年末に豊田市ってところにいた。あのへんの店ではなぜか大量のキウイフルーツが売られている。たとえば8個だか10個だか入ったパックを400円くらいで売っていたりする。値段と数はうろ覚えだが東京に比べると驚くほど安いことは確かである。そもそも東京のキウイは箱で売られたりしない。1個100円くらいで、必ずバラ売りだ。
最初は「キウイの産地だから安いのかな」と思っていた。それは半分正解で半分はずれだった。確かに愛知県にはキウイ農家が沢山あるようだが、豊田市内のスーパーで大安売りのキウイはニュージーランド産なのである。
なぜかはわからないが、豊田市の人たちはキウイが好きらしい。とにかくどこのスーパーでも大量のキウイを販売していた。もちろん、スーパーで買うキウイはちゃんと熟しており、甘酸っぱくて美味しいはずである。
ある日、わたしはおともだちと豊田市内の山のほうへ観光に行き、地元の野菜を売る店で未熟なキウイを買った。店の人が自分の畑で作ったものを売っているようだ。
大小ふぞろいなキウイが袋に一杯はいって100円だった。まだ未熟なので、しばらく置いてから食べてね(追熟させてから食べてね)という意味のことが書いてあった。
「しばらく」がどのくらいなのか気にはなるが、普通に考えて2〜3日、長くても1週間くらいかなと軽く考えて2袋買ってしまった。
それから毎日のように固さを確かめて、いつ美味しくなるのか待ち続けたが、いっこうに変化がない。1週間目に食べてみたが、固くて酸っぱいままだった。
そのまま2週間以上変化がなく、仕方なく東京に持ち帰り、先ほどまた切ってみたが、ただただ固くて酸っぱいだけ。さっぱり熟す様子がない。ただ、しなびかけたキウイが混ざっていたので、ためしに食べてみたら甘かった。ほかの傷んでいないものは未熟なままだ。
一体どういうことなのかと、今ごろになって検索してみたら、キウイというのは木からもいで放置しておいても「2ヶ月以上たたなければ熟さない」ものだという。
えっ、2ヶ月?
そんな長期間を「しばらく」という言葉に凝縮して素人に売りさばいていたのか…
その店が酷いのかというと、たぶん違うだろう。愛知県ではそういう経験を沢山する。観光地の道案内は説明がおかしいし、ドリンクバーとスープバーがある店で、スープが別料金かどうかを必死でメニューを見ないとわからなかったりする(東京なら、勝手に飲まれては困るので別料金ってスープの前に書いてあるか、注文をとるときにスープバーもいかがですかって聞かれる)。
たぶん愛知県あたりの店や公共施設では「わからなければ人に聞くだろう」という法則で動いているんだと思う。キウイの店でも追熟の仕方を知らない人は聞くから大丈夫だと思い込んでいるんだと思う。こちらからやり方を聞けば親切に教えてくれるに違いない。
しかし、ほんとにみんな聞くのかなあ。店にある果物が2ヶ月たたないと食べられないなんて、誰も思わないのでは。しばらくって書いてあったら、果物の場合はせいぜい1〜2週間じゃないだろうか。「全然甘くならない。やっぱり安物はダメだ」って言いながら捨てられてるんじゃないのかな(笑)
まあ、それはともかく、キウイフルーツはエチレンガスをあびせると追熟が進むそうである。まっとうなスーパーに並んでいるキウイは、エチレンガスで追熟させているとのこと。
エチレンガスはリンゴなどの果物からも発生するので、リンゴと一緒に袋に詰めておくと早く美味しくなるそうだ。
または、キウイそのものをテーブルの角にでもぶつけて、わざとストレスを与えれば、自らエチレンガスを発して勝手に熟すそうである(ソース>ためしてガッテン・キウイの帝王が伝授!極甘&瞬間完熟ワザ
なるほど、しなびたキウイだけが甘くなっていたのは、どこかに当たって傷物になってたせいなのだ。買ってきて固さを見るために袋をあけてしまったけれど、密閉しておけば他のキウイも甘くなったかもしれない。
もしかして、そのために傷物をワザと入れてくれたんじゃ……と思いかけたけど、2袋買って、傷物が入ってたのは片方だけだったので、それは違う。ただの偶然。
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