残ってるだけらしいんですけど……えっ……廃業……どうりでCM見ないと思った。
記事と関係ない衝撃の事実に動揺が隠せませんが、とにかく気を取り直して先に進まなくては。今回見に行ったのは「ヤマサ醤油」です。銚子市のヤマサ醤油ですからー!!!
ヤマサ醤油は、最近まで見学コースだかイートインコーナーだかを改装してて、つい最近オープンしたばかり。建物は新しいし売店にはいろんな面白いものがありました。
醤油の歴史と製法を説明する短編映画も、やけにきれいな上映室で見せてもらえましたよ。ここの映画もまず径山寺味噌(金山寺味噌)のたるに残っていた液体の話から入り、締めは「美味しい醤油は赤い」でした。それが定説なら当たり前じゃないかと思うでしょうが、野田のキッコーマンでそんなに径山寺推しをしてたかなあという感じです。
醤油の直接のルーツは、たしかに径山寺味噌なんですが、実はその前にひしお(醤)の時代というのがあって、魚を塩漬け醗酵させた汁を調味料として使っていました。ひしおの原料は魚です。しかし、中国に豆醤や穀醤といった、植物性の原料を塩漬けにして作った醤があったそうで、それが奈良時代にはもう日本に伝わっていました。味噌の副産物を調味料にする発想そのものは古くからあったわけです。そこをどう説明するかで、径山寺全面推しになるか、それほどでもないかの差が出るんでしょう。
それと、銚子の醤油は創業者が和歌山方面から移り住んだ人たちなのも、関係しているかもしれません。ヤマサの映画では房総半島の海岸線には和歌山県と共通する地名が何カ所もあるって言ってました。白浜、勝浦などがそれで、あまり有名でない地名も入れるとけっこうな数になるらしいですよ。ヤマサの創業者である濱口儀兵衛は現在の和歌山県出身で、有名な「稲むらの火」の話は、安政南海地震の津波から村人を救った話です。最初から醤油屋さんだったわけではなさそうですが、醤油は和歌山からもたらされた技術だってことにこだわりがあるのかもしれません。
http://www.yamasa.com/enjoy/history/choshi/
さてさて、映画を見終わると、何かこう、偉い人っぽい感じのおじさんが現れました。
「これから不思議な体験にお連れします。外にいますので、お時間がある方はぜひおいでください」
不思議な体験…? 電話では映画だけですよって言ってたのに、なんですかその不思議体験って。映画見てたほぼ全員がオジサンについて行きましたよ。そんな魅力的なことと言われて行かないわけないでしょ!
連れて行かれた先は、薄暗い小部屋でした。中には樽を大きくしたような円形の囲いがあります。その中に全員が入って、囲いに添って並びました。輪になって立ってる状態ですね。
すると部屋のあかりが消えて、天井の映写機が床に何かを写しました。木目調の床です。どうやら樽の底が映ったようです。オジサンが「これからこの樽に、醤油の原料を注ぎ込みます。あ、上から注ぎますから頭に注意してくださいね」とかなんとか言うと、樽に液体が映し出されました。「もろみ」というやつです。豆・小麦・麹菌をまぜて醤油麹というものを作って、そこに塩水を加えたのがもろみです。それが数ヶ月かかってぶくぶく醗酵していく様子が足元に映ります。なかなか面白い。
最後に美しい醤油ができあがります。足元は醤油です。醤油の水面の上に立ってる状態です。オジサンが言いました。「これからみなさんに魔法をかけます。3つ数えたら一歩前に踏み出してください」そして、1,2,3と数を数えました。みんなで足を踏み出すと…
おっ、おおお、すごーい。足で踏んだところに波紋ができるよ。醤油の上を歩いてるみたい。子供が大喜びで床にダイブ。醤油のプール(映像)で泳ぎまくっていました。そのまわりにも波紋が広がります。ためしに手をヒラヒラさせてみたら、手の影にも波紋ができました。天井にセンサーがあって、それに反応して波紋を映し出してるんですね。すごいな、樽の中に30人以上いるはずだけど、その全員が勝手に動いてるのにちゃんと反応しています。
どうも、つい最近までやってた改装工事で、この装置を作ってたらしいです。休日は会社が休みで手が足りないので、本当は公開しない予定だったそうなんですが、たまたまオジサンの時間がとれたので、特別ですよって言ってました。おー、なんという幸運。しかも面白かったー。
樽の中で醤油とたわむれた後は、売店に戻ってお買い物です。一緒に行ったおともだちはヤマサの昆布つゆのミニチュアがついたストラップを買っていました。わたしは醤油生キャラメルと銚子電鉄のぬれ煎餅を買いました。
生キャラメルは、遠くかすかに醤油の香ばしさと塩気を感じる和風のやわらかいキャラメルでした。ただ、生キャラメルとしてはフツーかな。生キャラは、どんなに美味しい店のでも、何か混ぜたのは口どけがイマイチなので仕方ないのかも。フツーだけど美味しいですよもちろん。
濡れ煎餅もヤマサの売店で売ってました。煎餅の製法は市内の煎餅屋さんが銚電に無償指導したものだそうですが、タレはヤマサで調合してるそうです。銚子のぬれ煎は、初めて食べました。鉄道会社の経営がやばくなった時に、食品部門を作って売り出したらバカ売れしたっていう、あのぬれ煎です。
その、銚子電鉄の話よりずーーっと前に、磯野貴理子が何かの番組(おそく起きた朝は…?)でぬれ煎餅の話をしてたはずです。煎餅なのにタレが染みてて柔らかいんだとか。それが、誰かにもらったかなにかでどこの製品かわからないって言ったら、視聴者からの情報で、千葉県のどこだかの…と言ってたような気がするので、たぶん銚子のぬれ煎餅だったんだと思います(あくまでうろおぼえです)。
その話が忘れられなくて一度食べてみたくて仕方がありませんでした。ぬれ煎餅っていう名前のお菓子は銚子以外にもあるみたいなんですが、わたしが昔食べてみたのはぬれたような照りがあるだけで、ふつうにパリッとしたお煎餅でした。磯野貴理子が言ってた本当にぬれてる煎餅を食べてみたい!
帰宅後に開けてみたら、おお、ほんとにやわらかいよ。湿気ってるんじゃなくて、ほんとにタレが染みて柔らかいの。餅みたいにのびないけど、煎餅のようにパリッともしない。なんだこれ、面白いし、すごく美味しい。異常なまでにほうじ茶に合うわー。こんなことなら大きい袋を買えばよかった。5枚入りの袋なんてあっという間ですよ。うひゃー。
銚子電鉄 銚電のぬれ煎餅<ぬれせん> 5枚 |
味が何種類かあるんですが、わたしが買ったのはっこの、濃いめの味で、銚子電鉄で初めて売り出したのはこのタイプだそうです。
すでに書いたとおり、ぬれ煎餅自体は銚子市にけっこう昔からあったそうです(磯野貴理子の話も銚子電鉄がヤバくなるよりずっと前のこと)。いろんな和菓子屋さんで同じような煎餅を作ってます。
それからイートインコーナーで醤油入りのソフトクリームと、醤油炒りの上げ饅頭を食べました。
このソフトクリームにかかっているタレは「黒みつ風」だと書いてありました。風って何よ。黒みつじゃなければなんなの?!って感じですけど、食べてみると「ああ…なるほど、ほんとに”風”であって黒みつじゃないわコレ」という感じ。味のベースは醤油で、そこに酸味もついてると思います。甘みもついてるかもしれないけど、ソフトクリームも甘いのでよくわかんない。その、かすかに酸っぱい醤油タレと一緒にソフトクリームを口にいれると、あら不思議、意外と上品でさわやか。これは美味しいですよ。醤油はソフトクリームに合います。
饅頭は小さくて、中に白あんが入ってます。醤油味はかすかにする程度。いや、でも、その「かすか」な感じがいいのかも。
というわけで、ヤマサの工場見学(映画のみだけどね)でした。
http://www.yamasa.com/enjoy/factory-visit/
ヤマサ醤油・工場見学の御案内。いちおう予約が必要らしいです。休日は工場内部は見られません。短い映画を見ると醤油をもらえます。見学は無料。駐車場も無料。「不思議体験」は、休日だとやってるかどうかは今のところ運次第かな。
ヤマサ さしみしょうゆ 200ml |
見学の記念にもらった醤油はこれです。さしみ醤油という名前だけど、出汁醤油やタレではなく、あくまで美味しく作った醤油なので、なんにでも使えます。鮮度をたもつ密閉ボトル入り。#追記:原材料よく見たら、少量のみりんと酢が入っているようです。ただ、舐めてみても甘くはないし酸っぱくもないし、品名は「こいくちしょうゆ」になってます。
密閉ボトルについては別の記事でキッコーマンのを分解してみたことがあります。結局仕組みがよくわかんなかったんですけどね(笑)
http://www.chinjuh.mydns.jp/wp/20160420p4351
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