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和名 ナス(茄子)
別名 ナスビ
学名 Solanum melongena
科名 ナス科
中国名 茄子
英名 eggplant(米) aubergine(英)
エスペラント melongeno
その他 aubergine(仏、独)
melanzana(伊)
berenjena(西)
berinjela(葡)
夏〜秋
原産地 インド

 
 
インドからきた野菜
 ナスの原産地はインドで、ヒマラヤを越えて中国経由で日本にやってきた。平安時代にはすでに栽培されていたという。

 日本の一般的なナスは黒に近い紺色の皮を持っているが、赤紫、赤、緑、白など、さまざまな色のナスがあり、食用にするだけでなく観賞用にもされる。

 形も、丸くて小さいの、丸くて大きいの、細くて長いの、長くて太いのなどさまざまだが、どれも皮がツルンとしてツヤがある。ただし、タイにはケナス(毛茄子)といって綿毛に包まれたナスもあるという。

 焼く、炒める、蒸す、煮る、塩漬け、ぬか漬けなど、どんなふうに料理してもいいけれど、生ではほとんど食べない。

 お店には一年中並んでいるが、旬は夏から秋にかけて。特に秋のナスは種が少なくて美味しいと言われている。


その他覚え書き
・民田ナス:300年前に京都から山形に持ち込まれた種を民田という集落で栽培したことからその名がある(にっぽん彩発見・テレビ朝日)。一口大の小ナスで漬物用にする。山形の郷土野菜。

ナスにまつわる言葉・文学作品
茄子紺(なすこん)
 茄子の皮のような濃い紺色のこと。

茄子歯(なすびば)
・黒くなった虫歯のこと。
・お歯黒で黒く染めた歯のこと。
・女の子がナスの皮を歯につけてお歯黒のまねをする遊び。

秋茄子は嫁に食わすな
 この諺(ことわざ)にはいくつかの意味がある。

  1. ナスは夏から秋にかけて収穫されるが、秋頃のナスは種が少なくておいしいことから、よそ者の嫁になど食べさせられないという意味。嫁いびり系解釈。
  2. 秋にとれるナスには種が少ないので、子種がなくならないようにお嫁さんには食べさせてはいけないという意味。この場合、基本的にはお嫁さんを心配しているわけだが、跡取り息子を生んでくれる人だから、という前提のもとに成りたっているところが微妙だ。
  3. ナスは体を冷やすので女性に食べさせてはいけないという意味。これも遠くに跡取り息子への期待を秘めているような気もするが。
赤茄子(あかなす)
 トマトのこと。トマトはナス科なので。また、皮が赤紫色のナスのことも赤茄子という。

瓜の蔓に茄子はならぬ(うりのつるになすはならぬ)
 「蛙の子は蛙」と同じような意味。「鳶が鷹を生む」の反対。平凡な親からは平凡な子供しか生まれないということ。ある決まった条件下には、決まった結果しかありえないということ。

一富士二鷹三茄子(いちふじにたかさんなすび)
 初夢に見ると縁起のいいもの。

親の意見と茄子の花には千にひとつも無駄がない
 「冬瓜のあだ花」や「冬瓜の花は咲いても百にひとつ」の反対。ナスは咲かせた花のほとんどに実がなることを親の意見の貴重さにたとえた言葉。

仲良きことは美しき哉
 武者小路実篤の色紙。上記の言葉とともに、ナスやカボチャの絵が添えられている。これらの野菜とこの言葉になんの関係があるのかも不明だが、飲食店などに必ずこの色紙が飾られている理由もいまいちよくわからない。

Solanum melongena
 ナスの学名。solanum は鎮静作用のあるもののこと。ナス科の一部の植物に鎮静効果のあるものがあるためについた名前。melongena はウリ(またはリンゴ)の成るものの意味。
 古代においてナスはウリの一種と思われていたふしがある。『斉民要術』という中国の古い文献でもナスはウリとして分類されている。

aubergine
 ナスの英名。あくまで英名で米名ではない。
 ナスをヨーロッパに伝えたのはアラブ系の民族だが、中東の言葉でナスをバディンジャという。これに接頭辞のオウがついて、オウバディンジャと呼ばれているのがヨーロッパに伝わりオウバージンと呼ばれるようになった。
 当時の中東の言葉というのが何語かはよくわからないが、現在でもアラビア語でナスのことをバジンガーン、ペルシア語(?)ではバディンジャンと言うそうだ。

 
 
珍獣様が食されたさまざまなナスたち