わたくしこと珍獣様と根尾谷断層の出会いは、学校で使っていた副読本のようなものからです。副読本というか、社会科の参考書だったと思うのですが、教科書とは別に学校で配られたものでした。その本に明治時代の濃尾地震で出来た断層の写真が掲載されていました。
写真は白黒で、大変古いものです。画面の真ん中に断層があり、奥が高く、手前が低くなっています。その段差は地震で出来たもので、もとは平らだったのです。一瞬にして何メートルもの段差ができたらしいのです。
また、同じ場所を昭和の後期くらいに写したカラー写真も掲載されていました。それがものすごい。断層の段差はそのままで、道路だけ新しくなっているではありませんか。その様子に得も言われぬ感動を覚えるわけです。一瞬で何メートルもの段差が出きる地球のパワーにクラクラして、その段差をものともせずに道を作る人間の強さにもクラクラします。わたしの心は完全に根尾谷断層のとりこ。世界三大好きな断層は上から下まで根尾谷断層っていうくらい気に入ってしまいました。
そこまで気に入ってたら何処にあるかくらい覚えていてもよさそうなものですが、そこはそれ、子供の頃の話です。関東だって広いのに、箱根の山のさらに向こうなんてよっぽどの観光地でもなければ行くチャンスなんかないんです。遠い外国のことみたいに行きたいけど行けないだろうっていう気持ちのほうが強くて、場所までは覚えていませんでした。それどころか名前もあやふやだったんですけどね。
ここが根尾谷断層です。「え、どこが断層?」と思うかもしれません。地上からだと分かりにくいんです。かねがね「この場所に来たら黙っていてもわかる」と思っていたわたしでも「現地」って書いてある看板を見るまで土手かなんかだと思ってたんですから。
「国指定特別天然記念物 根尾谷断層 現地」と書いてある看板。断層の真上にあります。
この写真はカラーに見えますが、明治時代に撮影された白黒写真に色をつけたやつらしいです。社会科の参考書に載ってた写真はこれに似たやつで、高いところから写したものでした。
子供の頃はあまり深く考えたことはなかったのですが、明治時代にヘリなんかなさそうだし、一体どうやって写したのでしょう。
実は断層の南に崖がありまして…
この階段の上は、現在は展望台として整備されてるんですが、どうもこの上から写すと参考書の写真みたいになるらしいんですよ。
これが崖の上です。奥に見える東屋の下あたりから断層を写すと…
こーんな感じになります。さらに、二つ上の写真と同じくらいにトリミングして並べてみると?!
うわー、根尾谷断層だー。明治時代の写真のまんま、道路だけ新しいぞー!! やったー、わーい、とうとう根尾谷断層にやって来たぞー!!!
断層の近くまで戻ってきました。断層は道を横切って(というか道が断層に乗ってるんですが)写真の右側にも続いてます。右の方を見ると…
この土手みたいなのが断層面で、石垣になってるのはほっとくと崩れてしまうので保護のためだと思います。途中で断層が切れてピラミッドみたいな建物がありますが、これが「地震断層観察館」です。断層の真上に建ってるのはなぜなのかっていうと…
じゃーん。このとおり、断層を掘ってどんな具合にズレちゃってるのか観察できるようになっているからです。写真左奥の窓の外がひとつ上の写真の場所です。
ほら、窓の外に断層の切れ目が! 外の断層が、ピラミッドの下の穴につながってることが良くわかります。なんというドキドキ、半端ないワクワク。現地にはこんな胸熱な展示があったとは!
見る場所を変えてみました。向こう側(断層の高い方)と手前(低い方)で土の色がまったく違うことがわかります。
さらに場所を変えて、断層の切れ目を背にして写してます。左が高い方、右が低い方。土の黒いところはもともとひとつに繋がっていましたが地震でずれたのです。
地震断層観察館は、ほかにもいろいろ展示があります。濃尾地震関連の古い写真や、古文書の写し、地震のメカニズムを説明する資料、断層の動きを説明する機械仕掛けのジオラマ、過去にタイムスリップして根尾谷断層を体験してしまう小学生の映画(椅子が動いて地震を体感できる)などなど、なかなか面白かったです。子供の頃に濃尾地震を体験したお年寄りの話など、長文のパネル展示でしたが興味深かったです。
そうそう、観察館からそれほど遠くないところにある西光寺では、地震の時に鐘楼が上の写真のように倒れてしまったらしいんですが、骨組みは折れなかったので起こし直して今も同じのを使ってるっていうので見に行きました。
これがその鐘楼です。古いものなので何度も直してるそうですが、木の骨組みは当時のままなんだって。木造建築ってすごい。
青いポイントはどれも水鳥駅(みどりえき)から歩ける範囲です。車の場合は地震断層観察館の近くに無料駐車場があります。赤いポイントが淡墨桜で、こっちは隣の樽見駅(たるみえき)から徒歩15分くらい。
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◎マイフェイバリットとかテキトーなことを言ってるんじゃない証拠
http://d.hatena.ne.jp/chinjuh/searchdiary?word=%C3%C7%C1%D8
昔書いた日記のURLです。東日本大震災の時に、悲壮な出来事ばかり報道される中で、昔見た地震や断層の写真が鮮明に思い出されてどこの写真か探したんでした。岐阜県だって自分で書いてるわりに、やっぱり遠い見知らぬところだっていう思いか覚えてられませんでしたね、あはは。なんせこの写真を見て大地の傷跡はいずれ人間に征服されるという思いを強くするのでした。
◎根尾の淡墨桜(日本五大桜のひとつ)
http://www.chinjuh.mydns.jp/wp/20170410p7292
この淡墨桜を見に行って、帰りにマイフェイバリット根尾谷断層の実物に出会っちゃったというわけ。